モダン・メドウのラボ
Image by: Modern Meadow

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もう動物は殺さない、次世代のサステイナブルな人工レザー

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 ファッション業界で使用されている様々な素材の中でも、最も環境に悪影響を及ぼしているのがレザーだという。製造過程で環境面への影響が少ない革材料を「エコレザー」と呼ぶ認定も存在するが、基準を満たしていない場合が少なくない。しかしテクノロジーの進化に伴い、近年では動物を殺さず、また合成樹脂などを使用しない、全く新しいレザーが誕生している。サステイナブルの観点で、革新的な素材作りに取り組んでいる3社に注目した。

 

キノコから生まれる新素材

2009年に創業したボルト・スレッズが開発したマイロ。その他に、人工のクモの糸も開発し商品化している。

 カリフォルニア州エメリーヴィルに拠点を置く「ボルト・スレッズ(Bolt Threads)」は、新素材を開発する企業の先駆者的存在だ。2018年4月、新たに発表したのはキノコから作られたレザーのような素材「マイロ(Mylo)」。といっても普段の食卓で食べられているような傘や柄といった部分ではなく、キノコの本体と呼ばれ地中に隠れている菌糸体からできている。

 生産プロセスとしては、温度や湿度を管理した環境で、トウモロコシの茎の上で菌糸体の細胞を培養。細胞同士が強く結びつき立体に成長したものをシート状に圧縮し、なめすとマイロが出来上がる。特徴は、本物のレザーのような見た目と触り心地、そして生産スピードの早さだ。牛などの動物を育てるためには年単位の時間が必要だが、マイロは数日で生産が可能。化学薬品を使用するポリウレタンやPVCとは異なり、植物由来の環境に優しい人工レザーと言えるだろう。

 マイロは早くもバッグの素材として採用されている。ボルト・スレッズとパートナーシップを組んでいる英「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」と共に制作したアイコンバッグのプロトタイプ「MyloTM Falabella Prototype 1」は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で展示された。

 その他にもマイロはオリジナルでバッグを制作しており、6月にはプレオーダーを開始して商品化する予定だ。

限りなく天然に近い培養レザー

2011年に創業したモダン・メドウが開発し、MOMAで展示されたTシャツ。

 アメリカ・ニュージャージー州の企業「モダン・メドウ(Modern Meadow)」は、動物のDNAを採取し編集して作られたコラゲーンを培養する方法で、天然のレザーに近い素材開発に成功した。DNAを採取する動物により、牛革やワニ革などに限りなく近づけるという。必要なサイズや型に合わせて生産が可能で、製品に仕立てる段階でロスが発生しないのも特徴。さらに従来よりもなめす工程が少なく、使用する水や化学薬品の量を削減できるため、環境への影響が少ない。

 2017年には自社ブランド「ゾア(ZOA)」を立ち上げ、同年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された展覧会「Items: Is Fashion Modern?(アイテム:ファッションはモダンか?)」では、培養レザーを使用したTシャツが展示された。一般消費者向けプロダクトは2019年の発表を計画している。

捨てられていたパイナップルの葉が原料に

アナナス・アナムは2013年に創業。「ピニャテックス」はシルバーやゴールドなど6色で展開されている。

 ロンドンに拠点を置く「アナナス・アナム(Ananas Anam)」が開発したのは、パイナップルの葉の繊維から作ったレザーの代替となる素材「ピニャテックス(Piñatex)」。きっかけは、レザー産業で長年働いていた創業者のカルメン・ヒホサ(Carmen Hijosa)が、レザーはサステイナブルな素材でないと気づいたことだった。

 ヒホサは、新しい素材の開発を決心し、目を付けたのがフィリピンで昔からバッグなどに使われていたパイナップルの葉。開発から7年の年月を費やし「ピニャテックス」が完成したという。これまで年間で約1,300トンも廃棄されていたパイナップルの葉を有効活用することができるだけではなく、パイナップルの葉を売るという新たな収益源を地域にもたらしている。

 今年5月には「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」が「ピニャテックス」を使用したシューズを発表。新しい天然由来の素材に興味を持つブランドが増え、商品化が進んでいる。

広がるレザーの可能性

 ライダースジャケットを作るために動物を殺さず、地球を汚さない。その選択肢が増えた今、レザーの可能性が花開こうとしている。エコで快適な新素材の開発は、サステイナブルなライフスタイルの関心と共にさらに進みそうだ。

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