Image by: FASHIONSNAP

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「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」が、2026年秋冬コレクション「Reflection」で発表したブランド初のレザーコレクション「Mame Kurogouchi with TSUCHIYA KABAN」を7月29日に発売した。バッグ3型、スモールレザーグッズ5型、レザーベスト1型から成るコレクションは、革ランドセルのパイオニアとしてレザークラフト全般の高い技術と美意識を培ってきた土屋鞄製造所との協業によって生まれたものだ。マメ クロゴウチのシグネチャーである曲線を多用した彫刻的で柔らかなフォルムが特徴の、ミニマルながらブランドが大切にする美意識や佇まいを豊かに反映したプロダクトは、どのようにして誕生したのか。
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今回は、マメ クロゴウチ デザイナーの黒河内真衣子氏とともに土屋鞄製造所の工房を訪問。実際の製造現場を見学しながら、両者の美意識とクラフトマンシップが結実したコラボコレクションの魅力とその背景を紐解く。

Image by: Mame Kurogouchi

Image by: Mame Kurogouchi
目次
ものづくりへの思いが共鳴する、マメ クロゴウチとツチヤカバンの協業
これまで、PVCやコード刺繍など、ユニークな素材を用いた凝った意匠のバッグを主に手掛けてきたマメ クロゴウチ。「レザーのバッグはいつか挑戦したいという気持ちはありましたが、私たちがなぜ今レザーのバッグを作る必要があるのかをずっと自問自答していたんです。昨今の情勢や材料の確保の困難さなど、レザーを扱うことの理由や難しさも感じてきました」と黒河内氏。その中で、ランドセルからスタートし、日本の企業としてその技術を大切にしながらものづくりを行う土屋鞄製造所の姿勢に以前から感銘を受けていたことから、「自分がレザーのバッグを作るなら、土屋鞄製造所さんとやってみたい」と考えていたという。ものづくりやクラフトマンシップに対する思いを共有する両者の対話から、このコラボレーションが実現した。
マメ クロゴウチとの協業が決まった後、土屋鞄製造所の社内では、喜びに沸いた一方で緊張感も走ったという。今回、コラボバッグの製造を手掛ける職人歴18年の塚本絵美氏は、「マメ クロゴウチさんはすごくこだわって服作りをされているのを一消費者としても感じていたので、『コラボでもこだわりの詰まった難易度の高いものが来るな』と(笑)。どんなものが来るのだろうという怖さとワクワク感がせめぎ合いながらも、最初からとてもポジティブな気持ちでした」と当時の心境を振り返る。

ツチヤカバン職人 塚本絵美氏
ミリ単位のこだわりが詰まった、タイムレスなバケットバッグ「Mayu」
黒河内氏とともに訪れたのは、東京・足立区にある土屋鞄製造所西新井本店に併設する西新井工房(※新たな製造拠点「東京工房」の開所により、2026年6月末で閉所)。2階建ての建物の1階では、土屋鞄製造所の代名詞でもあるランドセルが製造されており、革の裁断から漉き、組み立て、縫製まで、ランドセル作りの全工程がワンフロアで行われていた。心地よい静けさと緊張感が漂う中、各工程を担当する職人たちが丁寧かつ無駄のない手つきで黙々と製作を進める姿が印象的だった。


一方、マメ クロゴウチとのコラボコレクションの製作が行われていたのは、工房の2階の一角。今回のシグネチャーピースでもある繭型のバケットバッグ「Mayu」の量産は、4人の職人チームが担当している。「シンプルでタイムレスな、季節やオケージョン問わず持てるものを作りたい」との思いからスタートしたというバッグ製作で黒河内氏がこだわったのは、女性が持ちやすい「軽さ」と、容量がしっかりありながらも華奢で繊細なディテールのハンドルをあしらったデザインと強度のバランス、ツチヤカバンらしさとマメ クロゴウチとしてのクラフト要素をどう取り入れるか、ということだった。

「女性の身体に寄り添うような曲線的なディテールが多いマメ クロゴウチの服と同じように、ブランドのアイデンティティをロゴや装飾で大きく打ち出すのではなく、バッグが持つ佇まいとして提案することを目指しました」と黒河内氏。両ブランドのロゴは、内側のスエードの底面にさりげなく素押しされているのもこだわりの一つだ。

