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太眉、細眉、平行眉……時代を映す 「かわいい」メイク史

文・平松将

 メイクやヘアスタイルにおいて、いつの時代もトレンドとしてあり続けてきた“かわいい”という価値観。しかしその目指す姿は、欧米風の彫りの深さを求めた1960年代から、異性からの「モテ」が全盛だった2000年代、そして自己表現としての「自分受け」へと、世相とともに様変わりしてきた。今回は、30年にわたりストリートの定点観測を続け、女性たちのリアルな美意識を見つめてきた花王ビューティリサーチ&クリエーションセンターの原島麻由美氏と吉谷真由美氏に取材。1960年代から現代に至るメイクとヘアスタイルの変遷を辿りながら、時代とともに変化してきた“かわいい”のこれまでとこれからを紐解く。

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原島 麻由美

花王 ビューティリサーチ&クリエーションセンター メイクアップアーティスト

2006年にカネボウ化粧品に入社。以降、様々なブランドの商品開発支援や美容情報提案、撮影のヘアメイクなど幅広く携わる。2020年より現職。アーティスト目線で生活者調査やトレンド分析なども担当している。

吉谷真由美

花王 ビューティリサーチ&クリエーションセンター メイクアップアーティスト

2001年に花王に入社。顔立ちや人柄、なりたいイメージなど個々に寄り添ったメイクとヘアアレンジが得意。トレンド分析なども担当。

1960年代:欧米型メイクへの憧れと立体美

 1964年の東京オリンピックに象徴されるように、日本が本格的な高度経済成長期へと突き進んだ時代。外資系化粧品メーカーの日本進出が相次ぎ、新たな化粧法が普及した。当時の美のアイコンは、吉永小百合や岩下志麻といった銀幕(映画のスクリーン)を彩る正統派女優たち。1967年にはイギリスの人気モデル、ツィッギーが来日し、ミニスカートとシャープなショートヘア(ツイッギーカット)が一世を風靡した。

東京に来日したツイッギー

Image by: Jim Gray via Getty Images

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花王 原島さん

当時のメイクは、太眉や黒く太いアイラインなどが人気が高く、カラーは淡いピンクベージュ系の口元やピンク肌が流行しました。1960年代後半になると、目元を強調するボリュームのあるつけまつげや細眉が支持を集めました。

当時と現代では「かわいい」の定義は異なっていたのでしょうか?

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花王 原島さん

現代のニュアンスとは少し違いますね。当時は欧米人のような彫りの深い、立体的な骨格を持つ外見が“かわいい”とされていました。愛らしさというよりは、華やかで彫りの深い西洋的な美人像のイメージです。

1970年代:女性誌が創刊 日本的「ナチュラルかわいい」の芽吹き

 1968年に日本の国民総生産(GNP)が世界第2位となり、先進国の仲間入りを果たした日本。この時代は、「anan」(1970年)や、「non-no」(1971年)など日本独自の女性誌が次々と誕生し、日本人デザイナーの高田賢三氏が「KENZO」でパリコレに進出するなど、日本発信の美意識が萌芽した。欧米への憧れを残しながらも、テレビの普及によって大衆の関心は映画女優から身近なテレビアイドルへと広がり始めた。

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花王 原島さん

欧米的な価値観に、日本の美意識を掛け合わせたメイクが出始めます。極細のアーチ眉に目の上下に配したつけまつげ、二重まぶたのくぼみに影を描いて目を大きく見せる舞台メイクの技法「ダブルライン」など、1960年代よりさらに派手な印象ですね。現代の感覚から見ると、かなり作り込まれているメイクでした。

メディアの主役が映画からテレビへと交代した時代でもあります。1970年代前半には天地真理さんや浅田美代子さんといったテレビ発のアイドルが登場しました。当時はまだ“かわいい”という言葉が今ほど立っていたわけではありませんが、振り返ってみると、親しみやすく愛らしい現代に近い“かわいい”が人気を集め始めた起点と言えます。

