左からMK・リー、イ・ミョンス
Image by: FASHIONSNAP

左からMK・リー、イ・ミョンス
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2015年にソウルにオープンしたセレクトショップ「ショップ アモーメント(SHOP AMOMENTO)」を母体に、2016年オリジナルブランドとして誕生した「アモーメント(AMOMENTO)」。余白の美しさと静かな上品さを宿した韓国ブランドとして、その名を耳にしたことのある人も多いだろう。ブランドを率いるのは、空間デザインを学び独自の美意識を築いた姉MK・リー(MK Lee)と、ファッションMDとしての経験を背景に戦略的視点で支える弟イ・ミョンス(Myeongsoo Lee)。節制の効いたデザインと建築的なシルエットでタイムレスなクラシックを再解釈し、着る人にそっと寄り添うアイテムを提案している。
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そんなアモーメントは10年目を迎えた今年、初のグローバルストアを東京・表参道にオープンした。世界的な韓国ブームの追い風の中で、“Kファッション”と一括りにされた語られ方に違和感を抱いてきたという二人が、あえて今、東京を選んだ理由とは。そして、この街から彼らが見つめようとしている新たな景色とは。ブランドの思想が空間として息づくこの新しい場所で、その原点とこれからを聞いた。
表参道フラッグシップストアのオープンに先駆け公開されたムービー Video by AMOMENTO
目次
始まりは“好き”を詰め込んだ小さなお店
──ご姉弟でブランドを始めたきっかけを教えてください。
MK・リー(以下、MK):私が2015年に「ショップ アモーメント(SHOP AMOMENTO)」という小さなセレクトショップを韓国・ソウルにオープンして、約1年後に弟のミョンスが合流しました。
大学では空間デザインを専攻していたので、自分の手で、自分が心地良く過ごすための空間を作ることに興味があって。空間を編集し、誰かに届ける仕事を考えたとき、セレクトショップという形がしっくりきたんです。韓国だけでなく、日本、イギリス、アメリカ、デンマーク、スペインなど、世界中から洋服やアクセサリー、雑貨を選び、自分の好きを詰め込んだ空間を作りました。
ミョンス・リー(以下、ミョンス):実際に始めてみたら、一人でやるのが寂しくなったみたいで(笑)。ファッションブランドでMDをしていた僕に声をかけてきたんだよね。
MK:そう(笑)。頼れるパートナーが必要だと思ったとき、真っ先に頭に浮かんだのが弟で。言葉巧みにスカウトして、社員第1号になってもらいました。

── 身内だからこその信頼感もありますよね。弟さんが加わったことで、どんな変化がありましたか?
MK:ミョンスはファッション業界での経験も知識もある心強い存在で、彼が加わったことで、できることが一気に広がりました。セレクトという形ではどうしても理想の100%を表現しきれないもどかしさがあって。そこで、弟が加わったタイミングで「自分たちの理想を形にした服も作ろう」と舵を切り、オリジナルブランド「アモーメント」を立ち上げました。
正直、セレクトショップを始めた当初は、どこか趣味の延長のような感覚もあり、ビジネスとして大きな成功を目指していたわけではなかったんです。でも、弟が加わった瞬間、当たり前ですが彼の人生を預かる立場になってしまって(笑)。そこから、「ちゃんと事業として向き合わないと」と意識が大きく変わりました。一人なら成功も失敗も自分だけの責任ですが、誰かと組む以上は、必ずうまくいくべきだと覚悟が生まれました。
ミョンス:合流した当時印象的だったのは、日本のお客様やバイヤーの方々が、すごく早い段階で私たちを見つけてくださったこと。ブランドとして初めて買い付けてくださったのも、日本のベイクルーズが展開する「フレームワーク(FRAMeWORK)」でした。今もお取り扱いいただいていて、本当にありがたいご縁です。現在は日本をはじめ、中国、カナダ、アメリカ、イギリスなど幅広い国のバイヤーさんとお取引していますが、“アモーメントらしさ”を最初に敏感に受け取り、評価してくださったのは日本だったと感じています。
──日本での認知度も高いアモーメントですが、何か意識的に取り組んだことはありますか?
ミョンス:いろいろありますが、SNSでの取り組みの反響は大きかったと思います。韓国のアパレルブランドでは、SNSや店舗の内装で世界観を徹底的に作り込み、その世界観を“視覚として翻訳して発信する”ことが、もはや前提になっています。私たちもブランド設立当初から、服そのものだけでなく、空間や温度、空気の揺らぎといった目に見えないムードまで含めて届けることを意識してきました。
アモーメントは、派手なロゴやキャッチーなヴィジュアルで注目を集めるタイプではなく、ニュアンスや余白、素材そのものの美しさで心を掴むブランドです。繊細なトーンを伝える上で、SNSは写真1枚で世界観を共有できる有効な手段でした。国境を越えるスピードも早く、日本の方々はディテールや空気感を丁寧に読み取ってくださる方が多いため、SNSを通じた共鳴が生まれやすかったのだと思います。
服は人が纏う最も近い“空間”
──「選ぶ」と「つくる」は異なる難しさがあると思います。リーさんはデザインを学んだ経験はなかったんですよね?
MK:そうです。デザインの仕方は仕事を通して習得しました。でも、空間デザインを学んでいた名残なのか、私の服の捉え方は少し独特なのかなと。私は服を作る時、服を人が纏うことができる、最も近い空間だと考えてデザインしているんです。その空間は、建築的、造形的に美しいだけでなく、同時に快適でなければなりません。そういった空間がもたらす心地よさを、服に込めるつもりでデザインしています。
──インスピレーションはどのようなものから得ていますか?
MK:本当にあらゆるものからです。天気や、偶然カフェで見かけた人の佇まい、道端に無造作に置かれた石からデザインが浮かぶこともあります。日常の中で自然と入ってくる景色や情報を、自分なりのフィルターで受け取り直している感覚です。あとは、美術家のリ・ウファンさんの作品もとても好きで、よく見ています。

