Image by: FASHIONSNAP
トレンドの最前線を行く者、映画の最新作も気になるはず──。今月公開が予定されている最新映画の中から、FASHIONSNAPが独自の視点でピックアップする映画連載企画「Fスナ映画部屋」。
今回は、「ディオール(DIOR)」の協力&ディオール専属のクチュリエールがアドバイザーとして参加した「オートクチュール」をセレクト。ファッションフリークなら気になる本作を編集部員によるゆる〜い座談会付きで紹介します。
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オートクチュール
あらすじ
引退を間近に控えたディオール オートクチュール部門のベテランお針子 エステル(ナタリー・バイ)は、窃盗を繰り返しながらその日暮らしの生活を送る不良娘 ジャド(リナ・クードリ)を自身の後継者として育てる決意をする。
■映画「オートクチュール」
公開日:2022年3月25日(金)
監督・脚本:シルヴィー・オハヨン
出演:ナタリー・バイ、リナ・クードリ、パスカル・アルビロ、クロード・ペロン、ソマヤ・ボークム、アダム・ベッサ、クロチルド・クロら
【ゆる〜い座談会を行う同い年編集部員2名】
今作はディオールが撮影に全面協力!
ディオールの全面協力ということもあって初代バージャケットや直筆のスケッチ画など、貴重なアーカイブ作品が惜しげもなく登場したね。
「ディオール幻のドレス」とも言われているフランシス・プーランクドレスも出てきて、「おぉ〜!」と思わず唸ってしまった(笑)。
アトリエのシーンでは現役で活躍しているディオールのお針子たちも出演しているらしい。
お針子の振る舞いや作品に登場する衣装のアドバイザーとして、現在も現役で活躍しているディオール1級クチュリエール、ジュスティーヌ・ヴィヴィアンが参加しているらしくて。
私は彼女のことを知らなかったんだけど
ディオール・ヘリテージ(ディオールのアーカイブ部門)やディオールのオートクチュールを手掛けたりしているみたい。
ジュスティーヌ・ヴィヴィアンは元々映画の衣装デザイナーだったから、今作との親和性はかなり高いはず。
2014年に公開された「イヴ・サンローラン」とか「マリー・アントワネットに別れを告げて」などの衣装も彼女が手掛けている。
ジュスティーヌ・ヴィヴィアンは俳優たちに生地の触り方など、ベテランのお針子たちが自然に身につける仕草を伝授したらしいんだけど
「限られた指導時間でクチュリエールの仕草を完璧に真似るの事実上不可能である」ともコメントしていて。
その上でどういうことを指導したんだって?
女優たちにイメージを持たせることを心がけた、とのこと。
具体的には「手に触れようとしているものは全世界が夢見る大変貴重な素材であり、ドレスであるということを自覚してもらうところからはじめた」と。
情熱と勤勉さ。オートクチュールの世界は非常に選ばれた職業であり、お針子はそこに至るまでに多くの段階を経ているということを認識してもらいました
ージュスティーヌ・ヴィヴィアン
「ファッション」と聞いてイメージする様なデザイナーや華やかなランウェイショーのシーンは一瞬だったよね。
どちらかといえば影の立役者でもあるお針子たちの舞台裏に焦点を当ているから、よくあるシンデレラストーリーという雰囲気を感じなかった。
移民差別とラグジュアリーブランドを多数輩出している華やかなパリ、というフランスが抱えている文化的な対比をお針子の成長物語として見せていて、純粋なフランス映画としてもいい作品だな、と思ったよ。
2014年に公開された「ディオールと私」って観た?
観てない!
「ディオールと私」もお針子たちにフォーカスした作品で。
ディオールのアーティスティック・ディレクターに起用されたラフ・シモンズ(Raf Simons)が、8週間で新作コレクションを完成させる奮闘劇が収められたドキュメンタリーなんだけど、結構いいよ。
観てみようかな。
さっきもチラっと話したけど
鑑賞前に想像していたよりも、オートクチュールドレスが脇役の作品だったな、とも思う。
説明台詞が少ないし、人によっては「心情描写が乏しい」と感じるかも。
登場人物の言動のきっかけや理由がこちら側の想像に委ねられている点も、フランス映画らしい。
言われてみればそうだね(笑)。
綺麗なドレスやデザイン画はたしかにたくさん出てくるけど、寄りの画は少なかったかも。
ファッションショーの準備をしているカットも多いけど「もっとドレス見せてくれてもいいのよ」とちょっと思った。
ファッション好きにおすすめできる作品ではあるけど、ドレスだけを目当てに見に行くと肩透かしを食らうかもね。
そうだね。
さっきも言ったけど、移民が住む団地とラグジュアリーブランドのアトリエが共存しているフランスという国を、ディオールのお針子を通して知る映画、という方が的確かもね。
主人公や登場人物たちも、人格者とはいえないよね。
ジャドも事情はあるにせよ盗みを働いていたり、エステルもびっくりするくらい口が悪い(笑)。
たしかに。
何かしらの欠点を持ち合わせた等身大の人たちばかり出てくる。
でも、登場人物の不十分さは却って「華やかなファッションショーや美しいドレスの裏側には、私たちと同じ普通に人間がいるんだよな〜」ということをしみじみ感じさせてくれる演出になっていたよね。
どんなに美しいものでも、作り上げているのは人なんだよね。
引退間近のベテランクチュリエール エステルを演じた ナタリー・バイはフランスを代表する大女優。
失語症のため14歳で学校を中退したけど、その後モナコのダンススクールに入学し、17才でニューヨークへ渡米。ロシアでバレエの修行を積み演技力を磨いたすごい人。
薔薇の花にその日の出来事を語りかけて孤独を埋める優しげなエステルと、アトリエに現れただけでその場に緊張感が張り詰める仕事の鬼 エステルを見事に演じ分けていたよね。
エステルが見つけた後継者で不良娘のジャドを演じるのは、リナ・クードリ。
ウェス・アンダーソン監督の最新作「フレンチ・ディスパッチ」で、ティモシー・シャラメと共演してたね!
そうそう。話題作への出演が続いていて、個人的に今注目してる。
うまく言語化できないんだけど、なんだか彼女は「レオン」のときのナタリー・ポートマンを彷彿とさせるんだよね。
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