「SSENSE マガジン」21SS号
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Mediaインタビュー・対談

K-POPファンの団結からマーク・ジェイコブスまで取り上げる ECサイト「SSENSE」の記事が面白い理由

 ECサイト「SSENSE(エッセンス)」の記事が面白い。ラグジュアリーブランドから気鋭ブランドまでを扱うECサイトとして知られるSSENSEだが、取り扱い商品に限らずサイト上に掲載しているオリジナルコンテンツまで非常にエッジがきいている。

 SSENSEで取り上げるコンテンツは、マーク・ジェイコブスの単独インタビューから、K-POPファンが仕掛けたブラックオーシャンについて、そしてシモーン・ロシャ(Simone Rocha)やリック・オウエンス(Rick Owens)らが考える「夢のチェア」までと幅広い。サイト全体で月間平均1億PVを誇り、ECページの平均セッション時間は記事を読んだユーザーのほうが長くなるという。ECサイトとして唯一無二のポジションを確立するSSENSEの読み応えあるコンテンツはどのようにして生まれているのか? SSENSEマガジン編集長ドゥルガー・チュウ=ボース(Durga Chew-Bose)氏に聞いた。

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ドゥルガー・チュウ=ボース
SSENSEマネージング エディター兼SSENSEマガジン編集長。「Vanity Fair」に定期的に寄稿しているほか、「DAZED」や「Harper's BAZAAR」「T Magazine」等でも執筆。「Too Much and Not the Mood」の著者としても知られている。

― SSENSEのオリジナルコンテンツのファンです。K-POPファンがネットの力を使って社会を動かしたムーブメントを取り上げた「K-POPファンの団結と工作と救い」のように、商品が一切紹介されていない記事も多いですよね。母体はECサイトでありながら読み物としても非常に面白い印象ですが、SSENSEで掲載するコンテンツのコンセプトは?

 SSENSEのコンテンツの目的は、現在世界で起きている事柄についての対話に積極的に関わることです。ユーザーはショッピングをし、記事を読み、楽しみながら時代の潮流を感じるために「SSENSE」を訪れる。そのため、私たちは当代最高のライター、思想家の意見や、最新の情報に触れる機会を提供しています。ファッション、カルチャー、スタイルの分野において、常識の枠にとらわれないと考えられるものであれば、気鋭の新人でも大御所でも、様々な声を取り上げています。挙げていただいた「K-POPの団結と工作と救い」という記事では、インターネットがその数の力を使って、まるでいたずらのように人々を動員した瞬間について紹介しています。SSENSEのコンテンツはタイムリーな時事問題ばかりを扱っているわけではないので、みなさんには記事をブックマークして好きな時に読んでもらえれば良いと思っています。

― SSENSEはウェブとは別に、紙のマガジンも春夏・秋冬と年2回発行しています。

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SSENSEマガジン 2021年春夏号は、マーク・ジェイコブスやグレース・ウェールズ・ボナー、デヴ・ハインズらを起用した複数表紙を用意

 マガジンは、私たちが提供するエディトリアル プラットフォームの一つの完成形であり、オンラインに掲載した記事の中でも特に気に入ったものを保存しておく「タイムカプセル」の役割を果たします。

― 紙とウェブのチームは分かれているのでしょうか?

 一つのチームで、SSENSE.COMとSSENSEマガジンの両方の編集を担当しています。

― ウェブでは月15本ほど記事を掲載されていますが、これまで反響のあった記事はどのようなものでしょうか?

 SSENSEマガジン 2021春夏号の特集記事のひとつでもある「マーク・ジェイコブスの偉大なる執着」というインタビュー記事は、オーガニック検索のみで3万ユニークページビューを獲得し、マーク・ジェイコブス本人のアカウントを含めてソーシャルメディアで多くシェアされました。大御所でも気鋭の新人でも、注目のデザイナーへのインタビューに成功したコンテンツはよく読まれます。例えば、モワローラ・オグンレシ(Mowalola Ogunlesi)へのインタビューやニューヨーク発の「コミッション(COMMISSION)」についての記事などは好評でした。

― SSENSEのコンテンツが面白い理由は何だと考えていますか?

