羽田未来総合研究所 大西洋社長
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日本発の地方創生型ラグジュアリーブランド「ジャパン マスタリー コレクション(JAPAN MASTERY COLLECTION、以下JMC)」が2023年冬にデビューする。ブランドの旗振り役は、元三越伊勢丹ホールディングス社長で、現在は日本空港ビルデング傘下 羽田未来総合研究所社長を務める大西洋氏だ。“ミスター百貨店”と呼ばれ、百貨店業界を牽引してきた大西社長が「地方創生型ラグジュアリーブランド」を立ち上げる狙いはなにか。
JMCは、「伝統に、驚きを。文化に、遊び心を。」をコンセプトに、アパレルをはじめ雑貨やアート、インテリアなどの生活用品を幅広く揃え、日本の伝統と現代の技術を掛け合わせたコレクションを展開。大西社長は、三越伊勢丹ホールディングス社長在任時からJMCの構想を持っていたといい、約4年の準備期間を経てブランド始動にこぎつけた。
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◆日本発のラグジュアリーブランドを立ち上げる“3つの狙い”
大西社長がJMCを立ち上げた狙いは、大きく分けて3つある。1つ目は「日本の国力を上げる」こと。2022年時点で日本のGDPはアメリカ、中国に次いで世界3位。11月には、2023年のGDPランキングで日本はドイツに抜かれて4位に転落する見通しだという報道もあり、国力低下の現実に直面している。大西社長は「戦後の短い期間で日本が世界有数の経済大国になったのは、製造業の発展があったから。ただ、製造業では今後アメリカや中国に確実に勝てない。今後何をもって国力を強くしていくかを考えなければならない」と語る。そこで大西社長が目をつけたのが、日本の技術力だ。日本の生活や風土に密着した「匠の技」は、世界から見ても唯一無二で、「生活文化」として産業化することで一大産業に成長する可能性を秘めているという。
2つ目は、「観光産業を盛り上げる」こと。観光庁が公開している宿泊旅行統計調査によると、2023年8月単月の訪日外国人の都道府県別宿泊者数は、東京都が886万人で第1位。2位の大阪府(472万人)に400万人以上の差をつけるなど、訪日外国人の東京への一極集中が顕著となっている。大西社長は「日本には、東京だけではなく地方に素晴らしい場所がたくさんある。JMCを通じて訪日外国人に伝統産業を発信することで、興味を持った観光客を地方に送り、全国的に観光産業を盛り上げたい」と話す。
そして3つ目が、「海外ラグジュアリーブランドに依存しすぎている日本のファッション業界の体質にメスを入れる」ことだ。「今、国内の百貨店や商業施設に足を運ぶと、どこに行ってもグランドフロアの一等地に海外ラグジュアリーブランドが入っている。売れるから仕方ないという意見もあるが、私は今の状態は健全ではないと思っている」と大西社長。海外メゾンに対抗しうる日本発のラグジュアリーブランドを作ることが現状を打破する糸口になるという。「日本にエルメスのようなブランドを作ることを目指してJMCを運営していく。もちろんハードルが高いことは分かっているが、最終目標はここに設定する」(大西社長)。
また、JMCでは特徴の一つとして、生産者に報酬を多く還元するというビジネスモデルを採用。上代価格は商品の価値とのバランスを大切にしながら主体的に決めるが、原価に生産者への報酬を上乗せし、上代価格に対して3〜4割の還元を目指す。大西社長は「ラグジュアリーブランドは一部日本の優れた素材を用いて物作りを行っているが、商品上代(定価)を作り手への報酬に還元しきれていない」と指摘し、生産者とともにブランドを盛り上げていく姿勢を示した。上代価格は既存のメゾンの50〜70%ほどの価格設定となる予定だという。
◆1号店は「ディオール」の隣に出店、JMCのブランドミッションとは?
12月22日には羽田空港第3ターミナル出国エリア内にブランドショップ1号店をオープン。188平方メートルの売り場を「トラベル」「上質な日常」「趣味」「ジャパンラグジュアリー」「プロモーションエリア」の5区画に分け、約400型を揃える。完全なオリジナルアイテムのみでの店舗構成は「今の組織形態ではまだ難しい」(大西社長)とし、初年度はコラボレーションなどを含むオリジナルアイテムが2割、職人やブランドからセレクトしたアイテムは8割程度を予定する。3年を目処に全てオリジナルでの商品展開を目指すという。
羽田空港にオープンするJMCブランドショップ1号店
Image by: 羽田未来総合研究所
メインターゲットは日本に興味を持って旅行に来る訪日外国人。全体のうち25%のシェアが欧米人で25%が中国人、残りの50%が台湾韓国南米その他といった割合を想定している。「特に欧米の人は自分のライフスタイルを大事にする傾向がある。欧米人に認められてこそ本物のラグジュアリー」という大西社長の考えから、展開アイテムは欧米の家庭にフィットすることを1つの基準とする。
出店先は「ディオール(DIOR)」の免税店の隣。大西社長は「都内のショッピングセンターでは日本発の新ブランドがディオールの隣に出店できることはまずないが、今回はそれが叶った。空港だからこそできる店舗戦略だと思う」と語る。店頭では、約7割の商品のそばに作り手の顔を見ることができるQRコードを設置。商品に込められた思いや地域の魅力などを紹介し、東京から地方への観光客の送出を狙う。「特に羽田空港は国内線が多いので、地方にできる限り多くの観光客を回すというのが1つのミッションだ」(大西社長)。
羽田空港内の1号店が軌道に乗った段階でネクストステップとして百貨店を含む国内商業施設や地方空港内などに出店し、トライアルとして海外への卸売事業に挑戦するほか、ゆくゆくは欧米や東南アジアといった海外の空港に進出する計画。また、2024年4月以降には日本人向けECサイトのほか、外国人をターゲットにした越境ECサイトの立ち上げも予定している。
ブランドとしての短期的な目標は、まずオープンから2年での黒字化と、数年以内に売上高10億円突破を掲げる。その後、「一流ブランドとして認められる最低ライン」と設定する30億円、将来的には100億円を目指す。また、数年以内にブランドを羽田未来総合研究所から独立させ、別会社組織を設立することを視野に入れるとともに、クリエイティブディレクターも起用し、本格的なクリエイションを追求していく考えだ。大西社長は「現状、ラグジュアリーと呼ばれるブランドは全てがヨーロッパ発祥。日本だけでなく、世界的に見てもラグジュアリーブランドと認識してもらえるブランドにJMCを成長させていきたい」と展望を語った。
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