小野寺南友さんとアンミカさん
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Fashion フォーカス

「パリコレ学」小野寺南友モデルデビューへの挑戦に密着<Part 3:インタビュー編>

アンミカ

ー半年にわたって放送された「パリコレ学」(現在第2シーズンが進行中)ですが、振り返るとどんな思いがありますか?  

 思い入れがたくさんありますね。参加した9人の学院生、全員に等しく期待を込めていたし、愛情があります。みんな真剣に向き合っていたのでその気持ちに応えるために、一人ひとりの適性を私なりに見て指導してきました。同じ志を持って戦う姿をすぐ近くで見守ってきて、逆に私が学ぶこともたくさんあったんです。  

 また、モデルの先輩として時代というものを感じながら、若い彼女たちの姿を見て羨ましくもありました。私は15歳でモデルの仕事を始めたんですが、19歳になっても鳴かず飛ばず。パリに来るまでに苦労も多かったんです。彼女たちはこの番組を通して、私の尊敬する仲間や先輩方、一流の方々の仕事に触れることができて、本当にラッキー。ただ、この機会をラッキーだけで終わらせずに、個々で吸収してモデルとしての人生にどう活かしていくかは、彼女たち次第。それぞれの活躍を楽しみにしています。

ー親身で厳しい指導からも、アンミカ先生の思いが伝わってきました。

 パリコレ学では、学院生の中から推薦する1人を決めただけ。推薦されなかった全員に「パリコレは逃げないから、挑戦したければできるんですよ」と伝えました。「悔しかったらお金を貯めたり親に頼み込むなりして、自分で行って下さい」と。例えばそれで、自力でショーを掴み取って「ほら、先生には選ばれなかったけど私やるでしょ」ということもあると思うんです。この企画で学んだことを、是非これからも活かしてほしい。愛を持ってデザイナーのメッセージを受け取って、技やスキルを最大限に使って服に命を吹き込む存在でいてほしい、ということをメッセージとしてみんなに送りました。

ーそれぞれの個性を持った9人の中で、小野寺さんを推薦した理由は?  

 小野寺さんは、前半の折り返し地点では真ん中くらいの存在でした。上位にも行けないし、かといって最下位にもならない。良くも悪くもないので、テレビ的には取り上げられにくかったでしょう。突き抜けたものが無かったんです。  

 ただ、オーディションの時から一つだけ私が気になっていたのが、彼女の「服に対するセンス」でした。Tシャツとデニムの最もシンプルなスタイルでも、自分が似合う丈とフィット感、ネックの形をわかっていて、バランスが良いんですよね。この子は服好きなんだなと感じて。撮影の時に、一度も同じ服を着なかったのも彼女だけだった。卒業式の回なんて、17歳とは思えない難しい格好で来たんですよ。誰かのアドバイスとかコーディネートしてもらった服でなくて、自分で考えて。頭もラーメンマンみたいに結んでてきて(笑)。

ー小野寺さんを選んだ際に「そのセンスと才能にかけてみたい」とエールを送っていたのが印象的でした。  

 最後の候補に残った門田玲さんとどちらを選ぶかで本当に悩みました。門田さんは「自分を見せるのが上手」。一方で小野寺さんは「服を理解して見せるのが上手」で、「憑依体質」と私はずっと呼んでいたんです。コシノ・ジュンコさんの服を着た時に、その才能が開花したんですね。カメラマンの萩庭桂太さんのシューティングで涙ながらに手を上げて「もう一回やらせてほしい」と志願した時には、彼女の覚悟を見ました。そのあたりで一つ抜けたのかもしれません。  

 人って「信念、感謝、覚悟」の3つが大事だと思っていて、小野寺さんはファッションに対する信念があったし、性格的にもとても品のある、感謝の多い子でした。そしてなにより覚悟があった。コシノさんの回では一番難しい服が当たっちゃったんですよ。腰に手を当てたまま、すごく高いハイヒールを履いて階段を降りるという。それを下を見ずに降りて来た時、コシノさんが「すぐショーに出せるよ」って。  

 岸本怜子さんのスタイリングでレスリー・キーさんに撮影してもらった回もそうです。「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」の難しいバランスの服だったんですが、出来栄えにびっくり。その辺りから、私の中でも少しずつ気になる存在になっていったんだと思います。

 ー番組の企画としては一旦エンディングを迎えますが、小野寺さんにとってはここからがスタートですね。どんなモデルに成長してほしいですか?  

