Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】ブランドデベロッパー中村聖哉(Seiya Nakamura)が説く新時代のファッションビジネス論

中村聖哉(Seiya Nakamura)
中村聖哉(Seiya Nakamura)
Image by: @Mikio Hasui

 「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」「ナマチェコ(NAMACHEKO)」「カイダン エディションズ(KWAIDAN EDITIONS)」、G-DRAGONと彼の姉Dami Kwon、そのビジネス・パートナーのHeyin Jungが手掛ける「ウェルダン(WE11DONE)」、元イヴ・サンローランのクリエーティブディレクター ステファノ・ピラーティ(Stefano Pilati)が「エッセンス(SSENSE)」と立ち上げた「ランダム アイデンティティズ(Random Identities)」といった世界で注目を集めるデザイナーズブランドのマーケティング戦略やセールスを含め、ブランドの成長を専門的にサポートする仕事「ブランドデベロップメント」を手掛けている中村聖哉(Seiya Nakamura)氏。聞き慣れない職種かもしれないが、世界各地を拠点に若手ブランドの成長を押し上げてきた実績を持つ。現在は日本で4社、海外で2社を経営し、東京・パリ・上海・ベルリンに拠点を持ちながら、ファッション界の未来を見越した新事業も計画しているという。デザイナーや企業からの信頼が厚い中村氏の仕事を紐解きながら、これからのファッションビジネスについて聞く。

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ブランドを成長させる仕事とは?

ーまず、中村さんが手掛けている「ブランドデベロップメント」とは?日本ではあまり聞かない仕事なので、ここから教えてください。

 海外でもあまり聞かないかもしれませんね。一言にすると、多角的な視点からブランドの成長をサポートをする仕事です。ブランドや企業が描く理想像にどうやって近付けていくか。マーケティング戦略やセールス、PRなど様々な業種の仕事を、プロジェクトに適したチームを編成し、ワンストップで行っています。

ーなぜそこに行き着いたのか、中村さんの経歴は。

 ロンドンの学校でファッション・ビジネスを学び、リバティ ロンドン(Liberty London)でアシスタントバイヤーとして働きました。日本帰国後、フリーランスのセールス・エージェントやコンサルタントとして働き、2014年にパリ・東京を拠点とするブランド・デベロップメントを担う会社「Seiya Nakamura 2.24」を設立し、その後2016年に東京拠点のショールーム「On Tokyo Showroom」を大山剣と立ち上げました。

ー日本の企業には就職しなかったんですね。

 どの会社にも入りたくないなと思って(笑)。それでフリーランスの海外セールスとして活動を始めました。

ーバイヤーとセールスを経て、ショールームの立ち上げに。

 はい。でも元々、ブランドのデベロップメントに興味があったんです。セールスやPRという枠にとらわれず、もっと大きく全体を見ながら仕事をしたいということをずっと考えていました。

ーセールスもPRも、それぞれ専門職が多いと思いますが。

 基本的には分かれていることが多いですね。ただセールスもPRもあくまでもビジネスの中の一要素なので、総合的に考えることでより根本的なソリューションを提示できると考えています。インフルエンサーやデジタルマーケティングの重要性が高まっている現代において、従来のシステムだとBtoB寄りになってしまって、業界人までの波及に留まっていたり。どちらのアプローチもファッションビジネスを形成する上で必要だと思うのですが、クリエイティブなコンテンツであればある程、業界に対して発信しているようにも見えます。僕は、ブランドと密接なパートナーシップを結びながらストラテジーを組んでいきたいと思うのですが、現状のビジネスモデルだと難しいと感じました。そこで新しいビジネスモデルを組み立てる必要があると考えて、ワンストップのブランド・デベロップメントを切り口にしたんです。

ーブランドの成長には、複合的なストラテジーが必要ですね。

 多面的にストラテジーを組み、様々な要素を折り重ねることで結果がついてくると思っています。ファッションビジネスとは、物事をデザインし、ストーリーを与える仕事だと思っているので。

©FASHIONSNAP.COM

ーSeiya Nakamura 2.24の現在のクライアントは?

