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不確実性の時代に対応する服とは何か?「プラダ」が提示する現代を生きる賢明な戦略

「PRADA」2026年春夏ウィメンズをレポート

「PRADA」2026年春夏ウィメンズコレクション

Image by: PRADA

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不確実性の時代に対応する服とは何か?「プラダ」が提示する現代を生きる賢明な戦略

「PRADA」2026年春夏ウィメンズをレポート

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 「世界とどう向き合い、どう生き残るか」。共同クリエイティブ・ディレクターのミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が「プラダ(PRADA)」2026年春夏ウィメンズコレクションショーのあと、バックステージで語った言葉だ。今シーズンのテーマは「BODY OF COMPOSITION」。不確実性の時代に対応するため、変容し、適応できる服づくりがコレクションの核に置かれている。

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プラダが問いかける現代社会との対峙

 プラダのコレクションは、現代社会にいかに対峙するかという根源的な問いから創造の過程が始まる。2026年春夏メンズコレクションにおいては、あらゆる側面で情報過多に陥っている現代人の精神状態を刷新すべく、「簡潔さと穏やかさ」をデザイン哲学の中核に据えた。その思想的系譜を継承しつつ、今季の春夏ウィメンズコレクションでは「柔軟性」と「選択の自由」を重視する洗練されたアプローチへと昇華させている。

 1978年に邦訳が刊行され日本でも多大な反響を呼んだ社会経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの著書「不確実性の時代」において、同氏は「リスク」と「不確実性」の差異について論じている。具体的確率の算出が可能な「リスク」に対し、「不確実性」とは未来に向けて多様な決断を迫られながらも、論理的説明が困難な事象を指す。このように定義される制御不能な不確実性に対し、2026年春夏メンズコレクションで表現された「穏やかさ」は、不確実性を人生の不可避的要素として受容し、精神的余裕を保持する姿勢の具現化であった。

Image by: PRADA

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 それを踏まえ、2026年春夏ウィメンズコレクションでは、変化が常態となった世界において柔軟な思考と適応力の重要性を訴求する。固定観念から解放され、状況に応じて思考と行動を調整する知性の価値を説いており、その帰結として提示されたのが、変容と適応を備えた「服」だ。

プラダが考える変容と適応を備えた「服」とは?

 2026年春夏ウィメンズコレクションでは、従来の枠にとらわれない自由さと、調和のとれた美しさが共存している。エポーレットを配した短袖シャツとセンタープレスが入ったパンツで構成されるユニフォームルックは、ブルー、グレー、ライトブルーの色調で展開され、サテン素材のエルボーレングスの手袋とポーチ型バッグがアクセントとして機能。昼夜を問わず着用可能な汎用性を備え、プラダが提唱する「現代の装い」の本質を雄弁に物語っている。

Image by: PRADA

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 シルエットは形にこだわりすぎない自由さが特徴で、体を縛りつけるような構造は最小限に抑えられている。例えば、ウエストを締め付けない肩から吊るされたスカートや、ワイヤーなどの硬質な構造のないブラジャーなどがその代表例だ。ミウッチャ・プラダは「女性に選択の可能性、自由、権威、行動の自律性をもたらすこと」がコレクションの目的だと説明する。

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 構造的制約から解放された軽やかなブラジャートップは身体の周囲を自在に動き、プリーツのパッチワークスカートと組み合わされることで、身体への拘束から解放された新しい女性像を表現しているようにも見える。「女性の体に彫刻的な形を押し付けるファッションの概念から離れ、物理的な解放を目指した」とラフ・シモンズが語るように、今季のプラダは身体を厳密に形作るのではなく、身体と共に動き、変化し、適応する服を提案した。オーバーサイズのブレザーやジャケットもその一例で、従来の型にはまったテーラリングから脱却し、着用者に余白と自由を与える。

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 プラダの2026年春夏ウィメンズコレクションは、不確実性に満ちた時代における装いの新たな可能性を提示した。それは単なるファッションの提案を超え、変化し続ける世界において、いかに自由で柔軟な精神を持ち、主体的に生きるかという哲学的問いかけでもある。ランウェイに並んだ一着一着は、現代を生きる女性たちへの、プラダからのエレガントなメッセージなのだ。

PRADA 2026年春夏

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PRADA -Women's- 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日:

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