どう取り入れる?ユニクロからグッチまで「理系ファッション」続々

 世の中は「理系」の時代になってきている。勢いのある企業はテクノロジーの先端を走る。人工知能がもてはやされ、学生もサイエンスを目指す。こんな変化がファッションにも表れている。先端技術を生かして服の構造を変えたり、これまでにない機能を持たせたりといった取り組みが一段と広がりを見せつつある。宇宙や科学をモチーフに生かしたり質感に写し込んだりするアレンジも相次ぎ、おしゃれにもテックの風が吹き込み始めている。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江

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 テクノロジーをモードに生かす試みを早くから続けてきたデザイナーに「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦がいる。ダイヤルを回してサイズを自在に変えられる服はギミック好きを大喜びさせた。光の加減でモチーフが変わるプリントはパリ・コレクションでも賞賛された。その森永がスポーツブランドの「オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)」と組んで発表したのが、AR(拡張現実)技術を使ったスニーカー「ANREALAGE MONTE Z」。ARは大ヒットしたモバイルゲーム「Pokemon GO」でも基盤となった技術だ。

 スニーカーとして履けるだけではない。スマートフォンをかざすと、サカナクションの山口一郎が手がけたサウンドが聞こえてくる。別のモデルではスマホでフラッシュ撮影すると、それまでは見えなかった柄が浮かび上がる。肉眼で見えているスニーカーの奥に秘められた仮想空間に音やモチーフが潜んでいるという仕掛けで、実体としてのアイテムに別のムードや表情を宿らせる試みはテック感が高い。

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 テクノロジーを本業とする企業も相次いでファッションの世界に進出してきた。たとえば、ソニーは電子ペーパーを搭載したディスプレイウォッチの第2弾「フェスウォッチ ユー(FES Watch U)」を発売した。文字盤とベルトが1枚の電子ペーパーからできているから、全体が1本のリストバンドのよう。しかも、電子ペーパーの特性を生かして、モチーフや色をがらっと変えられるところが目新しい。服装やシーンに合わせて、時計全体の見栄えを変えて楽しめる。

 これまでもベルトの種類がいくつか用意されていて、「付け替え」でイメージを変えられるウォッチはあったが、「FES Watch U」は文字盤とベルトの両方を自在に変えられるうえ、デザインの選択肢が幅広い。ハイテク感を帯びたウォッチとしてはアップルの「アップルウォッチ(Apple Watch)」シリーズが有名だが、「着せ替え」という、服のスタイリングを強く意識している点ではソニーのほうがファッション性を感じさせる。

 アパレル企業は技術面の強みを打ち出す動きを強めている。「ユニクロ(UNIQLO)」は2017-18年秋冬シーズンの新作展示会でプロダクト志向を鮮明にした。もともと東レと共同開発した「ヒートテック」に代表される素材研究に積極的なことで知られる。「ヒートテック」の展示ブースでは、東レのスタッフが白衣をまとって、自慢の発熱メカニズムを科学的に説明していた。世の中の理系シフトが進んで、消費者にも理系が増えてくることを見越して、企業側もロジカルな説明や技術的なアピールを強める傾向にあるようだ。

 最近のファッションアイテムで目立つ素材にファスナーとビニールがある。ファスナーはメタリックな質感に特長があり、ビニールはいかにもケミカルなつやめきを帯びる。どちらも「人工」「技術」のムードを感じさせるマテリアルだ。それぞれの表情を生かして、装いにクールな雰囲気や冷ややかな無機質さをまとわせる提案が目につく。

 ファッションを取り巻くムードという意味でもサイエンス濃度が上がってきた。「グッチ(GUCCI)」2017年秋冬コレクションの広告ビジュアルに1950~60年代のSF作品のイメージを取り入れた。米国のテレビシリーズ「スター・トレック」をはじめとする作品がインスピレーション源。イメージ動画でも宇宙船での旅やヒューマノイド、ロボットなどを描いた。

 「モンクレール(MONCLER)」が秋冬コレクションに合わせて発表した、3分間のショートフィルムは、B級テイストのSF映画にオマージュを捧げた。「モンクレール」のダウンジャケットを巡って、人類と異星人が戦いを繰り広げる。キーアイテムとして登場するシルバージャケットは宇宙服のような風情。これまでのイメージビジュアルは多くのブランドで歴史や風景、アートなど、どちらかと言えば「文系」寄りの演出が多かったが、これからは理系色が濃くなっていきそうだ。

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 「コーチ(COACH)」は「Space」にインスパイアされたカプセルコレクション「コーチ スペース コレクション(COACH Space Collection)」を発売した。NASAとのコラボレーションを実現させ、ロケットや惑星、宇宙飛行士などのモチーフをワッペン風にあしらっている。様々な宇宙関連の絵柄はレトロなグラフィックに仕上げられていて、テクノロジーと懐かしさを響き合わせている。人工知能が部分的に人間の能力を超えていくような進歩を遂げていく中、技術と人間の望ましい間柄を1960~70年代頃の過去に求める気分もうかがえる。

dream-miyata-07-26-17.jpg作品名:『ドリーム』公開表記:9月29日(金)TOHOシネマズシャンテ他、勇気と感動のロードショー!  配給:20世紀FOX映画  クレジット:ⓒ2016Twentieth Century Fox

 映画でもNASAに勤めた女性たちを主人公にした「ドリーム」が公開される(2017年9月29日公開予定)。1960年代のアフリカ系リケジョたちが宇宙開発を支えるストーリーだ。しばらく前まで理系キャラクターは映画やテレビドラマでは風変わりな異能者扱いが多かったが、近頃は堂々と主役を張るようになってきた。女性宇宙飛行士が主役の「ゼロ・グラビティ」や、リケジョ4人が奮闘する「ゴーストバスターズ」、科学者のアクションドラマ「マクガイバー」、大学物の「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」、天才集団の活躍を描く「スコーピオン」など、理系主人公の作品は今や米国ドラマで1カテゴリーになりつつある。こういった変化はアメリカ社会での理系出身者の立場が様変わりしていることを示している。

 理系・エンジニア系の働き手が一段と高い評価を受けるようになってきたことを踏まえて、この層に響くファッションを提案する動きも強まっていきそうだ。既に着せ替え自在のスニーカー、ヨガの正しい姿勢をアドバイスしてくれるウエアなどが開発されている。接客や販売の面でもAIを活用したスタイリング提案が実現。技術とファッションの新たな相性を引き出すこれからの提案が楽しみだ。(文:ファッションジャーナリスト宮田理江