信田阿芸子
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Fashionインタビュー・対談

【インタビュー】"やり残したことは川久保玲との仕事" アナへのプレゼン、東コレ改革、伊藤忠から送られた商社ウーマンの11年

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スポンサーとの関係

ー仕事は多岐に渡っていましたが、その中で信田さんのメインの役割は?

 スポンサーというか資金の確保です。まずはIMGとの交渉からスタートさせました。5年で自立して運営するという約束だったんですが、当初のやり方では難しい。経産省からの予算が終わったら、東京のファッションウィークが消滅する可能性があったんです。それだけは絶対に防ぎたかったので、民間スポンサーを確保することが一番大きなミッションでした。

ーメルセデス・ベンツ、そしてアマゾン ジャパンと冠スポンサーが変わりましたが、いずれも運営側とスポンサー側がうまく噛み合っていないのではないかという見方もありましたが。

 関係性の課題はずっとありました。民間のスポンサーが入って最初のファッションウィークなんて、問題が3分に1回起こるほどで、ずっと何かの対応で電話しているような状態でした。ショーを見てる時間なんて全くなくて(笑)。

ーどういう問題が起きていたんですか?

 スポンサーが求めてることを、現場がちゃんと対応できてなかったり。スポンサーのリクエストや思惑通りに実現できるか、初期はその齟齬がありました。初めてのことが多く、うまくオペレーションができていなかったんです。

「Amazon Fashion Week TOKYO」のメインヴィジュアル

ー冠スポンサーがアマゾン ジャパンになってからはいかがですか?

 ある程度システム化できていたので、オペレーション面では特に問題はなかったですね。ただ担当者が変わったりとそういった面で苦労はありましたが。

ーアマゾン ジャパンのスポンサー契約が終了するという噂もありますが?

 現状、契約内容については何も言えないんです。

ー日本のファッションウィークなので、日本企業がスポンサーになった方が良いのではないでしょうか。

 そのジレンマはありましたね。でも理解して頂ける企業が中々なくて。その点では、ベンツ、アマゾン ジャパンと、外資の企業は理解を示してくれたんですよね。

ースポンサーのメリットが見えにくいからでは?

 それはあるかもしれません。その点、BtoCのバーサス トーキョーは分かりやすかったんですよね。今ではBtoCが増えてきていますが、ファッションウィークはBtoBが基本なので、企業がどのようにこのコンテンツを扱うか難しさはあるんだと感じます。

ー東京のファッションウィークを運営する基本予算は?

 ベースは年間約3億円、1シーズンで約1.5億円ですね。アマゾンファッションが主催している「Amazon Fashion "AT TOKYO"」(以下、AT TOKYO)は、また別費用ですが。

ーAT TOKYO枠で行った「サカイ(sacai)」と「アンダーカバー(UNDERCOVER)」の合同ショー「10.20 sacai / UNDERCOVER」はかなり話題になりましたが、設営からして豪華でしたね。

 特設テントを建てるだけで数千万はかかるので、そうですね。あの時のAT TOKYOは、ファッションウィークの年間予算くらいに匹敵していたかもしれません。

ー直近だと3月のファッションウィーク中にはAT TOKYOは行われず、4月にイベントとして開催することになりました。

 担当者が変わったり、AT TOKYOの位置付けも変化しているかもしれません。でもメリットを感じているとは聞いています。ECの方でファッション関連の取引が増えたりと、AT TOKYOの成果は大きいようです。

 

東コレに出ることに意味はあるのか?

ーファッションウィークを通じて伸びるブランドと、そうでないブランドの違いは?

 デザインもなんですが、まず重要なのは品質でしょうか。基本的なことですが。JFWOとしても支援やインキュベーションに力を入れていますが、一方で伸びる努力をしない人は即刻やめた方がいいとは思っています。

着用シューズは「ボディソング(bodysong.)」、パンツは「ベッドフォード(BED j.w. FORD)」

ー参加ブランドの選定自体はゆるいですよね?

 基本的には参加費を払えば誰でも出られます。個人的には間口を狭めた方がいいとも思っていたんですが、ただファッションウィークのプラットフォームという性質上、そうすることは中々難しい。ではどうするべきかというと、良いブランドをいかに集中的に囲ってフィーチャーできるかなんですよ。それを体現したのがバーサス トーキョーだったんです。今シーズンは、パルコが支援して「マラミュート(malamute)」「コトハヨコザワ(kotohayokozawa)」「シュシュ/トング(SHUSHU/TONG)」の若手3ブランドをフィーチャーしたり、そういう動きは増えています。

左)malamute、中央)kotohayokozawa、右)SHUSHU/TONG

ーファッションウィークは結局、誰の何のためにやっているんですか?

 ファッション産業のために、ファッションウィークは存在しなくてはいけないと思っています。「ファッションウィークがなかったら、極東の遠い日本のことなんて誰も見ない」と、ある海外ジャーナリストに言われて心に響いたんですよね。確かにそうだと。ファッションウィークが存在し続けなければ、そもそものきっかけが失われてしまう。それだけは避けたいという思いから、続けることが何より大切だと考えるようになりました。

ーでは、ブランドは何を目的にするべきだと思いますか?

 それはブランドによってバラバラでいいんじゃないでしょうか。全く異なる人やブランドが集まるわけですから、一つにまとめることは難しいと思います。

 

パリとどう違う?東コレの課題

ー在籍中にできなかったことはありますか?

 たくさんありますが、1つはマスメディアとファッション業界の距離を縮めること。これは日本特有のもので、ニューヨークもヨーロッパも、TVや大手新聞社との距離が近いんですよ。努力はしてきたつもりなんですが、道半ばで終わってしまったところは正直あります。広告費換算をすると2億円くらいだったものが、今は1シーズンで200億円を超える規模にまで成長しているので、そこを上手くプレゼンできればTVの露出も増やしていけるのではと考えています。

ー"東コレ"とか、大手メディアや一般からも馴染みのあるタイトルにしてみては?

 冠スポンサーの関係上、名称については致しかたないんです。そのためメディアの方々には「Amazon Fashion Week TOKYO」という表記でお願いしています。パリやイタリアのように、民間企業のスポンサーではなく参加メゾンの資金で運営がまかなえれば名称も違ってきますが。

ー東京もパリを見習うべき?

 そうできればいいなとは思います。資本力のあるブランドが沢山参加して、その資金で成り立つのは理想ですね。

ー"新人の登竜門"という位置付けのウィークなので、東京のブランドは成長すると発表の場をパリなど海外に移しますよね?

 それは良いと思います。ただパリに出ていっても、何かの形で東京でも参加してくれたらとは思いますね。でも現状、新人ブランドをサポートする為には、スポンサーがマストで必要なんです。

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