
【アーリーエイジングケア特集】近年、スキンケア市場で「アーリーエイジングケア」が主流となっている。従来、エイジングケアはシワやたるみが気になり始める40代以降のものと考えられてきた。しかし現在は、SNSを通じて美容の知識が広まり、美容医療の大衆化や韓国コスメに代表される成分重視の市場拡大などを背景に、20〜30代の若年層にも予防美容の意識が浸透。エイジングケアを「老化への対策」ではなく、今、ビューティ業界でトレンドになりつつある、「スキンロンジェビティ(肌の長寿)」の視点で、「将来の肌への投資」や「今の美しさを保つための習慣」と捉える人が増えている。こうした意識の変化を、化粧品メーカーはどのように捉えているのか。
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資生堂、コーセー、花王の化粧品企業大手3社に、若年層のエイジングケアにおける消費動向、「アーリーエイジングケア」に対する考え方、製品開発や訴求の工夫、今後の市場展望について聞いた。
エイジングケアは「未来の肌への投資」
3社の回答から浮かび上がったのは、エイジングケアが「年齢を重ねてから始めるもの」から、肌悩みや将来への意識に応じて取り入れる「予防美容」へと変化していることだ。美容成分やスキンケアに関する情報が広がり、SNSの普及を背景に、美容医療、韓国コスメの普及も相まって、20〜30代の間でも高機能な製品を選ぶ動きが広がっている。シワやたるみなどの変化が現れてから対処するものではなく、20代の今から、将来の美しさを保つために、今現在の肌状態を整えるための投資として、エイジングケアを取り入れる傾向が広がっている。
資生堂、アルティミューンで前向きに年齢を重ねる価値を提案
資生堂は現在、外的刺激や生活習慣の乱れ、SNSでの手軽な情報収集も手伝い、若年層からのエイジングケアがさらに広がっていると捉えている。
グローバルブランド「SHISEIDO」のアイコン美容液「アルティミューン」は、2026年上半期の日本国内の百貨店売上において、20代で前年同期比20%以上伸長した。若い顧客の獲得の背景には、2026年2月にグローバルの若年層に絶大な人気を誇る、BLACKPINKのLISAをアルティミューンシリーズのグローバルアンバサダーに起用し、3月にはイベント「ULTIMUNE with LISA POP UP EVENT」を開催したことも一つの要因だ。日本だけでなく、アジアを中心に新規・次世代顧客の獲得にもつながっているという。

グローバルアンバサダーのLISA
Image by: SHISEIDO
SHISEIDOによると、若年層のニーズは悩みが現れてから対処するケアから、健やかで揺らぎにくい肌の土台を整えるケアへと変化しているという。さらに世界的な高齢化を背景に、食事や運動なども含め、健やかに美しく年齢を重ねたいという包括的な需要も高まっている。
ブランドとして、こうしたトレンドやニーズは世界共通で見られ、今後さらに拡大すると見る。「時間は年齢を重ねることではなく、より良い自分に進化していくためのもの」というメッセージを通じ、年齢を重ねることを恐れるのではなく、前向きに自分を更新していく価値を提案。中でもアルティミューンは、特定の年代に限定せず、前向きに年齢を重ねるすべての人に寄り添う美容液を目指している。

アルティミューン パワライジング セラム
コーセー、具体的な肌悩みに応える高機能ケアで若年層を取り込む
コーセーの高効能特化ブランド「ワンバイコーセー(ONE BY KOSÉ)」は、若年層のエイジングケア購買について、「目立ってから治す」のではなく、「できる前に防ぐ」という予防美容の意識が広がっていると分析する。SNSによって美容成分の情報が広く知られるようになったほか、韓国コスメを中心とした成分の効能買いや美容医療の大衆化も進んだ。こうした背景から、現代の20〜30代にとって、エイジングケアは決して「まだ早い」ものではなく、「賢く未来の美肌をキープするための当たり前のステップ」として定着してきていると考える。
コーセーの消費者意識調査では、包括的なケアを想起させる「エイジングケア」という言葉よりも、くすみやハリのなさ、大人毛穴など、具体的な肌悩みを言葉で示した方が、美容感度の高い若年層は自分ごと化しやすいことがわかっている。そのため、これまで具体的な悩みへの解決力を中心に提案してきた。しかし、若年層にも予防美容としてのエイジングケアの意識が定着しつつあることから、保水機能改善美容液「セラムヴェール」では、具体的な肌悩みを提示した上で、今年8月から「根本エイジングケア」というキャッチコピーとともにエイジングへのアプローチも明確に訴求している。