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花王 吉谷さん

1980年代〜90年代前半:アイドル・バラドルの人気とバブル期の「大人かわいい」

 1970年代の2度にわたるオイルショック(1973年、1979年)による物価高騰と高度経済成長の終焉を経て、大衆の志向は非日常のスターから日常的な親近感へと向かう。既に創刊されていた「JJ」(1975年)に続き「CanCam」(1981年)が登場したほか、テレビの普及とともに松田聖子らを筆頭にアイドルブームが巻き起こります。加えて、1985年には男女雇用機会均等法の成立やバブル経済といった追い風あり、女性の社会進出が加速した時代でもある。

音楽デュオ ピンク・レディ

Image by: Bettmann via Getty Images

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花王 原島さん

アイドルの出現によって、いわゆる日本的な“かわいい”のベースが作られた時代といえます。1970年代後半から1980年代前半にかけてのメイクは「ナチュラルメイク」と呼ばれたのですが、今見ると全然ナチュラルじゃない(笑)。ただ、上下のつけまつげやダブルラインがなくなり格段に引き算されたため、当時の人にはナチュラルと受け止められました。

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花王 吉谷さん

当時流行したヘアスタイルといえば、なんといっても「聖子ちゃんカット」です。前髪を少し下ろしてサイドを外巻きにするスタイルで、世の中の女性がみんな真似をしていました。当時はヘアアイロンではなく、くるくるドライヤーや、ブラシを使って熱で形を作るのが主流。テレビを見ながら一生懸命ブローして憧れのアイドルに近づくことが、当時の“かわいい”でした。

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花王 原島さん

1980年代後半から90年代前半になると、女性の社会進出とバブル景気を背景に、メイクにも力強い意思が宿ります。憧れの対象もアイドルからトレンディドラマの女優へと広がり、W浅野(浅野温子、浅野ゆう子)のように、太眉に鮮やかな口紅、といったスタイルが支持されました。これまでの“かわいい”に「大人っぽい」「都会的」という価値が乗っかってきた時代です。

銀座を歩く男女

Image by: LightRocket via Getty Images

1990年代後半:コギャル旋風とストリート発 「自分たちのかわいい」

 1991年のバブル崩壊後、トレンドの牽引役は大人のOLや女子大生から、女子高生やコギャルへと一気に低年齢化。安室奈美恵の大ブームを筆頭に、浜崎あゆみ、SPEED、小室ファミリーなど個性的な歌姫が次々と登場し、読者モデルなど一般人に近い世代がカルチャーを主導した。

Image by: 花王

トレンドの中心が若者に移動した背景には何があったのでしょうか?

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花王 吉谷さん

当時はまだSNSがなく、テレビと雑誌が情報源でした。1980年代半ばにおニャン子クラブのブームがあり、身近な女の子たちがカルチャーの中心になる下地はあったのですが、バブル期はお金を使える社会人や大学生が主役でした。そこへバブル崩壊の閉塞感を打ち破るように安室奈美恵さんという強力なアイコンが現れ、一気に世代が下がったのです。1995年頃からは女子高生やギャル、読者モデルなど、情報を一方的に受け取る側だった同世代の中から新しい“かわいい”が発信されるようになりました。

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花王 原島さん

その頃、化粧品原料の技術も進化し、微粒子パールの開発などによって、メイクに軽さや透明感、光のニュアンスを出せるようになった時代です。バブル時代の口元が強調されたメイクから、目元を重視するスタイルへと移っていきました。また、バブル期の太眉から一転、安室さんのような昆虫の触角を思わせる細くシュッとした“触覚眉毛”が大流行しました。中島美嘉さんのように眉毛をなくすくらいの極細眉も人気でしたね。これは安室さんだけでなく、ケイト・モスといった海外のスーパーモデルからの影響も大きかったと思います。

2000年〜2010年代:かわいいの二極化「モテかわいい・愛され」「ギャルかわいい」

 2001年の米同時多発テロなど激動の国際情勢の中、個人ブログや携帯電話が普及し、読者モデルやブロガーといった一般人の発信が注目を集め、コミュニティ毎のトレンドが多様化。女性誌市場では「VoCE」(1998年)、「美的」(2001年)、「MAQUIA」(2004年)といった美容専門誌が登場した。2000年代半ばにはCanCamを中心とする、表紙の題字が赤やピンクの女子大生・OLに向けた「赤文字系雑誌」が大流行。“男ウケ”を意識した「モテ」「愛され」がキーワードになる一方、益若つばさ、西野カナ、浜崎あゆみに代表されるようなギャルカルチャーも発展していった。

