爽やかな初夏が訪れる6月のヨーロッパだが、今年は記録的な熱波が襲い、各地が厳しい暑さに見舞われた。そのような状況の中、ミラノとパリで行われたメンズファッションウィーク。よりエフォートレスなジェンダーフルイドのスタイルが浸透しつつある中、改めて新しい男性性とは何かを問いかけるブランドが続出した。
より快適でエレガントなテーラードスタイルの再考や、慣習にとらわれないスタイルなど、現代のマスキュリニティを追求する「注目すべきブランド10」を紹介する。
1. ディオール(DIOR)
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キム・ジョーンズ(Kim Jones)が「ディオール(DIOR)」のクリエイティブ ディレクターに就任してから5周年となるアニバーサリーシーズン。オートクチュールメゾンであるディオールの伝統とテクニックを引き継ぎながらも、ポップで軽やかなジェンダーフルイドの風をはらんだ現代のメンズウエアに昇華させた、個性的で完成度の高いコレクションとなった。
Image by DIOR
Image by DIOR
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ディオール歴代のデザイナーであるイヴ・サンローランからはシルエット、ジャンフランコ・フェレからはエンブロイダリー、ムッシュ・ディオールからはカボション(cabochons、宝石)、マルク・ボアンからは素材のテクスチャーといった各デザイナーからの象徴的な要素を繋ぎ合わせ、コラージュしながらキム・ジョーンズ流の現代のエレガンスが表現されている。特にメゾンのアイコンである「カナージュ(Cannage)」柄が、ファンシーツイードやニットのモチーフとして使用され、コレクションに花を添えている。
Image by DIOR
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丈のバランスが絶妙なパンツ、ツイード素材のジャケット、そしてレオパード柄のローファーは、サイズによっては女性も楽しめそう。カナージュがモチーフのトップやバッグ、刺繍が施してあるアイテムなどは、カップルでシェアすることもできそうだ。
ともすれば古臭くなってしまいがちな歴史的なオートクチュールのアーカイブの要素を、大胆にもこれだけ多くメンズウェアに取り入れ、モダンに、上品で軽やかな日常服に仕上げる。それらをひとつのコレクションにまとめ上げるのは本当に難しく、老舗メゾンを正しい方向にアップデート出来るデザイナーはなかなかいないだろう。今後もキム・ジョーンズの解釈するディオールのメンズコレクションに注目していきたい。
2. ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)
ベルギー・アントワープ出身のベテランデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)は今シーズン、現代における「エレガンス」の再定義を試みた。エレガンスを男性的に作るために、現代のマスキュリニティとは何か、エレガンスを若々しく、そして若者にとって興味深いものにするにはどうしたら良いかを考察するコレクションを発表した。
Image by DRIES VAN NOTEN
Image by DRIES VAN NOTEN
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まず、真っ先に目を引くのがコレクションのカラーパレット。ブロンズやゴールド、芥子色やオーベルジン、プラムや水浅葱、そして青墨などの深みのある熟成された色の数々、うっとりするようなカラーの組み合わせは、まるで美術館で絵画鑑賞しているかのような味わい深さだ。光沢のあるソフトな素材やシアー素材、ヘリンボーンやメタリックなスパンコール素材、また溶け込むような幾何学プリントを使用して、コレクションをより陰影のあるものとしている。ドリスの色彩に対する類稀なセンシビリティは生まれ持った天性のもので、そう簡単には真似出来ない。
Image by DRIES VAN NOTEN
Image by DRIES VAN NOTEN
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ハイウエストのバギーパンツやドローストリングのショートパンツにファーがついたサンダルなどを合わせて、ゆったりとしたエフォートレスな雰囲気。全体的にはきれいめシルエットだが、ミリタリーやワークウェアの要素も取り入れ、ショーツやシャツの裾、コートのVネックの部分が切りっぱなしになってほどけていたり、ニットの胸元に穴が開いていたりと「崩されたエレガンス」を見事に表現している。
