ADVERTISING

「無駄なディテールは要らない」 ステート オブ エスケープのミニマルなものづくり

橋本知佳子

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

 機能性とスタイルを兼ね備えたトートバッグを起点に、日本をはじめアジア、スカンジナビア、中東など世界各地で支持を集める「ステート オブ エスケープ(STATE OF ESCAPE)」。6月には世界初の直営店を日比谷に出店。オープンを機に来日したデザイナーのブリジット・マガウアン(Brigitte MacGowan)とCEOのデズリー・メイドメント(Desley Maidment)の2人に、ミニマルでサステナブルなデザイン哲学と日本市場への考えを訊ねた。

ADVERTISING

(左から)デズリー・メイドメント、ブリジット・マガウアン

全ての要素に理由がある 洗練性と機能の両立

 ステート オブ エスケープは、「ユニークかつエッジィで美しいキャリーオールを作る」をコンセプトに掲げる。冒険心を持つ自由な女性たちのための、快適な移動を叶える軽量性や耐久性を重視したトートバッグを代名詞に、オーストラリアをはじめ、アジア、スカンジナビア、南米、中東など幅広い地域へと卸を拡大させている。

 デザインにおいて重視する点は3つ。1つ目はマーケットにまだ存在しない、自分の見たことのないユニークなものを作ること。2つ目は、デザイナー自身が持ちたいと思えるデザインであること。そして3つ目はシンプルであること。「無駄な装飾や余分なディテールは一切つけません。バッグに存在する全ての要素には、必ず理由があります」とブリジット。「機能性と洗練性を兼ね備えた製品は、ブランド創業当時のマーケットにはほとんど存在せず、そうしたニーズを持つ客層に広く受け入れられたことで広がった」と振り返る。流行に左右されないシンプルなデザインも、長く飽きられずに親しまれる理由になっているという。


新作バッグは“廃棄ゼロ”構造 シンプルを追求するサステナビリティ

 人件費の高さなどの理由から、オーストラリアで製造を行うブランドは少ないが、ステート オブ エスケープは創業から13年経った今もすべての生産をオーストラリアで行い、現地の雇用創出に寄与し続けている。製造拠点はシドニーのキャッスルヒルとメルボルンのサンシャインの2拠点。いずれもオーストラリア国内での倫理的な製造を保証する「Ethical Clothing Australia*」の認証を取得しており、拠点をオーストラリアで完結し運搬を減らすことで、二酸化炭素排出量削減にもつなげている。スタッフや職人は計35人程度。一つ一つのパターンを手作業でカットすることで裁断効率を最大化し、無駄を抑えているのも特長だ。ブリジットは最低でも週に1度は工場に足を運び、品質を確認しているという。

 サステナブルなサプライチェーン構築にも注力しており、付属品やブランドタグのほどんどにリサイクル可能なFSC*やOEKO-TEX*の認証を受けた素材を採用。製品の一次(商品パッケージなど)および二次梱包(輸送用梱包材など)からヴァージンプラスチックをすべて排除し、ECでの出荷時には堆肥化可能な発送用袋を使用している。製品にはサステナブル素材を用い、デザインの時点でバッグを構成するパーツ数を最低限に抑えることで原料を削減。構成要素の少なさはバッグを軽量化することにもつながっている。2024年2月には社会・環境に配慮した公益性の高い企業に対するグローバル認証制度「Bコープ(B Corp)」を取得した。

*Ethical Clothing Australia:オーストラリアの繊維・被服・靴(TCF)産業において、労働者の権利が守られ、公正な賃金が支払われていることを保証・認定する第三者機関。
*FSC認証:適切に管理された持続可能な森林からの木材や製品であることを証明する国際的な森林認証制度。
*OEKO-TEX(エコテックス):1000種類以上の有害化学物質を対象とする厳しい分析試験をクリアした製品に与えられる、世界最高水準の繊維・皮革製品の安全性を示す認証。

ブランドのシグネチャーであり最初に登場したモデル「エスケープ」は、ロープの接合部分に熱収縮性のチューブを使用。底面にまでチューブを通すことで、中敷を用いずに自立する安定感を実現した。

