「原宿系」というスタイルを築き、支えてきたブランドの終了や古着屋の閉店に関するニュースを耳にする機会が増えてきた。竹下通りには韓国発のコスメ、アパレル、フードのショップが増え、10年間で原宿を取り巻くカルチャーのトレンドも大きく変化していることは言わずもがなである。そんな中、10周年を迎える現在も一貫したスタイルで変わらぬ勢いを見せる「ヘイヘイ(HEIHEI)」は、顧客を招待して実施したブランド初のフィジカルショーにおいてその色褪せない「原宿ファッション」への熱意を示した。
会場となったのはラフォーレミュージアム原宿。未来の原宿をイメージし、ネオン管が配されたランウェイの周りには、赤チェック、リボン、ベレー帽といったヘイヘイらしいスタイルに身を包んだファンたちが集まり、ステージに身を乗り出すような勢いでショーの開始を待つ。
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ヘイヘイの2024年春夏コレクションのテーマは「未来への帰還」。デザイナーの加藤翔平は、幼少期に触れたアニメーションや戦隊ヒーロー、映画などのカルチャーを過去から見た未来である今に持ち込む感覚でデザインを生み出している。そのクリエイションへの感覚は、加藤が人生で最初に観た映画である「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にも影響を受けているとし、加藤自身とブランドのルーツとしてこのテーマを設定したと話す。
音楽は、日本とアメリカを中心に活動する韓国人プロデューサー兼DJのNight Tempoが担当。ショーの冒頭の楽曲は、未来の東京のイメージとして想起させる、大友克洋作「AKIRA」のアニメーション映画のオープニングをサンプリングして制作したという。ファーストルックは、AKIRAの主人公である金田がバイクを停める印象的なシーンをイメージし、疾走感のあるウォーキングで表現。ブランドのシグネチャーカラーと金田を想起する赤を基調としたルックに、ブランドを象徴するチェック柄のリボンあしらったヘルメットを着用したモデルが登場した。ヘルメットは戦隊ヒーローのイメージを引用し、モデルがヘルメットを外すと、地面にパラパラとリボンが落ちるという演出が加えられた。
コレクション全体を通して、ヘイヘイのブレないシグネチャーを提示しながらも、新しい表現を模索するような姿勢も印象的。シグネチャーである赤チェックを基調にしながらも、リボンや異素材との組み合わせが新鮮なルックが多く登場した。
2000年〜2010年代の原宿を想起するような懐かしさのあるニュアンスのレイヤードや色合いの中で、ブランドとしては珍しいネオンカラーを取り入れるなど挑戦的な表現も見られた。
フィナーレが終わるとNight TempoによるDJライブがスタート。モデルたちがランウェイで踊りながら、「新世紀エヴァンゲリオン」のテーマソング「残酷な天使のテーゼ」や「カードキャプターさくら」のオープニングテーマ「Catch You Catch Me」といったアニメソング、松田聖子の「青い珊瑚礁」など1980年から1990年代頃の楽曲から、2022年にリリースされたNewJeansの「Ditto」まで、加藤が影響を受けた様々なカルチャーを紹介するようなプレイリストが披露された。
K-POPもよく聴くという加藤は、「K-POPの表現方法は多岐に渡っていて、本当に素晴らしく、見習わなくてはなと思います」と話す。韓国カルチャーが日本市場だけでなく世界で高い支持を得ている中で、その魅力や戦略性を取り入れながら、東京のカルチャーも新たな成長を遂げられると期待する。10年前、原宿という街が持つ自由な価値観やカルチャーのるつぼのような環境から多大な影響を受けてヘイヘイを立ち上げた加藤は、改めて今度は自らが新たなムーブメントの起点になり「原宿カルチャー」を盛り上げていくことへの矜持を持つ。「コロナも明け、インバウンドも増えて、世界的に原宿のカルチャーに注目する人は増えていると思います。よりしっかりと、韓国に負けないようなカルチャーを原宿で生み出していかなくてはいけません。僕らが先陣を切って、もがきながらでも何かを示すことで、新しいクリエイターや若者から新たなカルチャーが生まれてくる。そうした新しいものと化学反応を起こしていくことで、原宿という土地が盛り上がっていくのだと思っています」とコメントした。
◾️HEIHEI:Instagram
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