 SSENSEのエディトリアル チームでは、アーティストたちの極端なまでにディテールにこだわったデザインとSSENSEとの共通項に着目し、「読者とファッションを結びつけるためにヴィジュアルにできることは何か」を常に意識するようにしています。昨年は、イラストレーターやグラフィックデザイナーといった様々なヴィジュアルアーティストと密に連携したことで、非常に刺激的なコンテンツができました。例えば、(グラフィックデザイナーの)クリスタル・サパタ(Crystal Zapata)には、ミュージシャンのニック・ハキムとライターのロス・スカラノの会話をイラストにする作業を依頼したのですが、日常を美しく描写した、なかなか考えさせられる作品に仕上がっています。昨シーズンは、ブランド「チョポヴァ ロウェナ(CHOPOVA LOWENA)」のデザインをペーパーアーティストのネル・ジョスリン・スローターの作品と組み合わせたこともありました。

 SSENSEでは、雑誌の企画から制作、デザインまで全てを社内でやっています。ヴィジュアルに関して言えば、SSENSEにとって特に重要なのはデザインでしょう。社内のプロダクションチームは驚くほど意欲的で、およそ実現不可能と思えるアイデアを提示されても、なんとかしてしまうのです。そういった力が集まり、SSENSEのサイトは他のメディアとは一線を画すヴィジュアルアイデンティティを確立しており、さらにマガジンではデザインの可能性を実験し模索する上で新たな方向性を示す存在となっています。

 SSENSEと他の雑誌の違いは、「SSENSEらしさ」の大部分が、コラボレーターの視点から成り立っている点でしょう。私たちは彼らにプラットフォームを提供しますが、同時に彼らから多くのことを学びます。全てはコラボレーターのおかげです。表紙にはSSENSEとありますが、焦点はコラボレーターに当てられていますし、プラットフォームは彼らのためのものなのです。

― 記事を作る上で大切にしていることは?

 周りで今実際に起きている事柄に耳を傾け、波長を合わせることに多くの時間を費やしています。雑誌は制作に期間を要するので、人の話をよく聞き、長い時間をかけて関係を築き上げていくことが求められます。

― SSENSEの強みの一つは、買い付けたアイテムをエディトリアルに使用できること。つまりブランド側のリースが不要なことだと考えていました。

 私たちは、素晴らしいファッションアイテムだけでなく、今ではライフスタイルグッズにもアクセスできます。バイイングチームがベンダーと確固たる信頼関係を築いてくれているので、エディトリアル チームもその恩恵を受けていますね。例えば、「ファッションデザイナーの夢のチェア」という記事は、SSENSEのバイヤーたちと共同で進めた企画だったのですが、彼らが構築してきた関係の偉大さを思い知らされることとなりました。リック・オウエンス、シモーン・ロシャ、カイル・ウン、プリヤ・アルワリア、マーティン・アリ、イドリス・バログン、エロルソン・ヒュー、ビアンカ・サンダース、ローラ&ディアナ・ファニングに加えて「コミッション」のチームとのコラボレーションで、夢の椅子を作ることができたわけですから。

シモーン・ロシャら人気デザイナーの「夢の椅子」を作り上げたオリジナル企画

 コラボレーションのための話し合いの多くは、展示会やファッションウィークの期間中に始まります。こうした話し合いから「物とモノ」や「SSENSE キッズ」のような新部門が誕生して、SSENSEの内容はより充実したものとなっています。ブレインストーミングの段階でそのようなアイデアに巡り合えたら、それは編集者にとってはもう夢のような話です。

「物とモノ」カテゴリーが新たにローンチ
「物とモノ」カテゴリーが新たにローンチ

― 2021年春夏号で特にお気に入りの企画は何でしょうか?

 私のお気に入りは、ジャスティン・ハント・スローン(Justin Hunt Sloane)がデザインしたジン(zine)です。オリジナルの作品を尊重しつつ、新たな価値観を与えることに成功していますから。SSENSEが取り扱うアパレルやドッグウェア、物とモノの雑貨を描いたマックス・グーテのイラストも素晴らしいです。チームのみんなも大絶賛で、SSENSEマガジンとの相性もばっちりでした。「ファッションデザイナーの夢のチェア」のトレイシー・マーの作品も好きです。ミニマルな発想をマキシマルに展開できる彼女のようなアーティストと仕事できるのは喜びです。

 また、2021年春夏号では、刊行に合わせてデヴ・ハインズとジャスティン・ハント・スローンがSSENSEのためにデザインした限定Tシャツのシリーズ「SSENSE WORKS SS21 Magazine コレクション」を発売しました。2021春夏号で特に人気だったデザインとストーリーが、6点の長袖と半袖のTシャツになって登場しているんですよ。

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