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音楽と工芸に共通する“質量”とは? サカナクション 山口一郎が語る「愛着」の源泉

Ploom AURAとのコラボから紐解く

 「10年後も好きなもの」を指針に掲げるほど、自身の選ぶものに深いこだわりと愛着を持つ、サカナクション 山口一郎。今回、彼が日頃から愛用する京都「開化堂」の真鍮茶筒や「上出長右衛門窯」の九谷焼といった伝統工芸品の意匠を落とし込み、JTの加熱式たばこ用デバイス「プルーム・オーラ(Ploom AURA)」の特別なコレクションを製作した。テーマは、「愛着と経年変化」。モノに対して感じる愛着の源泉から、自身の愛用品にまつわるエピソード、同世代の職人たちとの協業の背景、長く愛される音楽についての考えまで。その思考の深淵を探るべく、個人スタジオを訪ねた。

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惹かれるのは、「葛藤」や「戦い」を感じるもの

⎯⎯ 一郎さんが好きだと思うものや愛着が湧くものには、どのような共通点がありますか?

 僕は目に見えず手で触れられない「音楽」を仕事にしていることもあり、形あるもの全てに惹かれるのですが、特にその中に「葛藤」や「戦い」があるものに魅力を感じます。 例えば工芸品なら、「伝統を守りつつ、どう新しくするか」という葛藤や、「使いやすさと美しさ」への挑戦。さらにそれが壊れたり、経年変化したり、自分が使うことで馴染んでいったりすること。そうした要素が絡み合っているものに惹かれますね。


⎯⎯ プルームとの前回のコラボも「桂剥き」と「鼈甲」という日本の工芸技術を取り入れたデザインでしたし、普段からジャパニーズモダンの家具などもお好きかと思います。なぜ日本の伝統や美に興味を持つようになったのでしょうか?

 「過去を知ることは今を知ること」だなと思ったからです。写真家の森山大道さんの「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」という言葉がありますが、音楽も含め、たぶん全てのものにそういった側面があるんじゃないかなと僕は思っているんですよね。そういった中で、「工芸」を通して過去を知ることは、今の日本の文化を知ることに直結するとだんだんわかってきたというか。だから、常にアンテナを張るようにしています。

音楽にもモノにも宿る「質量」

── 実際に工芸品の制作の現場に足を運ばれることもあるそうですが、そこから何が得られましたか?

 「過程」を知ると、より好きになるんですよね。音楽も家具も、直感的に好きか嫌いかを判断することが多いものですが、そこに込められた思いや歴史、制作工程を知れば知るほど愛着が深まります。僕も実際に天童木工の工房で職人さんの生活や工程を見て知ったことで、自分が既に持っている家具がもっと好きになりました。そうやって過程を知ることは、モノを長く愛するためにすごく大事なことだと思います。

⎯⎯  実際に普段の生活で、10年選手やそれ以上使い続けているモノは?

 うーん……色々とありますが、まずは自分の相棒であるギターですかね。特に「Gibson ES-335」はずっと使い続けているので愛着がありますし、「このギターでこの曲が生まれた」というストーリーも含めて大事にしています。

 あとは車も。僕にとって、車の中は音楽を聴く大切な場所でもあるんです。1台だけずっと乗り換えずにいるのが1972年製のポルシェの「ナロー(「911」モデルの愛称)」。自分の中で、手に入れてから今までの時間を“一つの物語”として大切にしています。

⎯⎯ 一方で音楽は物理的に所有するものではないですが、長く愛される音楽への憧れはありますか?

