新たなラグジュアリーを追求した10年、ウェールズボナーが進化させた「Superfine」スタイル

2026年春夏コレクションを発表

FASHION 注目コレクション

Wales Bonner 2026年春夏コレクション

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

　グレース・ウェールズ・ボナー（Grace Wales Bonner）が手掛ける「ウェールズボナー（Wales Bonner）」が設立10周年を迎え、その記念となる2026年春夏コレクション「Jewel」を発表した。詩的なプレゼンテーションと精緻な工芸技術を融合させた今シーズンは、ブランドの哲学と進化の軌跡を鮮やかに映し出すものとなった。

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　グレース・ウェールズ・ボナーは1990年に生まれ、ジャマイカ人の母を持つ英国人デザイナー。2014年にセントラル・セント・マーチンズを卒業したボナーは、翌年に自身の名を冠したブランドを立ち上げ、LVMHプライズや「ザ・ファッション・アワード（The Fashion Awards）」など数々の賞を獲得。「ヨーロッパの伝統にアフロ・アトランティックの精神を注入する」という独自の美学で、現代ファッション界に新たなラグジュアリーの概念をもたらしてきた。

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　「Jewel」と名付けられた今季のコレクションは、海辺の牡蠣が微細な異物から黒真珠を生成する過程を詩的に描写するナレーションから幕を開けた。この寓意的表現は、創造的変容の可能性を象徴すると同時に、デザイナー自身の10年間にわたる芸術的探求の軌跡を暗示している。

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　コレクションは、ブランドの定番である「Superfine」スタイルの洗練された進化形を提示。1930年代のイブニングウェアの豪華さと英国の伝統的服飾要素を融合させ、モデルたちは「魂のこもった服のコレクター」として描かれた。エイジング加工を施したデニムやリネンチェックのフィールドジャケットといったカジュアルなアイテムから、精巧に仕立てられたテーラードスーツ、ウィングチップシルクシャツ、クリスタルバックルを配したヒョウ柄のオペラシューズまで、多様なワードローブが登場した。英国の伝統と現代的感性が見事に調和する様は、ウェールズボナーの真骨頂と言える。

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　特筆すべきは、英国の卓越した職人技との協創。「ジョンスメドレー（John Smedley）」とのコラボレーションによって生み出されたファインゲージコットンとメリノウールのポロシャツは、樹皮色、アイボリー、宝石調の色彩で展開された。また、サヴィル・ロウの名門テーラー、アンダーソン・アンド・シェパード（Anderson & Sheppard）とのコラボにより、ウールとシルクのテールコートを製作。アトランティックブルーのトップカラーと特徴的な不規則なボタン配置によって、クラシカルなクロンビーコートを革新的に再構築した。加えて、イギリスの帽子デザイナー、スティーブン・ジョーンズ（Stephen Jones）とのコラボレーションによるバオバブの花のブローチをあしらったベレー帽が登場した。

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　また、「ワイスリー（Y-3）」とのコラボとして、サテン素材のスーベニアジャケットやジャージーパンツ、フィールドシューズなどを披露。シャツをインしたジャージーパンツの着こなしは、ソリッドなコレクションの中に、遊びを加えている。

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　2026年春夏コレクション「Jewel」は、単なる衣服の集合体を超え、異なる時代や文化の対話を紡ぎ出す芸術的表現として昇華された。それはまさに、ウェールズボナーが10年にわたり追求してきた「文化的ラグジュアリー」の結晶であり、深い歴史的洞察と革新への情熱が交差する地点に生み出された、真の意味での「宝石」と呼ぶにふさわしいコレクションである。牡蠣が忍耐強く異物を包み込み輝く真珠へと変容させるように、ウェールズ・ボナーもまた多様な文化的要素を独自の感性で昇華させ、現代ファッションの新たな可能性を切り拓いた。

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Wales Bonner 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日: 2025年06月26日