 現在パリのショールームで展開しているのは、

フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)
マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)
ナマチェコ(NAMACHEKO)
ランダム アイデンティティズ (Random Identities )
ウェルダン(WE11DONE)
カイダン エディションズ(KWAIDAN EDITIONS)
ステファン クック(Stefan Cooke)
フェン チェン ワン(Feng Chen Wang)
「ポーラ・カノヴァス・デル・ヴァス(Paula Canovas del Vas)」

 等、計16ブランドです。この他にいくつか中国や北米を中心に世界的にビジネスを展開する企業へもコンサルティング業務を行っています。

WE11DONE 2020AW collection ©Hyewon Kang
KWAIDAN EDITIONS 2020AW collection

ー新進系から著名ブランドまで幅広いですね。

 そうですね。特に昨年は、権威あるプライズ、LVHMのファイナリストに「ステファン・クック(Stefan Cooke)」、「2020年度インターナショナル・ウールマーク・プライズ(International Woolmark Prize)」ファイナリストに「ナマチェコ」と「フェン・チェン・ワン」、Pitti Uomoスペシャルゲストデザイナーに「ランダム アイデンティティズ」が選出されました。世界で注目を集めるブランドと一緒に仕事ができて、とても光栄です。

ークライアントとなるブランドの条件は?

 僕らが携わる意味が明確であれば、一緒に仕事をさせて頂くようにしています。コレクションを見て良いと思うかも大事ですが、僕の場合、自分の中で「メイクセンス」する(=しっくりくる)ブランドかが大事ですね。明確な条件はないですが、一緒に何かを想像できる相手という感覚が必要なんだと思います。

FUMITO GANRYU 2020AW collection
Mame Kurogouchi 2020AW collection

ーSeiya Nakamura 2.24とOn Tokyo Showroom、そして他にも何社か運営していますね。

 Seiya Nakamura 2.24は上海に子会社を持っていて、On Tokyo Showroomは創設から4年ほど経ちました。それとは別に日本で2社、海外で1社経営をしていて、最近立ち上げたのが、元「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」のデザイナー高橋悠介君との新会社「CFCL」です。彼がCEO、僕はCMOというかたちで参加していて、新ブランドを今年デビューさせます。ブランドの詳細はまだ言えませんが、現代そして未来の社会においてメイクセンスするプロジェクトというか。今までのファッション概念になかったようなバランスと発想、そして彼の今までの経験や日本人としてのヘリテージ、そして次世代のデザイナーとしての責任など、様々な想いが上手く表現されているプロジェクトになっていると思うので是非楽しみにしていてください。

 あと実は今7社目を作ろうとしているところで。ベルリンのミッテに3階建ての物件を購入していて、ファッションをプラットフォームに、クリエイティブエージェンシー・テクノロジー・デジタルマーケティングの3つを掛け合わせる、これまで僕がやってきたビジネスと違ったまた新しい形態のビジネスをやろうとしているんです。ものを売るのではなくアイデアに価値をつけることを、テックのスペシャリストと組んでやっていきたいと考えています。

ーSeiya Nakamura 2.24の「2.24」は何の数字ですか?

 僕の誕生日です(笑)。スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)と同じで、おこがましいですがそれも由来で。彼はパーソナリティをデザインできるシステムを作ったと思うんですね。過程は複雑でも、エンドユーザーにはものすごくシンプルな言葉と方法で表現した。新しいものを生み出すのはものすごくミニマルな考え方だと思っていて、色々なものを考えて膨らませて、最終的に1mmずらすだけで実用的だったりする。その1mmの違いをプロジェクトで遂行していきたいと考えて、「2.24」を付けました。

NAMACHEKO 2020AW collection
Feng Chen Wang 2020AW collection

ーなぜ子会社を上海に?

 日本の本社と事業内容が少し違って、中国の方はPR業と共に、セレブリティなどと関係を構築するためのスペースでもあります。中国はEC主体の国ですから、服に直接触れて購入することが少なく、セールスの努力で良い店に卸しただけではビジネスは成功しません。そのため中国市場ではBtoC、いわゆるセレブリティやインフルエンサー、KOL(Key Opinion Leader)がより大事になってきます。パリや日本とは戦い方が違うというか、中国で戦うために別会社化することが必要だと考えたんです。

ー全体の社員数は?

 Seiya Nakamura 2.24で20人以上、パリコレ時期はインターンやモデル等、On Tokyo Showroomチームやブランドからのスタッフも合わせて全体で50人以上になります。PRやセールス経験者のほかデジタルマーケティングに強いスタッフもいたりと、何かに特化した人が多いです。こういう仕事があるから適した人を雇うというパターンが普通ですが、こういう人がいるからこんな仕事ができるんじゃないかと考えて新しい事業を始めることも多々ありますね。

 

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