日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
2022年10月度は気温の低下に伴い、ファッションの秋冬商戦が本格的にスタート。入国制限の緩和や円安の影響から、長らく低迷していた免税売上も回復し始めた。
※売上増減率は各社いずれも速報値を参照
※売上は収益認識基準ではなく従来の総売上高で開示
目次
ADVERTISING
三越伊勢丹HD
ラグジュアリーブランドなどの高額品需要が継続し、三越伊勢丹ホールディングスでは16.7%増と2桁成長を維持。基幹店の伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店では、コートやジャケットなどのアウターに加えて今着られる薄手のニットなどの実需購買も増えているという。また、12月に向けてクリスマスケーキの予約販売が好調な滑り出しを見せている。免税売上は首都圏店舗を中心に、香港、韓国、台湾など東アジアの顧客が急増し、国内百貨店計で前年実績を大きく上回った。
■伊勢丹新宿店で注目されたアイテム:ジョン スメドレーなどのニット製品
ハイゲージのニットが好調です。幅広い年齢層に品が良く、大きすぎないレギュラーフィッティングのモデルが支持を得ています。ビジネススタイルに取り入れる方が多い印象です。特に「ジョン スメドレー」の30ゲージのハイゲージニットが動きが良く、目が細かく品良く見える点が支持されてます。ジャケットスタイルでのVゾーンが映える首元が詰まったクルーネックとモックや、グリーン系など色味のあるニットも人気です。(伊勢丹新宿店 メンズ館5階 メンズテーラードクロージング バイヤー 和泉圭)
高島屋
高島屋も引き続き高額品が好調で、前年同月比14.2%増を記録。免税売上はコロナ前の2019年比で7割強まで回復した。
■高島屋新宿店で注目されたアイテム:Onのスニーカー
8階スポーツ・メゾンと9階ゴルフ・メゾンを合わせた10月度の売上は前年同月比120.5%増と引き続き好調。中でも、8階スポーツ・メゾンにある「スポーツマリオ」で販売している「オン(On)」のスニーカーは前年同月と比べて約2.8倍も売れており、新作のシューズ「クラウド5」は靴紐がゴムなので、結ばずに履けるという点も喜ばれていて人気があります。通勤にスニーカーを履く方が増えている背景もあり、ブラックのシンプルなデザインがスーツに合わせる靴として支持が高く、カジュアルなテイストのビジネスファッションにはホワイトを合わせる方が増えています。軽くて歩きやすいことから、旅行用としても需要があります。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
大丸松坂屋百貨店ではラグジュアリーの好調に加えて、コートなどの秋冬物が売上を牽引し、前年同月比で12.6%増加した。免税売上高は2019年比で約4割まで戻している。
主要店舗のひとつである松坂屋名古屋店では同12.6%増で16ヶ月連続の増収となった。
※免税売上高の実績に大丸心斎橋店の定期賃貸借テナントの免税売上は含まない
※博多大丸、高知大丸を除く
■松坂屋名古屋店で注目されたアイテム:おせち商戦がスタート
10月1日から店頭での受注をスタートしたおせちの10月度の売上は、前年同月比6.8%増と好発進。当社では過去最高を記録した昨年の売上をさらに上回っています。「店頭に来て買う」という買い方がまた戻ってきていて「おせちの大きさや中身を実際に見たい」というお客様心理があるため、届いたおせちサンプルは全て展示し、できるだけ見やすい配置を心がけています。
カタログ巻頭の大丸松坂屋特別企画おせちも、多くが数量・売上ともに前年を上回っており、売上伸長率は15.4%と2桁増で推移。大原千鶴監修の口福おせちや吉田類監修のおつまみ玉手箱(税込1万6800円)などの進捗が良いです。少量・多品種のニーズが年々高まっているほか、料亭などの高額おせちが早くも品切れになるなど、高額品の進捗も好調です。(営業3部 おせち担当バイヤー 富岡俊)
そごう・西武
