
プロフィール 右:榎本 葵(えのもと・あおい)2005年生まれ。Replus代表。演出とスタイリング部署に所属。好きな古着屋は「PwL」「CHELSEA」「cocorono store」。 左:柴嵜 心粋(しばさき・こいき)2005年生まれ。Replus副代表。同じく演出とスタイリング部署にて制作を手がける。好きな古着屋は「rose」「nodress」。古着屋に限らず、リサイクルショップにも足を運んでいる。
服飾学生団体「Replus」に聞く 古着でつくるファッションショーの裏側

プロフィール 右:榎本 葵(えのもと・あおい)2005年生まれ。Replus代表。演出とスタイリング部署に所属。好きな古着屋は「PwL」「CHELSEA」「cocorono store」。 左:柴嵜 心粋(しばさき・こいき)2005年生まれ。Replus副代表。同じく演出とスタイリング部署にて制作を手がける。好きな古着屋は「rose」「nodress」。古着屋に限らず、リサイクルショップにも足を運んでいる。

服飾学生団体のクリエイション現場に迫るインタビュー連載、第4弾。今回は、古着のみを用いたファッションショーを年に一度開催している学生団体「Replus(リプラス)」に話を伺いました。
新品を作らず、既存の服を再編集するという選択。その先に、どんな表現を見出しているのか。2月に開催されるファッションショー『back in vogue』を控えたメンバーに、タイトルに込めた思いや、活動を通して見えてきたリプラスならではの魅力を聞きました。
〈目次〉
「自分たちでつくる」を貫く制作体制
──まずは、Replus(以下、リプラス)の活動内容について教えてください。
榎本:年に1度、古着を使ったファッションショーを開催している、青山学院大学主催のインカレサークルです。ファッションショーのほかにも、作品撮りや他団体と共催したフリーマーケット・音楽イベントの企画・運営などさまざまな活動を行っています。
部員数は20名ほど。他の服飾団体と比べると少人数ですが、所属しているのは大学生や大学院生、美大生などバックグラウンドはさまざまです。少数体制だからこそ、ファッションショーでは1人が2ルック以上を担当することもあり、一人ひとりが裁量権を持って活動できる環境です。
──ファッションショーは、全て古着のみで構成されているんですか?
柴嵜:ショーで使用するアイテムは、基本的に古着かリメイクしたものです。一からデザインして新しく制作することはありません。
──スタイリングやルックに使う古着は、どのように調達しているんですか?
榎本:毎年、古着屋さんからいただくことが多いですね。ほかにも、自分たちで集めたものやリメイクしたもの、さらに新品ではないものの行き場を失ってしまった衣料品を、セレクトショップをはじめとしたアパレル企業さんからご厚意でいただくこともあります。
──1年間の活動の流れは?
柴嵜:10月頃から、古着や使用されなくなった衣料品を企業から集めたり、モデルのキャスティングを進めたりと、本格的にファッションショーの準備が始まります。
普段の活動は、作品撮りとファッションショーに向けたミーティングが中心ですね。部員同士の交流を深めるために、みんなでフリーマーケットに足を運ぶこともあります。
──団体としては、どんな体制で活動しているのでしょうか?
榎本:スタイリング部署と演出部署の二つで活動しています。スタイリング部署は、ファッションショーでのルック組みを担当。演出部署では、ショーの音源制作などの演出、SNSコンテンツの編集、グラフィックの制作などを行っています。
私たち幹部も、運営をしながら両部署に所属しています。演出部署の中でも、グラフィックが得意な人、写真が得意な人など個性はさまざま。それぞれが自分の好きなことを突き詰められる環境は、リプラスならではだと思います。