ドリスが若者に向けて発信した「エレガンス」だが、成熟した男性にも馴染みそうな美しいコレクションだ。
3. プラダ(PRADA)
ミラノにあるプラダ財団(Fondazione Prada)the Depositoのショースペースで発表された、ラフ・シモンズ(Raf Simons)とミュウチャ・プラダ(Miuccia Prada)による「プラダ(PRADA)」2024年春夏メンズコレクションのテーマは、「Fluid Form(流動的な形状)」。身体を常に意識し、それを解放することが究極の目的であり、身体の絶対的な自由 - 常に動き、常に変化し続ける身体を自由に感じさせる快適な服を構築することによって、ありきたりな慣習に囚われた服の構造や男らしさの常識に疑問を投げかける。
Image by PRADA
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コレクションの出発点は、ズバリ「シャツ」。シャツの構造とディテールをコレクションのベースとして使用し、それを展開させながら全てのアイテムを再構築させている。ソフトな素材で作られたジャケットは、肩が広がりウエストはシェイプされ、袖が長くカフスがついている。そしてショートパンツやシガレットパンツにタックインされていて、コレクションに個性的な印象を与えている。
Image by PRADA
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ブラックやグレー、ダークネイビーのニュートラルな色合いとともに、アニスグリーンやラベンダー、シャベーットのようなカラーパレットが入ってとても軽やか。さらにコサージュが散りばめられたシャツや、フリンジ付きの花のプリント柄シャツ、そしてファーを使用したベストでジェンダーフルイドな雰囲気と、服の中で絶えず変化する身体の動きをより際立たせる。
男性らしい身体の、逆三角形のシルエットも残しシャープに見せつつも、着ている人の身体と心を自由に解放させる新しいマスキュリニティの誕生である。
4. ロエベ(LOEWE)
「ロエベ(LOEWE)」2024年春夏メンズコレクションは「視点」の研究がテーマ。アメリカのアーティスト、リンダ・ベングリスの3つの巨大な噴水を背景に、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)はベーシックなメンズウェアのシルエットのスケールを部分的に拡大したり縮小したりすることで捻りをきかせながらも、見かけの平凡さで目を欺くような新鮮なシルエットを追求。ジョナサンらしい遊び心のあるコレクションを発表した。
Image by LOEWE
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極端に高めのハイウエストのバギーパンツと、短いトップの絶妙なバランス。地面の位置から魚眼レンズで誰かを見上げた時の見え方が、このユニークなコレクションのシルエットを形成する。パンツや、トップ、シャツ、そしてシューズなどコレクションのあらゆる場所に散りばめられたクリスタル素材は、会場の天窓から降り注ぐ太陽の光で水しぶきのようにキラキラ輝いている。青みがかかったカラーバリエーションと、うねるようなドレーピングは噴水をイメージしたものだ。
Image by LOEWE
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コートに使用されているヘリンボーン織も、よくみるとそのパターンの大きさが均一ではないことに気付かされる。まるでデザイン画にピンで貼った生地見本のような背中の空いたトップや、レザーをただ身体に貼り付けただけのようなスリーブレスのジャンプスーツは、このコレクションの独特のプレイフルな雰囲気をより鮮明に醸し出している。
常に男性であることと女性であることの矛盾を見つけ出し、その境界を曖昧にしていく作業を続けるジョナサンは、視覚的な観点からの「視点」遊びだけでこのシーズンを終わらせようとしているのではなく、それを見る側のジェンダーや常識に対する意識改革を、総括してこのコレクションの中で促しているのかもしれない。
5. アミリ(AMIRI)
元ミュージシャンという肩書きを持つクリエイティブ ディレクターのマイク・アミリ(Mike Amiri)により2014年に設立されたアメリカ・ロサンゼルス発のラグジュアリーストリートブランド「アミリ(AMIRI)」は、90年代初期のLAカルチャーシーンがインスピレーションの源。ダメージ加工のデニムや上質な素材や手の込んだ加工のプロダクトを特徴とするコレクションで人気を博し、2018年からパリコレに参加。ジャスティン・ビーバーやビヨンセら数々のセレブを顧客に持ち、過去にはエアロスミスのスティーブン・タイラーの衣装を手がけた経験もある。