2025年秋冬コレクション
Image by: AMOMENTO

2025年秋冬コレクション
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──2026年プレスプリングコレクションは日本の喫茶店をイメージしていました。
MK:プレゼンテーションは、日本の美意識が色濃く息づく和敬塾本館(旧細川侯爵邸)で行いました。喫茶店は、西洋文化を柔軟に取り入れながら、日本ならではの美意識として昇華し、現代まで受け継いできた場所。提供される飲み物や食べ物は、韓国で馴染みのあるものとは少し違っていて、最初に足を運んだときは戸惑いもありました。でも、だからこそ喫茶店という空間に流れる独特の空気や佇まいが、とても印象的で。静かで、慎ましいのに、どこか芯のある雰囲気に強く心を掴まれました。外から来た人間だからこそ面白いと感じた視点を、コレクションに落とし込みたいと思ったんです。なので、プレゼンテーションの演出は、モデルたちを喫茶店に来店する”お客さん”とウェイターに見立てて、私が日本で体験した喫茶店でのひと時をなるべく再現できるように工夫しました。

2026年プレスプリングコレクション
Image by: FASHIONSNAP

2026年プレスプリングコレクション
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ミョンス:日本に来るたびに制服が面白いって言っているよね。前回来たときは、お寿司屋さんの大将の格好を興味津々に見ていたのを覚えてる。
MK:そうそう。街中をぼーっと見ていているだけでも、韓国では見かけない制服姿の人が行き交っていて、本当に面白いんです。
──今、韓国にはシンプルなデザインを打ち出すブランドが多くあります。他ブランドとの差別化はどのように意識していますか?
MK:まずは、シルエットです。例えば今私が着ているラウンドショルダーのコートは、同じ見え方でも毎シーズン必ずパターンを引き直し、アップデートしています。微細なカーブや肩の落ち方、袖のふくらみなど、1mm単位で調整を加えることで、シンプルでも存在感のあるシルエットが生まれる。そこにブランドらしさが宿ると考えています。


あとは、生地選びです。理想とするラインや質感を叶えるために、アイテムごとに最適な素材を世界各国から厳選しています。同じアイテムでも、シーズンごとに生地を見直すことも珍しくありません。なかでも日本の生地は、繊細さとクオリティが高く、最も多く仕入れている国の一つです。
Kファッションではなく、「アモーメント」として世界へ
── ブランド10年目という節目での海外初出店は、大きな決断だったかと思います。
ミョンス:実は、東京ストアの準備は2年ほど前から始めて。2022年8月に、まさに新店舗をオープンしたエリアでポップアップストアを開催したのですが、それが予想を超える大きな反響をいただきました。そこで、ポップアップのように厳選したアイテムだけでなく、私たちがつくる空間ごとアモーメントを体験してほしいという想いが強くなりました。
オープンまでに時間がかかったのは、理想の物件に出会うまで妥協したくなかったから。結果的に10年目という節目と重なりましたが、それも自然な流れだったように感じています。

