2023年秋冬ウィメンズコレクションは、メンズコレクションに引き続き男女の境界線が曖昧となり、より多様性が強調されたコレクショ多く発表された。それらは決して「ユニセックス」という括りで老若男女を問わず性別の区別のない、単一的なスタイルではない。あくまでも個々の持つありのままのセクシャリティとボディで、堂々とより自分らしく自由にいられることに重きを置いたスタイルの提案が目立っている。
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ダイバーシティを意識したブランド戦略
女優の小松菜奈が、ブランドアンバサダーを務める「シャネル(CHANEL)」の今シーズンの「顔」として招待状やティザー動画やランウェイのムービーに登場。日本人がトップメゾンでここまで大きく取り上げられるのは初の快挙と言える。米マイアミで行われた「ボス(BOSS)」のショーでは、タレントの渡辺直美がモデルとしてランウェイデビューを果たすなど、ダイバーシティを重視したブランドの意図が感じ取れる。
また前シーズンに引き続き、水原希子、三吉彩花、仲里依紗、ローラ、Kōkiなど日本のモデルや俳優、BLACKPINKのジェニーやロゼ、NCTのテヨンやジェノ、ウィンウィン、俳優のパク・ソジュンといった韓国のスターらがショーのフロントロウを飾り、アジアのセレブリティが存在感を示していた。
クリエイティブディレクターの交代や退任
ダニエル・リー(Daniel Lee)による新生「バーバリー(BURBERRY)」は、代名詞であるトレンチコートやバーバリーチェック、イングリッシュローズやカルガモなどをプレイフルに表現した。ルドヴィック・ドゥ・サン・セルナン(Ludovic de Saint Sernin)による新生「アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)」は細く長いシルエットや肌見せでボディを強調。しかし1シーズンで電撃退任となり、後任として2020年からメンズウェアのデザイナーとして同社に勤務している1996年生まれのステファノ・ガリシ(Stefano Gallici)が任命された。「モスキーノ(MOSCHINO)」のジェレミー・スコット(Jeremy Scott)、「ランバン(LANVIN)」のブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)も、今シーズンをもって退任する。
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来シーズンは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズにファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)、「グッチ(GUCCI)」にサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)が就任し新コレクションを発表する予定。コロナ後の新しいフェーズへの過渡期にあたり、ビッグメゾンのクリエイティブディレクターの交代が盛んに行われている。
女性が個々に持つ曲線美を賞賛するスタイル
Z世代に人気のY2Kのようなボディを強調するスタイルは引き続き継続し、そこに80年代後半から90年代初頭のボディコンシャス、そしてクチュールのテクニックが融合することで、新しいシルエットを生んでいる。だがそれは異性の気を引くためのセクシーさの追求ではなく、あくまでも女性自身が主役。自分らしく自由に、そしてポジティブにセクシャリティを追い求めるフェミニズムの思想だ。
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そのままのあなたが主役
モデルのような体型が賞賛され、辛いダイエットしたり体を覆ったアイテムしか着られない時代はもう終わり。どんな女性もその人が持つ本来の美しい曲線美を隠すことなく「見せる」スタイルが定番となりつつある。
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見せるランジェリー
スリップドレスやキャミソール、ブラやビスチェなどのランジェリーのディテールを隠さず、あえて表に出すことによってボディの美しさと女性らしさを賞賛。素材はシフォンやレースではなく、ウールやレザーを使用することでアウターウェアとしても対応する。
・スリップドレス
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・ブラ&ビスチェ
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・シースルー
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大胆な脚見せ
ケンダル・ジェンナー、ベラ・ハディッド、ヘイリー・ビーバーら、最先端のZ世代セレブから生まれた「ノーパンツ」スタイルを彷彿とさせる大胆なルックが目を引いた。トップやアウターはきっちりとまとめつつ、ボトムはショーツにストッキング、そしてハイヒールを合わせるのがポイント。
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短丈トップス&ロングスカートのIシルエット
今シーズンは、短いトップスとローウエストのぺンシルロングスカートを組み合わせたスタイルが多く見られた。ボディを優しく包み、縦長のフィットでIラインのシルエットを描く。
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ミニ&トレーン
ミニのドレスやスカートに、イヴニングドレスのように長いトレーンがついたスタイルが登場。露出した肌とのギャップとともに、縦長のラインが強調されている。
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プリーツのバリエーション
様々な生地にプリーツ加工を施したドレスやスカートが多く見受けられた。プリーツをジャケットに仕立てるとソフトな印象に。
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ビジネススーツ風テーラード
今シーズンはテーラードアイテムが豊富。ビジネススーツ風のジャケットとボトム、コートなど、アレンジを効かせながら街で着こなしたい。
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ウエストシェイプされた90年代クチュール
ウェストをキュッとシェイプし、腰を大きくカーブさせたシルエット。より女性らしい曲線美を追求した90年代初頭のクチュールスタイルを思わせるジャケットやコートが美しい。
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パワーショルダーも健在
オーバーサイズやパワーショルダーは引き続き健在。これまでよりもボトム部分はタイトなシルエットで「逆三角形」のフォルムを作り、80年代の女性たちのようなパワフルなスタイルが新鮮だ。
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デニムが豊作
2023年秋冬メンズコレクションに続き、ウィメンズコレクションでもデニムアイテムが豊富に登場した。ダメージ加工やウォッシュ加工も様々なバリエーションで、カジュアルにもドレッシーにも着こなせるデニムが勢揃いしている。
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リアルとバーチャル、だまし絵エフェクト
実際に触ってみるまで、どちらが本物でどちらがバーチャルなのか分からない「トロンプルイユ(だまし絵)」的なプリントや技法が用いられたアイテムも多かった。ソーシャルメディアやAI、ChatGPTがものすごい勢いで普及している現在、間違った情報も多い中で「本物をきちんと見極めよう」というメッセージが込められているのだろうか。
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文化服装学院アパレルデザイン科卒業後、服飾専門学校で5年間の教員生活を経て2000年に渡仏。ニコラ・ジェスキエールのバレンシアガ(BALENCIAGA)→ アルベール・エルバスのランバン(LANVIN)→ ピーター・コッピングのニナ・リッチ(NINA RICCI)と、ジョブ型雇用で外資系老舗ブランドのデザイナーを歴任。2015年からはニューヨークに移住し、英国人スチュアート・ヴィヴァース率いる米ブランド、コーチ(COACH)では、ウィメンズウェアのシニア・デザインディレクターとして活躍。2019年に拠点を再びパリに戻し、2021年からパーソンズ・パリ(NYにあるパーソンズ美術大学のパリ校)の修士課程(MFA)でアソシエイト ディレクターを務めるほか、学士課程(BFA)では世界各国から集まった学生達にファッションデザインのノウハウを教えながら、インフルエンサーとしてnoteで執筆活動をするなど、自らもじわじわと進化中。
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