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原点回帰とイノベーション - ミラノ&パリコレ 傾向とトレンド<2023年秋冬メンズ編>

2023年秋冬メンズコレクション

(左から)プラダ、ロエベ、コム デ ギャルソン オム プリュス、サンローラン、フェンディ

2023年秋冬メンズコレクション

(左から)プラダ、ロエベ、コム デ ギャルソン オム プリュス、サンローラン、フェンディ

原点回帰とイノベーション - ミラノ&パリコレ 傾向とトレンド<2023年秋冬メンズ編>

2023年秋冬メンズコレクション

(左から)プラダ、ロエベ、コム デ ギャルソン オム プリュス、サンローラン、フェンディ

フィジカルショーの完全復活

 2023年秋冬ミラノ&パリメンズファッションウィークは、ようやくコロナ収束の兆しが見え、各国の渡航条件の緩和も進み、前シーズンに続きフィジカルショーの開催が加速した。それに伴い世界中のファッションジャーナリストやバイヤー、セレブやインフルエンサーたちも会場に集結、華やかなファッションウィークの完全復活となった。

K-POPや日本のアイドルがフロントロウやランウェイに

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 ハリウッドや世界中のセレブはもとより、Snow Manのラウールや、三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーで俳優の岩田剛典、モデルの大平修蔵やYAMATO、人気クリエーターのkemioをはじめとした日本の俳優やミュージシャン、そしてBTSのJIMIN、J-HOPE、SUGA、BIGBANGのテヤン(TAEYANG)など、多くのK-POPアイドルや韓国俳優がゲストやブランドアンバサダーとしてショーのフロントロウを飾った。また、ランウェイモデルとして起用される機会も、ここ数シーズン格段に増えてきた。

Snow Manのラウール

「Yohji Yamamoto POUR HOMME」のランウェイモデルに起用されたSnow Manのラウール。堂々としたウォーキングを披露した。

Image by: Koji hirano(FASHIONSNAP)

BTSのジミン

「DIOR」のグローバルアンバサダーに就任したBTSのジミン。出席したDIORのショー会場周辺には多くのファンが集い歓声を上げていた。

Image by: FASHIONSNAP

 それに伴い、招待者のみぞ知るはず、のショー会場に大勢のファンが次々と詰めかけ、入り口付近を取り巻くという光景が見られることも、今やファッションウィークの恒例となりつつある。

時代を見据えるデザイナー達

 明るいニュースがある中で、世界は戦争やエネルギー価格の高騰、物価上昇などの暗い出来事も依然絶えない。コロナ収束の兆しは見えたとはいえ予断を許さない社会情勢に、全てを楽観的に捉えるのには時期尚早と懐疑的で、今後の動向を静観しているデザイナーも多い。

 一方で、その混沌とした世界の行方を見つめながらも新しいシルエットや素材を開発したり、サステナブルなモノづくりなど、近い未来をしっかりと見据えたクリエーションを模索しているデザイナー達の存在も忘れてはいけない。

Image by: JW Anderson

Image by: Zegna

Image by: Marine Serre

若手デザイナー達のコレクションに注目

 今シーズン、若手のデザイナー達のファッションウィークでの活躍が目覚ましかった。メインストリームに流されない彼らの独自の視点から作られたコレクションはそれぞれユニークでおもしろい。

Image by: Magliano

Image by: Hed Mayner

Image by: Louis Gabriel Nouchi

多様性のスタンダード化

 モデルのキャスティングがどんどん多様化され、もはやダイバーシティが世界のスタンダードになりつつある。味のある個性的なモデルの起用が増えて、今日のファッション市場はよりリアルで寛容さを増している。

Image by: Magliano

Image by: Louis Gabriel Nouchi

Image by: Louis Gabriel Nouchi

フェミニンとマスキュリンの融合 ジェンダーレスに向かって加速

 柔らかいドレープやスカート、ドレスなどのアイテム、一般的に「女性らしい」といわれるディテールを、メンズウェアに取り入れているコレクションが非常に多かった。

Image by: KIDILL

Image by: Rick Owens

Image by: LOEWE

 今日の多様化されたライフスタイルにおいて、コレクションを「メンズ」と「ウィメンズ」に切り分けるということの方が、もはや不自然なのかもしれない。これからますますジェンダーレスでニュートラルなコレクションが増えていくのは必然であろう。

・スカート&キュロットパンツ

Image by: DIOR

Image by: GUCCI

Image by: NAMACHEKO

原点回帰と再構築

 コロナ禍や戦争、環境問題など世界は解決しなければならない課題で山積みだ。そこで改めて原点に立ち返り、その上で今出来る社会的役割やデザインとは何かを模索しているブランドやデザイナーが目立つ。