そごう・西武は13ヶ月連続で前年超えが継続し、10月度は10.9%増だった。ほぼ全領域で前年を超えて推移し、プレステージブランドおよび高級雑貨の需要が高い。月半ばから気温低下を受けて冬物ファッションの動きが活発化し、衣料品トータルでも前比約20%増、コロナ前の2019年比でも約30%増と高い伸びを示した。免税売上はコロナ前比で4割程度にとどまっているが、前年比では35%増となった。
■西武池袋本店で注目されたアイテム:D2Cゴルフブランド 催事で新規客が8割以上
西武池袋本店で10月19日から11月1日までの期間、通常ECサイトのみで販売をしているブランドを10集めたPOPUP「ゴルフにGO!!」を開催しました。試着・購入した商品をすぐSNSに投稿し、ブランド側がそれをメンションする、といった、ファンとの繋がりを大切にしているD2Cブランドの強みで新規客が8割以上と、通常百貨店を利用しない層へアプローチすることが出来ました。また各ブランドがSNSを駆使して告知宣伝したことで、ブランドやアンバサダーのファンが売場に訪れ、スタッフと共に写真を撮る様子などが売場で見られました。ファッションフロアで展開したこともあり、ゴルフ=ファッションとして楽しんでもらいたい、というメッセージも伝わったように思います。(リーシング本部商品計画部 企画担当 中山茉莉花)
Image by: 西武池袋本店
松屋
松屋では前月に引き続き約4割増にせまる伸びを示した。富裕層の顧客による売上は前年同月比約20%増、コロナ前の2019年対比で約50%増と強い回復基調にあるという。ラグジュアリーや化粧品、宝飾品に加えて婦人ファッションも好調で、ジャケット・コート等の重衣料も前年から4割ほど伸長した。免税の売上は2019年対比で5割を上回る水準まで回復した。
■松屋銀座で注目されたアイテム:婦人向けファッション、買い替え需要も
松屋銀座では、婦人キャリアゾーンにおいて旅行・お出かけ需要が見られ、ニット・セーターの売れ行きが前年の1.5倍以上と大変好調でした。ドロップショルダーで、コートの中に着られる薄手のものの動きがよかったです。
一方、ジャケットやボトムスもいずれも前年比1.3倍以上と好調でした。ジャケットは肩パットのあるシルエットのものが、スカートやパンツもウール素材のオーソドックスなものが売れるなど、コロナ禍を経ての買い替え需要が見られました。(松屋銀座 婦人キャリア担当バイヤー 天沼渉)
Image by: 松屋
阪急阪神百貨店
阪急阪神百貨店では新型コロナウイルス感染者数が落ち着きを見せたことから来店客数が堅調に推移し、売上高は前年同月比20.1%増と前年実績から大幅に伸長。コロナ前の2018年対比では4%増、インバウンドを除く国内売上高の対比も8%増といずれもコロナ前水準を超えた。阪急うめだ本店は22.2%増、阪神梅田本店では62.2%増と特に好調だった。免税売上高は前年実績をは大きく上回ったが、コロナ前の2018年、2019年までの回復には至らなかった。
■阪急うめだ本店で注目されたアイテム:ブーツ商戦過熱 ロング丈も
秋冬シーズン立ち上がりより好調のショートブーツは前半盛り上がり、後半からはロングブーツが台頭し、ブーツ全般が前年を大きく上回りました。これからの冬シーズンに向け、コートとのコーディネートなどますます需要は高まると期待しています。
傾向としては、ショートブーツは、トレンド感のあるボリュームソールやラギットソールなどのサイドゴアやレースアップブーツを求める方が多くいらっしゃいました。また、ロングブーツはミニスカートのリバイバルにより、憧れブランドでシンプルかつ美脚効果の高いブーツが売れ筋傾向。シルエットのきれいさやディテールにこだわったブランドのブーツに注目が集まりました。(阪急うめだ本店 担当者)
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・:2022年9月度:ファッション・芸術・食欲の秋 ブーツ商戦にも熱
・2022年8月度:各社で売上2桁増、衣料品回復の兆し
・2022年7月度:セールよりも実需アイテム? 日傘やサングラスなど定価商材売れる
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【百貨店ウォッチ】の過去記事
TAGS
記事のタグ
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection