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京大→NHK→フリーランス パリ在住、31歳ジャーナリストの履歴書

Image by: Yujiro Saito

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 あなたは今、なぜその街で暮らし、その仕事をしていますか?

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 FASHIONSNAPでは、パリで暮らし、パリで働く、キャリアも職業も在住歴も異なる4人の女性クリエイターを取材。「新しいことを始めたい」「なぜ今、自分はこの環境にいるんだろう」──ふとそんな問いが頭をよぎる“今”こそが、実は人生の岐路かもしれない。迷える人の背中を押してくれる、四者四様の挑戦と選択の話。

#03 ジャーナリスト 冨田ユウリ


 3人目はジャーナリストの冨田ユウリさん31歳。京都大学法学部卒業後、NHK勤務を経てフリーランスになり、2024年からパリに移住した。留学経験も海外在住経験もゼロのまま飛び込んだ新しい環境。単価の安いライター業だけで生計を立てるには厳しい為替や物価、言語の壁。厳しい環境の中で、どのように働き、サバイブしているのか。ライフスタイル、カルチャー、フードまで幅広く取材し、執筆から動画撮影まで請け負う、パワフルで軽やかな姿勢の原点を聞いた。

パリに来るまで:オペラ歌手の母の仕事場、舞台裏に憧れた幼少期

⎯⎯ これまでの経歴から教えてください。

 元々、母親がオペラ歌手で、幼い頃からその舞台を間近で見ていました。でも、その姿を見て憧れたのは母親より、舞台の裏でTシャツ1枚で駆けずり回っている裏方の人たちでした。そこから漠然と、テレビ局などの裏方の仕事に就きたいという気持ちがあり、新卒でNHKに入社しました。全国放送の局なので、広報やイベント周りを中心に、番組制作や取材なども担当しながら5年ほど働きました。

母の影響で一時期は音大を目指すほどピアノに打ち込み、パリの部屋にもピアノを置いている。「ある日ふと、母のレールに導かれる感じがして嫌になって。でもグレたと思われたくないから、ちゃんとした、でも変な人に出会えそうな大学に入ろうと思って京大に行きました」

⎯⎯ NHKを退社した理由は?

 会社の居心地は良かったし、仕事自体もすごく面白かったですが、会社の名前で仕事をしている感覚がずっとありました。守ってもらっている分、自分という個人が薄くなっていくような感覚というか。取材でも、聞きたいことを好き放題には聞けない場面もありましたし、もっと自分の興味に従って動けるほうが自分らしくいられるんじゃないかと思うようになったんです。

⎯⎯ ライティングはどこで学んだのでしょうか。

 NHKを辞めるときに、特にツテもコネもなかったので、まず編集の仕事をちゃんと学ばなければと思い、雑誌の裏に載っている連絡先に片っ端から連絡をしました。そのなかで返事をいただけたのが、ビジネス誌の「プレジデント」編集部でした。

 プレジデント社の編集部はワンフロアだったので、プレジデントで編集の仕事をしながら、グルメ誌の「dancyu」や着物雑誌の「七緒」でも働かせてもらい、現場に飛び込んで仕事を覚えました。

生活:家具は拾って、語学は60歳の友だちに学ぶ

⎯⎯ 国内で数年間フリーランスを経験し、2024年に拠点をパリに移しました。

 母の仕事について海外に行くことはありましたが、私自身は留学も海外に住んだ経験もありませんでした。いつかは海外で暮らしたいなという思いがあり、ワーキングホリデーがまだ余っているし、一度どこかに行ってみようと思いました。どうせ行くならなるべくサバイバルな環境がいいと思ったので、英語圏ではない国で、街並みがきれいで、言葉も美しそう、という理由からフランスを選びました。

 当時はファッションエディターの白澤貴子さんのアシスタントもしていて、白澤さんが昔フランスにお住まいだったという話を聞いていたので興味を持っていたのもあります。でも、最初は1年で帰るつもりでした。

⎯⎯ 今でもパリで暮らしている理由は?