Image by: STATE OF ESCAPE

2023年に登場した「ソルスティス」には、リサイクルポリエステル100%素材を使用している。

Image by: STATE OF ESCAPE

 近年は自社でのオリジナルの素材開発にも積極的に取り組んでいる。最新の「メリディアン」シリーズには、リサイクルポリエステル繊維「リプリーブ」に加え、エラスタンとナイロンをブレンドしたブランドオリジナルの素材を採用。生地をパターンの形に合わせて製造することで、パターンをカットする際の余剰を一切出さない「廃棄ゼロ」の構造を実現した。これまでに発表した他のコレクションではカットした生地の端を熱処理で始末していたが、メリディアンでは端処理の工程も不要になった。要素を削ぎ落としたミニマルなデザインの追求が、サステナブルなものづくりを体現している。

「メリディアン」トートは、ショルダーストラップとハンドルの2本がついたダブルハンドル仕様。ロープを通す部分は生地製造時に袋状に織り上げることで一枚仕立てを実現している。(写真はメリディアンの日比谷店限定カラー)

新フェーズを象徴する日比谷店 メンズコレクションにも注力

 売り上げの規模が特に大きいのは日本とスカンジナビア地域。中でも日本はグローバルビジネスにおける最も重要な市場の一つだという。ミニマルなデザインや細部へのこだわりに共感されやすいというマーケットの特徴に加えて、ディストリビューターを介した商品ラインナップのローカライズが成功を後押ししている。なお、国内では2015年秋冬シーズンからサザビーリーグが運営する「ロンハーマン(Ron Herman)」がエクスクルーシブで買い付けを開始し、2017年にサザビーリーグが日本国内における総代理店契約を締結。現在は同社傘下のリトルリーグカンパニーを介して展開している。国内のリテール売り上げは2015年度比で2倍に成長。日本公式オンラインストアの運営を通じて顧客基盤を構築できたことや、正規代理店を通して日本市場でブランドのポジションを確立できたことが要因だという。

 日本は、大きなトートバッグだけでなく小さなサイズのバッグへの需要が他地域と比べて高いことが特徴で、日本での人気商品であるミニバッグ「プティ エスケープ」は日本向けに開発したもの。一時期はグローバルでも販売を行ったが、現在は日本限定アイテムとして位置付けている。このほか、日本では「ロンハーマン(Ron Herman)」をはじめ、「ヘラルボニー(HERALBONY)」などの世界中のアーティストなどとのコラボレーションも積極的に行い、日本のマーケットとの関係性構築を図っている。

ブランドのシグネチャーであるエスケープバッグのミニサイズ「プティ エスケープ」。

Image by: STATE OF ESCAPE

 世界初の直営店を本国のオーストラリアではなく日本に出店した理由については、「ファッション感度の高い女性たちが世界中から集まる東京には、日本のお客さまだけでなく、グローバルのお客さまとより深い接点を持つ機会があると感じました」と説明。コレクションをフルラインナップし、ブランドの世界観を表現する空間を作ることは、ブランドの成長を加速させるための“正しいステップ”だとデズリーは話す。

 2026年度の国内のリテール売り上げは昨対比2桁増を目標に掲げる。日比谷店のオープンをきっかけにリテールをさらに強化し顧客接点を増やすほか、ポップアップの回数も例年以上に増やすことでブランドの認知拡大・成長を目指す。また、メンズ市場にも注目している。現状の男性客の割合は全体の1〜2%にとどまるが、男性客からの関心の高まりを受け、メンズコレクションの取り扱いを日本で先行してスタートした。今後は引き続きブランドが得意とする「トートバッグ」を起点にしつつ、日比谷店を発信拠点としてグローバルの幅広い客層への提案を加速させていく。

◾️世界初の直営店の注目ポイント💡

 日比谷店は、通勤や通学、旅行など、移動する人々の日常に根ざしたブランドとして、“屋外の空気”を取り入れた空間を目指した。内装には石や木などの天然素材を使用し、壁面や什器にはバッグのカラーを引き立てるニュートラルカラーを採用。天井のライトや壁面など曲線的な要素も取り入れることで、落ち着きと温かみのある空間に仕上げた。

店舗中央にオーストラリア原産の「フィカス(ゴム)」の木を設置


ブリジット&デズリーの友人でオーストラリアを拠点とするアーティストの作品

最終更新日:

文・橋本知佳子

Chikako Hashimoto

FASHIONSNAP 編集記者

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、武蔵野美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント