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【2022年度決算おさらい】LVMH、ケリング、エルメスの業績&株価指数を解説

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【2022年度決算おさらい】LVMH、ケリング、エルメスの業績&株価指数を解説

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 2022年度は地政学的リスクが顕在化し、不安要素が多い年であった。年初からウクライナ情勢の悪化によりラグジュアリー各社が本拠地を置く欧州をはじめ世界的に原材料高や各国のインフレが進行した。また、近年ラグジュアリー市場として存在感を増している中国の厳しいコロナ対策により本拠地から離れた場所でのリスクも浮き彫りになった。

 そのような状況下においても今回取り上げるLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン、ケリング、エルメス・インターナショナルの主要ラグジュアリーグループ3社は売上高、当期純利益ともに二桁成長を達成している。一見順調な推移だが、難しい市況の中で市場からの評価には濃淡があった。(文・高山純)

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LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン

<主なトピック>

  • 中国以外のマーケットは前年同様2桁成長
  • 「ルイ・ヴィトン」がラグジュアリーブランドで初めて売上高200億ユーロの壁を突破
  • 「セフォラ」が史上最高売上を達成
  • アルノー氏は今後5年ほどグループCEOを継続か
  • 2023年はファレル率いるメンズの「ルイ・ヴィトン」に注目
売上推移の棒グラフ

売上高:791.8億ユーロ(前年比23%増、約12兆円)
営業利益:210.1億ユーロ(前年比22%増、約3兆円)
当期純利益:140.8億ユーロ(前年比17%増、約2兆円)

 前年比35%増の欧州を筆頭に、中国以外のマーケットは前年同様2桁成長で好調に推移した。中国市場については「コロナによるロックダウンの影響もあり観光客の戻りも鈍いことから、回復は下半期になる」とLVMHのベルナール・アルノーCEOはコメントをしている。

 部門別ではファッション&レザーグッズ部門が386億ユーロ(約5兆円)と引き続き売上を牽引。また、同部門の中でも「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」がラグジュアリーブランドで初めて売上高200億ユーロの壁を突破した。

 前年度は引き続くコロナ禍の影響により回復が遅れていたセレクティブ・リテーリング部門であったが、2022年度には全部門で最も高い前年比26%増の成長率を示した。これは特に、中国を除く市場の回復もあり「セフォラ(SEPHORA)」が史上最高売上を達成したことが挙げられる。また、わずかではあるが、コロナ禍以前の2019年の売上も超えていることから、中国市場の正常化により2023年後半にはさらなる成長が期待できる。ウォッチ&ジュエリー部門とワイン&スピリッツ部門もそれぞれ同18%増、同19%増と他部門同様に2桁成長した。

 経営面においてもLVMHの今後を占う上で重要な出来事があった。

 ベルナール・アルノー氏は現在74歳であり、今後は長女のデルフィーヌや長男のアントワーヌを中心に後継者へ要職を引き継ぐのではないかと考えられている。その中で、2022年4月の株主総会において、グループCEOを80歳まで務められるよう定款の変更が承認された。また、取締役会の会長職については75歳をもって引退をする必要があるが、取締役として残ることができると定められている。

 つまり、アルノー氏は向こう5年ほどはグループCEOを続けながら、2024年に取締役会長の職を退きつつ取締役としては体力のある限り残る、というような流れが浮かんでくる。なお、グループ内で要職を歴任した娘のデルフィーヌは取締役であると同時に、2023年1月に「ディオール(DIOR)」のCEOに就任している。

 主力ブランドのルイ・ヴィトンにとっては、2021年末にヴァージル・アブローが亡くなったことから、メンズウェアデザイナー不在の年となった。ブランドのカテゴリー別の売上は公表されていないものの、アブローの存在はより幅広い層を取り込むことに寄与し、メンズウェアに限らないブランド全体の底上げにつながったと考えられる。2023年は新メンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任したファレル・ウィリアムスによる初のコレクションのお披露目となる予定だ。「ヴァージル効果」との直接的な比較は難しいが、引き続きデザイナー出身でない人物の起用がどのように評価されるかが注目される。

ケリング

<主なトピック>

  • 3社の中では控えめな数値
  • 主力の「グッチ」は減速傾向
  • 「バレンシアガ」などのカテゴリーも低調
  • 「サンローラン」は昨年に引き続き最も高い成長率
  • 「トム・フォード」買収ならず
  • 2023年は新生グッチの成功が鍵
ケリングの売上動向グラフ

売上高:203.5億ユーロ(前年比15%増、約3兆円)
営業利益:55.9億ユーロ(前年比11%増、約8100億円)
当期純利益:37.5億ユーロ(前年比11%増、約5200億円)

 全体として2桁成長でありながら、今回比較しているラグジュアリー企業の中では控えめな数値だ。西欧を筆頭に売上が2桁成長で着地したが、他社と同様に中国市場が影響し、日本を除くアジア太平洋地域は1.9%減と前年を下回った。

 ブランド別では「サンローラン(Saint Laurent)」が前年比31%増と、昨年に引き続き最も成長率の高いブランドだった。一方で、グループの売上シェアが最も高い「グッチ(GUCCI)」は中国依存が高く、昨年同様に公表されているブランドの中では最も低い成長率で、減速傾向が強くなった第4四半期には前年同期比11%減となった。また、グッチに次ぐ売上を誇る「その他」のカテゴリーのブランドでは、児童虐待との批判を受けた広告キャンペーンを展開した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の影響もあり、第4四半期は前年同期比3%減となり、不調のグッチに次ぐ低い成長率で推移した。サンローランの好調がありながらも、2023年は主力であるグッチの展開が鍵になる。

