
Image by: Miyuu Doi
原宿のシビック・クリエイティブ・ベース東京(以下、CCBT)が、新たな「ミートアップ」シリーズ企画「Open Base Saturdays」をスタートした。毎月第一土曜日に開催される同イベントは、CCBTの2026年度のテーマである「シビック・ファッション」を軸に、異なる専門性や視点を持つゲストを招いたトークや対話の場を開いていく。
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第1回では「シビック・ファッションはじめます」と題して、ファッション論研究者の蘆田裕史氏と、都市やコミュニティに関わる実践を重ねてきたアーバニストの石川由佳子氏が登壇。「シビック・ファッション」という言葉の意味や定義、そこから立ち上がる問いについて対談を行った。

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2022年に渋谷に誕生し、2025年12月に原宿へ拠点を移したCCBTは、アートとデジタルテクノロジーを通じて人々の創造性を社会に発揮するための活動拠点。アーティスト・フェローを支援する「アート・インキュベーション」などを中心に、市民を巻き込み、多様なプレイヤーとの共創・ラボ機能を有しているのが特徴だ。
2026年度のテーマ「シビック・ファッション」はCCBTの造語。「ファッション(fashion)」という言葉の語源であるラテン語「ファクシオ(factio)」が、「つくること」「実践すること」「集団的な行為」を意味することから、CCBTの活動と呼応するキーワードとして選定されたという。CCBTテクニカルディレクターの伊藤隆之氏は、「ファッションは『衣服』だけでなく、人間同士の共鳴関係なども表す言葉だと捉えている。原宿というカウンターカルチャーが立ち上がってきた場所で、市民活動の移ろいも含め、みんながクリエイティビティを発揮する面白さに繋がれば」と、その意図を語る。

CCBT 3階「BASE」
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都市の「使い手」になるということ——アーバニスト 石川由佳子の実践
イベントでは、今年度のアート・インキュベーションのメンターも務める2人の活動紹介からスタート。石川氏は、自らを「都市に住みながら生活を楽しむ個人」としてのアーバニストと称する。特に東京では、何かを消費しなければ自分の居場所を得られない状況になっているなど、都市における「作り手」と「使い手」の乖離に違和感を抱いてきたことから、「市民が自由に楽しく都市に介入し、自分たちらしく使えること」をテーマに国内外でプロジェクトを実践してきた。
同氏は、神田の元純喫茶をリノベーションした、若い世代が街の未来に関わるための学びと実践の場「綿毛」の運営や、西新宿の大規模開発予定地の空き地を活かし、地域の子どもたちと作ったコミュニティガーデン「苗」など、巨大な都市開発のプロセスに“極小プロジェクト”を持ち込む活動を紹介。また、伐採される街路樹のデータマップ化など、「使い手」の視点から都市の余白や可能性を拓いていく取り組みについて語った。

石川由佳子氏
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「シビック・ファッション」=流動的で“訂正可能”な都市のあり方
続いて蘆田氏は、「シビック・ファッションとは何か」というテーマそのものについて、批評的な視点から問いを投げかけた。ファッションを「装い」としたとき、シビック・ファッションを「都市の装い」と考えてしまうと、公園や建築、街路樹、人々といった都市の表層にあるものすべてが含まれてしまい、何も定義したことにならないと指摘。そこで、蘆田氏は建築のように静的で固定化された風景としての「ランドスケープ」という言葉を「シティスケープ(都市風景)」と対比させた。ファッションを流れゆく動的なものと捉え、批評家 東浩紀氏の議論を参照しながら、シビック・ファッションを「流動的で軽く、変化し続ける『訂正可能なものとしての都市』」という概念として提案。そのうえで、「都市を実践する人の役割とは何か」「変化しない都市は本当に良いのか」という2つの問いを提示した。
「サステナビリティが叫ばれ、長く使える変化しないものが良いとされがちですが、人間も価値観も変わり続ける中で、都市だけが不変であることは難しい。アスベストのように、かつて有用とされたものが危険になることもある。もっとフレキシブルに、変化に対応できる都市のあり方を考える上で、軽やかで変化し続けるファッションが参照項になる可能性があると考えています」と話した。

蘆田裕史氏
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思考停止から抜け出し、都市を使いこなす「市民の筋力」
後半では伊藤氏も加わり、「シビック・ファッション」にまつわる鼎談が行われた。伊藤氏は、CCBTの名称にも含まれる「シビック」の由来が、一般市民がテクノロジーを用いてクリエイティブに社会課題に取り組む「シビックテック」にあると説明。その活動のあり方や理念には、小さな規模で実践を行う石川氏の活動と共鳴する部分があることに触れた。
蘆田氏は、石川氏が「アーバニスト」という一般的には普及していない肩書きを名乗っている点に注目し、建築や都市計画といった「作り手」の視点だけでは足りないという覚悟の表れではないかと言及。そして、ファッションも作り手の手を離れたところでユーザーが実践(着用)をしているにもかかわらず、「使い手」の視点があまり語られてこなかったことを指摘した。
一方石川氏は、都市計画の分野でも、近年は市民が主体となって公共的なものに関わっていく流れがトレンドになっていると応答。「かつてはサービスを受け取る『消費者的』だった市民が、自ら生産し使っていくパワーを持たなければいけない時代になってきている」と話した。

