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物価高とファッションの話【連載:NYコラム】

IMAGE by: Jun Takayama

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物価高とファッションの話【連載:NYコラム】

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日本でファッション業界のキャリアを積み、現在はニューヨーク・パーソンズ美術大学に留学中の高山純氏が現地のファッション事情をお届けするコラム連載「NYコラム」。今回は異常な物価高が続く現地の生活をレポート。ファッション市場への影響についても触れる。

 世界的な物価高が人々の生活に影響を及ぼしている。海外、特にアメリカと関わることがある日本人にとっては円安も深刻な悩みの種だ。この記事を執筆している10月下旬、為替は約30年ぶりの1ドル=150円の水準を行ったりきたりしている。ニューヨークで収入があり生活基盤があるという場合、円安の影響はあまり気にならない。しかし、米国では消費者物価指数が賃金上昇率を上回る状況が続いており、政治イシューとなっている。

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 僕は学生のためアメリカでの収入は得ておらず、日本から必要に応じてアメリカに送金をしている。某信託銀行に口座を作ったため高額な送金手数料などはかからない。しかし、円安が進めば進むほど買えるものは減るので、簡単な話、貧乏になっていく。留学前に学費や生活費の概算を出したものの、現在のレートでは当時の見積もりを24%近く上回ることになる。

 日常生活でのわかりやすい例がマクドナルドだ。ビッグマック指数を見ると日本では410円、アメリカでは5.19ドル(約766円)になってしまう。セット価格にするとファストフードのみで2000円を超えてしまうこともざらだ。レストランであればさらに20%ほどのチップが加わるので、僕はなるべく自炊もするようにしている。

“物価の優等生”の卵は、地場のスーパーでも12個7ドルほどと高騰している。

 日常生活はまだ良いが、学費など数百万円単位の出費になると、円安進行による負担もさらに大きい。僕は1年制のプログラムを選択しているが、2年制の大学院を検討していた時期もある。もし2年制を選んでいた場合、3000万円近い出費になると考えるとかなり恐ろしい話だ。

 住宅事情についても触れておきたい。今年6月にはマンハッタンのアパート賃料の中央値が初めて4000ドル(約59万円)を突破した。これはアパート1戸の賃料で、単身の若年層などはルームシェアをして暮らすパターンは多く、僕のようにブルックリンやニュージャージーなどマンハッタン近隣の通勤圏に住んで家賃を抑える人もいる。しかしルームシェア仲介サイトの「SpareRoom」によると、ルームシェアの一部屋あたりの平均賃料は、マンハッタンの北に位置するブロンクス地区で900ドル弱、マンハッタンの中心地区が最も高額で3000ドルほど。掘り出し物の物件はあるものの、一般的にはルームシェアでも15万円以上はかかってしまうのだ。僕は運良く学校から電車で20分ほどの地域で好条件の部屋を見つけることができたが、日本の水準と比較するとやはり高いと感じる。

 と、ここまで悲観的な話になってしまったが、米国の給与水準は日本より高いため、実際の感覚としては「物価が少し高くなったな」というくらいで、当然モノによって濃淡もある。

* * *

 最近、高級百貨店のSaks Fifth Avenueに行く機会があった。物価高という言葉をニュース等でよく聞いていたため「このご時世、人も少ないかもしれないな」と思っていたが観光客からアメリカ人の上顧客層まで賑わっており、現場は意外と調子がよいようだ。

Saks Fifth Avenue

 ファッションに関していえば価格上昇は日用品に比べてゆるやかで、Saksが発表した調査によると高所得世帯を中心に顧客購買意欲は旺盛だ。特に若年層ではラグジュアリーへの関心が引き続き高い。

 ラグジュアリーブランドもこのようなトレンドには敏感なようで、バーニーズ・ニューヨークの旧店舗を活用したルイ・ヴィトンのポップアップや、エルメスの新店舗がブルックリンにオープン予定だったりと話題は尽きない。

ルイ・ヴィトンのポップアップ

 コロナ禍の影響で空きが多くなった路面店が使われ、毎週のように新しいポップアップが開催されている気がするが、僕は以前ほど行かなくなっている。ポップアップではブランド側の予算もあるため、普通の店舗ほど世界観の作り込みができない。また、限定アイテムはしばらく話題性があるものの、すぐに次のポップアップと限定商品が誕生することで一気に鮮度が落ちてしまう。そのため、僕は本当に興味がある展示があるときのみ行くようになった。ポップアップが頻繁過ぎて「またすぐあるし今回はいいや」と見送る人も多くなっているのではないだろうか。とはいえ、学校の友人などファッション好きな層はポップアップに出かける人も多く、自然と話題になっていることもしばしば。実際にこの記事でも取り上げている時点でブランド側としては成功なんだろうなと思う。

 ポップアップの隆盛やリテールに関してはまた別の回で書いていきたいが、世界的な物価高でも落ちない購買意欲やラグジュアリー消費の拡大が予想されている。そのような環境の中、ブランドの次の打ち手やニュー・リテールなど未来について考えてみたくなるような良いタイミングに来ていると思う。

高山 純

Jun Takayama

慶應義塾大学法学部卒業。在学中は「Keio Fashion Creator」や「ファッションビジネス研究会」の代表を務める。卒業後、外資系コンサルティング会社及び投資ファンドにてM&Aやファッションブランドへの投資業務などを担当。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン勤務を経て、2022年8月よりパーソンズ美術大学ファッション経営修士課程に日本人として初めて留学中。

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