Image by: 花王

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花王 原島さん

引き続き目元が中心のメイクなんですが、これまでのかわいいに、もうちょっと大人っぽい綺麗さが加わったみたいな時代になってきています。品格みたいなところがすごく取り上げられた印象ですね。

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花王 吉谷さん

2000年頃になると、読者モデルからショップのカリスマ店員、カリスマ美容師へと憧れの対象が広がり、より身近な存在がトレンドを作っていきました。この頃は猛烈な巻き髪ブームで、コード式ではなくカセットガスを装着する「ガス式コテ」をバッグに入れて持ち歩き、駅のトイレやオフィスの休憩室で巻き直す女性がたくさんいました。
その後、「小悪魔ageha」という雑誌をきっかけに、髪を大きくふくらませる「盛り髪」や、毛束を筋状に整える「スジ盛り」がブームに。2000円くらいで30分でバーッとセットしてくれる盛り髪専門店があり、仕事帰りに寄ってから出かける光景が見られました。

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花王 原島さん

ヘアのカールだけでなく、まつげエクステ、つけまつげ、カラーコンタクト、ジェルネイル、ガラケーをラインストーンで埋めるデコ電など、とにかく細部まで装飾するデコる文化が極まった面白い時代でしたね。

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花王 吉谷さん

2005年頃にはCanCamのエビちゃん(蛯原友里)が大人気となり、ギャルの巻き髪がフェミニンに昇華された「モテかわいい」が定着します。エビちゃん巻き(内巻き)と押切巻き(ミックス巻き)を使い分けたり。「愛されメイク」のように、自分目線ではなく異性の目線を強く意識したのがこの時代の“かわいい”の特徴です。

2010年代:震災後の「すっぴん風」からアジア発トレンドへ

 2008年のリーマン・ショックによる不況が続く中、2011年に東日本大震災が発生。計画停電や節電によって街やオフィスが暗くなり、社会全体に不安とエコ意識が広がった。連絡手段としてTwitterやFacebookの登録者が急増。SNS時代が本格的に幕を開け、国内だけではなく韓流カルチャーなどにも注目が集まり始めました。ファッションの意識も派手な装飾から、ぬくもりや自然体を求める空気へと変化しました。後半に入ると、スマートフォンの定着とともにTWICEやBLACKPINKといった韓国発ガールズグループが世界的に躍進。トレンドの発信源が個人SNSへと完全にシフトし、アジア発のメイクカルチャーが日本の若い世代へダイレクトに流入した。

Image by: FASHIONSNAP

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花王 原島さん

震災による自粛や不安の中で、柔らかさやぬくもり感のあるメイクが求められるようになりました。象徴的だったのが雑誌にあふれた「すっぴん風メイク」です。作り込むのではなく、持って生まれたパーツを整え、美しく整えた肌にチークで自然な血色を足すこのスタイルが支持されました。

この時代に台頭したのがAKB48です。黒髪パッツン前髪や、親しみやすいゆるふわスタイルが主流になり、身近で真似しやすい存在が共感を集めました。一方で、原宿カルチャーを牽引したきゃりーぱみゅぱみゅさんのように、日本独自のポップな“かわいい”が海外へ輸出されたのもこの時期です。2015年頃からはInstagramの普及により、リアルにコスメで盛るだけでなく、画面のフィルターを通してどうかわいく見せるかというデジタルの視点が入り込んできたのもこの時代の大きな転換点です。また、メイク単体だけでなく背景やライフスタイルを含めた世界観まで、自分を可愛く見せる意識も芽生えています。

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花王 吉谷さん

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花王 原島さん

2010年代後半になると、韓国語で美少女の意のオルチャンを冠する「オルチャンメイク」が大流行しました。透き通るような白ツヤ肌、太めの平行眉、赤めのリップが特徴です。パーツを全部盛り立てるのではなく、ポイントを絞って他を抑える引き算や抜け感という美意識が強く意識されるようになりました。