Image by AMIRI
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パリのジャルダン・デ・プラント(植物園)で行われた、ブランドにとって2回目のメンズショー。折衷的で表現力豊かな今シーズンは、カリフォルニアから南フランスへ、ヨーロッパへの大西洋横断の旅で見つけた生地と芸術的な衝動から作られた憧れのワードローブを、現代風にカスタマイズしていく。50年代のテーラリングの洗練されたプロポーションやクチュール的素材と、90年代のクールで個性的なアティチュードの融合を試み、より楽に快適でいられるようなコレクションを発表した。
Image by AMIRI
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このコレクションの主軸となっている、カチッとしたダブルブレステッドのテーラードジャケットは、袖がたくし上げられたり、あるいは完全に取り除かれたりしている。ウエスト部分が右側だけタックインされ、タキシードスタイルには欠かせないカマーバンドが顔を覗かせる。パンツはLAのスケーターのようにゆったりバギーなシルエットで、膝上でカットされたハーフパンツの裾には、伸びた水玉やストライプの裏地がはみ出ている。裏地と同じシルクで作られたタイをシナトラ風に襟元に無造作に垂らし、非常にリラックスしたムードが漂う。
スモーキーなパステルカラーのレトロなファンシーツイードや、チェック柄の生地を多用。モデルの胸元で揺れる共布のコサージュは、どこか懐かしさを感じさせる。総スパンコールや小さな花の刺繍が施されたパンツやスーツはジェンダーフルイドな雰囲気を醸し出す。他にもスワロフスキーでカリフォルニアの波を象ったトップスや、パリのビストロの椅子をイメージした編み込みのニットなど、ヨーロッパの伝統的なクチュールの技法と、LAのスケーターのスタイルを見事にマッチさせながら、新しいメンズウェアの在り方をアップデートしている。
6. ダブレット(doublet)
2024年春夏パリ・メンズファッションウィークでは、日本のブランドの活躍が目立っている。井野将之がデザインする「ダブレット(doublet)」も、そのひとつだ。今シーズンのメッセージは「NOW. AND THEN」。AIの進化、その驚くべき速さと存在感に動揺し不安を抱える人々。仮に人間の感情を持ったAIがいたとしたら、私たちにどう話しかけてくるだろうか。コレクションを製作する過程でChatGPTにアイデアについて投げかけ、「対話」しながら、コレクションのテーマである人間らしさとは何かを探っていく。
Image by doublet
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個性的なモデルたちがランウェイを闊歩する。そのうちの複数のモデルはホバーボードに乗って登場。
クロッチが極端に低い位置までドロップされたジーンズと、肩の傾斜が前側に傾いたデニムジャケットのアンサンブル。ネックラインがふたつあって一方を袖に通して着ることで、ウエスト部分にドレープが生まれるフーディーやニットカーディガン、裾の部分が短く断ち切りになっているボトムやトップス。同じくウエスト部分が断ち切りになっているパンツからチラリとのぞく「doublet」のロゴや、腹部をプリントしたアンダーウェア。そして袖山にダーツを入れて肩幅を強調させたMA-1は、まるでロボットのようだ。
レザージャケットやレザーパンツの形をしたショルダーバッグなど、見ているだけで楽しくなるユニークなアイテムの数々が飛び出した。
Image by doublet
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素材もとても面白い。クチュール的なファンシーツイードのジャケットやカーディガン、膝下丈やマイクロミニ丈のショートパンツが、カジュアルウェアとマッチング。メタリックピンクやシルバーの箔押しデニム。デニムの柄がプリントされたトロンプルイユのスカートはメカニックな印象を与える。スケスケの素材で作られたフーディやトレンチコート、狂気の科学者的な白衣、そしてトラックスーツはギラギラと光沢のある素材で出来ている。
そのほかアクセサリーとしてUSBポートや3色端子、マスコットやアクリールキーホルダーのチャーム使いなど、実に様々なアイデアが詰め込まれ、キャラクターの強いコレクションを形成している。
