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ビューティ研究員「美をつくる人」 「リンクルショット」の“二代目”研究員、ポーラ楊一幸の場合

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ビューティ研究員「美をつくる人」 「リンクルショット」の“二代目”研究員、ポーラ楊一幸の場合

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 普段あまりスポットが当たることのない、化粧品開発の裏で奮闘する研究員にフォーカスするインタビュー連載。第2回目のゲストは、ポーラ化成工業の楊一幸フロンティアリサーチセンター副主任研究員。2017年に発売し業界内外の話題の中心となった、日本初のシワ改善薬用美容液「リンクルショットメディカルセラム」(以下、リンクルショット)を引き継ぎ、2017年からプロジェクト開発リーダーを務める。好奇心旺盛なごくごく普通の少年が、日本の化粧品業界に一大旋風を巻き起こすヒット化粧品のプロジェクトリーダーになるまで、そしてリンクルショットのこれからについて伺った。

「リンクルショット メディカル セラム」(税込1万4850円)

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楊一幸(ポーラ化成工業 研究所 フロンティアリサーチセンター副主任研究員)
高等専門学校卒業後、広島大学で修士課程終了後、2009年ポーラ化成工業に入社。基盤研究部隊として、肌荒れやアンチエイジングにまつわる研究に従事。2014年にアメリカ・ボストン近郊のロジャーウィリアムスメディカルセンター病院で研鑽を積み帰国後、二代目リンクルショットプロジェクト開発リーダーに就任、現在に至る。

幼少期の夢

ーさまざまな選択肢がある中で、いつ頃から研究職を志したのでしょうか?

 小学生の頃にはもう「何かの研究者になりたい」と漠然と考えていましたね。

ー小学生の時から!それはずいぶん目覚めが早いですね。

 「シティハンター」を見てバズーカを打つ人になりたいとか、「スラムダンク」を見てバスケットボール選手になりたいとか、テレビドラマやアニメの影響を受けて夢がコロコロ変わるごくごく普通の子どもだったのですが、当時「Xファイル」というドラマが流行っていて、それを見た時に、ルーティンワークよりは科学捜査とか、かっこいいなと漠然と思っていたんですよね。もちろん、そこからブレずに研究者になるために努力し続けたというわけでは全然ないんですけど(笑)。

ーいろんなことに興味を持つ好奇心旺盛なお子さんだったんですね。もともと化学がお好きだったんですか?

 そうですね。子どものころから理科の実験が大好きだったので、高校は実験・実習が多くて専門分野を極められる、高等専門学校(高専)を選んだんですが、そこでの5年間は化学を専攻していましたね。化学と言っても幅広く、化学に関するさまざまな勉強をしていたのですが、難しいながらも一番興味を引かれたのが生物化学でした。正直、成績はあまり良くなかったのですが、猛勉強をして大学も生物化学を専攻しました。

高校生時代の将来像

ー高専だと卒業後は就職される人が多いイメージがあるのですが、大学へ進学されたのですね。

 はい、高専は就職率の高さが売りのひとつなので、おっしゃるようにそのまま就職する人も多かったのですが、私は培ってきた専門性をさらに磨き上げて研究開発に活かしたくて、広島大学へ進学しました。今は変わっているのかもしれませんが、私の時代は高専卒だと研究者への道があまりなく、企業規模での研究職の募集を見ると最低ラインが大学卒で、修士卒が望ましいというところも多かったように思います。

ー研究を極めるための大学なんですね。

 このときは就職することはあまり考えていなくて、とにかく研究を続けたいと思っていました。しかし大学4年になって研究室に配属されることが決まったころ、ちょうど父親の体調が悪化してしまって...。大学院へ進学せずこのまま就職しようかと考えていたのですが、「やりたいことがあるならやりなさい」と両親が背中を押してくれたんです。それがなかったら就職していたと思いますし、現在のような研究職にもついていなかったかもしれません。

ポーラを選んだ理由

ーそこから院へ進み修士課程を修了後、ポーラ化成工業(以下、ポーラ)に就職されたわけですが、なぜ化粧品業界を選ばれたのですか?