 グッチでは、2015年からブランドを率いたアレッサンドロ・ミケーレの退任が話題を集めた。クリエイティブ・ディレクターの交代に関しては様々な見方があるが、外部要因もありながら売上拡大の減速傾向が強まったことも一因となって、ミケーレとの関係に終止符を打ったと考えられる。今年は新クリエイティブディレクターに就任したサバト・デ・サルノ率いる新生グッチに注目が集まる。

 昨年の記事では大型のM&Aの可能性についても言及した。実際に「トム・フォード(TOM FORD)」を巡る買収ではケリングが優勢という報道もあったが、最終的にはエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)が競り勝ち、2022年のケリングによるM&Aはアイウェアブランドのみにとどまった。ビューティビジネスの強化はケリングにとっても引き続き注目の領域だが、新生グッチを軌道に乗せることが喫緊の課題だろう。

エルメス・インターナショナル

<主なトピック>

  • 3社で唯一、中国市場において前年比22%増と2桁成長を達成
  • レザーグッズ&サドル部門が全部門の中で唯一マイナス成長
  • 他社に比べて値上げはゆるやか、2023年中には平均7%値上げを実施予定
エルメスの売上動向グラフ

売上高:116.0億ユーロ(前年比29%増、約1.7兆円)
営業利益:47.0億ユーロ(前年比33%増、約6700億円)
当期純利益:33.7億ユーロ(前年比38%増、約4800億円)

 地域別の売上高は、米国の観光客増加により前年比26%増となったフランスや、前年比47%増となった南北アメリカが好調だった。なお、今回取り上げている各社の中では唯一、中国市場において前年比22%増と2桁成長を達成している。第4四半期においてバーキンなどの高額品が好調に売れ、アナリスト予想を上回る結果となった。

 生産能力不足により高い需要があるにも関わらず、供給面の対応が最適でなかったことから、第4四半期においてはレザーグッズ&サドル部門が全部門の中で唯一マイナス成長した。2022年度においては製造キャパシティの向上策も課題であった。稼働までは至っていないものの、実際に設備投資は進んでおり、2023年から稼働開始する2拠点の職人育成を11月より開始している。

 一方で他社に比べてゆるやかだった値上げについて、エリック・デュ・アルグエCFOによると、2023年中には平均7%値上げを実施予定だという。主に欧州におけるコスト高の転嫁だが、日本市場においては円安の影響もあり平均よりも高い値上げ幅となる模様だ。

株価は振るわなかった年に

 2022年はコロナ禍後の消費意欲が旺盛だった2021年と比較して、ラグジュアリー各社の株価が振るわなかった年だった。

 年の前半はウクライナ情勢の不透明感が強く、CAC40(ユーロネクスト・パリ上場上位40銘柄で構成される株価指数)を下回って推移した。上期の決算発表が行われた夏頃には好業績によりLVMHの株価がCAC40を上回るものの、依然として前年度を下回った。エルメスは業績が評価された。一方、ケリングでは主力のグッチの売上高の伸び率がM&Aや為替の影響を除いた前期と同条件比較で、前年比8%の伸びに留まり、引き続き不安材料視されたと見られる。その結果、半期決算が順調であったLVMHは夏以降、CAC40上回って推移し、夏前まではケリングと同様の水準で推移していたエルメスの株価も上昇していった。

 年の後半になると市場からの評価がより鮮明になった。第3四半期まで不安要素が限定的であったLVMHとエルメスは前年の株価を大きく超えて推移することはなかったものの、CAC40を超えて推移し比較的高評価を得た。

 ケリングの株価は昨年同様、ラグジュアリー各社及び市場平均を下回って推移し続け、2022年末には前年よりも3割以上の安値で年を終えた。主力であるグッチにおいて不安要素や先行きの不透明感がある中では、投資家としても自信を持って買うことが難しい状況であった。

2023年は中国市場の消費回復に注目

 4月13日に仏マクロン政権の年金改革に反対するデモ隊がLVMH本社に侵入したことが話題になった。LVMHに抗議するデモではなかったものの、世界的な富豪が経営するラグジュアリーグループというわかりやすい富の象徴に対しての反発心が顕在化した出来事となった。

 一方、ラグジュアリー業界は順調に成長している。2022年度には不振だった株価も2023年に入ってからは各社回復し、LVMHとエルメスは時価総額が史上最大となった。先日発表されたLVMHの2023年第1四半期の売上高は前年を上回って推移し、ラグジュアリー業界は中国市場の戻りとともにさらなる成長の年になる可能性が高い。

FS会計クイズ ヴィジュアル

【FS会計クイズ】(2021年版)

LVMHとケリングの損益計算書はどっち?

BUSINESSFS会計クイズ

高山 純

Jun Takayama

慶應義塾大学法学部卒業。在学中は「Keio Fashion Creator」や「ファッションビジネス研究会」の代表を務める。卒業後、外資系コンサルティング会社及び投資ファンドにてM&Aやファッションブランドへの投資業務などを担当。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン勤務を経て、2022年8月よりパーソンズ美術大学ファッション経営修士課程に日本人として初めて留学中。

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