Image by: Dolce&Gabbana

Image by: DIOR

Image by: Saint Laurent

 ブランドのDNAを継承しながら、さまざまな手法とテクノロジーを駆使して現代風に再構築したコレクションの数々はとても新鮮で、そして美しい。

トランスペアレントなボディ

 シースルーやワンショルダーのトップス、アンダーウェアのディテールなど、ボディを強調する肌見せファッションはY2Kブームの流れを汲みながら、クチュールのテクニックと溶け込んでさらに進化している。

Image by: DIOR

Image by: FENDI

Image by: Ludovic de Saint Sernin

・クチュールドレスを彷彿とさせるドレープ

Image by: LOEWE

Image by: Saint Laurent

Image by: LOUIS VUITTON

・ワンショルダー

Image by: Louis Gabriel Nouchi

Image by: Dolce&Gabbana

Image by: FENDI

・アンダーウェア

Image by: JW Anderson

Image by: Egonlab

Image by: Dsquared2

男性の体を美しく見せるミニマルなテーラードスタイル

 ジェンダーレスが加速する一方で、男性のボディをスッキリ美しく見せるストレートでミニマルなシェイプや、ウエストを強調するテーラードスーツのバリエーションも多く発表された。

Image by: Givenchy

Image by: PRADA

Image by: Dries Van Noten

ミステリアスなマキシテーラードコート

 さまざまなスタイルのアウターが提案される中、フロアに着いてしまいそうなマキシ丈のコートをコレクションに取り入れることで、ミステリアスな雰囲気を印象付ける。

Image by: Louis Gabriel Nouchi

Image by: Hed Mayner

Image by: Saint Laurent

進化型のパファーバリエーション

 カジュアルなダウンジャケットやコートも健在だが、マッスルシェイプで男性の体を称賛するようなクールなダウンベストやジャケットの存在も見逃せない。

Image by: Rick Owens

Comme des Garçons Homme Plus

Image by: Koji Hirano(FASHIONSNAP)

JUNYA WATANABE MAN

Image by: Koji Hirano(FASHIONSNAP)

 それとは対照的に体をふわっとまるく優しく包み込むような、ソフトな印象のコートなど、さまざまなスタイルのパファーアイテムが登場した。

Image by: PRADA

Image by: LOEWE

Image by: Saint Laurent

ネオ トラックスーツ

 機能性だけではない街着としてのトラックスーツを提案し、マキシコートやジャケットを上に羽織ってエレガントなアーバンウェアとしてスタイリングするブランドも多く見受けられた。

Image by: Dolce&Gabbana

Image by: Emporio Armani

Image by: Homme Plissé Issey Miyake

マテリアル イノベーション

 トレーサビリティやアップサイクルを意識した素材開発や、職人技とテクノロジーを駆使して手間暇かけた素材作りに取り組んでいるブランドが目立つ。

Image by: Zegna

Image by: TAAKK

Image by: Marine Serre

モノトーン、ニュートラル&癒しのパステル

 カラーパレットはブラックを基調に、グレーのバリエーションやニュートラルカラーでまとめられ、差し色にパステルが入るなど、シャープな印象ながらも全体的にソフトな印象のコレクションが多いのは、混沌とした世の中で癒しを求めたい人々の欲求を表現しているのだろうか。

Image by: Dolce&Gabbana

Image by: PRADA

Image by: DIOR

パリ在住ファッションデザイナー

大森美希

MIKI OMORI

文化服装学院アパレルデザイン科卒業後、服飾専門学校で5年間の教員生活を経て2000年に渡仏。ニコラ・ジェスキエールのバレンシアガ(BALENCIAGA)→ アルベール・エルバスのランバン(LANVIN)→ ピーター・コッピングのニナ・リッチ(NINA RICCI)と、ジョブ型雇用で外資系老舗ブランドのデザイナーを歴任。2015年からはニューヨークに移住し、英国人スチュアート・ヴィヴァース率いる米ブランド、コーチ(COACH)では、ウィメンズウェアのシニア・デザインディレクターとして活躍。2019年に拠点を再びパリに戻し、2021年からパーソンズ・パリ(NYにあるパーソンズ美術大学のパリ校)の修士課程(MFA)でアソシエイト ディレクターを務めるほか、学士課程(BFA)では世界各国から集まった学生達にファッションデザインのノウハウを教えながら、インフルエンサーとしてnoteで執筆活動をするなど、自らもじわじわと進化中。

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