 正直、そこまで化粧品にこだわりがあったわけでも、興味がすごくあったわけでもなかったのですが、とにかく何かの研究職に就きたいと思っていたんです。いろんな可能性を探っていく中で、化粧品業界はサイクルが早く、ひとつの研究成果を早く出さないといけないというミッションがあるし、成果が目に見えるのが面白そうだと思ったんですね。

ーファッションをかじったことがあると、ビューティ業界は製品開発に時間を掛けるイメージがありますが、そうではないのですね。

 そう思われるかもしれませんが、大学の研究はさらにロングレンジでなかなか成果が見えづらい...。せっかちな自分の性格にも、化粧品の研究の方が合いそうだと。

ーなるほど。では、ポーラを選ばれた、1番の決め手は何だったのでしょう?

 きっかけは「アペックス・アイ(APEX-i)」(現「アペックス」)ですね。一人ひとりの肌に寄り添う“個肌対応”が魅力のブランドなのですが、そうなるとどうしても少量多品種の生産になりますよね。コストが高くなるのは明らかなのに、それをあえてするところに信念を感じました。自分なりの正義がある、といいますか。ここでなら自分(たち)の思ったことを形に残せるのではと思ったんです。

ー今でこそ化粧品はジェンダー問わず必要不可欠なものと認知されていますが、ひと昔前までは女性が使うものという認識が強かったかと思います。化粧品業界に抵抗はなかったのですか?

 あまりなかったですね。というのも、実は母が昔、百貨店で働いていて、化粧品コーナーの香りや風景になじみがあったので。家でも母の化粧品で勝手に遊んで怒られたりしていましたし、むしろ親近感がありました。

ポーラでの研究内容

ーそうだったのですね(笑)。それは面白いエピソードですね。ではポーラに入社されて研究所では、主にどんな研究をされているのですか?

 入社して半年は肌あれの研究をしていて、そこからはアンチエイジング研究を8年。人はなぜ老化をするのか、老化する細胞の特徴は何かという基盤研究をしています。その成果をもとに製品コンセプトを考えたりもしますね。ポーラは基盤研究部隊がとても特殊でめちゃくちゃ分野が広いんです。今は医薬部外品の有効成分をつくる部隊と、肌研究部隊、製剤を新しく作る部隊、人のライフログみたいなものをとっておいて人生をより豊かにするにはどうすべきか研究する部隊など多岐に渡ります。研究職と言っても、よくイメージされるビーカーワークだけじゃないので、私はリモートワークが多くてよく驚かれます。「家で研究できるんですか?って」(笑)。

ーそれは驚きです(笑)。その後は、どんな研究をされていたのですか?

 実は2014年にアメリカのボストン近くの病院のラボで2年間研究をしていました。当時立案していたプロジェクトに、その病院の教授が持つ紫外線や光のダメージに関する知見が必要だったこともあり、会社に直談判して派遣させてもらったんです。研究内容は、「細胞の老化をどうやって食い止めるか、逆戻しできるのか」というもの。よく言われるiPS細胞って、運命が決まってしまった細胞を巻き戻してどんな細胞にもなれるようにするもの。そこまで戻せるのなら、皮膚の細胞も時間を巻き戻してより活性の高い細胞にできないかという研究をしていました。

ーその研究はすでに製品として形になっているのでしょうか?

 はい。その研究成果は、2020年発売のB.Aに生かされています。

海外生活と趣味の話

ーボストンでのご苦労はありませんでしたか?

 仕事とは関係のない話ですが、ボストンって室蘭と同じぐらいの緯度で豪雪地帯なんです。私が行った年はちょうど観測史上最多の降雪量で通勤が大変でした。車社会なので、車がないと出かけられないのですが、全くブレーキがきかなくて(笑)。でも、楽しい思い出の方が多かったですね。もともとサルサダンスが趣味で、NYはそのメッカ。車で3時間でいけるので、毎週末本場で踊れて楽しかったです。

ーサルサダンス!意外ですね。

 大学の下宿アパートの隣がたまたまサルサのクラブだったのがきっかけで始めたのですが、思いのほか楽しくて。そこから続けていて、最終的にはパフォーマンスチームに入って舞台で踊ったりもしていました。舞台に出るときは男性も舞台映えするようにメイクをするので、そこで女性の苦労を知りましたね(笑)。

リンクルショットに携わって

ー現在プロジェクトリーダーをつとめるリンクルショットの研究は、いつごろから?