 すごく居心地が良いのと、サバイバルな環境が毎日新鮮で楽しい。“過ごしにくいけど、生きやすい”という感じです。

⎯⎯ というと?

 フランスの人って基本的に大らかというか、適当な部分もあって、気分によって言うこともコロコロ変わるので、役所に行っても「今日は気分じゃないから受け付けたくない」と帰らされたことがあります。仕事でも、レストランの取材を申し込んでアポイントを入れたのに当日行ってみたら「今日はシェフがいない」と言われたり、ちょうどこの後取材でイタリアに行くんですが、お願いしていたフォトグラファーが「気分が乗らないから」という理由で急遽キャンセルになり、飛行機まで取り直すことになりました…(笑)。デモが起きてメトロが止まることもしょっちゅうですし、そう言う意味での不便さはあります。

 でも一方で、自分も自由に過ごしていたって誰にも咎められないし、ちゃんと説明すれば理解してもらえるところは生きやすいと感じます。ルールに縛られていないからこそ、融通が効く場面も多々あります。これまで「ちゃんとしなきゃ」と思いすぎていたことから解放されたような感覚です。

⎯⎯ この家はどのようにして見つけたんですか?

 もともと知人が住んでいた部屋を紹介してもらいました。大家さんが隣に住んでいるのですが、日本のことがとても好きな方で、お部屋に畳があったりするんです。完全にご縁と運でした。良い物件は知人にだけ紹介している大家さんも多く普通に探しても簡単には借りられないので、周囲にとにかく相談するのが大事だと思います。

⎯⎯ インテリアもかわいいですね。

 家にあるものは大体頂き物か、蚤の市で手に入れたものです。仕事机は道端に落ちていたものを拾ってきました。結構よく机とか椅子が落ちてるので、見かけたら、よほど汚くない限りは一回検討します(笑)。メトロに乗っていても、時々大きな家具を抱えている人を見かけますよ。

元の持ち主は画家なのか、絵の具がたくさんついた仕事机

蚤の市で購入した「卵」の本

⎯⎯ 掘り出し物ですね!確かに、物を受け継ぎながら長く使う人が多いイメージがあります。

 物を大切にするという価値観が作品に表れていると感じます。新品を買ってばかりではなく、いただいたものや拾ったものを大切にするという考え方が私もとても好きなので、取材していてもとても楽しいです。

蚤の市や拾って手に入れたインテリア。本棚は飲食店の人からもらったワイン箱、ピアノ台はパリのDIYショップ「カストラマ(CASTORAMA )」で購入した木材で制作した。

⎯⎯ フランス語はどのように勉強しましたか?

 基本独学です。フランスって日本人に興味がある人が多いので、レストランやカフェで偶然会った人にナンパされることもよくあり、私がパリで一番仲が良い60歳のフランス人女性ともレストランで偶然出会いました。元々「シャネル(CHANEL)」でデザイナーをしていたそうですが退職して、今は悠々自適に暮らしている方で、「パリを教えてあげる」っていろいろ連れ回してくれるんです。車の運転も好きな方なので、よくドライブにも連れ出してもらっていて、その方と会うときに「今日はこの話がしたいから、そのためにはなんて言ったらいいんだろう」って調べて覚えたフランス語を披露しています。大家さんや同じマンションに住むおじいさん、おばあさんともよくお話をします。実際に会話をしてみることが一番勉強になるアウトプットですね。

60歳の友人クリスティーヌさんと出かけた際の写真

Image by: 冨田ユウリ

 若い人は会話のスピードが速いのでついていけないこともありますが、年配の方はゆっくり話してくれるし、聞き返すと何度も親切に教えてくれます。このほかにも、アプリの「デュオリンゴ」で勉強した簡単な会話は街中で立ち話などに役立てています。

⎯⎯ パリでの生活が向いている人ってどんな人だと思いますか?

 適当なところがないとやっていけないと思う。思い通りにならないことを受け止められる感じの人が多い気がします。ゆるっとしてるけど、ちゃんとこだわりがある人というか。

仕事:人と出会って仕事が生まれる

⎯⎯ お仕事についても教えてください。パリでの仕事はどのようなきっかけから生まれていますか?