 小野寺さんは、ふわっとした中に良い意味での鈍感力と運の強さ、洞察力を合わせ持っていて、「読めないところ」が魅力の一つです。彼女は憑依体質なので一つ一つの役に魂が入るような女優型のモデルで、私たちが想像しないところに自分を持っていくことができるはず。その可能性を存分に追求していってほしいし、どう化けるかが楽しみなんです。  

 そして普段は「先生!先生!」ってすごく可愛いんですけど、気の強さと品の良い謙虚さの両方を持ち合わせているので、そのバランスは変わらずにいてほしいです。

ーご自身がパリコレに挑戦していた頃との違いはありましたか?  

 今回は25年ぶりに、モデルではなく見る立場としてパリコレに戻って来て、感慨深いものがありました。まず今はネットで調べれば何でも出てきますけど、当時はポケベルにだって文字が入れられない時代ですよ(笑)。電話帳で調べて、大阪の美容院に片っ端から「パリコレに携わったことある人いないですか?」と聞いて周ったり。元祖スーパーモデルと呼ばれる人たちが全盛期で、雑誌を見てはどこのエージェンシーに入ってるかを調べたり。アナログなやり方しかできなかったんです。

 でもファッションウィークのコレクションというのは、いつでも服が中心にある。そして時代だったり地球がどこに向かっているのかというメッセージをデザイナーたちが発表している場。そういったことに変わりはないと感じましたね。

ー今の時代のモデルに求められる役割については、どのように考えますか?  

 今はSNSなどが普及して、一瞬を切り取られる時代ですよね。モデルとして、その一瞬を魅せることで夢を与えてほしい。古い考えかもれないけど、特にランウェイモデルというのは舞台の上でだけではなく、“オフランウェイ”での品格も必要だと思っています。基本として「動くマネキン」であるべきですが、内側から美しい存在であってほしいです。 

 あとはやはり、身につけるものへのリスペクト。ファッションって華美なものだけと捉われがちですが、持っているパワーってすごいんですよね。「男女平等」の声が上がると肩パッド入りの服が流行ったり、「森林伐採」が問題視されるとグリーンが流行って、世界で争いが起きていたら素材の柔らかいものだとか、平和へのメッセージがデザインに取り入れられたり、いわば社会の鏡。身につけたりなんとなく目にするだけで、心理的な影響もあると思います。それに「可愛い!この服どこの〜?」とか、最高のコミュニケーションツールじゃないですか。  

ショーのフィナーレで拍手を送るアンミカ先生。

 ファッションは私にとって尊いものであり、私たちモデルの仕事というのは主役である「服」をいかに引き立てて表現できるかということ。どの時代も変わらない使命だと思っています。

ーアンミカさんにとって、パリコレとは?  

 私の人生の中では「大きな希望」。世界トップの審美眼の塊であり、世界のファッションウィークの中でも特別だと感じるのがパリコレです。

 私は22歳で完全にパリから引き上げたんですけど、いいことだけではなかった。辛い思いをしていっぱい泣いたし、嫌いになった時期もありました。でも振り返ると、それが今の私であるための大事な人生の1ページになったんです。小野寺さんも経験したかもしれないけれど、これからもっと厳しくて、悔しくで辛いことがあるかもしれない。でもそれを跳ね返して、世界に羽ばたいていってほしいと心から願っていますし、ずっと応援しています。

(聞き手:今井祐衣)

「パリコレ学」小野寺南友モデルデビューへの挑戦に密着
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Part 1:キャスティング編
Part 2:ランウェイ編
Part 3:インタビュー編

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