 そういった思いももちろんありますね。でも僕は、音楽の「質量」のようなものを大事にしたいと考えているんです。全て自分たちで作詞作曲をしているので、そこにかけた時間や思いがオーラのような質量を生むんじゃないかと。なので常に工夫して、尽力していこうと思っています。

⎯⎯ サカナクションの音楽については、「自分たちが好きなものをとことん作る」とも話していましたね。

 「自分たちが好きなものを作る」ことと、「みんなが好きなものって何だろう」と考えること。その2つを混ぜ合わせたときに”良い違和感”が生まれるんじゃないかなと。そうやって火花を散らして苦労しながら生まれたモノこそが、唯一無二になっていくんじゃないでしょうか。

「良い違和感」と「柔軟性」を持つ、同世代の職人たちとの関係性

── 今回のプルームとのコラボは、一郎さんが日常的に使っている京都「開化堂」の真鍮の茶筒や「上出長右衛門窯」の九谷焼の陶器といった、伝統工芸品がデザインに落とし込まれています。

 きっかけは、新型デバイスのプルーム・オーラを初めて見たときに、その細長い形状が「煙管(キセル)」に見えたことでした。 日本の伝統工芸品である煙管と、現代的なデバイスの機能性。そのギャップにピンと来て、「本物の工芸職人がこのパネルをデザインしたらどうなるんだろう」と考えたのが始まりです。

取材時も、手元には普段から愛用するプルーム・オーラが。

── 「開化堂」と「上出長右衛門窯」の担い手のお二人とは、元々交流があったそうですね。

 上出長右衛門窯の上出くん(九谷焼窯元「上出長右衛門窯」六代目 上出惠悟)とは、ある格式高いイベントに招かれた際に出会ったのですが、第一印象は「すごく変な人がいるな」でした(笑)。でも話してみると、年齢も近くて面白くて。「質感が似ているから」という理由で陶器のバナナを作っていたりと、伝統に対して今の感覚で臆せずアプローチできる人なんです。工芸の世界では現代的なアプローチに否定的な方も多い印象がある中、彼からは僕の好きな”良い違和感”を感じて、すぐに仲良くなりました。

── 開化堂の八木さんとは、どのような経緯で?

 八木さん(茶筒の老舗「開化堂」六代目当主 八木隆裕)は、上出くんたちとの交流の中で紹介してもらいました。彼と話して驚いたのは、茶筒を海外で販売するために、現地の文化に合わせて紅茶やパスタを入れる容器として提案するなど、すごく柔軟性があること。年齢も近くて、感覚的にも通じ合うものがあり、「同じ会話ができる人だ」と感じました。それからは一緒に遊んだり、実験的なものづくりを楽しんだりする関係が続いていて、今回のコラボもその延長線上にあります。

── 信頼関係があるからこそ、実現した企画なんですね。

 そうですね。本来、プラスチックのデバイス用に工芸の意匠をイミテーションとして落とし込むのは、職人には嫌がられることかもしれません。でも、彼らならそれを「面白い」と捉えてくれるだろうと思ってオファーしました。

「経年変化」の前と後、2つの時間軸を落とし込んだデザイン

⎯⎯ 抽選で当たるフロントパネルのデザインに採用された、「緑青(ろくしょう)」や「金継」といったアイデアもユニークです。

 「緑青」は、八木さんが神社の古くなった銅のトタンで作った茶筒がモチーフになっています。「経年変化した素材を使って新しいものを作る」という、いろいろな時間の流れや考え方が混在しているのが面白くて。 真鍮は「変化する前」と「変化した後(緑青)」、陶器は「新品」と「割れて金継ぎしたもの」。それぞれ2つの時間軸をプロダクトに落とし込みました。

 「ローズウッド」は、僕の家で欠かせない天童木工のヴィンテージデスクやテーブルセットがイメージ元になっています。今は希少で使えない「ブラジリアンローズウッド」を再現したもの。「今はないものをリプロダクトする」という考え方が詰まっています。

フロントパネルは、左から「真鍮」「九谷焼」「緑青」「金継」「ローズウッド」。白い陶器が上出長右衛門窯の「スティックトレイ」、右奥の金色の筒状容器が開化堂の「スティックケース」。

