Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】「バッグ2個持ちは当たり前」新生ケイト・スペードが提案する"可愛いだけじゃない"女性像

 25年前の1993年に、ケイト・スペード(Kate Spade)と夫アンディによって創立した「ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)」。夫妻がブランドを離れてから10年以上が経っているが、立ち上げ当初にケイトが打ち出した、ハッピーで遊び心を持ち自立した"ケイト・スペード ガール"は、今もブランドの中で生きている。2019年春夏からは、クリエイティブディレクターとして新たにニコラ・グラス(Nicola Glass)が就任。"バッグ2個持ちは当たり前"な現代女性に向けて、親友のように寄り添う服やバッグを届けていくという。来日したグラスに聞く、新生「ケイト・スペード」のヴィジョンとは。

【ニコラ・グラス】アイルランド出身。「グッチ」でアクセサリーデザイナーとして経験を積んだ後、2004年に「マイケル・コース」に入社。同社に13年間在籍し、アクセサリーデザイン部門のシニアバイスプレジデントとして「MICHAEL Michael Kors」および「Michael Kors Collection」を手掛けた。2018年1月に「ケイト・スペード」のクリエイティブディレクターに就任。レディ・トゥ・ウェアから革小物、ブランドイメージ、ストアデザインを含む全てのクリエイティブを統括する。

新生「ケイト・スペード」を導くニコラ・グラスの素顔

ー アイルランド出身ですが、ニューヨークはいつから?

 「マイケル・コース」への入社を機にニューヨークに移ったので、14年前になります。

ー すっかりニューヨーカーですね。お気に入りの場所はありますか?

 ハイラインです。息子とよく行きますが、マンハッタンのような大都市にいながら草木が生い茂った場所を歩けて、とても面白い建造物だと思います。街の忙しさも好きですが、休日はよくモントーク近くの別荘に行きます。SUPとかアウトドアで過ごしたり。家族や友人と過ごす時間を持つことや、仕事と休暇のバランスは大事にしていますね。

ー マイケル・コースには13年間在籍していたとのことですが、学んだことは?

 マイケルの下で働くのは良い経験でした。人としても素晴らしいですし、ブランドにおけるアクセサリーの重要性を熟知しているので。13年間で業績も伸び、成長する事業を内側から見ることができたのもラッキーでしたね。マイケル・コースはグローバルなブランドなので、様々な国や地域にどのようにリーチするのかなど、学ぶことが多くありましたから。

ー ファッション業界に長く関わっていて、変化は感じますか?

 ペースがどんどん早くなっていると感じます。SNSですぐにコレクションがチェック出来るのは良いけれど、スマホでフリックして見るだけで消費されてしまう。すぐに「次のコレクションは?」となっているようですよね。現代の競争の中で生き残るのは、唯一無二で強固なアイデンティティを持ったブランドだと改めて感じています。

ー 厳しい時代とも言えますが、ケイト・スペードの位置付けについてはどう考えますか?

 人々が共感できるブランド。女性によって創業されたのは、25年前は珍しいことだったかと思います。そして手が届きやすい価格でハンドバッグを提供したパイオニアでもありますね。

ー 実際にケイト・スペードのチームに入ってみて、いかがでしょうか。

 新しい仕事というものは、働き始めるまで社風や環境などわからないものですよね。でもケイト・スペードは、多くの女性が重要なリーダー職に就いているし、とても協力的な意識のもと仕事をしていたんです。それは実際に入社して驚きました。

 

今を生きる女性に向けた、楽観的で信念を持った"ケイト・スペード ガール"

ー ケイト・スペードのクリエイティブディレクターに就任して、まず取り掛かったことは?

 私にとってのケイト・スペードは、とてもフェミニンで楽観的、喜びにあふれていて、カラフルでピュア。そういった混じりっけのなさに魅力を感じながら「この世界観をいかに現代の女性に向けてモダンに昇華させるか?」ということを考えました。

 最初に着目したのは、他と差別化させるアイコニックなモチーフ。今の時代は、どのデザイナーも象徴する何かを探していますよね。ケイト・スペードは幸運にも、すでにスペードというモチーフを持っていたので、最初のコレクションでは"さりげない"方法と"わかりやすい"方法の2通りでスペードをデザインに取り入れました。例えば、新しいバッグ「ニコラ」にはスペードからハートへと姿を変えるツイストロックを大胆に取り入れて、一方ではドレスの幾何学模様にさりげなくスペードを入れたり。

