

中島輝道による「テルマ(TELMA)」が今年2月、ユナイテッドアローズに事業譲渡した。ストイックな姿勢でテキスタイルやプリントといったものづくりを追求するテルマの外部資本導入は、業界の話題となった。新体制でのブランド運営を前に、2026年秋冬コレクションの展示会で、中島に事業譲渡の背景や今後について聞いた。
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中島は2010年にアントワープ王⽴芸術アカデミーを卒業。卒業コレクションが評価されたことをきっかけに、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のアシスタントとしてウィメンズデザインに携わった。帰国後は「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」に⼊社。2020年に独立し、2022年にテルマをスタートした。
最大の特徴は、ドリス ヴァン ノッテンやイッセイ ミヤケで培った、テキスタイルへの深い理解が生む、豊かな表情を持つオリジナルファブリック。また、根底に着やすさを意識しながら、和洋を織り交ぜた程よいひねりを加えたデザインで、30〜40代を中心に、50〜60代まで幅広い年齢層から支持されている。
デザインからバックオフィス業務までワンマンで行うのは、日本のデザイナーズブランドにとって珍しくはないものの、中島は「それではこれ以上クリエイティブと日本の素晴らしい繊維産業の可能性を広げることができないと思った」と語る。情報過多な世の中で、自信を持って良いと言えるものづくりをしていても、「それだけ」では還元しきれないと痛感したという。
「テルマのものづくりの本質は人の手仕事。産地や職人さんたちの三次元的な仕事に価値があり、ブランドを通じて、その現場の熱量や背景まで伝えるのを命題としていた。ありがたいことに、取引先は順調に増え、10年、15年と、ブランドを“ただ”続けることはできたと思う。しかし、日本の素晴らしい産地が少しずつ失われていく現状を目の当たりにし、ジレンマを感じていた」(中島)。
そうしたタイミングで、ユナイテッドアローズ社と対話する機会を得た。同社は自社開発が難しい高付加価値モデルや、ポートフォリオの強化を進めており、テルマのものづくりを高く評価。ブランドビジネスだけでなく、日本が誇る技術をクリエイティビティとして取り入れる姿勢に共感を得たという。体制の移行は順次行っており、バックオフィス業務や、コミュニケーション戦略などでユナイテッドアローズ社のリソースを活用し、整理していく。また、現在は北米のみで展開している海外市場に目を向け、アジアやヨーロッパ市場を視野に入れる。


2026年秋冬コレクションより
中島による独立体制でのラストシーズンとなった2026年秋冬コレクションは、「衝動と洗練」をテーマに設定。喜多川歌麿の美人画に見られる、縞模様や草木染めのデザインに着想。削ぎ落とされた表現の中に存在する美意識を見出した。
新作では、製造の過程で生まれる残反を裂き、糸に再生し、手編みしたニットベストが登場。手仕事の温かみと華美な雰囲気を兼ね備えている。江戸時代に木綿の普及とともに広がった縞模様を取り入れたワンピースは、手描きで縞を引くことで線に細かな揺らぎを生んだ。また、日本画の「裏彩色」の技法を応用した格子柄のトップスやスカート、ドレスには、生地の表と裏から異なる柄をプリント。光が透過すると下の色が浮かび上がるため、着る人の動きや光の当たり方で表情を変える。
毎シーズン産地に赴き、職人たちと切磋琢磨するものづくりを重視する中島は、「産地をただ守るべき伝統とは思いたくない。職人の方々はクリエイターで、刺激的で創造性が豊かだ」と自論を述べた。「各工場が持つ技術を導入するのではなく、デザイナーとしてアイデアや新しい視点を投げかけながら化学反応を起こす。それがテルマらしい産地のフックアップだと思っている」と語った。


ファッション業界で独立系ブランドが外部資本を入れた際、クリエイティブより「売りやすさ」を優先されるなど、パワーバランスが不均衡になるケースもある。これに対し中島は、「デザイナーズブランドの一つの選択肢になれるよう、良い関係を築きたいと思っている。そのためにも、これまで以上にブランドの創造性を本質として追求していく。ぜひ、業界の皆さんやブランドを大切にしてくれる方々に見守ってもらいたい」と意気込んだ。
最終更新日:
■テルマ:公式サイト
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