Smallサイズのバケットバッグのみハンドル部分のデザインが異なっており、特別な飾りがあしらわれている。

Mayuの特徴は、有機的な丸みを帯びた繭型の立体的なシルエットと、黒河内氏が普段から愛用している古い竹籠の意匠から着想を得た「編み」のディテールが施された細いハンドル、しなやかでありながら陶器のように美しく自立するこだわりのレザー選びにある。本体は前後と底の3パーツで構成されており、その丸みを帯びた立体感を生み出すために用いられる「ポストミシン」は、不安定な土台の上で歪みが出ないように縫製するため、職人の高度な技術を要する。さらに、ハンドルの付け根にあしらった竹細工のような「編み」のディテールは、使用中のズレを防ぐためのスリット構造を採用しつつ、職人の手によって力加減を微細に調整しながら、一つひとつ編み込まれている。


コラボバッグの製作について、塚本氏はこう語る。「全体的にすごく難しく感じましたが、特にダーツ部分の縫製が難しかったです。1mm単位での修正をお願いされたのですが、最初はうまく縫えませんでした。練習を重ね、開き具合などを厳しくチェックしてもらって、ようやくOKが出ました。1つのバッグを作るのに、実際の作業時間だけで7〜8時間ほどかかります」。

また、「ツチヤカバンの製品の特徴は、見えないところにかなりこだわっていること」だとツチヤカバンの広報担当者が語る通り、強度を出すためにダーツ部分の裏から当てられた革の帯や芯材、革の断面の「コバ」の塗り方、持ち手の握りやすさ、バッグの内側のステッチの入れ方など、細部へのこだわりの蓄積がその佇まいの美しさに繋がっている。
「自分が描きたいデザインの輪郭やディテールを実現する上で、デザインを入れることでどう強度に影響するのか、軽さと理想的なフォルムを両立するためにどのようなレザーを選ぶべきかなど、ツチヤカバンさんと何度も相談を重ねて完成しました。コバ塗りのディテールや、ダーツ縫いのステッチ幅のミリ単位の調整などの細かなアップデートまで丁寧にキャッチボールができたのは、ここに工房があり、職人の皆さんと近くでものづくりができたからだと感じています」(黒河内氏)。

一枚革に見えるバケットバッグは、実は表は牛革の表革、裏はスエード、間にはウレタンの芯材と3枚の素材を貼り合わせて製作。ツチヤカバンならではの素材選びの知見が、しなやかさと自立する繭型のフォルム、物を入れても型崩れしない強度を実現している。

「今回は、私がいつも鞄に入れている『黒河内セット』が入るかどうかを全てのアイテムで試しました」と黒河内氏。一番小さなサイズのバッグにも、必ず持ち歩くモレスキンのノートや財布が入るよう設計されている。
ランドセルと洋服を越境するレザーベスト「Yama」
今回のコレクションで象徴的なのが、トレイルベストからインスパイアされたレザーベスト「Yama」。当初、コラボではバッグのみを製作する予定だったところ、黒河内氏が土屋鞄製造所の工房でランドセル作りの工程を見学したことがきっかけで追加されたという。
「土屋鞄製造所さんの工房で実際に背負わせていただいたときに、その背負い心地の良さに感動して。背中のクッション材や一番負荷が掛かる肩の部分など、子どもが6年間背負うものとして設計されていることに感銘を受けたんです。多少乱暴に扱っても型崩れせず、重いものも背負えて雨にもある程度対応できるといった機能性の高さも面白いと感じました。今回せっかくご一緒するのであれば、ぜひこの背負い心地をマメ クロゴウチなりに解釈して作ってみたいと思い、今季のコレクションで作っていたトレイルベストをランドセルディテールで作れないかとご相談したんです」(黒河内氏)。

2026年秋冬コレクション
Image by: Mame Kurogouchi
本来はランドセルと同様にベルトと本体が分かれている方が身体に沿いやすい形になるところ、「あくまで洋服とカバンを越境できる存在にしたい」との黒河内氏の思いを反映し、ベスト型で身体に馴染む形状を模索したという。結果的に、立体的な背中のクッション材やS字型ショルダーベルト、可動式の「背カン」、防犯ブザーなどを取り付ける「Dカン」といったランドセル特有の機能や構造に、マメ クロゴウチオリジナルの繭型のカラビナを加え、金具は黒河内氏が好んで用いるマットサテン調のゴールドを採用。土屋鞄製造所の技術やアイデンティティとマメ クロゴウチの美学が結集したアイテムに仕上げた。