ー レディ・トゥ・ウェアは、今回が初めてとのこと。

 ケイト・スペードに入ってから最も楽しんでいる仕事の一つですね。就任当初から、レディ・トゥ・ウェア部門を多様化したいと考えていました。洗練されたリラックス感がありながら、フェミニンで少しセンシュアルな要素を持ち合わせたスタイルを提案したかったので、ドレスの背中にカットアウトを入れたり。デザインチーム間での連携が上手くできているので、アクセサリーを含めて全体で一貫性のあるコレクションに仕上がっています。

ー フィット&フレアのフェミニンなイメージがありましたが、2019年春夏コレクションは少し異なる印象でした。

 特にドレスに関しては、よりモダンなデザインも提供できるチャンスがあると感じていました。でもフィット&フレアを好む顧客を無視することではなく「多様化」に専念したんです。既存の顧客にも「こういうのはどう?」と提案できる新鮮なテイストと、目を引くようなルックを用意しました。

【ルック】「ケイト・スペード ニューヨーク」2019年春夏コレクション

ー カラーやプリントで意識したことは?

 近年のコレクションでは原色が多く使われていたんですが、今回はニュアンスカラーを使いました。プリントでは、同じ花柄でもフレッシュな印象にしたかったので、手描きや幾何学的な花とか、リップやハートモチーフを混ぜたり。予想を裏切るようなディテールや色の組み合わせは、今後も様々な角度から取り入れていこうと考えています。

ー "ケイト・スペード ガール"のイメージは今後どのように変わっていきますか?

 ハッピー、カラフル、プレイフルといったイメージは、立ち上げ当初から25年間ずっと続いていてブランドの強みです。新しいコンセプトに掲げた「optimistic femininity」は、フェミニンで自信があって、ファッションを楽しんでいて、年齢に関係なく心が常に若い女性像。"リアルさ"があって、自分の人生における選択をきちんと理由や信念を持って決められる。楽観的であると同時に、とても強い女性像をイメージしていますね。

 

人気バッグに必要な"二つの要素"

 

ー 創業者のケイト&アンディ夫妻からはどんな影響を受けていますか?

 多くのインスピレーションを得ていますね。例えば、過去に写真家ティム・ウォーカー(Tim Walker)と制作した広告ヴィジュアルの一つに、黄色のペイントが塗られた道路の中央を歩く女性の写真があります。道を自ら切り拓く女性を表現したような。9月にニューヨークで行った初のショーでは、その写真から着想を得てランウェイにグリッターの線を引いたんです。ケイトが6月に亡くなった時に、彼女を称えた「she left a little sparkle everywhere she went.(彼女は行く先々で、輝きを残していった)」という言葉が心に残っていました。ランウェイに引いた輝くラインには、ケイトのクリエイションへのオマージュと、歴史のあるブランドのマップの上で自分の冒険が始まるという私的な思いも込めていたんです。そしてまた、過去との間にしっかりと線を引いて、新しい物作りで前に進めることも重要だと感じています。

ー 過去のキャリアではヒットアイテムを生み出してきましたが、人気バッグを作る秘訣は?

 女性の支持を集めるバッグには、「このバッグがすごく欲しい」と思わせるエモーショナルな魅力と、日常的に使える実用性の2つが必要です。他では見つからないもので、クオリティが申し分ないこと、そして一目でわかるようなデザインが大切ですね。

ー 新アイコンバッグの「ニコラ」はクロージャーがアイコニックなスペードですね。

 ぱっと見でわかるクロージャーのデザインに加えて、裏のポケットはスペードの先端をイメージしています。使っている本人が、ふとした瞬間に気づいて楽しめるような仕掛けを意識的に取り入れていますね。

ー スタイリングでは、バッグの複数持ちが目立ちました。

 「デザインする側の私たち自身、そして世の中の女性が日常で本当に必要としているのは?」と真剣に考えたんです。私自身、携帯や財布を入れたクロスボディバッグと、A4書類やジムウェアを入れたトートバッグの2個持ちがほとんど。そういう女性は多いと思いますよ。

ー 次に考えているチャレンジは?

 まず新しいコレクションを作ることですね。初回の2019年春夏コレクションは出発地点だと捉えていて、これを土台にしてどんどん積み上げていきたい。毎シーズン劇的に変わるようなテーマ的なアプローチではなく、自然に進化していくクリエイションになればと考えています。

(聞き手:谷 桃子)


■ケイト・スペード ニューヨーク:公式サイト

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