「ターク(TAAKK)」が、2026年秋冬コレクションで発表した初のジュエリーを10月28日から順次発売する。縄文時代から着想を得たコレクションテーマ「湧き上がる衝動」になぞらえ、天然の鉱石をありのままの姿でジュエリーに落とし込んだ同作は、ジュエリーブランド「4°C」のジェンダーレスライン「ヨンドシー オムプラス(4°C HOMME+)」との協業によるものだ。タークにとってはこれが初めての他ブランドとのコラボレーションで、4℃でもデザイナーズブランドとのタッグはこれまで例を見ない。ブランドイメージが対極にあるとも言える両者は、なぜ手を取り合うこととなったのか。タークデザイナー 森川拓野とヨンドシー オムプラスで商品企画・開発を統括する望月慎哉部長に聞いた。
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ターク森川拓野(左)と4℃望月慎哉部長(右)
森川拓野
1982年秋田県出身。文化服装学院卒業後にイッセイミヤケに入社。企画デザインを担当した後、2013年春夏シーズンに自身がデザイナーを務めるブランド である「ターク」を立ち上げた。2019年10月、「FASHION PRIZE OF TOKYO 2020」を受賞し、2020年1月、初めてパリでショーを開催。2023年春夏コレクションでは、ブランドとして初となるウィメンズコレクションを展開した。
望月慎哉
2010年、ジュエリーブランド「4°C」を展開するエフ・ディ・シィ・プロダクツに入社。ブランド事業の商品企画・開発に携わり、2021年には4°C初のD2Cとして、ジェンダーレスライン「4°C HOMME+」を立ち上げ、ディレクターに就任。現在は第一事業部 商品部 部長として、ジュエリーの商品企画・開発全体を統括している。
ジュエリーではなく「時間を身につける」
──まず森川さんにお聞きします。2026年秋冬コレクションでジュエリーを作ろうと思ったきっかけは?
森川拓野(以下、森川):コレクションの着想源が「縄文時代」だったことに尽きますね。テーマを決めて、色々と資料を漁っていたんですが、当時の人たちって何かしら装飾品を身につけているんですよ。素材は貝だったり、骨だったり、綺麗な石だったりさまざまなんですが、狩猟採集の生活の中で手に入れたものを工夫してつけている感じがすごくカッコいいなと思ったんです。それで関係各所に「ジュエリーを作りたいと思っている」と相談したところ、「4°Cさんなら面白いことができるかもしれないよ」とご紹介いただき、お話の機会を得たんです。

──実際に会ってみていかがでしたか?
森川:挨拶もそこそこに、職人さんが技術を見せてくれました。パールが金属に包まれているだけのサンプルだったんですが、形を整えていないパールのアウトラインに沿ってシルバーがピッタリと一体化されている様を見て、すっかり引き込まれてしまって。「そこらへんの石ころだってシルバーで包んでジュエリーにできるんだったら、自分が考えているコンセプトとすごくぴったりじゃないか」とどんどんアイデアが湧いてきて、会議そっちのけで話し込んでしまいました(笑)。
望月慎哉(以下、望月):タークのことはもちろんお話をいただく前から存じ上げていました。クリエイションのムードを見ても、まさか4℃とご縁があるとは思わなかったので素直に驚きましたね。
そして、4℃のコンセプトの原点は「水」です。水は、しなやかさや優しさだけでなく、時には岩をも砕くような「力強さ」も持ち合わせています。2026年秋冬コレクションでタークが「湧き上がる衝動」というテーマを掲げていると聞き、4℃の中にある「水の力強さ」と今回のコレクションのプリミティブな生命力が共鳴すると考え、協力させていただきました。
──タークが惚れ込んだ4℃の技術とは具体的に?
望月:細かいところは社外秘なのでお伝えできないのですが、通常ジュエリーの作りでは「爪留め」といって、爪のついた台座を作って、そこに形を整えた石をはめ込むのがセオリーです。しかし、今回は石そのものを加工せずに生かしたい。非金属に金属を取り付けるときは、電気を通して定着させるのが基本的な作り方なんですが、鉱物は電気を通しません。電気を使わずにいかにして金属と鉱石を融合させていくか、というのが今回用いた技術です。私が知る限りおそらく他社さんではできない、4℃の独自技術だと思います。

