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アーバンリサーチが「第2の創業」 竹村圭祐新社長に聞くセレクトショップの今

スーツを着た男性

竹村圭祐新社長

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アーバンリサーチが「第2の創業」 竹村圭祐新社長に聞くセレクトショップの今

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 アーバンリサーチが創業2代目の竹村圭祐社長による新体制のもと、新たなスタートを切った創業者である幸造会長の背中を見ながら育った圭祐社長は「第2の創業」の節目にトップに立った今、何を思い、激変するセレクトショップ業界で何を目指していくのか。

■竹村圭祐
1974年生まれ。創業者 竹村幸造氏の長男。1998年にアーバンリサーチに入社し、1号店での販売スタッフを経て、京都店、堀江店、関東初出店時の店長を務めた。その後、ECサイトや顧客サービスの立ち上げ運営を担当したほか、2004年に総務部長に就任し、事業支援本部長と専務、取締役副社長を歴任。2023年4月から現職。

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「第2の創業」 父である前社長に託されたこと

―社長就任にあたり、率直な気持ちを教えてください。

 社長交代は急に決まったことではなくて、会長と密に相談をさせてもらいながらいろいろと任せてもらっていたんですよ。どこかのタイミングで交代しようという話は前からあったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大が突然始まってしまったこともあって。

―コロナがなければ、早い段階での社長交代が予定されていた?

 具体的な時期は決まっていませんでした。コロナがなかったら、もしかしたら逆に今も変わってなかったかもしれないですし。

―このタイミングで決まった経緯は?

 市況も回復し、会社もコロナの打撃からちゃんと抜け出せたので、この切りの良いタイミングで「第2の創業」としてやっていこうという話をずっとしていて。それが今のタイミングだったんだと思います。

―来年で創業50周年を迎えます。

 正直なところ、そういった節目はあまり意識していなかったですね(笑)。 「URBAN RESEARCH」の名前で店舗展開を始める前から会社自体は存在しているので。祖業のジーンズカジュアルショップが誕生した1974年は僕が生まれた年でもあるので、僕自身は50周年であることは認識していますが、社員の皆はショップの「URBAN RESEARCH」1号店を軸に捉えている人がほとんどだと思います。

―社長就任にあたり、幸造会長からどういったことを託されていますか?

 会長も引き続き代表権を保有するので、しばらくは二人三脚で経営していきますが、やはり「会社が続いていくこと」が大切な使命だということですね。会長自身がずっと言っている「伝統は革新の連続」という言葉があるんですけど、何百年も続いているような伝統的な会社も同じことをやり続けているわけではなく、その節々で革新的なことに取り組んだからこそ何百年も続いているんだと。つまり、社長という仕事は次の成長のためのエンジンを常に探して、見つけて、実装していく仕事なのだと教わりました。会長自身も、僕の代になって今と違うことやっている会社になってもそれでいい、という考えを持っているようです。

―長年、会長の背中を見てこられたと思います。特に感銘を受けたことは?

 やっぱりエネルギーが大きいですよね。タイミングごとで、チャレンジするところでは大きくチャレンジする。そこがすごいところだなと改めて思います。創業者でもあるので、イメージも話し方もワンマン風な感じではあるんですけど(笑)、人の話もよく聞いてくれてるという印象も同時にありまして。インターネットのような当時では新しい技術も、わからないなりにもすごく関心を持って、何とか理解しようとしてくれていましたから。「知らんからやっておいてくれ」と放置しないところは尊敬しています。

―そんな会長の後を継ぐのはやはりプレッシャーに感じていますか?

 そうなんですけど、プレッシャーだなと一番感じたのはどちらかというと20代の頃で、今は逆にもう麻痺している気がします(笑)。自分なりにうまくできたらいい、と考えられるようになりました。

―20代の頃のプレッシャーとは具体的に?

 会長の息子というのは周囲も認識した中で入社したので、社内の大半の人は先輩ですし、自分の意見が正しいのか、何が正解なのか、どう伝えたらいいのか......そういったことがわからない時期がありました。でも結局、考えても答えはない問題だと気付いてからは、考えることをやめましたね。

―会長には負けない、ご自身の持つ強みについてはどのように捉えていますか?

 良くも悪くも、好奇心の強さは会長以上かなと。例えば、ECは業界の中でも比較的早い段階で着手できていたと思います。幼い頃から「ファミコンよりもパソコンを買って欲しい」と言うような子どもだったこともあり、デジタルには慣れていましたから。僕が社長になることで、会社にとっての新しいチャレンジに向かう流れを作っていけたらと考えています。

“脱トップダウン”で変化した「従業員の経営者視点」

―喫緊の経営課題は?