柴嵜:私は入部した当初、カメラはほぼ初心者でした。でも、作品撮りをしている先輩たちを間近で見ているうちに興味が湧いてきて、自分でも撮影するようになったんです。写真のスキルがついたのはもちろん、自分が撮った写真がSNSにアップされるのは、純粋に楽しいです。
──基本的には全て部員のみで行っているんですね。外部のカメラマンやヘアメイクに依頼することは?
榎本:ファッションショー当日にヘアメイクをお願いすることはありますが、撮影に関しては基本的にメンバー内で完結しています。
昨年は、カメラを学んでいる先輩が中心となって、撮影技術を教えてくれました。普段から作品撮りを重ねて技術を引き継いでいくことを意識していますし、もしその年に経験者が少なくても、「やってみたい」と手を挙げてくれるメンバーがいる。そういう点でも、恵まれた環境だと感じています。
柴嵜:私たち自身も、先輩から教えてもらって今があります。だからこそ、後輩には背中で見せるというよりも、どんどん前に出て自分のやりたいことに挑戦してほしいと思っています。
ファッションショー『back in vogue』は旅がモチーフ
──2月に開催されるファッションショー『back in vogue』に込めたテーマや思いを教えてください。
榎本:「未知の世界に行く」=「旅」をテーマとして掲げています。ファッションの流行は、過去のトレンドが形を変えながら、何度も再構築されてきました。
そう考えると、未来はまったくの未知ではなく、過去と現在が混ざり合いながら存在しているものだと思うんです。そういった「時の循環」を旅というモチーフに重ね合わせたのが『back in vogue』というタイトルです。
柴嵜:旅をテーマにしつつ、同時に「まだ何も知らない世界に行く時、自分は何を持っていくか」という問いを投げかけています。そのメッセージを表現するために、すべてのルックに必ずバッグを持たせています。
榎本:空間演出でも、その世界観を反映させています。バッグを装飾として配置したり、インビテーションを搭乗券風のデザインにしたり、音源には機内アナウンスや空港のざわめきを取り入れたり。細かな仕掛けを随所に散りばめる予定です。
──実際に組んだスタイリングは?
榎本:私自身、旅を想像した時に、「お気に入りの洋服を着て行きたい」という気持ちと、心配性な性格があって(笑)。なので、大きめのトランクを持たせて、ジャケットやきれいめなアイテムを組み合わせたスタイリングにしました。
柴嵜:私はまだ製作途中ですが、キャンプが好きなので、大きなリュックや汎用性の高い寝袋を取り入れる予定です。羽織としても枕としても使えるようなアイテムを、つぎはぎでポケット状に仕立てることも考えています。同じテーマでも、人によって解釈はさまざまなので、一つのショーの中で幅広いスタイリングをお見せできると思います。
──ファッションショーで、特に注目してほしいポイントは?
榎本:まずは会場ですね。中央に光が落ちるような特徴的な構造になっているので、その空間の使い方にはぜひ注目してほしいです。会場選びにはかなり苦労したので、演出も含めて見ていただけたらうれしいです。
あとは、全てのルックに使われているバッグ。それぞれの解釈や色が、そこに集約されています。荷物をたくさん詰め込む人もいれば、最小限の人もいる。スタイリングだけでなく、その背景まで想像してもらえるようなショーにしたいと思っています。
──会場選びには特に力を入れたんですね。
榎本:昨年度はアパレル企業・ワールドの本社ロビースペースを使用させていただきました。テラススペースから中に入ってきてウォーキングする導線がとても印象的で、今年はその演出をどう超えるかが課題でした。
服飾系の学生団体が多くある中で、わざわざリプラスのショーに足を運んでくださるからこそ、昨年来てくださった方にも、初めての方にも、目新しいものを見せていきたい。そのために、まず観客の方の心をつかめるのは空間だと考えました。
柴嵜:今年はより一層ワクワクできるような空間にしたいという思いは強かったですね。何度も内見や話し合いを重ねて、納得のいく会場を見つけられたので、今は一安心です。

