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グッチを虜にするイタリアのZ世代バンド「マネスキン」とは?【連載:服好き必聴アーティスト】

 機材や環境の発達により、1日で数百~数千曲がリリースされる昨今の音楽産業。歓迎すべきことではあるものの、その膨大すぎる量がゆえ自ら触手を伸ばすことを躊躇い、真に評価を受けるべきアーティストとの邂逅が消失し、気付けば過去のお気に入りばかりをリピート再生している......という状況に心当たりがある方に向け、月に1回"ファッションシーンとの親和性も高い"アップカミングなアーティストを紹介する連載【服好き必聴アーティスト】。(文:Internet BoyFriends)

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 早耳な音楽フリークの方々にとっては既に知られた存在が登場するだろうが、復習も兼ねてファッション的新情報を得られるという心持ちで読み進めていただければ幸いだ。第4回は、衰退するバンドサウンドの中で久々のロックスターとして注目を集めるイタリア出身の4人組Z世代バンドで、「サマーソニック 2022(SUMMER SONIC 2022)」への出演も決まっているマネスキン(Måneskin)をお届け。

全員がローマ出身の平均年齢22歳

 デンマーク語で"月光"を意味するマネスキンは、ボーカルのダミアーノ・ディヴィッド(Damiano David)、ギターのトーマス・ラッジ(Thomas Raggi)、ドラムのイーサン・トルキオ(Ethan Torchio)、そして紅一点でベースのヴィクトリア・デ・アンジェリス(Victoria De Angelis)から成るベーシックな4人編成のバンドだ。全員がローマ出身で、平均年齢は22歳。ボーカルのダミアーノ以外の3人が小学校時代からの知り合いで、彼らが高校生だった2015年にバンドを結成し、のちに初代ボーカルと入れ替わる形でダミアーノが加入し現在の形となった。結成当初は、ローマ市内でストリートライブを行うことでパフォーマンスの腕を磨き、来るメジャーデビューに備えていたという。

デビューから数年でイタリアを代表するバンドとしての地位を確立

Image by Sony Music
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 マネスキンは、結成から2年後の2017年に出演したイタリア版オーディション番組「Xファクター」を機にブレイクしたのだが、彼らの奏でる音楽はロックやファンク、ヒップホップ、レゲトンなど、一言で言い表せないほど多ジャンルのエッセンスを広く感じることができる。これはストリーミングサービス時代のど真ん中に生きるZ世代ならではの事象だろうが、その最たる例が同年12月にリリースしたデビューEP「Chosen」だ。同作では、オリジナル楽曲とあわせてザ・キラーズ(The Killers)の「Somebody Told Me」、ブラック・アイド・ピーズ(The Black Eyed Peas)の「Let's Get It Started」、エド・シーラン(Ed Sheeran)の「You Need Me, I Don't Need You」などのカバー曲が収録されており、これだけで彼らの音楽的土壌の豊かさが分かるはずだ。ちなみに、影響を受けたアーティストにはレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)、ブラック・サバス(Black Sabbath)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)、アークティック・モンキーズ(Arctic Monkeys)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)、ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)、ハリー・スタイルズ(Harry Styles)らを挙げている。

 「Chosen」で早々にファンを獲得したマネスキンは、2018年10月に満を持して1stアルバム「Il Ballo della Vita」をリリース。すると、その風格ある音楽性と個性を爆発させたヴィジュアル、圧倒的なパフォーマンス力からたちまちイタリア国内の人々を魅了し、アルバムチャートで初登場1位を獲得するだけに留まらず、トータル再生数は1億7000万回を記録した。さらに、ヨーロッパツアーが全80公演で計14万人以上を動員するなど、わずか1作で国内外にその存在を知らしめたのだ。

 この勢いは新型コロナウイルスのパンデミックすらもろともせず、2021年3月にリリースした2ndアルバム「Teatro D'ira: Vol.I」も前作に続き見事初登場1位を獲得した。すると、イタリアで最も権威のある音楽祭「サンレモ音楽祭(Festival della canzone italiana)」と、ヨーロッパ最大の音楽の祭典「ユーロヴィジョン・ソング・コンテンスト 2021(Eurovision Song Contest 2021)」で2冠を達成(イタリアのアーティストが優勝するのは31年ぶり)。その後も快進撃は続き、「Chosen」に収録されている「Beggin'」がTikTokで大ヒットしただけでなく、ローリング・ストーンズ(THE ROLLING STONES)の前座に抜擢され、イギー・ポップ(Iggy Pop)とも共演。また、グラミー賞でプレゼンターを担当、音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル(Coachella Festival)」に初出演、映画「エルヴィス」でサウンドトラックとして楽曲を提供など、この1年の間に自宅で寝たのが10日と言うほど多忙すぎる日々を過ごしている。そして先日、デビュー前にストリートライブを行っていた場所からほど近いローマ帝国時代の競技場チルコ・マッシモにて、7万人の観衆を集めた単独公演を見事成功させ、名実共にイタリアを代表するバンドとしての地位を確立したのである。

「グッチ」や「エトロ」など同郷イタリアのブランドに愛されるアイコンに

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 冒頭で彼らが首都ローマ出身であることをお伝えしたが、ご存知の通りローマはミラノと並ぶファッションの中心地。そんな街が地元ということもあり、彼らは活動初期からファッションおよびヴィジュアルをバンドにおける重要なブランディングの1つだと考え、シックなスーツやアヴァンギャルドなコスチュームを纏っていた。すると、思惑通りファッションシーンからのアプローチが早い段階で殺到。そのうちの1つが、同じくイタリアを拠点とする「エトロ(ETRO)」だった。「エトロ」は、2ndアルバム「Teatro D'ira: Vol.I」のアートワークに衣装を提供するだけでなく、「サンレモ音楽祭」や「ユーロヴィジョン・ソング・コンテンスト 2021」といった晴れ舞台のために特注衣装を制作するなど、ファッションの側面から彼らをサポート。世界に羽ばたくマネスキンのヴィジュアルイメージを作り上げることに一役買っていた。

 また最近では、「グッチ(GUCCI)」がマネスキンに首ったけ。コレクションのフロントローに招待したり、主催するオンラインライブに招聘したほか、創業100周年を記念する特別キャンペーンに起用し、「コーチェラ・フェスティバル」やヨーロッパ最大級の音楽授賞式である「2021 MTVヨーロッパ・ミュージック・アワード(2021 MTV Europe Music Awards)」、「第75回カンヌ国際映画祭(75th Cannes Film Festival)」などのために特注衣装を仕立てたりと、積極的にフックアップ。マネスキンもアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)の独創的な世界観に惚れ込んでいるようで、6月に公開されたばかりの「SUPERMODEL」のMVではメンバー全員が「グッチ」の衣装に身を包むなど、相思相愛の非常に良好な関係を築いている。

 豊かな音楽性、圧倒的なパフォーマンス力、唯一無二のヴィジュアルという、ロックスターを形作る3本の柱をしっかりと据えたマネスキンは、今後、音楽とファッションの両シーンでキーアイコンとして存在感をさらに強めていくに違いない。「サマーソニック 2022」の出演とあわせて、8月18日には初の来日公演が豊洲PITで行われるので、今回を機に気になった方は足を運んでみてはいかがだろうか。

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クリエイティブコレクティブ

東京とロンドンを拠点に活動するエディターやライター、スタイリスト、フォトグラファー、グラフィックデザイナーが所属。

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