ジャカルタファッションウィークで発表された現地デザイナーの新作
ジャカルタファッションウィークで発表された現地デザイナーの新作
Image by: Jakarta Fashion Week

Fashion フォーカス

勢いを増す「ムスリムファッション」驚くほど多様でモダンに

ジャカルタファッションウィークで発表された現地デザイナーの新作
ジャカルタファッションウィークで発表された現地デザイナーの新作
Image by: Jakarta Fashion Week

 インドネシアの首都ジャカルタを歩くと、カラフルなヒジャブをまとった女性の姿が目に止まる。近年ではファッショナブルなイスラムの女性が増えているらしい。中心部の商業施設で開催されていた「ジャカルタファッションウィーク」の会場には、驚くほどモダンで多様なスタイルのムスリム女性たちが集っていた。

 

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◼️ヒジャブの多様性とトレンド

 ヒジャブとは、イスラム教の女性が頭髪や首を覆うために身につけるスカーフのような布のこと。戒律は宗派や地域などによって異なるが、国民の約8割がイスラム教で多民族国家でもあるインドネシアは、装いにも多様性が見られる。ヒジャブを身に着け始める年齢は様々だが、若くして自発的にヒジャブをまとう女性が増加傾向にあり、またTPOによって着けることを選ぶ人もいるという。

 特にジャカルタなど都市部に住む女性は流行に敏感だ。ムスリム女性がまとうのは黒だけではなく、最近特に好まれているのはナチュラルカラーやパステルカラー(現地で「パステル」と呼ばれている流行色は、ペールトーンやスモーキートーンを含む)。ヒジャブと服で濃淡のコントラストをつけたり、ヒジャブが無地なら服は柄。もしくはその逆パターンで、プリント柄は幾何学模様が多く用いられている。

ジャカルタファッションウィークの会場に集まった現地の男女

 基本的に長袖で身体のラインが出にくいシルエットを選ぶが、ゆったりとしたワンピースだけではなく、ジーンズなどのカジュアルウェアやセットアップ、ストリートスタイルも取り入れられている。美容についても余念が無く、美白ケアやハッキリとした目鼻立ちをより際立たせるメイクが欠かせないようだ。しかし目立つことが目的ではない。慎ましさと控えめという基本は守られていて、上品な装いとも言えるだろう。

 

◼️勢いを増すムスリムファッション

 ムスリムファッションは今、最も勢いのあるファッション分野の一つ。世界のイスラム人口は約16億人で、Global Islamic Economy Report 2018-19によるとムスリムのファッション消費額は2017年に2,700億米ドル(約30兆8,000億円)を計上した。これは日本国内の消費と比べると約10倍の規模。今後も伸び続け、2023年には3,610億米ドル(約41兆2,000億円)に達すると予測されている。

 2016年には「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」がムスリム向けのコレクションを発表した事で話題になり、ユニクロがハナ・タジマ(Hana Tajima)をデザイナーとして起用しイスラム文化を融合させたコレクション「HANA TAJIMA FOR UNIQLO」は、展開店舗を広げるなど好調だ。「ナイキ(NIKE)」は2017年に女性アスリート向けのヒジャブを発売。大手マネジメント会社IMGに所属し、ヒジャブをまとってランウェイを歩くモデル、ハリマ・アデン(Halima Aden)の活躍も目覚ましい。多様なムスリムファッションに触れる機会は、世界各地で確実に増えている。

 

◼️消費から発信へ、若きデザイナーの成長

 人口2億6,000万人以上のインドネシアは、経済成長と共に消費市場として注目されている。アパレルについても同様だが、消費だけではなく発信の地としても徐々に機能し始めた。

 ジャカルタでは年間2つの大きなファッションウィークが開催され、自国の文化や伝統を背景としたアイデンティティを反映する若手デザイナーらが台頭。自身のルーツと時代の潮流を取り入れながら、独自の感性でモダンなスタイルを提案しているのが特徴だ。彼らのターゲットはインドネシア国民やムスリムに限らず、国際的な感覚と多様性を持ち合わせている。

インドネシアブランド「IKYK」

 デザイナーAnandia Marina Putriが手掛ける「IKYK」は、経済産業省が携わるプロジェクト「Amazon Fashion Week TOKYO」を通じて、東京でランウェイショーを経験している。ブランドコンセプトは「モダンモデストウェア」。アーティスティックな色使いとレイヤードスタイルが特徴で、慎ましくもカジュアルな感覚で身につけることができる。

 

インンドネシアブランド「RANI HATTA」

 同じく東京でコレクション発表の経験がある「ラニ ハッタ(RANI HATTA)」は、スポーティーでミニマルな要素をムスリムファッションに取り入れる。直線的なシルエットはユニセックスで着用できるアイテムも。デザイナー自身もムスリムで、チェック柄のパンツスタイルにスニーカーを合わせるなど、現代のリアルなスタイルを体現している。

 

インドネシアブランド「Kami.」

 今年10年目の「Kami.」は、インドネシアで流行しているペールトーンやナチュラルテイストがベース。現地のアーティストとコラボレーションするなど、独創的なプリント柄で個性を演出する。特にスカーフは1シーズン8,000枚売れるという人気商品だという。

 

インドネシアブランド「TOTON」

 「トトン(TOTON)」のデザイナーToton Januarが伝えるのは、インドネシアの文化と誇りだ。伝統的なものづくりと少数民族に引き継がれる手工芸を取り入れ、芸術的な装飾をワードローブに落とし込むバランスが持ち味。日本でのショップリサーチを経てインドネシアでは珍しかったセレクトショップを南ジャカルタに開設するなど、ビジネスセンスにも注目したい。スタイリッシュな店内では多様なインドネシアブランドを取り扱い、新進デザイナーらのショーケースの役割も兼ねる。

Totonが南ジャカルタで運営するセレクトショップ「ARA」

 

◼️ムスリムから生まれた「モデストファッション」

 近年では、ムスリムファッションをより一般的に捉えた「モデストファッション」というカテゴリが確立しつつある。「modest=控えめ、慎み深い」といった意味を持ち、主に肌や身体のラインの露出を控えた装いを指すが、単に外見だけではなく内面の美にも目を向ける。イスラムの信仰に限らず、多様性を受け入れてアイデンティティを尊重し、人に寄り添うファッションとも言えるだろう。それらの概念を体現するインドネシアをはじめとした若きデザイナーらは、時代の変化を肌で感じながら新しいスタイルを生み出し続けている。またロンドンや東京でも、モデストファッションに特化したショーやイベントが注目されるようになってきた。ムスリムから生まれたファッションが一大市場を築き、世界のメインストリームになる日は遠くなさそうだ。

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