Image by: FASHIONSNAP

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2019年頃には、完璧で隙のない美しさを目指した中国風のメイクを指す「チャイボーグ」も注目されました。すっぴん風ナチュラルから、凛とした強さや自立した大人っぽさへと好みが広がっていきます。これまでのように絶対的な単一の流行アイコンはおらず、渡辺直美さんや菜々緒さん、藤田ニコルさんのように、それぞれ確立した個性を持つ方々が支持を集めました。

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花王 吉谷さん

2020年代:「自分受け」の“かわいい” 個性最適化へ

 2020年からのコロナ禍による外出自粛とマスクの常用は、人々の美意識を大きく動かした。ウェブ会議の普及で画面越しに自らを見つめる機会が増え、スキンケアや美容医療への投資が拡大。他者ウケよりも「自分を整えること」に重きが置かれ、年齢や性別の枠組みを超えた「インクルーシブビューティ」が定着した。情報発信の主役もTikTokをはじめとする縦型ショート動画へと移行し、等身大の自己表現やトレンドの拡散がリアルタイムで加速していった。


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花王 原島さん

コロナ禍のマスク生活では目元が注目されるようになり、囲み目メイクやカラーアイライナー、カラーマスカラが流行しました。この潮流の大きな転換点は、2023年頃の脱マスク化です。マスクを外すことで自分の顔の下半分に余白が多く感じられ、それを解消するために鼻と口の間を狭く見せる「人中短縮メイク」や、小顔に見せるためのチークやシェーディングが一気に注目されるようになりました。

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花王 吉谷さん

このほかにも、TikTokやYouTubeのショート動画が日常になったことで、静止画だけでなく、揺れる髪や表情の動きを含めた動的なかわいさが重視されるようになりました。薬剤の進化や個性を重視する社会の流れもあり、髪色も、以前はコスプレイヤーなどに限られていたようなピンクや紫、青といったカラフルな色やハイトーンカラーが、街中の日常風景になりました。

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花王 原島さん

現在は、一人ひとりが自分に合った美しさを楽しむ「個性最適化かわいい時代」です。SNSや広告ではリコメンド機能の進化や、AIによるパーソナライゼーションが普及し、自分軸で選ぶ時代になりました。さらに、性別の枠を日によって自由に行き来する「ジェンダーフルイド」感覚も浸透しています。

メイクの自由度も過去最大です。チークは頬だけでなく鼻先や顎、耳たぶにも入れますし、シェーディングにピンクを使うこともあります。加工フィルターのような毛穴レスを目指す『AI肌』提案など、自分らしさを型にはめずに楽しむ時代です。

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花王 吉谷さん

これまでの“かわいい”、これからの“かわいい”

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花王 原島さん

花王では、東京の渋谷、銀座、丸の内で定点スナップ撮影を行うストリート調査を丸30年、カラー・メイク嗜好調査を20年以上続けています。その調査の中で「なりたいイメージ」を2005年から毎年尋ねていますが、日本女性の回答は現在に至るまで“かわいい”が常に上位なんです。

ただ、“かわいい”って非常に便利な言葉ですよね。愛らしいものだけでなく、ちょっと風変わりなものや怖いものにまで言えてしまう。
だからこそ調査では、2位、3位、4位に何が入っているかを掛け合わせて分析します。例えば最近、大人っぽいが上位に食い込んできているのは、韓国ドラマやK-POPの影響が強いからだな、といったように、その時代ごとのかわいさの内実が見えてくるんです。

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花王 吉谷さん

時代毎に、女性たちが「かわいい」を表現するために最も力を入れる顔のパーツも違っていたのでしょうか?

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花王 原島さん

はい。たとえば、蛯原友里さん全盛期の2005〜2007年は、美肌と目力が重視されていたのでファンデーションとマスカラを重要視する人の割合が多くなっています。2015年頃からのK-POPブームでオルチャンメイクが入ってくると、口元への意識が高まり、鮮やかな赤やピンクをきかせるリップメイクが人気となりました。

ほかにも、コロナ以降はマスクを外したことで、シェーディングや、自然な血色感を与えるチークが注目されはじめました。 実はチークには面白い周期があって、2014年頃の「おフェロメイク」(目の下にチークを塗るメイクのこと)や、「すっぴん風メイク」のときのように、血色を足して自然な愛らしさを作りたい時代に重要視する人が増える傾向があるんです。

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花王 吉谷さん

日本の「かわいい」文化は海外から見るとガラパゴス的で特異とも言われます。なぜこれほど独自に進化を遂げたのでしょうか?

