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グッチ、シャネル、ロエベ...デザイナー交代で転換期を迎えたモード界の動向

2025年秋冬〜2026年春夏の注目ブランド

 刻々と変わりゆくモード界。トップデザイナーの去就による大シャッフルが起きており、2025年秋冬はブランドの方向性が固まらず、トレンドも読み取りにくいシーズンとなった。新たなクリエイティブディレクターのデビューコレクション、退任前のラストコレクション、そして次シーズンの2026年春夏に注目のブランドなど、転換期を迎えている2025年の動向を追う。

注目のデビューコレクション

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 2025年秋冬シーズン、新ディレクターによって発表されたコレクションは、ブランド本来のクリエイティビティを明確に打ち出し好評。1月発表の「ランバン(LANVIN)」、2月発表の「カルバン・クライン コレクション(Calvin Klein Collection)」、そして3月発表の「ジバンシィ(GIVENCHY)」に共通するのは「原点回帰」だ。アーカイヴの参照は歴史あるブランドであれば必ず用いられる手法だが、創業デザイナーの精神やクリエイションの原点にまで立ち返ることで、ブランドのアイデンティティをより鮮明に描き出している。

ランバン

 ピーター・コッピング(Peter Copping)がアーティスティックディレクターに就任したランバンは、フランス最古のクチュールメゾンとしてのルーツを見つめ直した。創設者ジャンヌ・ランバンのコンセプト「le Chic Ultime(究極のシック)」をテーマに、エレガントで実用性を併せ持つウィメンズとメンズのコレクションを発表している。

Image by: LANVIN

Image by: LANVIN

Image by: LANVIN

カルバン・クライン コレクション

 ヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)が手掛けるカルバン・クライン コレクションは、ブランドのDNAに根ざしたミニマリズムを再定義。カッティングとテーラリングが際立つワードローブが提案された。

Image by: Calvin Klein Collection

Image by: Calvin Klein Collection

Image by: Calvin Klein Collection

ジバンシィ

 ジバンシィのクリエイティブ・ディレクターに就任したサラ・バートンは、創設者ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)が最初に発表したコレクションを起点にデザイン。アトリエでの制作過程から美を見出しながら、バートンならではのテーラリングによって、クラシカルなシルエットや当時の素材を現代に甦らせている。

Image by: GIVENCHY

Image by: GIVENCHY

Image by: GIVENCHY

ドリス ヴァン ノッテン

 「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は創業デザイナーから次世代にバトンタッチ。ジュリアン・クロスナー(Julian Klausner)がクリエイティブ・ディレクターに就任し、華やかな色彩と素材、あらゆる美を織り交ぜた奥行きのあるスタイルを現代に引き継いだ。

Image by: DRIES VAN NOTEN

Image by: DRIES VAN NOTEN

Image by: DRIES VAN NOTEN

トム フォード

 「トム フォード(TOM FORD)」は、クリエイティブディレクターにハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)が就任。デビューコレクションは、無駄を削ぎ落としたデザインでリュクスな素材を活かし、さらにラグジュアリーな世界観にアップグレードしている。

Image by: TOM FORD

Image by: TOM FORD

Image by: TOM FORD

TOM FORD 2025年秋冬

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TOM FORD

2025 AUTUMN WINTERファッションショー

トップデザイナーのラストコレクション

 ディレクターとして長年務めたトップデザイナーによる最後のコレクションとなったブランドも多数。いずれのコレクションも集大成と捉えることのできる内容で、"買い"のラストシーズンとなりそうだ。

ディオール、ロエベ、バレンシアガ、ジル サンダー

 「ディオール(DIOR)」のメンズコレクションを手掛けたキム・ジョーンズ(Kim Jones、7年在籍)、「ロエベ(LOEWE)」のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson、11年在籍)、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデムナ(Demna、10年在籍)、そして「ジル サンダー(JIL SANDER)」のルーシー・メイヤーとルーク・メイヤー(Lucie Meier & Luke Meier、8年在籍)は、2025年秋冬のショー開催後に退任発表。それぞれメゾンのクリエイティビティを高め、多大な功績を残しての交代となった。

日本のブランドも世代交代

 日本のブランドでは「カラー(kolor)」が1月に開催されたショーの当日、創業デザイナー阿部潤一の退任を発表。翌日には同職を堀内太郎が引き継ぐことが発表され、クリエイション体制のシームレスな移行を印象付けた。新生カラーは6月の発表が予定されている。

Image by: kolor

Image by: kolor

Image by: kolor

次回2026年春夏コレクションの見所

 「シャネル(CHANEL)」、「グッチ(GUCCI)」、「セリーヌ(CELINE)」、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTAGA VENETA)」、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」、そして「フェンディ(FENDI)」は現在、ディレクター交代にともなう移行期。2025年秋冬シーズンはショーを休止、あるいはデザインチームによるコレクション発表となった。多くのブランドが次季の2026年春夏が新ディレクターによるデビューコレクションになると見られ、新たな方向性が見所となることは間違いない。