 ボストンから帰国してすぐですね。リンクルショットがリニューアルすることになって任されることになりました。もともと学術的な面で関わってはいたのですが、二代目からは製品開発に携わることになりました。

ー“二代目”リンクルショットの進化ポイントを教えてください。

 一番のポイントは、コンドロイチン硫酸に着目していること。このコンドロイチン硫酸は傷を治す役割を持っているのですが、これがシワのミゾの奥で少なくなっていることがわかりました。シワ部分の肌は、傷じゃないのに傷だと勘違いして真皮を分解してしまうのですが、この“勘違い傷”を抑えるのが、独自のシワ改善有効成分ニールワン®︎。そこへさらに、“勘違い傷”を回復させる過程をフォローするために、コンドロイチン硫酸を増やす機能を搭載しています。

ーコンドロイチン硫酸は、いつごろから着目されていたのですか?

 2012年ごろですね。当時はリンクルショットに関わっていなかったのですが、アンチエイジングチームなので、ずっと気になって温めていた成分だったんです。いつか使ってやろうと(笑)。

 シワ部分は、他の皮膚の状態とは明らかに違う現象が起こっていて、そこにアプローチしないとちゃんとシワを改善することはできないのではないかと。そこで、シワ部分だけに起きている現象について研究を進め、「シワのミゾの底でコンドロイチン硫酸が減っている」という文献を発見。そこから研究が始まりました。

ー二代目リンクルショット、最も苦労された点は?

 シワ改善有効成分ニールワン®︎を安定的に配合しつつ、よりみずみずしいテクスチャーにすること。通常、化粧品には感触調整剤を入れてテクスチャーを整えるのですが、ニールワンは水とのなじみがよすぎて、安定的に配合することが難しく、それが使えないため別のアプローチで感触を良くしなければならず苦労しました。200回は検討を重ねましたね。化粧品は効果だけでなく、感触も大事。感性に訴えかける嗜好品でもありますので。

ー200回も!確かに感触が良くないと長く使いたいという気持ちが薄れます。

 それから、初代がすごく売れたので、それを超えていくものを作らなければならないというプレッシャーもなかなかのものでした(笑)。初代は売れ行きからも大変好評でしたが、とはいえ手応えを感じない人も一定数いるので、その手応えを感じない人の声も拾って、何が違うのかを研究したりと、より良いものを作るためにベストを尽くしました。どうやって期待を超えていくか苦しみ抜きましたが、納得のいくものが世に出せたので、今は喜びしかありません。

ー日々、どんなことを“使命”として、研究にあたっているのでしょうか?

 化粧品を使うことで、気持ちが上がることってありますよね。香りやテクスチャーが心地良いとか、シワやシミが解消されてメイクが楽しくなったとか。そんなふうに、お悩みに対しての解決策を提供して、幸せな人生を送っていただくためのサポートができたら。それがモチベーションでありミッションだと思っています。

今後の目標

最後に二代目のご苦労を伺っておきながら恐縮ですが、今後の構想は?

 そうですね...(笑)。自分が一から開発に携わった成分がローンチされることでしょうか。もう一つは現在計画されている、シンガポールの新研究拠点で最先端の皮膚科学を極めること。そこから、ポーラらしい自由でユニークな発想にさらに磨きをかけて新しい価値を生み出し、よりパワフルなシワケアを届けることができたらと思っています。

(文:ライターSAKAI NAOMI、聞き手:福崎明子、平原麻菜実)

美容ライター

サカイナオミ

美容室勤務、美容ジャーナリスト齋藤薫氏のアシスタントを経て、美容ライターとして独立。25ans、VOGUEGIRLなどファッション誌のビューティ記事のライティングのほか、WWD JAPAN.comにて猫と美容を絡めたコラムも執筆中。

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