(左から)伊藤隆之氏、石川由佳子氏、蘆田裕史氏
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また石川氏は、コミュニティを直接「デザイン」するのではなく、自然発生しやすい「環境や状況」を作ることに関心があると説明。自身の活動でも、自分の責任が持てる小さな範囲で変化を起こす実践が集合することで、やがて大きなインパクトになるという考え方を重視していると話した。
さらに同氏は、現代の都市環境において、自ら思考せずともシステムの中で容易に生活できてしまう現状を「思考停止に陥りやすい危機的な状況である」と指摘。「今のルールを破ったりずらしたりして、都市の使い方を拡張できるような個人の筋力が必要。そのためのトレーニングができるような状況や場所をもっと増やしてアーバニストを増やしていけば、街を変えていくことができると信じている」と語った。
巨大企業への「抵抗」ではなく、小さな「実践」を
対談後には、参加者からアプリを通じてリアルタイムで寄せられた質問に2人が回答。「今の日本の街について、訂正可能であればいいのにと思うポイントは」という問いに対して、蘆田氏は、町家をリノベーションしたという京都の自宅にまつわる実体験を語った。「10年前に家族の共有スペースとして作ったワークスペースが、コロナ禍でオンライン会議が増えたことで使いづらくなってしまった。社会状況の変化に対応できない家のリスクを痛感し、家も都市も、使い手が訂正可能なものであれば」と言及。一人ひとりが「もっとこうだったらいいのにな」という視点を見つけて共有できる場所の必要性について話した。
それを受けて、石川氏はその都市や人々のムードによって装いが変わるという実体験から、都市と個人の間にある「中間領域」に対してならより軽やかにアプローチできるのではないか、と指摘。都市にいる人々のムードや自転車文化など、環境から身体、身体的な感覚から環境にアプローチするといったアイデアを、CCBTのアート・インキュベーションでも支援していくことになるのではないか、と語った。

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また、「巨大企業による都市開発や“商品”としてのファッションへの抵抗として、人々が実践できることは?」という問いに対して、蘆田氏は「オートクチュール(高級仕立て服)が主流になる以前の、生地屋で布を買い、仕立屋に服を作ってもらうあり方にヒントがある」と言及。既製服の選択肢の中から選ぶだけでなく、ユーザーが作るプロセスに関われるシステムがあれば、都市の風景も変わるかもしれないと提案した。
一方、石川氏は自身の街路樹伐採に対する取り組みへの実体験から、「『抵抗』では変わらない」と断言。問題が起こる「手前」で介入し、未成熟であっても自分たちの主張を言葉だけでなく「実態を持って形にしていくこと」が重要であり、その小さな実践が、大きな動きへのインパクトを持ちうる時代になっていると語った。
交流から生まれる次なるアクションと、CCBTの今後の展開
トークセッション終了後には、同館3階のBASEでゲストの2人と来場者たちとの対話の時間として、「Base After Hours」を実施。リラックスした雰囲気の中で自由な交流が行われ、一方向的なインプットにとどまらない、双方向的なコミュニケーションが生まれる場となった。そのほか、会場内には蘆田氏と石川氏による「おすすめ図書」のコーナーなども設置された。



「Base After Hours」の様子
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次回、7月4日に開催予定の第2回のゲストには、ファッションとカルチャーをめぐるウェブメディア「ACROSS」のファウンダーであり、現在明治大学商学部の特任講師も務める高野公三子氏が登場。「ファッションから都市を読む―定点観測40年の視点から」と題し、渋谷・原宿のファッションを40年にわたり定点観測してきた同氏の視点から、「都市風景」としてのファッションを紐解くという。

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今後、CCBTでは8月7日から11日に、蘆田氏がディレクターを務める5日間の短期集中ワークショップ「Future Ideations Camp Vol.8:30年後のファッションを想像する」を開催するほか、蘆田氏と石川氏は、今年度のアート・インキュベーションのメンターとして、選出されたアーティスト・フェローを年間を通じてサポート。数回の面談やオンラインでのコミュニケーションなども交えて深く関わりを持ちながら、来年3月まで制作に並走するという。
最終更新日:
◾️「Open Base Saturdays」第2回「ファッションから都市を読む―定点観測40年の視点から」
ゲスト:高野公三子(明治大学商学部特任講師、パルコ「WEB ACROSS」ファウンダー)
モデレーター:島田芽生(シビック・クリエイティブ・ベース東京)
開催日:2026年7月4日(土)
時間:18:00〜20:00(受付開始・開場:17:30)
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京 地下1階 STUDIO・3階 BASE
所在地:東京都渋谷区神宮前1-14-4
定員:30名
参加費:無料
事前申込:不要・当日受付のみ
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