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ポール・スミス、旅先の記憶とテーラリングで作る「クラシックとウィットの共存」

2026年春夏コレクションをレポート

2026年春夏コレクション

Image by: Paul Smith

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ポール・スミス、旅先の記憶とテーラリングで作る「クラシックとウィットの共存」

2026年春夏コレクションをレポート

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 「ポール・スミス(Paul Smith)」の2026年春夏メンズコレクションは、「旅」を物語の軸に据えながらブランドの根源的アイデンティティである好奇心、ユーモア、そしてサヴィル・ロウ仕込みのテーラリングを鮮やかに示してみせた。ミラノ本社で披露された30ルックは、ポール自身が世界各地のマーケットや路地裏で掘り出したヴィンテージの布地、写真、オブジェを再構築し、“旅先の記憶のコラージュ”として仕立てあげたものだ。

 ミラノファッションウィークに初めて参加し、ショー形式で披露した2026年春夏メンズコレクションは、ライムグリーン、フューシャ、コーラルといったトロピカルで温かな色彩に、カイロのストリートフォトブックから着想した陽に焼けたアースカラーが交錯し、手染めのようなムラ感が布の奥行きを強調する。これらの彩色は、ポールが1970年代にノッティンガムで開いた初のショップで壁いっぱいに吊るした古着や雑貨の“ごった煮感”を思わせ、ブランドが一貫して大切にしてきた雑多な美意識「捨て置かれたものの中にこそ宝がある」という信条を今季の文脈でアップデートしている。

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Image by: Paul Smith

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 今シーズンの象徴的デザインは、手作業のコラージュを用いたプリントだ。シャツやアウター、ネクタイに大胆に施されたこれらのモチーフは、ポール自身が撮影した看板の欠片、舗道の割れ目、車窓からの景色など「見過ごされがちな瞬間」を切り取り、再編集したもの。シルクスクリーンで重ねられた層が視覚的な奥行きを生み、ひとつの服の上に複数の“旅の時間”が共存する。ダブルブレストジャケットに配された鳥のアップリケや、スエードパッチで象った植物のレザーブルゾンは、プリントの二次元性を超えたテクスチュアルな“飛び出すコラージュ”であり、触覚的な驚きを誘う。

Image by: Paul Smith

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 シルエットは1950年代のカウンターカルチャーに敬意を払い、ショート丈ジャケットとハイウエスト・フラットフロントのトラウザーズが基調。過去数シーズンで多用されたツータックを排し、よりクリーンかつリラックスした線を描くことで、旅の軽やかさを体現したという。裾をロールアップしたパンツの下から覗くのは、レーシングドライバーのシューズを思わせる流線型のフットウェア。レザー、メッシュ、スエードをパズルのように組み合わせた異素材づかいが、コラージュのテーマを足元まで響かせる。

 またスタイリングは折衷的だ。メキシコの市場で見つけた刺繍ブラウスの上にロンドンのテーラードジャケットを重ね、ベルリンの蚤の市で拾ったベルトで締める、そんな“旅人の重ね着”がショー全体に通底していた。サヴィル・ロウ仕込みの構築的ジャケットと、洗いざらしたコットンオープンカラーシャツの対比は、ポール・スミスが常に掲げる「クラシックとウィットの共存」を体現している。

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 ヴィンテージ風ホテルキーフォブはイタリア製アイウェアと同じアセテートで成形され、ネットバッグに無造作に入れられたレタスやオレンジは、ファーマーズマーケット帰りのスナップを想起させる。旅の生活感までをスタイリングの一部に昇華した。

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 若き日にロードバイク事故でプロサイクリストの夢を断たれ、「旅に出る代わりに店を開いた」というポールの原点。その好奇心と外界への憧憬は、2026年春夏コレクションでも体現された。旅の記憶をまとうことで日常を小さな冒険へと変える、軽やかでウィットに富んだサマーワードローブは、さながらポール・スミスからの“旅への招待状”のようだ。

Paul Smith 2026年春夏

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Paul Smith 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日:

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