──準備を進める中で、苦労したことはなんですか?
榎本:部員全員でテーマの解釈をそろえることです。かなり概念的なテーマだったので、具体的なイメージがつかめない人もいたり、逆に解釈が固まりすぎてしまう人もいて。議論が白熱しすぎて、モチベーションが下がりかけてしまった時期もありました。そういった中で、チームをまとめていくのは大変でした。
柴嵜:シリアスな雰囲気になりすぎないように、意識的に日常会話を増やすようにしていました。個々が本当にやりたいことを理解したうえで、それをどう形にしていくのかを考えるのが、私たち幹部の役割だと思っています。そうして向き合ってきた結果が、今のチームの一体感につながっているのではないでしょうか。
ファッションは服を作ることだけじゃない。その先に見える可能性とは?
──そもそもReplusを知ったきっかけは?
柴嵜:大学1年生の時に、RINKANスナップで、当時リプラスに所属していた方が掲載されている投稿を目にしたのがきっかけです。そこから団体について調べてみたところ、服飾系の大学に通っていなくても参加できるインカレサークルだと知りました。普通の大学生活では経験できないことができるのでは、という期待感を持って入部を決めました。
榎本:私は柴崎と地元が同じで幼馴染なんです。SNSでつながっていたので、「一緒に新歓行ってみない?」と声をかけてもらったことがきっかけでした。
将来はファッションに関わる仕事がしたいと思っていたものの、当時はアパレル業界といえば販売職くらいしかイメージが湧かなくて。サークルに入ることで、進路の選択肢を広げられるのではないかと思い、入部しました。
他の服飾系サークルだと、スクールに通いながら1年間しっかり制作に取り組む必要がある場合が多いですが、リプラスは「服を作らなくてもファッションに関われる」「無理なく続けられる」という点で選ばれることが多いです。
柴嵜:一から服を作らずとも、古着だけでファッションショーを作り上げられる。そのこと自体が、「服を新しく作らなくても、選び方や組み合わせ次第で新しい価値や感動は生み出せる」というメッセージになると考えています。それが、リプラスの一番の魅力です。服を作ることに限らず、ファッションにはさまざまな可能性がある、そのことをショーを通して伝えていきたいです。
──なぜ、リプラスでは古着を軸にした表現を続けているのでしょうか?
榎本:大きな理由は、メンバー自身が古着そのものの魅力に惹かれているからです。それに加えて、ファッションショーで表現するうえでも、古着は必然的な選択だと感じています。新品にはない風合いや、かつて誰かが着ていた時間や記憶を纏うことによる奥行き。さらに、偶然の出会いから生まれるスタイリングは、「どう着るか」「どう見せるか」という創造性を最もダイレクトに表現できる素材だと思っています。
──活動を通して、どんな達成感ややりがいを感じていますか?
榎本:自分のスタイリングが完成した瞬間が、一番達成感を感じました。昨年、初めてファッションショーに参加したのですが、会場に見合うものが作れるか不安でしたし、専門的にファッションを学んできたわけではないので、「自分の感性が受け入れてもらえるのか」という葛藤もありました。
でも、リプラスでは部員同士でスタイリングを否定することはありませんし、いいところを言葉にして伝えてくれます。そのおかげで、自信を持って取り組めました。リプラスに入って良かったなと心から思えた瞬間でした。
多様なスタイルが共存する世の中をつくりたい
──代表としてリプラスを率いたこの一年を振り返ってみていかがでしたか?
榎本:サークルの運営が、想像以上に難しいものだと実感した1年でした。強制参加ではないので、部員のモチベーションを保つのが本当に大変で。そんな中で、どうすれば「何かやりたい」と思ってもらえるのかを考え続け、試行錯誤を重ねてきました。
──代表を務める中で、特に成長できたと感じる点はありますか?
榎本:コミュニケーション力と、先を見据えて動く力ですね。部員とのやり取りだけでなく、アパレル企業をはじめとした外部の方と関わる機会も多くありました。学生でありながらも、社会と接点を持ちながら活動できたことは、とても大きな経験だったと思います。
──今年で引退ですが、集大成となる最後のファッションショーに向けた意気込みを教えてください。
柴嵜:ファッションショーそのものはもちろんですが、音楽やインビテーション、ルックなど一つひとつの要素からショーの世界観を感じ取ってもらえたらうれしいです。
榎本:ここまで準備してきたので、会場に足を運んでいただけるだけでも本当にありがたいです。その上で、まずは純粋にファッションショーを楽しんでほしいですね。
私たちがこだわっている部分を全て言葉で説明することはできないからこそ、「こんなところまで考えて作っているんだ」という気づきを、観客の方に感じ取ってもらえたらと思っています。
──リプラスでの経験を、今後どう活かしていきたいですか?
榎本:昨年、音楽イベントを開催した際に、ファッション以外の分野の方と出会う機会が多くありました。SNSで見かけるような個性的なスタイルを当たり前に楽しんでいる人たちと同じ空間にいたことで、多様性が自然に受け入れられている場が確かに存在するんだと実感できたんです。
その経験を通して、「いろんな人がいて、それぞれ違うファッションをしているのが当たり前な世の中を作りたい」という新たな夢が生まれました。
もともとファッション業界を志望していましたが、こうした目標を持てたのも、リプラスでさまざまな経験をし、多くの人と関わってきたからこそだと思います。
──最後に、これからリプラスへの入部を考えている方にメッセージをお願いします。
榎本:「服が好きな友達を増やしたい」「服は好きだけど、アパレルで働くのは少しハードルが高い」といったシンプルな理由でも大丈夫です。まずは深く考えすぎず、一度リプラスに足を運んで、雰囲気を知ってもらえたらうれしいです。
柴嵜:規模が大きくない分、自分が関わったものをすぐに形にできる場所です。「経験がないけど大丈夫かな」と不安に思っている方こそ、ぜひ挑戦してみてほしいです。カメラやスタイリングなども含めて、みんなで一緒に取り組もうという空気感のあるサークルなので、私たちと一緒に成長していきましょう!お待ちしています!

日程:2026年2月11日(水・祝)
場所:〒166-0012 東京都杉並区和田3-11-2 コラボキャンバスヴィラート(東京メトロ丸ノ内線「東高円寺駅」下車 徒歩約10分)
時間:1部 13:00~、2部 15:00〜
入場料:1000円
入場は予約制
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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)
2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。
最終更新日:
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