保水機能改善美容液「OBK 薬用導入美容液」(愛称:ONE BY KOSÉ セラムヴェール ディープリペア)《医薬部外品》のポスター
Image by: ONE BY KOSÉ
製品開発では、年代ではなく、具体的な肌悩みに合わせて処方を設計。その上で、アーリーエイジングケアと本格的なエイジングケアでは、テクスチャーに違いを持たせている。アーリー層向けのセラムシールドやセラムヴェールローションでは、みずみずしくベタつきにくい質感で、毎日続けやすい使用感を重視。一方、ザ リンクレスなどの本格ケアラインでは、より濃密で頼もしさを感じられる処方・テクスチャーを追求している。

高保水密封バーム「ONE BY KOSÉ セラム シールド」《医薬部外品》
Image by: ONE BY KOSÉ

薬用クリーム状シワ改善美容液「ONE BY KOSÉ ザ リンクレス W」《医薬部外品》
Image by: ONE BY KOSÉ
今後さらに、市場は年齢ではなく、機能性やエビデンスを重視する方へ向かうと予測する。「確かな科学的根拠」「目に見える即時的な効果」「納得のいく適正価格」を兼ね備えた高機能アイテムを、毎日使いやすい使用感、使い続けられる価格で提供することが、市場で選ばれる“最低条件”になると考えている。
その上でブランド戦略は、20代の毛穴ケアから、30代の乾燥・シミ対策、さらに年齢を重ねた世代の本格的なエイジングケアまで、人生とともに変化する肌悩みに対応。使ってすぐに感じる効果と、使い続けることで得られる改善効果を両立し、肌悩み解決のスペシャリストとして長期的な信頼関係の構築を目指す。
花王、年齢で区切らず角層起点のスキンケアを新提案
花王の皮膚科学に基づくスキンケアブランド「ソフィーナ(SOFINA)」は、エイジングケアについて、20〜30代では、一定の年齢になってからケアを始めるという意識が薄れていると説明する。従来のアーリーエイジングケアは、年齢で対象を区切り、まずは軽いケアから始め、年齢を重ねるにつれて本格的なケアへ移行するという考え方が中心だった。しかし現在は、若い世代向けだから効果を抑えた製品を選ぶのではなく、その時点の肌状態や悩みに必要な効果を求める傾向が強まっているという。例えば目元などの部分ケアも、かつては年齢を重ねてから取り入れるイメージが強かったが、現在は若年層にも広がっている。
年齢ではなく肌状態や悩みを起点に、必要であれば本格的な機能を持つアイテムを選ぶ。ソフィーナは、こうした行動が、今後のスキンケアの新しいスタンダードになると捉えている。

Image by: SOFINA BASIC+
生活者のスキンケア選びでは、効果を期待できるものに投資する「メリハリ投資」の意識も高まっている。花王によると、化粧水市場では1000円未満の価格帯が縮小する一方、1000円以上2000円未満の価格帯が伸長。単に低価格なものではなく、効果実感を得られる製品に投資する傾向が見られるという。
その中でソフィーナは、日々のベーシックなスキンケアから、より専門的なエイジングケアまで幅広く提案できるよう、今年ブランドポートフォリオを拡充。エイジングケアにも「角層ケア」が有効であると考え、“角層細胞”に着目した新ブランド「ソフィーナ ベーシック(SOFINA BASIC+)」を8月にローンチした。若い世代も使うことを想定し、「ソフィーナ iP(SOFINA iP)」より軽い使い心地に設計。ライフステージや肌状態、ニーズに合わせて、生涯にわたってソフィーナブランドの価値を届けることを目指している。

SOFINA BASIC+ うるおいターボ化粧水
Image by: SOFINA BASIC+

SOFINA BASIC+ うるおいターボ乳液
Image by: SOFINA BASIC+
ボーダーレス化するエイジングケア市場
今後のアーリーエイジングケア市場は、年齢を基準に区切るのではなく、肌悩みやライフスタイルに応じて選ぶ、よりボーダーレスな領域へ進化していくだろう。3社はいずれも、若年層の予防意識が一時的な流行ではなく、成分や効果を見極めながら自分に必要なケアを選ぶ新たな消費行動として定着しつつあると捉えている。
消費者の知識と選択眼が高まる中、科学的根拠や確かな効果、適正価格に加え、毎日無理なく使い続けられる心地よさも重要になる。化粧品メーカーにとっては、単に若年層を取り込むのではなく、ライフステージや肌状態の変化に寄り添いながら、長期的な関係を築くことが、今後の成長の鍵となりそうだ。エイジングケアは、年齢に抗うためのものではなく、自分の肌と前向きに向き合い、より良い状態を更新していくためのケアへと、その意味を広げている。
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