取材時には、試作職人である平石公一氏が、背中に沿うフィット感を生み出すための、芯材となる3枚のスポンジをカーブするように癖づけしながら立体的に貼り合わせる「吊り込み」という技術を実演。黒河内氏とともに、土屋鞄製造所ならではの技術力と身体に馴染む構造がどのようにして生まれるかを体感することができた。




ツチヤカバン試作職人 平石公一氏
「6年間何があっても守り抜く」 土屋鞄製造所の信頼の品質基準
ランドセルをベースとした、日常の過酷な使用にも耐えうる土屋鞄製造所の高い品質基準は、外部機関に頼らず、自社工房内に厳しい検査体制を設けることで守られている。同社の広報担当者は、「当社は製品の作りや強度、革そのものに対する検査基準が非常に高く、『6年間、何があっても絶対に守り抜く』というランドセルに対するものづくりの姿勢が、大人向けのバッグにも反映されている点だと思います」と話す。
今回のコラボアイテムについても、黒河内氏は土屋鞄製造所ならではの高い品質にまつわるこんなエピソードを明かした。「実はこのバッグを使っていたときに、中で水筒の水が漏れて中に溜まるくらい濡れてしまったことがあったのですが、乾かしたらシミもなくきれいに元に戻ったんです。次の打ち合わせでそのお話をしたら、『防水ではないですが、レザーの耐水性の試験も行っています』とおっしゃっていて、とても信頼できる品質だと感動しました」。

バッグのサンプルを半年間自身で愛用してきたという黒河内氏は、徐々にレザーが馴染んで味わいが増すだけでなく、使い込んでも本来の端正な美しさが損なわれない点に、品質の高さを実感しているという。
自由なスタイリングを楽しめるスモールレザーグッズと、新たなブランドロゴ

同コレクションから登場する立体的な造形のポーチと三つ折りのウォレット、キーリング、カードスリーブといったスモールレザーグッズは、いずれもなだらかな曲線によるフォルムが特徴。また、それぞれレザーストラップをはじめとしたオリジナルのカラビナ付きアイテムにジョイントできるようにデザインされており、バケットバッグのハンドルやレザーベストのショルダーハーネスに接続することで、用途に応じたスタイリングを楽しむことができる。


また、今回の「Mame Kurogouchi with TSUCHIYA KABAN」では、マメ クロゴウチが新たに開発したブランドシンボルとなるロゴを、一部アイテムのメタルディテールとして使用。繭を想起させる有機的な楕円の中に直線が交差するシンプルな構成は、日本の寄木細工や伝統文様に見られる幾何学模様から「線」の要素を抽出し、分解、再構成することで生まれたものだ。模様を成す最小単位としての線のみを残しながら、その中にブランド名である「MAME」や「マメ」の文字要素を内包。同一単位形を繰り返すことで模様を構成する伝統細工という秩序から生まれる美であることから、永続・繁栄・調和という意味を込めているという。

今回のコラボで初披露された「マメ クロゴウチ」の新たなブランドロゴ
互いへの敬意が生み出した、越境するものづくり
ファッションブランドと老舗鞄メーカー。やや異なるフィールドでありながらも、互いのものづくりの姿勢や技術、美学に対して敬意を抱いている両者は、「コラボレーション」についてこのように語った。
「ロゴを前面に出すようなコラボレーションではなく、ものづくりの信念や価値観がマッチすることが大前提です。その上で、マメ クロゴウチさんの洋服からのアプローチである質感や佇まいといったデザイン性と、弊社が持つ長年のものづくりで培った職人の手仕事、細部まで妥協なく組み上げる設計力、そして使う人の動きにまで配慮した機能美。そこに異なる発想や感性が掛け合わさることで、私たちだけではたどり着けない新しい価値を持つプロダクトが生まれます。それがコラボレーションの面白さだと思います。今回はデザイナーや現場の職人にとって非常に良い機会になり、モチベーションも上がったのではないでしょうか」(ツチヤカバン広報担当者)。
「協業させていただく場合、その方のものづくりの姿勢に自分が共感し、尊敬できるかという点がとても重要です。今回も、土屋鞄製造所さんのものづくりや会社の姿勢をとても尊敬し共感しているので、ご一緒できて本当に光栄です。もう一つの側面として、自分自身が日常の中で使いたいと思えるものを作れるかどうかも大切にしています。こうしてものづくりの現場を見せてもらうと、そのものを大事にしたくなりますし、日本でものづくりができることの素晴らしさを感じます。それがお客様にも伝わればいいなと思っています」(黒河内氏)。

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