トム ブラウン 2024年秋冬オートクチュールコレクション
Image by: Thom Browne
「トム ブラウン(THOM BROWNE)」がブランド設立20周年を記念して、パリ・オートクチュールウィークに初参加した。オペラ座のステージ上に招待客の椅子を並べ、本来の観客席には2000もの人形を設置。天井には大きな鐘が吊り下げられ、マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」が会場に鳴り響いた。
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トップモデルが演じる一人のトラベラー
これまでも「シンデレラ」や「星の王子さま」をテーマにショーを開催してきたトム ブラウンだが、今回描かれたのは一人のトラベラーを軸にしたストーリー。アレック・ウェック(Alek Wek)演じる主人公が駅に佇み、スーツケースを椅子代わりにして座っていると、そこにジョーダン・ロス(Jordan Roth)が演じる鳩をはじめとする様々なキャラクターが現れる。最後には列車が到着するという意味深なストーリー仕立てになっていた。
鳩のキャラクターや鐘のようなハット
今回、物語の中で大きな存在感を放っていたのは鳩。グレーで統一された色合いや、大きく膨らんだ袖、つま先立ちで歩くブローグプラットフォームシューズも鳩を連想させる。そしてモデルたちが目深にかぶるクロシェハットは、まるで鐘そのもの。また、靴の踵に取り付けられた小さなベルも、モデルたちの歩みに合わせて揺れていた。
さらにヒトデやクジラといった生き物のほか、灯台やアンカー、帆船といった海にまつわるモチーフが繰り返し登場し、駅の日常風景からファンタジーの世界へと広がりを見せる。モデルたちの頭からズレるような形で固定されたシルバーのウィッグはスティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)によるもの。カラースプレーで彩られたようなメイクとも相まって、非現実的なキャラクターを演出していた。
Image by: Thom Browne
到着した列車を見送るトラベラー
ほぼすべてのルックがグレーで彩られていたが、ラストには怪物ガーゴイルや列車、海のモチーフをまとった車掌が白の装いで登場。そして長いトレーンのシアードレスをまとった花嫁が列車のクラッチを片手に現れると、トラベラーが大きく手を振ってそれを見送るというフィナーレに。
ゲストの座席には「手の中の鳥…」という、イギリスの諺を綴った小さな巻物が置かれていた。このフレーズの全文は「A bird in the hand is worth two in the bush.(手の中にある1羽の鳥は、繁みの中の2羽の価値がある)」、つまり「今、手の中にある物の価値を考えよ」という意味を持つ。主人公のトラベラーは、列車でどこかに行くことよりも価値のある何かを見出して、あえて列車を見送ったのかもしれない。そんな含みを持たせたエンディングとなった。
トム ブラウンのシグネチャーを活かして
スカートスーツや4本線のストライプ、ダックスフンドのキャリーバッグといったブランドのシグネチャーを随所に取り入れつつも、プレッピーなアメリカンスポーツウェアの要素をクチュールへと昇華した今回のコレクション。あらためてトム ブラウンの巧みなテーラリングとユニークな世界観を印象づけた。
カーディ・Bやaespaのカリナも来場
会場にはカーディ・B(Cardi B)やエスパ(aespa)のカリナ(Karina)、ダイアン・キートン(Diane Keaton)もブランドのルックに身を包んで来場し、ドラマチックなショーを堪能した。
カリナ
Image by: Thom Browne
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