中国で今年も11月11日(独身の日、シングルデー)に合わせた年間最大の商戦「ダブルイレブン」が行われた。セールは一部サイトをのぞき、10月20日からスタート。およそ1か月にも及ぶセールで、天猫(Tmall)の流通取引総額(GMV)は前年比8.5%増のの5403億元(約9兆6173億円)、京東(JD.com)は同15.6%増の3491億元(約6兆2729億円)と共に過去最高となった。Tmallだけで130万以上の新製品という、数ある商品群の中でもビューティアイテムは人気が高く、日系ブランドもこの商戦に向け商品を揃える傾向にある。今回、美容カテゴリーではどんなブランド、アイテムが売れたのか?台頭する中国ブランドと合わせて紹介する。
美容カテゴリーはスキンケアが牽引 トップ3は?
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ダブルイレブンの美容売り上げのうち、約7割をスキンケア製品が占めた。天猫美容カテゴリーのランキングは、1位「ロレアル パリ(L'Oreal Paris)」、2位「エスティ ローダー(ESTÉE LAUDER)」、3位「ランコム(LANCÔME)」と、スキンケアが主力の海外ブランドが並ぶ。中国の消費者はスキンケアへの投資が盛んで、高価なアイテムはセールの目玉だ。その中では比較的手頃なロレアル パリは、日本ではメイクやヘアケアのイメージが強いが、ヒアルロン酸をキー成分とする「アンプルフェイスパック」が人気を博し、単品で1億元(約17億円)を稼いだ。
日本ブランドのトップは、4位にランクインした「資生堂」。中国で人気の美白ケアとエイジングケアの要素を合わせ持つ「SHISEIDO バイタルパーフェクション」の化粧水と乳液のセットは、1億元(約17億円)超えの人気商品だった。
メイクアップ製品の需要も回復している。ビッグデータ分析のECデータウェイ(ECdataway)の調べによると、メイクアップ製品で最も売れたのはベースメイク(チークなどフェイスカラーを含む)。続いてリップメイク、アイメイクが人気だった。マスク生活が続く日本ではまだまだアイメイクの方が好調のようだが、いち早くパンデミックから回復している中国ではリップが上がっていることにも注目で、今後の日本の動向も気になるところだ。
台頭する中国ブランド 知っておきたいトップブランド
Tmallのメイクアップカテゴリーのランキングは、1位から順に「イヴ・サンローラン・ボーテ(Yves Saint Laurent Beauté)」、エスティ ローダー、韓国ブランド「スリーシーイー(3CE)」がランクイン。メイクは中国製品の人気も高く、4位に「パーフェクトダイアリー(Perfect Dairy 完美日記)」、5位に「花西子(フロラーシス)」と中国コスメが並んだ。
パーフェクトダイアリーは中国コスメ界のトップブランドで、日本を含め東南アジアなどグローバルで展開。手頃な価格でありながら高品質な商品が特徴で、2022年春夏シーズンの上海ファッションウィークでは、中国のデザイナーズブランドプラットフォーム「レーベルフッド(LABELHOOD)」のショーでメイクアップを手掛けた。ダブルイレブンではリップが売り上げを牽引し、カード型のパッケージが印象的な「名刺リップグロス」は、天猫だけで97万4000本を販売した。
新興ブランドも熱い アイデア勝ちのトレンドセッターから研究開発力勝負のブランドまで
中国メイクといえば鮮やかなリップが特徴だが、特に最近は“唇泥(マッドリップ)”という質感のリップがトレンド。発色と色持ちがよく、泥のように潤いがあることから人気となり、さまざまなブランドが商品を発売した。中国で“唇泥”を流行らせた「INTO U」(中国表記はINTO YOU)は、日本にも今年上陸。ツヤ感のあるリップも人気で、色付きのリップバームが流行る韓国や、色移りしにくいリップが求められる日本とは対照的だ。
この他にも、勢いのある新興の中国ブランドは多い。その代表格である「カラーキー(COLORKEY)」は、立ち上げからわずか3年ながら人気が高く、今年4月には日本に上陸。ダブルイレブンでは1億元以上を売り上げた。スター製品の「ベルベットマットティント」や、「トライアングルアイブロウペンシル」の売れ行きが好調だったほか、ピカチュウとコラボレーションしたコレクションや、中国で絶大な人気を誇るトップライバーの李佳琦(Austin Li)とコラボした新作ファンデーションが話題を集めた。
見た目のインパクトやカラーアイテムのイメージが強い中国コスメだが、近ごろはスキンケアのような研究開発力で勝負するブランドも増えた。敏感肌向けスキンケア「ウィノナ(薇诺娜)」は、敏感肌研究で市場をリードし、4年連続でスキンケアランキングのTOP10入りを果たした。中国では美容消費者の約3人に1人が肌トラブルを抱えているといわれ、そうした敏感肌の消費者から支持され、セールでは買いだめする人が目立った。
欧米、日韓のブランドへの注目は根強いが、中国コスメも新しい発想やアプローチで商品を出している。日本にも続々とブランドが上陸しており、今後も目が離せない存在となりそうだ。
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社サンケイスポーツ編集局記者職を経て、「WWD BEAUTY」記者として中国や欧米などの海外美容市場やビューティテック、スタートアップなどを中心に取材。2020年4月に独立し、現在は美容業界情報を中心に若者トレンドや中国市場に関する記事を執筆。
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