Lifestyle インタビュー・対談

「アパレルをスノーピークの文化に」躍進を支えるモノづくりと企業風土

スノーピーク企画開発本部長の山井梨沙
スノーピーク企画開発本部長の山井梨沙
Image by: FASHIONSNAP

 新潟県・三条市に本社を構える日本のアウトドアメーカー「スノーピーク(Snow Peak)」。キャンプ用品を中心に近年はライフスタイル全般を取り扱い、昨今はモバイルハウス「住箱」日本酒などを発売するなど幅広いフィールドで事業開発を行なっている。中でも好調なのがアパレル事業だ。2014年から本格的に始動し、昨年は初めてイタリアの見本市ピッティ・イマージネ・ウオモ (Pitti Imagine Uomo)に出展。立ち上げから事業を率いてきた山井梨沙企画開発本部長に「スノーピークが目指すアパレル」について話を聞いた。

 

アウトドアメーカーのアパレル

ースノーピークは総合アウトドアメーカーとして知られていますが、アパレル事業はどのように始まったのでしょうか。

 スノーピークとしては過去に2度ほどアパレルに取り組んだことがあるのですが、なかなか上手くいかなかったんです。私は文化ファッション大学院大学でファッションデザインを学んで国内のウィメンズブランドで働いた後、2012年にスノーピークに入社したんですが、アパレル事業はその後に本格的に始まりました。

ーアパレル事業はどのような体制なのでしょうか。

 企画と生産、営業など計7人の部署になります。私の役割としては企画からデザインまでのクリエイティブと、事業責任者でもあるので中期や年間の事業計画など、ビジネス面も見ています。海外展示会では営業もしますし、基本的になんでもやっていますね(笑)。

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ーアパレルの売り上げが好調のようですが、要因は?

 2年目で初年度比300%くらい伸びました。それからは年々160%ほど伸びています。みなさんには「ありそうでなかった」とよく言って頂きますね。日常着にアウトドアの機能や知恵を備えたアパレルが時代性にマッチしたのかもしれません。

ー他との違いは?

 ものづくりに関しては素材開発からデザインや仕様まで自分が正しいと思ったことだけを貫いています。特に他にはない独自の素材に共感してくださる人がいて支持されているのかなと。あと、アウトドアでメンズが主流の中、女性のデザイナーは本当に少ない。女性的なユニセックスの感覚も評価していただいているようで、男女ともに共感できるところがミソかもしれないです。

届けたいのは「都会人」


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ーアウトドア用に限らず「街着」としても提案していますが、どういった人が着る想定ですか?

 私が一番服を届けたい対象は、忙しく働いている都会で暮らしている人たち。なぜ人がキャンプやアウトドアに行くかというと、ストレス社会から一歩外に出て自然の中で本来あるべき人間性を取り戻すためだと思うんです。なのでより都市と自然を近づけるための機能性と、一番気を使っているのが、肌に触れたり身に着けて心地良いと思える服を作るということです。

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ー服には「Made in Japan」のタグが付けられています。

 国内に拠点に置くデザイナーとして日本の良さを伝えていきたいという気持ちが強くあります。中でも日本のアパレル産業で一番優れているのは素材開発力だと思っていて、縫製が中国だと「Made In China」にはなってしまうのですが、高かろうが安かろうが「日本の素材を使う」という点は徹底しています。

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ー2018年春夏から始動した新しいアパレルライン「LOCAL WEAR by Snow Peak」は、そういった日本の産地に関わる取り組みですね。

 「LOCAL WEAR」では毎シーズン1つの産地にフォーカスします。これを始めようと思ったのは自分でファッションビジネスを手掛ける中で「モノづくり」「消費者」「マーケット」の間のギャップを感じたからです。例えば、もともと日本で生産されていた技術がコスト重視でアジアでリプロダクトされ、日本産地が衰退している現状があったり、マーケティングの見せ方でも、本質的でないものが良しとされたり...。消費者はそれが作られた背景も知らずに購買している。自分が関わる仕事ではできるだけ服作りの過程や本質までをしっかり伝えていきたいと思うようになり、このプロジェクトを始めました。


ー何か具体的なきっかけがあったのでしょうか

 新潟の佐渡島で古くから伝わる織物があるのですが、織り手さんを訪問したら「体力も限界で辞めようと思っていた」と言われたことがありました。その時、残すべき伝統文化が私たちが知らないところで無くなってしまう、と強い危機感を持ったんです。その時、産地の技術に特化したものを服で伝えていきたいという思いが芽生えました。

 「LOCAL WEAR」の第一弾は、地元の新潟です。「しじら織」と言われる織技法や糸を濃淡交互に染める日本ならではの染色技法「絣染(かすりぞめ)」などを中心に、新潟の豊かな水に育まれた独特な風合いと色合いのラインナップになっています。

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ー昨年初めて参加した見本市ピッティ・ウオモではアウトドアでも着られる着物「OUTDOOR*KIMONO」を発表しました。

 お陰様で盛況でした。そもそもアウトドアウェアをピッティで展示することが新鮮に映ったこともあり、注目していただけたように思います。日本のアウトドアの文化を着物で楽しむという新しい試みに対し、海外の方から反響がありましたね。

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アパレルでスノーピークの文化を作る

ー業界の垣根を超えたり、新しいアイデアを形にしているスノーピークの企業文化はどういったものですか?

 「自分がやりたい事=スノーピークでやるべき事」に直結しているんですよね。スノーピークが好きで、アウトドアが好きな人しか社内にいないんです。30年くらい掲げているミッションステートメントの中に「私達は、常に変化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。私達は自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供します」という一文があって、本当にそれに尽きると思います。この考えが社員1人1人に浸透してあらゆる指標になっている。この理念があるからこそ、私と他の人が違うことをやっていても、スノーピークとしてブレることなく同じベクトルを向いて進んでいけるのだと思います。


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ースノーピークのアパレルが目指すところは?

 事業立ち上げから3年ほど経つのですが、とにかく試行錯誤の繰り返しでした。「生産者」「ブランド」「消費者」すべてにいい影響のある事業モデルを作ることが夢なんです。その一つに、例えば「完全定番型のラインナップ」をまず完成させたいですね。たとえお気に入りの服が着れなくなったとしても、いつでも安心して買える仕組みをアパレル業界で作りたい。それを実現させるため、この3年間とにかくいろいろなものを作って、毎シーズンアップデートし、完成度上げていくという作業を続けてきました。定番のラインナップがどんどん増えていくのがベストですね。

 もう少し広い枠組みだと、ファッションや服ではなく「文化」を作りたい。ギアに関してはスノーピークという文化が出来上がってきていると思いますが、私はアパレルでスノーピークの文化を作りたいんです。1つのスタイルとして買ってくださる方も多くいらっしゃるんですが、生活に寄り添った文化を作ることが最終的な目標です。

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(聞き手:今井 祐衣)

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