 コロナが落ち着いてきて、やはり店舗のあり方について見直す必要があると感じています。「ネットで買う」ということが定着している中、リアルだからこそ何を提案していけるのか。スタッフや商品の魅力も含めて、「売り場」としての機能だけではない店舗のあり方を模索していきたいですし、スタッフのやる気があれば販売だけではないことにもチャレンジしていけるような体制を作っていきたいというのが第一としてあります。

―コロナ禍では事業の見直しも迫られたと思います。

 やはり会社の収益性を第一に、ある程度採算が悪い部分の見直しは行いましたし、その代わりに自社ECを強くするなどでバランスをとっていきましたね。もう一つは、社員のスタッフがそれぞれ所属する部門の情報をしっかり把握できるように教育しました。これまでは決裁などの判断も会長に頼る部分が多かったのですが、今は部門ごとに裁量権を割り振って、それぞれが経営の視点を持って判断できるように体制を変えました。まだ道半ばだとは思いますが、スタッフの皆も「みんなで会社を動かしていこう」と、意識にも変化が起こって、ポジティブなムードになっているんじゃないかなと感じています。

―業績としても、2023年1月期は売上高520億円、利益としては直近10年で最も高い水準まで回復されたそうですね。

 コストの見直しもありましたが、生産管理で無駄なところを省いて消化率を上げたり、自社ECでも販促や広告を効果的に使っていけたので、そこが奏功したと思っています。

―好調な事業は?

 アーバンリサーチもですが、最近は「アーバンリサーチ ドアーズ(URBAN RESEARCH DOORS)」が順調です。僕たちはショッピングセンターにも多数出店していますが、若いファミリー層に訴求できているのがアーバンリサーチ ドアーズですね。ショッピングセンターでは客足が回復していますし、中国人観光客なしでもインバウンド売上がだいぶ戻ってきています。

男女2人のルック

アーバンリサーチ ドアーズ

Image by: アーバンリサーチ

 一方で、バイヤーが商品をセレクトする「ユーアールビーエス(URBS)」という、ファッション感度にこだわったラインにも力を入れています。全体のパイと比べると決して大きい規模ではないんですが、服に興味を持っているお客様にもしっかり届く提案ができている手応えを感じています。

※URBS:アーバンリサーチのバイヤーが厳選した「逸品の一品」を提案する、セレクトショップの原点回帰的なコンセプトを掲げたライン。

「URBS」メンズ

Image by: アーバンリサーチ

―課題感が残っている事業は?

 特定の事業というわけではなく、やはり各ブランドで守りに入ってしまっているところがあると思っていて。以前ならチャレンジしていたことを今はやらずに保守的になってしまっていたりとか。あとはコロナを経てお客様の考え方や価値観が変わってきているので、それぞれのブランドがどこを目指していくのかを見直しているところですね。

―リブランディングのような、大きく刷新する計画はありますか?

 そういったことは予定していません。あくまでも各ブランドの適正規模を改めて確認し、必要に応じて店舗数を絞り込む。その代わりに新しいことに取り組む、といった動きを今進めています。

―ブランドが乱立している今、独自性が求められているようにも感じています。

 そうですね。やはり店舗からスタートすると“店舗の雰囲気でなんとなく売ってしまう”ところが大いにあると感じています。一方で、ECで売る場合は商品そのものの価値で勝負しなくてはならない。今後のことを考えた時に、やはりECが重要なので、EC上でどこまで商品の価値を伝えていけるかが鍵になると考えています。これは一気に変えられるものではないので、少しずつ着手しているところです。

―店頭とECの売れ筋は異なるという話も耳にします。

 そういった傾向もありますが、我々の場合はECでチェックされてからお店に来られるお客様がほとんどです。ですから、「お客さんに買っていただく」という観点だけで言えば、ECとリアルを分けて考える必要はないのかなと。EC・店舗を含めて、大きい意味での「接客のあり方」を整えていく必要があると思っています。

―EC化率は?

 40%程度です。

―他社と比較して高い水準です。この数字をどのように捉えていますか?

 社内でもEC化率の適正について議論がよく起こりますが、僕自身は何が適正かというのはないのではないかと思っていて。リアルとECで五分五分でもいいとも考えています。

―リアルの消費が復活していますが、EC売上は今後も伸びていく?

