―ショーの反響はどうでしたか?セールスなどビジネス面での変化は?
メディアの露出も多かったですし、後日行った展示会でもとても好評でした。良いフィードバックをもらい自信にもつながったので、来シーズン以降もパリで発表していこうと考えています。ですが、新規の取り扱いに関しては少し慎重に対応していて、どちらかというと既存のクライアントとの関係性をもっと深くしていきたいと思っています。以前は取り扱い店舗数は120ほどでしたが、ブランドの世界観をきちんと理解し表現してくれるパートナーと一緒に仕事をしたいと考え、現在は約90店舗まで絞りました。
―服をデザインする上で、"売れる服"を意識しますか?
"売れる服"というより、実際に女性が着られる服かどうかは考えますね。ストリートで生身の人間が着る瞬間こそ、服が最も美しく見える瞬間であって欲しいので、服を着る人が「どう着て、どう感じるか」ということを大事にしています。"売れる服"というような商業的な視点ではなく、顧客の視点で服のデザインを考えることが、結果として購買につながると思っています。


グローバルな環境で形成されたDNA
―韓国・アメリカ・イギリスと色々な場所で過ごす中で自身のDNAがどのように形成され、どうクリエイティビティに反映されていると思いますか?
色々な国でたくさんの経験をしてきましたし、両親もアートや音楽が好きだったので育った環境が今の自分のDNAを作ってきたと思っています。様々なカルチャーに触れる機会が多ければ多いほど、それだけ自分自身もオープンマインドでクリエイティブに臨むことができる気がして。最も結びつきを感じるのはアジアの文化ですが、アメリカやヨーロッパの文化や服に対する人々のアティチュードを理解できている部分も少なからずあると思いますし、それは服を作る上で利点として働いているのではないかと思います。
―韓国人であることを感じる瞬間はありますか?
韓国にいた頃は韓国のカルチャーに触れる機会があまりなかったんです。なのでクリエイティブ面ではあまり感じることがないですが、自分が食べるものだったり、読む本だったり、リラックスする時に居心地がいいと感じるのが韓国のものが多い気がしますね。
セリーヌでの仕事がひと段落してその後、韓国で兵役に就きました。父の願いの一つでもあったので家族のためにも行くことにしたんです。兵役中は全くデザイナーとしての創作活動ができないのですが、ファッションやクリエイティブの世界から距離を置いて、また別の生活をしたことも今の自分を形成しているんだと思います。兵役を経験したデザイナーはあまりいないですからね。

―もしビッグメゾンからディレクター職のポジションを打診されたらどう返事をしますか?
もちろん、タイミングが合えば「YES」と返事をすると思います。でも同時にロクについても考えないといけません。10人のメンバーに対して責任を持たないといけませんから。ですが以前と比べ、今はチームも強くなってきている自負があるので、将来もし機会があれば是非挑戦したいです。
―ちなみにこれまでにそのようなオファーはありましたか?
ありました。夢に描いたようなオファーが。でもまだその時はロクが始動したばかりで、まだ自分もブランドも準備ができていなかったので残念ながら断らないといけなかったのですが。
―「ロク」としての将来の展望は?
2年半経ってブランドの売り上げも順調に伸びていますが、今は慎重に方向性を決める段階だと考えています。今後はもっと取引先や顧客とインタラクティブなつながりを持ちたいと考えていて、まだ具体的なことは決まってないですが、2〜3年後にはパリにオフィスを移して店舗を出店できたらと思っています。

(聞き手:今井 祐衣)