武笠綾子
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Image by: FASHIONSNAP

Fashionインタビュー・対談

【インタビュー】「ステア」がブランド終了、武笠綾子が語るデビューからの5年間とこれから

武笠綾子 Image by FASHIONSNAP
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 武笠綾子手掛ける「ステア(STAIR)」が、2021年春夏コレクションをもってブランド活動に終止符を打った。海外進出を見据えてパリで展示会を開催するなど、ブランド規模を順調に拡大させてきたステア。デビューから10シーズン目を迎えたこのタイミングで、なぜブランドを終了したのか。ステアでの5年間を振り返ってもらいながら、今後の展望について聞いた。

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デビューから5年、ステアを終了した理由とは

ー5年続けてきたブランドを終了。まずは今の率直な感想を教えてください。

 ブランドを立ち上げて5年、たくさんの方に支えられて少しずつですが成長することができました。感謝の気持ちでいっぱいです。

ーなぜブランド終了を決めたのですか?

 新型コロナウイルスの影響で、これまでに経験したことのない状況下になりましたが、自分と向き合える貴重な時間ができ、その時初めてもっと深く自分自身を知りたくなりました。どうしてデザイナーになりたかったのか、何を表現してどう伝えていきたいのか、着る人にとってどういう存在でいたいのか、といったことについて自分と向き合って考えました。私にとってステアはとても愛情があり大切な存在です。ですが、一度頭の中にある固定観念のようなものを取り払って、本当に心からやりたいと思えることに挑戦したいと考え、ブランドを終了することにしました。

ーブランドは休止ではなく終了ですか?

 終了になります。ステアとしての活動はここで終えて、2022年春夏シーズンに新ブランドを立ち上げようと考えています。

ステア2021年春夏コレクション Image by ステア
ステア2021年春夏コレクション Image by ステア

ー約40の卸先がありましたが、ブランド終了についてバイヤーたちの反応はどうでしたか?

 皆様には展示会のタイミングでお伝えさせていただきました。びっくりされている方が多かったですが、「楽しみです」と言ってくださる方も多く、とても励みになりました。右も左もわからない状態からブランドを始めたので、顧客様や卸先様、取引先、セールス、PR、スタッフと周りの方の支えがあってここまでどうにかやってこれたと思っていて。例えばミッドウェスト(MIDWEST)さんはブランド立ち上げ時の展示会から興味を示してくださり、デビューコレクションの時からお取引いただいて。店頭に立つお店の方もお客様にブランドの魅力を伝えてくださっていたので、感謝の気持ちでいっぱいです。全ての卸先様、顧客様に感謝しています。

ーステアでの一番の思い出は?

 街で素敵に着用してくださっている方を見た時。心から幸せだと思えた瞬間です。

 あとは初めてのショーですね。自分がデザイナーに憧れた最初のきっかけが幼少期に観たファッションショーの映像で、そこからずっとデザイナーになると思って生きてきました。2018年3月に行ったショーは目標が形になった瞬間だったんです。

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最後のシーズンとなった2021年春夏コレクションは何からインスピレーションを得ましたか?

 自粛期間中、子どもと散歩した時に見つけた花びらです。その時期はどこへも行けず会いたい人たちにも会えずで、皆様そうだと思いますがとても辛かった。唯一子どもと散歩する時間だけが外に出る時間でしたが、今まで当たり前だと思っていたものがとても愛おしく、美しく見えました。新緑の香りと、野花の美しい色と、どんなことがあっても自然は変わらずそこにあって。そんな時1枚のチューリップの花びらを見つけました。雨に打たれ、花脈だけが透明な筋になっていた花びらにはとても力強い生命力を感じたんです。

 その花びらをインスピレーション源に、アルコールインクを滲ませて時間が経つにつれて色と質感が変わっていく手法のアートを描き、テキスタイルに落とし込みました。

Image by 武笠綾子
Image by 武笠綾子

ー写真をプリントしたアイテムもありますね。

 家の近所を散歩していた時に、私が撮ったものです。四季の移り変わりに惹かれ儚い美しさを感じるのですが、特に大好きな5月の風の匂い、緑の音とこんな状況でも明るく照らしてくれている太陽に映し出され写った影の濃淡がすごく印象的で、とても惹かれました。会えない大切な人たちを思い、色々な感情を感じ、ふとシャッターを切りました。ここ数年は感情的なものがインスピレーションになっていたような気がします。

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STAIR 2021年春夏コレクション

新ブランド始動、追求するのは「自分らしさ」

ー新ブランドは2022年春夏シーズンから立ち上げる予定とのことですが、ブランド名やコンセプトは具体的に決まっているんですか?

 まだ具体的には決めていませんが、自分の内面を心のままに表現していきたいです。父親が経営していた写真スタジオの名前を引き継いで、新会社スタジオムカサを設立したので、そこで新しいことをやっていこうと思っています。

ーステアでやっていたことをベースに自身のやりたいことを突き詰めていく?

 そうですね。最近は絵を描いてそれを生地に落とし込んだりしているのですがすごく楽しくて。それこそ2021年春夏コレクションでは、自分で描いた絵をテキスタイルに落とし込んだり。あとは素材についてもっと研究していきたいと考えています。

 特にテキスタイルは自分にしかできない表現ができるので、もっと深く追求していきたい。産地に足を運び、知識を深め、それぞれの産地を生かした素材を作ることに挑戦していきたいと思っています。

他に取り組んでみたいことはありますか?

 ステアの最後のコレクションで「エナソルーナ(Enasoluna)」とのコラボジュエリーを製作したことをきっかけに興味が湧きまして、この間彫金教室に行ってきたんです(笑)。元々自分の手で作ることが好きだったので、この準備期間を有効活用して裾野を広げていければと考えています。

エナソルーナ ステア

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ーでは新ブランドではアクセサリーの展開も?

 主軸は服ですが、ファッションの枠にとらわれずそれ以外にも挑戦してみたいことは色々あります。ジュエリーもそうですが、バッグやランジェリーなどもやっていきたい。カテゴリーごとにライン名を変えたり、もっと言えばデザイナー名を非公開で好きなことやってもいいのかなとも思ったりしています。あとはパーソナルに作ることもやってみたいですね。

ーパーソナルというのは?

 "その人のためだけの"という事が何かできないかなと考えています。ブランドとして受けたわけではないですが、ウェディングドレスを作ったことがあるんです。今もちょうど友人のウェディングドレスを作っていて。カウンセリングをしてデザインに起こし、その人のその時の身体に合わせる。世界でたった一つしかないって素敵ですよね。今後はこうしたパーソナルな活動も続けていきたいと考えています。

武笠がデザインしたウェディングドレス
武笠がデザインしたウェディングドレス

ー最後に、今後の目標について教えてください。

 女の人って、服で気分が変わるじゃないですか。私の服を着ることで、その人の高揚感というか、少しでも気分をあげることが自分の役目なんじゃないかと思っていて。ステアの時も思っていたことですが、その部分はこれからもブレずにやっていきたいですね。また、今後も周りにある物に深く感謝し、誠実に物作りをしていきたいです。それが誰かの元に届き、少しの幸せを与えることができたらと思っています。

 ステアを応援してくださった全ての方々に深く、感謝申し上げます。また改めてぜひご報告させてください。本当にありがとうございました。

(聞き手:山本亜樹)

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