 そうですね。ポテンシャルはあるのかなと思っています。ECに関しては物販だけではない、お客様との接点を作れることがあると思っているので、そこをしっかり見つけていろいろ仕掛けていきたいですね。

―ECに送客するためのショールーミング店舗にチャレンジする企業も少しずつ増えています。

 社内でも事あるごとに何かチャレンジしてみようという話はあがるんですが、ショールーミングである必然性がまだ弱いなと。例えばスーツやジャケットといったカスタマイズ前提で在庫がない形態なら活きてくるんでしょうけど、僕自身が商品をすぐ持って帰りたいタイプなので、今の段階では特に検討していません。

ファミリーマートとのコラボ業態についての進捗はいかがでしょうか。

 ちょうどコロナ前にオープンしたこともあり、なかなか思うように進まなかった面があるんですが、だんだん市況が回復するにつれて客足も増えてきている状況です。まだ試行錯誤の段階ですが、販売チャネルの新しいあり方や組み合わせを模索できたという意味では有望だなと思っているので、事業にしっかりつなげていきたい。今はそういう過程にあります。僕たちとしては、今後出店できる余地があれば展開していきたいですね。

―今後の出店計画について教えてください。

 新規出店も計画していますが、コロナ以前のように年間で何店舗出店、といったことは今考えていません。どちらかと言えばスクラップ&ビルドしながら各店舗を強化していく方針ですね。例えば様々なブランドをミックスさせて展開している店舗はコロナ禍でも回復率が高かったので、それをバージョンアップさせていったり、違う切り口の提案を強化するなどで、新しい展開ができたらと思っています。

―今年度(2024年1月期)の重点戦略は?

 商品力の強化と、デベロッパーに頼らない店舗単独の集客力をつけていきたいですね。商品力に関しては、今は価格よりも商品そのものの“面白さ”が問われていると思うので、そこをしっかり伸ばして支持につなげたいです。

セレクトショップは「個」のプラットフォームに

―今の時代の「セレクトショップのあり方」についてはどのように考えていますか?

 「セレクトショップはこの先どうなるのか」と5年以上も言われていますが、コロナで市場環境の厳しさはさらに加速したと感じています。そもそも、セレクトショップも「セレクトショップ」としての考え方で今も経営しているのかもわかりませんから。

 僕らも便宜上セレクトショップと謳っていますが、「セレクトショップだから」という考えは持っていません。個人で発信したり編集する力がどんどん広まっている中で、セレクトショップはそのプラットフォーム的な役割になっていくのではないかと思っていますし、僕自身はそういった側面を強くしていきたいと考えていますよ。

―従業員の力が重要になりそうですが、ファッション業界を目指す若者が減っています。

 服屋の一番面白いところは、売り場にあると思うんですよね。何をどう並べて、お客様にどう売っていくのか。僕も時々ですけどポップアップショップに手伝いに行ったりしますが、やはり売り場は面白いですし、一番の原点だと感じますね。お店の規模が大きくなったり複雑化してだんだん文化になっていくと、その面白さが感じられなくなる瞬間が出てくる。これからの時代はテクノロジーを駆使して、若者の意見を積極的に取り入れながら先進的な取り組みを行い、活躍の場を作っていきたいと思っています。

―「第2の創業」で大切にしていきたいことは?

 一言でまとめると、理念にも掲げている「すごいをシェアする」にあるように、何かいろんなものが出てくる会社だな、と思ってもらえる会社でありたいですね。これまでの歴史を守りつつも、次世代に受け継ぐというより、お客様に喜んでもらえるようなことを軽やかにどんどんやっていけるような会社にしたいです。

―社長業もプレッシャーがかかると思いますが、日頃どんなことをしてリフレッシュしていますか?

 食べることと寝ることが好きなんで、料理をしたりしていますね。結構楽しんでいますよ。週末は作らされていますが(笑)。キャンプにも寿司桶を持っていきます。先日は社内で「スナックナイト」と銘打ってイベントを企画したんですが、そこでも僕がおつまみを作って、スタッフがドリンクをふるまってくれましたね。

山登りの様子

竹村新社長のオフの様子。オフの日もキャンプなどアクティブに活動しているという。

―オンオフ問わずもてなす側なんですね。

 作るのが好きなんですよね。コロナも落ち着いてきたので、僕たちが運営しているキャンプ場「TINY GARDEN 蓼科」を使って社内イベントをやったりと、一丸となって会社を盛り上げていきたいなと思っています。

(聞き手:伊藤真帆)

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