── 今回はパネルだけでなく、開化堂の真鍮製「スティックケース」と、上出長右衛門窯の九谷焼の「スティックトレイ」も製作されています。

 僕も今日、完成したものを初めて見たんですけど、可愛いですよね。九谷焼のスティックトレイは、歴史ある絵柄の中に「プルーム・オーラを吸っている人」が描き込まれていて、まさに上出くんらしい、伝統に現代的なアプローチをしたデザインになっているなと。真鍮茶筒のスティックケースも、今回特別に作ってもらいました。 実は以前から、八木さんや上出くんには無茶なオーダーをすることが度々あって、「プルームのスティック入れを作って欲しい」とお願いしていたんですよ(笑)。

── 構想はだいぶ前からあったんですね。

 今ここにあるコースターセットも、実は八木さんにケース、上出くんに中のコースターを作ってもらった試作品なんです。「〇〇が欲しいから作って」「じゃあこういう形状にしようか」といった実験や遊びを日常的に繰り返していて。そういった試行錯誤が、今回のプロダクトにも繋がりました。真鍮の茶筒は使い続けると風合いが変化して味が出てくるから、それも楽しめると思います。

個人プロジェクトは、好きなものを知ってもらうための「入り口」

── 最後に、一郎さんの個人的なプロジェクトに関して、今後思い描いていることや実現したいことがあれば教えてください。

 僕は、音楽でもタイアップなどで企業と一緒に作ることがあるんですけど、やっぱり自分にとって、愛着がないものを宣伝のためだけに作ることはできない。だからまず、知らなかったものは深く知ることから取り組んでいます。

 今回のプロダクトで使用している「YI」のロゴは本来、「yamaichi」*というプロジェクトで使用しているものなんですが、yamaichiはビジネスのためではなく、自分が本当に愛着を持っていて応援したいと思ったものを紹介する、「入り口」を作ろうと思って始めたものです。だから、今回のコラボもまずは服や家具を選ぶように、直感で自分の好きなものを手に取ってもらえたらいいと思うんです。それで使っていくうちに、「このデザインは何だろう?」と興味を持って、そこから工芸の背景や、このインタビューにもたどり着いてもらえたら嬉しいですね。

 これからも、モノであれ人であれ、自分に深く刺さった「好きなもの」を届けていきたいですし、共感してくれる仲間を増やしていけたらいいなと思っています。

* yamaichi:山口一郎が主宰する、さまざまな作り手とコラボレーションし製造背景にもフォーカスをあてて発信するプロジェクト。2023年に発足。これまで、「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」のディフュージョンライン「シーディージー(CDG)」や、「虎へび珈琲」、青森ヒバを使用したアイテムを展開する「カルデサック ジャポン(Cul de Sac–JAPON)」など多様なブランドとのコラボレーションを行ってきた。

photography: Tsukasa Miyoshi (Showcase)
interview: Chiemi Kominato (FASHIONSNAP)
text & edit: Erika Sasaki (FASHIONSNAP)

■Ploom AURA × 山口一郎:キャンペーンページ

■CLUB JTオンラインショップ:販売ページ
※コラボフロントパネルは、CLUB JTオンラインショップおよび全国のPloom Shopで販売中。

最終更新日:

■山口一郎
1980年北海道生まれ。5人組バンド「サカナクション」として2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。ほとんどの楽曲の作詞作曲を手掛ける。2015年に「NF」をスタートさせ、カルチャーをミックスした多様なプロジェクトを展開。コロナ禍の2020年から2021年にかけて画期的なオンラインライブを実現し、全国アリーナツアー「SAKANAQUARIUM アダプト TOUR」を開催した。2023年に単独で全国を巡るツアー「懐かしい月は新しい月"蜃気楼"」、そして2024年には2年ぶりのサカナクション完全復活ツアー「SAKANAQUARIUM 2024 "turn"」を開催。2025年2月にTVアニメ「チ。 ―地球の運動について―」の主題歌となった「怪獣」をリリースし、全国ホールツアー「SAKANAQUARIUM 2025 “怪獣”」は全公演が即日ソールドアウト。2026年1月スタートのドラマ「こちら予備自衛英雄補?!」の主題歌として新曲「いらない」を発表した。病気を公表しながらも、自身が主宰する「NF」や「yamaichi(YI)」などを通じて多方面で活動の場を広げている。

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