7. ベッドフォード(BED j.w. FORD)
山岸慎平がデザイナーを務める「ベッドフォード(BED j.w. FORD)」は、これまでもピッティ・ウォモやミラノなど、海外で何度かコレクションを発表してきた。今シーズンはパリ・メンズ公式スケジュールにて単独では初となるランウェイショー。コレクションタイトルは「last morning」。毎日、繰り返し朝は訪れるが、一度たりとも同じ朝はやってこない。先シーズンの流れを汲むシルエットが、素材を変えて再び姿を現した。
Image by BED j.w. FORD
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ラメのストライプが織り込まれたファンシーツイードや、ゴールドのチェーンで縁取られたシャネル風ノーカラージャケット、花の刺繍やチューリップのアクセサリー、透ける素材やドレープ性のある素材など、ウィメンズウェアに使われるディテールを取り入れながら、遊び心のある自由でしなやかなメンズスタイルを提案。
一方で、コレクションの中でいくつも見られたテーラードスタイルには、メンズテーラリングの基本であるパターンの正確さと丁寧な作り込みから、技術力と表現力の高さ、そして滲み出てくるエレガンスを感じさせた。
Image by BED j.w. FORD
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ショートパンツやツイードジャケット、刺繍や花のモチーフ、そしてテーラリングなど「時代の風」をはらんでいることにも注目したい。今シーズンのトレンドをキュッと凝縮したようなコレクションに、ブランドが持つ品の良さや独特の空気感が上手くマッチすることで、軽やかで自由な男性像を作り上げている。
8. コム デ ギャルソン オム プリュス(COMME des GARÇONS Homme Plus)
「新しい世界を見つけるためには、現実を超えなければなりません」。川久保玲が「COMME des GARÇONS Homme Plus(コム デ ギャルソン オム プリュス)」の最新コレクションをこう語る。
今シーズンのテーマは「Beyond reality(現実を超えて)」。靴の外側からもう一足の靴が飛び出した風変わりなシューズや、今まで見たことのないような不思議なフォルムを形成するテーラードの数々が異彩を放つ。
Image by FASHIONSNAP
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ジャケットから髪の毛や葉っぱのようなディテールが飛び出していたり、別のジャケットの袖や前身頃が、普段ではあり得ない位置に組み込まれていたり。そして肩パットが表に飛び出していたり、後ろ前に着たような作りになっていたりと、ちょっと見ただけでは何がくっついているのか分からないので奇妙で違和感だらけなのだが、言うまでもなくこれらは着用可能な完成品である。作る側がテーラードジャケットの構造を熟知しているからこそ、このさじ加減が出来るのだ。
(ピカソがもともとは絵画の基礎、応用共にしっかりしており、素晴らしい写実の技術を持っていた上で、後期の前衛的な作品群を制作していたことを、ふと思い出した。)
Image by FASHIONSNAP
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トロピカルな緑の葉っぱのプリントや黄色のタータンチェック、ヤシの木やイルカなどの海に関連するマルチプリントがアクセントに使われる。ショーの後半は、表面に舞台のカーテンや衣服をそのまま転写したジャケットやトップスが登場。トロンプルイユのテクニックでまるで生地が何重にも重なっているかのように見える。テーラードの既成概念を取り去り、様々な技法で「新しい世界」を見つけようとする川久保玲の挑戦に、心を打たれたコレクションだった。
9. フェンディ(FENDI)
「フェンディ(FENDI)」は創業家3代目であるシルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)がメンズウェアのアーティスティック・ディレクターを務める。今シーズンはフィレンツェから30分ほど離れたトスカーナの集落、バーニョ・ア・リーポリ(Bagno a Ripoli)に5,000万ユーロかけて昨年新設されたレザーグッズの工場「フェンディ ファクトリー」でショーを開催した。
Image by FENDI