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花王 原島さん

正直なところは分かりません。個人的には、日本の長い歴史と、島国という環境が深く関わっているのではないかと思います。古くは飛鳥・奈良時代、中国や朝鮮半島から仏教や儒教、文字が入ってきましたが、日本人はそのまま受け入れたわけではありませんでした。日本の湿潤な気候風土に合わせて寺院の建て方や保存食の技術を変え、漢字を崩して平仮名やカタカナなど日本独自の文字が生まれました。歴史的に見て、外から優れたものを取り入れ、自分たちの暮らしに合わせて徹底的に工夫し、編集し直すのが得意な民族なのかもしれません。

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花王 吉谷さん

メイクの歴史もまさにその繰り返しでしたよね。

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花王 原島さん

そうですね。たとえば、日本の伝統化粧は白粉・紅・眉墨の3色が基本で、江戸から明治初期まで長く続きました。明治の文明開化や戦後に西洋文化が入ってきたときも、ただ流されたわけではない。1960年代に欧米風メイクが入ってきたときは、日本人の平坦な顔立ちにはそのまま合わないからと、二重の線を強調するダブルラインを生み出して工夫しました。知恵を絞って自分たちに心地よい形へ落とし込む。その追求精神が、メイクにおける独自のかわいいを発展させたのだと思います。

かわいいを目指す意味も、時代によって変化しているのでしょうか?

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花王 原島さん

誰のためのかわいさなのか、という点は時代とともに移り変わってきました。2000年代のモテ全盛期のように異性の目線を重視した時代から、2010年代のガーリーカルチャーのように同性からの共感を求める時代を経て、今は確実に自分のためのかわいさへ着地しています。

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花王 吉谷さん

まさに「自分受け」ですね。今の若い世代は、自分が心地いいと感じるスタイルを何よりも大切にしていると感じます。SNSの普及で趣味嗜好が細分化したことで、どんなスタイルであってもネット上で共感し合えるコミュニティが見つかる。だからこそ、自分の好きを貫ける、自由な時代になったのだと思います。

これからのかわいいはどのように変化していくと思いますか?

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花王 原島さん

現在、平成レトロやY2Kが引き続き人気がありますが、加えて1970~80年代の昭和歌謡が世界的に脚光を浴びています。リアルタイムを知らない若い世代にとっては、過去のスタイルが全く新しい表現として新鮮に映っています。過去に見られたように、厚底シューズや巻き髪といったかつてのカルチャーアイコンが街中に戻ってきています。しかしそれらはただ、単に昔の流行をそのままコピーしているわけではありません。最新のコスメによる軽さや透明感を掛け合わせた上で、自分軸を取り入れて、アップデートされている。日本の“かわいい”はこれからも時代を行き来しながらも軽やかに進化していくのだと思います。

【連載:「かわいい」カルチャー】

 時代とともに移り変わる、「かわいい」の価値観。今の時代のかわいいって、どういうこと? 令和のかわいいの作り手や体現者へのインタビュー、それを受けとめる世の中の心理の分析など、さまざまな切り口でかわいいを掘り下げます。

第1回:ウォン・ジョンヨが語るメイクアップの可能性 ⎯⎯「かわいい」は引き出すもの
第2回:“かわいい”メイク〜佐々木心菜〜 韓国メイク着想でミルキーな表情をメイク
第3回:”かわいい”メイク〜中村圭佑〜 スタイリッシュに盛るメンズメイク

最終更新日:

文・平松将

Sho Hiramatsu

FASHIONSNAP 編集記者

青山学院大学経営学部卒業後、大手事業会社を経て文化服装学院に入学。服作りを学んだ後にレコオーランドに入社。
ファッション、アート、カルチャーに加え、人々の暮らしなどにも関心を持つ。日課としてジャーナルとメモをつける記録愛好家兼トレーニー。骨格筋量41.4kg

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