2階の販売スペースにはブランドのフルラインナップを揃える
MK:出店を決めた背景には、日本の消費者特性もあります。韓国ではSNSを起点とした購買行動が一般的で、来店から購買までの意思決定が比較的スピーディーです。一方、日本では“情報収集 → 実物を比較 → 体験”というプロセスが重視される傾向がある。だからこそ、ブランドの世界観を立体的に体験してもらえる“場”の構築が不可欠だと考えました。この旗艦店は単なるストアではなく、グローバルブランドとしての価値を発信する拠点として位置付けています。
── 東京にもさまざまなエリアがありますが、その中で表参道エリアを選んだ理由はありますか?
MK:人々がショッピングを楽しめるエリアから遠くなく、それでいて少し落ち着いた場所を探してたどり着いたのが、この場所でした。窓の外に広がる豊かな木々の景色も気に入っていて、都会の中にありながら自然からのインスピレーションや心の安らぎを感じられるところが魅力です。何かを誇示したり華やかに見せたりするより、静かに自分たちの声を届けたいという思いを込めた私たちのブランドの雰囲気にもとてもよく合っていると思います。

ミョンス:韓国の店舗も、通りからはお店があると分かりにくい場所にあえて構えているんです。外の空気や喧騒から少し距離を置いて、扉を開けた瞬間にアモーメントの世界に没入できるような体験を大切にしていて。東京でも、その空気感は変えませんでした。
今回の店舗は、あえて2階にエレベーターが止まらない設計にしています。まず3階の展示スペースでブランドの世界観に触れていただき、その流れのまま2階で商品をご覧いただく。そんな体験の順序を意識した空間作りにこだわりました。

3階展示スペース

3階展示スペース
── ここ数年、日本ではいわゆる“Kファッション”(韓国を起源とするファッション全般を指す)の人気が高まっています。そうした潮流の中でアモーメントの現在地をどのように捉えていますか?
MK:アモーメント自体は、昨今の盛り上がりよりもずっと前から活動しているので、流行の波に乗っているという感覚は正直ありません。それに、私たちは“Kファッション”というカテゴリーの中で語られるブランドではないと思っています。もちろん韓国で生まれたブランドではありますが、国籍という一つの軸だけで括られてしまうと、ブランドとしての意図や思想が十分に伝わらない気がしていて。韓国文化の一端として見られたいのではなく、アモーメントという一つの価値観と世界観を持つブランドとして、どの国の方にもフラットに受け取ってほしいんです。
とはいえ、いまの追い風は、私たちにとっても、これから挑戦する韓国ブランドにとっても、とても良い機会だと思っています。それぞれが自分たちの価値を世界に示していける状況は素直に嬉しいですし、励みになります。
──世界中で多くのファッションブランドが生まれる中で、ブランドの現在地をどう捉えていますか?
MK:どこかと比較して、このポジションにいると定義することはあえてしていません。アモーメントは、常に自分たちの歩幅で、自分たちらしい道を進んできたブランドだと思っています。
急激な成長ではありませんでしたが、この10年間、毎年少しずつ、着実に前へ進んできました。ありがたいことに、予期せぬ良い出会いやチャンスにも恵まれてきたと思います。その機会をいただいたとき、ブランドの規模に合わせた形で丁寧に向き合い、最適な方法を探しながら取り組んできたことが、現在に繋がっていると感じています。
──印象に残っている出会いはありますか?
ミョンス:先ほど話にも上がった、フレームワークからいただいた買い付けオーダーです。当時はまだホールセールの仕組みが整っていなかったのですが、その出会いをきっかけに卸の体制を整備し、本格的に取り組むようになりました。こうした一つひとつの出会いや選択が積み重なり、アモーメントらしい自然な成長に結びついていると思います。

──今後の展望について教えてください。
ミョンス:国境に囚われない、グローバルブランドとしてアモーメントを育てていきたいと思っています。これまでも、トレンドではなく、自分たちのリズムと感性を大切に歩んできましたし、その姿勢はこれからも変わりません。より多くの人にブランドを好きになってもらえたら嬉しいです。
MK:これまでは、静かな場所で、自分たちの声をそっと届けることを大切にしてきました。しかし、世界各地でポップアップを行う中で、思いがけない場所でも私たちの世界観に共鳴してくださる方々と出会い、驚きと励ましをもらってきました。だからこそ、これからはブランドの本質はそのままに、人々が求めてくれる場所へ私たちのほうからも積極的に歩み寄りたいと思っています。
そして今回表参道にオープンした店舗は、その第一章です。日本各地、そしてフランスやアメリカ、中国など、国や文化に境界を引くことなく、アモーメントらしさを求めてくださる方々がいる場所へ足を運びたいです。ブランドの本質は守りつつ、新たなアモーメントを常に模索していくつもりです。
最終更新日:
■AMOMENTO TOKYO FLAGSHIP STORE
営業時間:12:00〜20:00
所在地:東京都渋谷区神宮前5-49-9 2〜3階
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