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エプロンなど革職人のワークウェアのディテールが至る所に散りばめられたユニークなコレクション。イタリア・トスカーナの風景を思わせるカラーパレットは、アカシア、ジュニパー、ヘナ、ポピーの植物顔料で染められている。
フェンディのシグネチャーである「FF」ロゴが様々なバリエーションで、ツイードやデニム、ニットのシアリング素材のモチーフとして使われている。アクセサリーは定番バッグの「バゲット(Baguette)」や「ピーカブー(Peekaboo)」の他に、建築家、隈研吾とコラボレーション。伝統的な「和欄紙」、編み上げた竹、シラカバ樹皮、そしてトスカーナのオリーブの木を彫り出したメンズアクセリーコレクションを発表した。
Image by FENDI
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近年はアトリエの職人をフィーチャーする動きが目立ち、「シャネル(CHANEL)」を支える11工房が集まったパリ郊外オーベルビリエの「Le 19M(ル・ディズヌフ・エム)」や、イタリアのメンズブランド「ゼニア(Zegna)」が管理するイタリア北西部の自然保護区「オアジ ゼニア(Oasi Zegna)」など、大企業が積極的に伝統技術の保存と技術革新、SDGsに取り組んでいる。
10. ルイ ヴィトン(LOUIS VUITTON)
2024年春夏メンズコレクションで最も注目されたのは、故ヴァージル・アブロー(Vigil Abloh)の後任として、メンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任したファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams )による「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の初ランウェイショーであろう。
Image by LOUIS VUITTON
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ルイ・ヴィトン本社のすぐ目の前、セーヌ川に架かるパリ最古の橋「ポン・ヌフ(Pont Neuf)」を貸し切り、ゴールドのダミエ柄でラッピングした巨大なランウェイでショーを開催。普段は車も通っているこの橋を完全に封鎖、通行止めの会場に向かうためにゲストたちはオスセー美術館などから船に乗って移動。リアーナやビヨンセ、ジェイ・Z、キム・カーダシアン、レニー・クラヴィッツなど第一級のスターたちがゲストとして勢揃い、陽が落ちるのを待った。
ダミエ柄のカモフラージュ「ダモフラージュ(Damouflage)」のコートを始め、バリエーション豊富はダミエ柄を様々な素材に活かしたスタイルが特徴的なコレクションだった。テーラードスタイルには、ハーフパンツやショートパンツも登場。
Image by LOUIS VUITTON
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モデルとして、デザイナーのステファノ・ピラーティ(Stefano Pilati)をはじめ、スケーターのダショーン・ジョーダン(Dashawn Jordan)などがサプライズで登場し、ショーを盛り上げる。
オーケストラの生演奏から始まったランウェイショーは、中国のピアニスト、ランランの演奏に続き、ゴスペル合唱団Voice of Fireでフィナーレを迎える。アフターパーティーにはファレルとジェイ・Zのパフォーマンスが披露され、ゲストは熱狂。ファッション史上初で最大規模となるエンターテインメントにパリ中が興奮した。
文化服装学院アパレルデザイン科卒業後、服飾専門学校で5年間の教員生活を経て2000年に渡仏。ニコラ・ジェスキエールのバレンシアガ(BALENCIAGA)→ アルベール・エルバスのランバン(LANVIN)→ ピーター・コッピングのニナ・リッチ(NINA RICCI)と、ジョブ型雇用で外資系老舗ブランドのデザイナーを歴任。2015年からはニューヨークに移住し、英国人スチュアート・ヴィヴァース率いる米ブランド、コーチ(COACH)では、ウィメンズウェアのシニア・デザインディレクターとして活躍。2019年に拠点を再びパリに戻し、2021年からパーソンズ・パリ(NYにあるパーソンズ美術大学のパリ校)の修士課程(MFA)でアソシエイト ディレクターを務めるほか、学士課程(BFA)では世界各国から集まった学生達にファッションデザインのノウハウを教えながら、インフルエンサーとしてnoteで執筆活動をするなど、自らもじわじわと進化中。
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