東南アジアの最新情報を綴るコラム「ジャラン ジャラン アジア」。1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーのほか、ポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店などを行う横堀良男氏が現地の情報をレポートします。
(文・横堀良男)
今、この原稿を書いている日は6月の終わりで、とても暑い日が続いています。テレビからは日本のどこかの地方で「6月としては史上初めて気温が40.2度を観測した」と聞こえてきました。日本の都市部の夏は本当に暑く、7月末の東京は42度を超える恐れがあるとか。私の知る限り、こんなに暑い都市は東南アジアにはありません。
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当然、東南アジアは常夏の国々なので、毎日暑いです。どれくらい暑いのかというと、個人的な意見として東南アジアでは「気温が上がり始めた東京の初夏」が続くようなものだ、という感覚です。反対に言えば、8〜9月の東京の35度を上回るうだるような暑さは、実は東南アジアでは滅多に感じることはありません。うだるような暑さが苦手な皆さま、夏休みは東南アジアのどこかで「東京よりマシな、清々しい暑さ」をぜひ過ごしてみてください!
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今回はインドネシアの、とあるファッションのお話です。インドネシアでは、9割の国民がイスラム教徒です。日本に住んでいると、イスラム教はあまり馴染みのない宗教の一つだと思います。
日本は仏教徒が多い国ですが、仏教徒の世界人口は5〜6億人と言われています。イスラム教徒は現在、世界に20億人います。しかもイスラム教の国々の多くは人口が増え続けていて、圧倒的に大きなマーケットなのです。そうした中で、私たちファッション業界の人間の中には「イスラム教徒の人たちはどんなファッションをしてるのだろう?」と興味を持つ方もいると思います。
イスラムの教義に則るファッションは「モデストファッション」と呼ばれています。
私は専門家ではないですが、市場調査を数年行ってきたこともあり、一般的な日本のファッション業界人よりもモデストファッションの多くを知っている方だと思います。
このファッションは各国、各地域によって違いますが、インドネシアでは女性が頭に巻くスカーフ「ヒジャブ」が特徴的です。また、肌の露出を避けるため、長袖・長ズボンであることが多いです。服については、トップスは長袖のインナーを重ねれば何でも着られますし、ボトムスはミニスカートやショートパンツさえ穿かなければ、世界的なファッショントレンドも取り入れることができます。
正式なデータを見たことがないので私個人の肌感になりますが、インドネシアでどのくらいの数の女性がヒジャブを着けているかというと、高級モール内では1割、ローカルなエリアでは2割、という認識です。これはジャカルタ市内の話なので、地方や郊外に行けば、もっとヒジャブ着用率が増えるのかもしれません。
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そういえば、以前にFASHIONSNAPで、この記事を見ました。
この記事は2018年のものですが、この数年で驚くほどに拡大したインドネシアのファッション業界では、2018年以降にも新しいモデストファッションブランドが出てきています。
ということで、今回は注目の3ブランドを紹介します。
1-Kami.(カミ)
ここ3〜4年で人気が爆発したブランドです。スモーキーなアースカラーのカラーリングが特徴的で、ワンピースやトップス、ヒジャブなど幅広いアイテムを取り扱っています。
ファッションショーのリハーサルの様子
インスタライブを行っている様子
Kami:公式インスタグラム
2-Button Scarves(ボタン スカーブズ)
エレガント系ヒジャブブランド。個人的な見解ですが、このブランドが今日のヒジャブカテゴリーでは一番人気があると思います。
Button Scarves:公式インスタグラム
3-NADA PUSPITA(ナダ プスピタ)
コロナ禍の2021年に立ち上がった、新しいヒジャブブランド。Button Scarvesと同じ会社で、若者を中心に急激に人気が拡大しています。立ち上げから1年半で16万人フォロワーという点で、その勢いを感じられます。
NADA PUSPITA:公式インスタグラム
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現状では、日本のアパレルブランドがモデストファッションを意識したコレクションを作ったり、雑貨メーカーがヒジャブを作ることに馴染みがないと思います。ただ、最近は日本のメーカーでヒジャブを企画生産している企業も出てきました。急成長しているインドネシアを見ていると近い将来、日本国内のインバウンドですらイスラムファッション、モデストファッションは意識しなければならない、重要なスタイルになっていくはずだと予想しています。
東京都江東区出身。高校在学中からアパレル業界で働き始め、 その後、アッシュ・ペー・フランス株式会社に入社。27歳で若手ブランドの営業代行業、showroom SIDEを設立、代表に就任。 32歳で海外進出、現在は1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーとして活動。 日本からアジア・アジアから日本のポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店も行う。
■コラム「ジャラン ジャラン アジア」バックナンバー
・vol.1:そうだ、東南アジアで生きていこう。借金抱えて自分探しの旅
・vol.2:高級モールは世代交代?ジャカルタのアシュタはなぜ成功したのか
・vol.3:なぜ東南アジアでは合同展示会が少ないのか
・vol.4:イスラム教徒のファッションは?人気の新興3ブランドも紹介
・vol.5:シンガポールのストリート事情、人気のブランド紹介
【最新話はこちら】
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