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バカンスは日常の上に成り立つ オーラリー岩井良太の夢と現実を行き来するワードローブ

 「バカンスの前、みんながウキウキしている雰囲気が好きなんです」。そう話すのは、パリファッションウィーク初日にランウェイショーを開催した「オーラリー(AURALEE)」デザイナーの岩井良太だ。2027年春夏シーズンでは、人生を彩る「休暇」にフォーカスを当て、日常と非日常が交差する、軽やかで解放感に満ちたワードローブを提案した。

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 オーラリーがパリファッションウィークの公式スケジュールのランウェイ枠に名を連ね、ショーを開催するのは早6回目。春夏シーズンのショーだけでも既に3回を数える。岩井は、6月にパリを訪れるたびに、パカンスを目前に控えた現地の人々が「休暇はどこに行くの?」と楽しそうに話しているのを耳にしてきたという。このポジティブな雰囲気をクリエイションに落とし込みたいと考えたのが、今回のコレクションの出発点だ。

 岩井は、「休暇」というテーマを3つに細分化し、コレクションを構成した。1つ目は、バカンスを前に心を躍らせながら日常を生きている状態。序盤には、テーラードジャケットや端正なシャツといった、いわゆるオフィスウェアを彷彿とさせるスタイルが登場した。しかし、どこかリラックスしたシルエットやインナーに忍ばせたカラーリング、無造作に開けられたシャツのボタンといった細部からは、仕事中でありながらもホリデーのことで頭がいっぱいで、心ここに在らずな高揚感が滲み出ている。

 2つ目は、実際に休暇を過ごしている状態。自身もアジアやヨーロッパ、南米などを休暇で訪れたという岩井は「旅行中にその土地の伝統的な服など、普段着ないような服にチャレンジしたくなることもありますよね。それってすごく健康的で素敵なことだと思うんです」と話す。この言葉を体現するように、コレクション中盤にはプレイフルな総柄シャツやチャイナトグル仕様のトップスなど、これまでのオーラリーでは積極的に打ち出してこなかったアイテムを揃えた。

 3つ目は、バカンスを終え、日常に戻ろうとしている「帰り道」。終盤のルックでは、旅先で手に入れたスーベニアを思わせるフルーツや動物などのユニークなアクセサリーが、お決まりとも言えそうなオーラリーのクリーンなスタイルにランダムに取り入れられた。「旅先で影響を受けたものを持ち帰ることで、旅行する前とはまた違った日常になる。その後にも影響を与えてくれるのが休暇の魅力の一つ」と岩井。休暇の思い出とともに少しだけアップデートされた、新しくも心地よい日常スタイルだ。

 これらのほか、コレクションには3つのどのカテゴリーにも属さないワークテイストのアイテムが登場する。岩井は、着古されていたり、破れがあったり、丈が合っていなかったりといったディテールを通して、「人間の不完全性」を表現したかったという。同様のアプローチはスタイリングにも見られ、ジャケットのラペルからわざと片方のシャツの襟を出さないことで、チグハグな印象に仕上げている。まるで「バカンスは完璧にプラン通りでなくとも、もっと言えば遠出をしなかったとしても素晴らしい。人それぞれの楽しみ方がある」と肯定してくれているようで、心が軽くなるような感覚があるのは私だけだろうか。

 バカンスは、日常があるからこそ心から楽しむことができる。逆もまた然りで、人は楽しみがあるから毎日を力強く生きることができる。責務を果たす日々と、心を解放する時間。そのどちらが欠けても人生の豊かさは成立しない。オーラリーの服の真価は、まさにその相反する二つの領域を優しく調律するような、絶妙なバランス感覚にこそある。今季のコレクションで岩井が提案した夢と現実を行き来するようなワードローブは、毎日を生きる私たちの背中を静かに押してくれるに違いない。

最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

村田太一

Taichi Murata

群馬県出身。男子校時代の恩師の影響で大学では教員免許を取得するも、ファッション業界への憧れを捨てきれず上京。2021年にレコオーランドに入社。主にビジネスとメンズファッションの領域で記事執筆を担当する。幼少期、地元の少年野球チームで柄にもなくキャプテンを任せられた経歴を持ち、今もプロ野球やWBCを現地観戦するほどの野球ファン。実家が伊香保温泉の近くという縁から、温泉巡りが趣味。

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