 いまだディレクターのポストが空席のブランド(フェンディ、バレンシアガ)の動向にも注目だ。

発表形式や体制も新たに

 さらにグッチは今年、これまでセパレートで発表していたウィメンズとメンズのコレクションを統合する新体制となった。創業100周年を迎えたフェンディも、ウィメンズ・メンズの合同ショーを開催。次シーズンの2026年春夏コレクションもフェンディ家3代目のシルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)がウィメンズ・メンズを手掛け、合同ショーとして9月に開催が予定されている。

 なお「Jean Paul Gaultier(ジャンポール・ゴルチエ)」は、デュラン・ランティンク(Duran Lantink)のクリエイティブディレクター就任にともない、2015年春夏をもって終了していたプレタポルテコレクションを本格的に復活させる。

 ブランドのクリエイティブチームを率いるディレクターの交代は売上低迷によるものが大きいが、体制の刷新により時代に即した形にアジャストしていくポジティブなタイミングでもある。2025年が、モード界に活気をもたらし成長に導く進化の年になるよう期待したい。

2025年秋冬シーズンの動向

 今年1月(メンズ)と、2月末から3月頭(ウィメンズ)に開催された2025年秋冬シーズンのファッションウィーク。新任ディレクターが手掛けた「デビューコレクション」と、退任が決まったディレクターによる「ラストコレクション」を発表した主要ブランドを、一覧でまとめた。

デビューコレクション

  • ランバン
    前任:空席(ブルーノ・シアレッリ退任後、2年あまり不在)
    新任:ピーター・コッピング(2025年秋冬から)
  • カルバン・クライン コレクション
    前任:空席(2018年にラフ・シモンズ退任後、6年あまり不在)
    新任:ヴェロニカ・レオーニ(2025年秋冬から)
  • ジバンシィ
    前任:マシュー・M・ウィリアムズ(2024年プレフォールまで)
    新任:サラ・バートン(2025年秋冬から)
  • トム フォード
    前任:ピーター・ホーキングス(2025年春夏まで)
    新任:ハイダー・アッカーマン(2025年秋冬から)
  • ドリス ヴァン ノッテン
    前任:ドリス ヴァン ノッテン(2025年春夏まで)
    新任:ジュリアン・クロスナー(2025年秋冬から)

ラストコレクション

  • ディオール<メンズ>
    退任:キム・ジョーンズ(2025年秋冬まで)
    新任:ジョナサン・アンダーソン(2025年6月デビュー予定)
  • ロエベ
    退任:ジョナサン・アンダーソン(2025年秋冬まで)
    新任:ジャック・マッコロー&ラザロ・ヘルナンデス
  • バレンシアガ
    退任:デムナ(2025年秋冬まで)
    後任:空席
  • ジル サンダー
    退任:ルーシー・メイヤー&ルーク・メイヤー(2025年秋冬まで)
    新任:シモーネ・ベロッティ
  • カラー
    退任:阿部潤一(2025年秋冬まで)
    新任:堀内太郎(2025年7月デビューの見込み)

次回2026年春夏シーズンの注目

 ディレクター交代にともない、次回2026年春夏シーズンが新ディレクターのデビューとなる注目ブランド、および新体制に移行しているブランドをまとめた。

  • シャネル
    前任:ヴィルジニー・ヴィアール(2024年秋冬まで)
    新任:マチュー・ブレイジー(2025年9月デビューの見込み)
  • グッチ
    前任:サバト・デ・サルノ(2025年春夏まで)
    新任:デムナ(2025年9月デビューの見込み)
  • セリーヌ
    前任:エディ・スリマン(2025年サマーコレクションまで)
    新任:マイケル・ライダー(2025年7月デビュー予定)
  • ボッテガ・ヴェネタ
    前任:マチュー・ブレイジー(2025年春夏まで)
    新任:ルイーズ・トロッター(2025年9月デビューの見込み)
  • メゾン マルジェラ
    前任:ジョン・ガリアーノ(2024年まで)
    新任:グレン・マーティンス(2025年9月デビューの見込み)
  • ジャンポール・ゴルチエ
    前任:フローレンス・テティエ
    新任:デュラン・ランティンク(2025年9月にデビュー予定)
  • フェンディ<ウィメンズ>
    前任:キム・ジョーンズ(2025年春夏まで)
    後任:空席(2025年秋冬/2026年春夏はシルヴィア・フェンディがウィメンズとメンズを手掛ける)

※2025年5月1日現在

最終更新日:

FASHIONSNAP ファッションディレクター

小湊千恵美

Chiemi Kominato

山梨県出身。文化服装学院卒業後、アパレルデザイン会社で企画、生産、デザイナーのアシスタントを経験。出産を経て、育児中にウェブデザインを学びFASHIONSNAPに参加。レコオーランドの社員1人目となる。編集記者、編集長を経て、2018年よりラグジュアリー領域/海外コレクションを統括するファッションディレクターに就任。年間60日以上が出張で海外を飛び回る日々だが、気力と体力には自信あり。

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