 偶然の出会いからが多いです。この職業の方はみなさんそうだと思いますが、仕事とプライベートの境目があまりはっきりしていないので、プライベートで素敵な人に出会ったら、「どういった媒体にならこの人を紹介できるか」と考えて自分から企画提案することもありますし、「こういう企画があるので、いい人を知りませんか」と媒体から声をかけてもらうこともあります。

冨田さんが担当した記事が載った「FIGARO」2026年5月号
冨田さんのインスタグラム(@tomiyuuu_)より

⎯⎯ 「人」とはどのように出会っていますか?

 お散歩中などに偶然見つけたお店に入ってみて店主の方のお話を聞いたり、ホームパーティの多い文化なので、そうした場所に足を運ぶと、素敵な人の周りには素敵な人が集まっているので自然と出会えたりします。パリはフランクに新しい出会いのある街だと思います。

 私はもともと人がたくさんいる場所があまり得意な方ではないんですが、パーティに行くとパーティが得意じゃなさそうな人や社交的じゃない人もいて、意外と気楽に参加できています。個性的な人たちともたくさん出会えるのが楽しいんです。


⎯⎯ 取材対象や媒体の幅も広いです。執筆に限らず、シトウレイさんのYouTubeのアシスタントもされているとか。

 フリーになることで専門性を高めていくライターさんが多い中で、ジャンルレスすぎることが一時期はコンプレックスでもあったのですが、私が一番興味があるのは「人」であり、その生き方やライフスタイルなので、どうしても幅が広くなってしまいます。飲食店の人にも話を聞きたいし、ファッション系の方にも興味があります。

 現在は8割がライティングや編集の仕事ですが、NHKでは映像を作ることもあったので、ライティングの取材に付随してYouTube撮影や写真の撮影を依頼いただくこともあります。媒体以外にも、アパレルブランドのルックのコンテンツを作る際に、テキストに加えて写真も担当したり。

シトウレイさんのYouTube撮影のオフショット

Image by: 冨田ユウリ

⎯⎯ 日本からの仕事と現地での仕事のバランスを教えてください。

 ワーホリ中から色々なお仕事をいただいていますが、日本のクライアントさんの、特に雑誌が多いです。いつかフランス語でも記事を書けたらと思いますが、取材はフランス語でなんとかできても、書くのは全然難しく勉強中です。でも徐々に、フランスでの仕事も本格的に増やしていきたいと思っています。

⎯⎯ ライター業は1本あたりの単価が動画などと比べて安価な中で、日本価格の案件が中心だと物価高や円安など環境も厳しいかと思いますが、実際のところはどうですか?

 すごくギリギリなサバイブをしている感覚はありますが、先が見えないのは日本にいても同じですしね。でももともとあまり仕事を選んでいないというか、縁があれば経験としてなんでもやっていきたいと考えているので、あまり悲観的には考えていません。自分で考えて日々生活していく力がつくし、もし本当に困ったら「その辺でバイトするのもいいな」くらいの感覚で生きています。

⎯⎯ フランスはカルチャー面でも日本と違う点が多そうですが、働き方や求められる仕事の違いはありますか?

 専門職へのリスペクトがとても高い国だと感じます。日本では指示されたことをする、という働き方が多いと思いますが、こちらにも意見を求められるし、意見を主張しやすい。取材の際にもリスペクトを持って接してくれる方が多いと感じますし、クライアントとのやりとりもフラットかなと思います。

⎯⎯ これから挑戦したいことは?

 まずは言語をもっと上達させたい。フランス語ってすごく美しい表現がたくさんあるので、そういう言葉で自分も何か書けるようになりたいです。

 「旅をする木」という本が好きで、旅も好きなので、フランスやヨーロッパに限らず、もっといろいろな場所を旅しながら、出会った素敵な人たちを紹介していけたら素敵だなと思っています。

photography: Yujiro Saito
title design: Chiaki Sato

◾️連載:パリで暮らす、パリで働く

◾️トップメゾンで働くデザイナーに聞く、パリでのキャリアの築き方

最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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