──実際のクリエイションは、どのようなプロセスで進んだのでしょうか?
森川:至ってシンプル。日本では、「ミネラルショー」と呼ばれる鉱物、天然石、宝石などの展示即売会が全国各地で頻繁に開催されているのですが、そこでジュエリーに使いたい鉱石を選んで、4℃さんの技術でシルバーと一体化してもらっています。ミネラルショーでは社長室に置いてあるようなドデカい水晶なんかがメイン商品なので、タークが探している小さな石は鉱物商の方からすると眼中にないんです。でも朝から晩まで座り込んで鉱石を選んでいたら、自然と業者さんとも仲良くなりました。
望月:基本的に鉱物に手は加えず、ありのままのものを使っているのですが、ものによっては森川さんが「これ半分の方がいいな」とパッとその場で割ったりして(笑)。ジュエリー製造の現場としては非常に新鮮でしたね。

──鉱石を選ぶときの基準を教えてください。
森川:「ジュエリーにしたら良いものになるだろう」という僕個人の感覚です。強いて言えば、クォーツ系、水晶系の少し角張っているものは基本的に上手くいくだろうなという確信がありました。ただ、それ以外の色付きの鉱石などは正直出来上がってみないと分からない。こればかりはトライアンドエラーですね。
このジュエリーについては「デザイン論」というものが存在しません。鉱石の形を整えたり、磨いたりということはせず、「地球がデザインしたものをお借りしている」イメージです。知っていますか? 水晶が成長するスピードは100年で1ミリ程度と言われているんです。そこにあるリングの石ひとつとっても気が遠くなるような時間の集積の末に生み出されたもので、ジュエリーを身につけるというより「時間を身につける」という感覚に近いかもしれません。僕はコンセプトを提案しているだけ。技術があって、思想があって、自然界のものがそのまま形になるというのが“究極のデザイン”。このプロジェクトに関しては、余計な手を加えてはいけないような気がしています。

生活の痕跡を残し、身につける人の一部となる
──金属部分は全てシルバーですか?
望月:金属部分の表面は全て純度100%のシルバー(純銀)を用いています。一般的なシルバーアクセサリーに使われるのは含有量が92.5%である「シルバー925」ですが、「925」が使われるのは、純銀はシルバー本来の美しい光沢を持つ一方、柔らかく傷つきやすい性質があるから。そのため、銅などの金属を混ぜることで強度を確保しているんです。ただ、今回はその「柔らかさ」が、天然石との相性、加工のしやすさという点で逆に大きなメリットとして働きました。銀本来の美しさも引き出すことができ、非常に理にかなった選択でした。内側は「シルバー925」で、金属の耐久性も確保しています。
森川:縄文時代の人々が狩猟採集の生活の中で装身具をつけていたように、日常のなかで多少の傷がつくのも一つの味だと思っています。ピカピカで傷ひとつないことに美しさを見出すジュエリーもあると思いますが、このジュエリーについてはそうではない。生活の痕跡を残し、身につける人の一部となるようなアクセサリーであれればと思います。極端な話、どこかにぶつけて石が欠けてしまったとしてもカッコいいはずですよ。

──さまざまなバリエーションを揃えていますが、お二人のお気に入りモデルは?
森川:僕はクォーツを用いたネックレスが特に気に入っています。シンプルな黒Tシャツにつけるだけで様になるし、シャツの襟元に取り付けてループタイとして使うのもいいですね。ショーでもスタイリングしていましたが、タークのインラインとの相性も抜群です。


望月:僕はこちらの地金のリング。今回のコレクションでは鉱石を使ったジュエリーが目を引きますが、こちらは鉱物をかたどって、自然のままの造形を落とし込んだシルバーアクセサリーです。樹脂のようなもので鉱石の形をとって、そこに金属を流し込むとこのような意匠に仕上がるんです。

森川:もともと、この中央の空洞部分には水晶が入っていたんです。石の周りに小さな結晶がたくさんついている様子が妙にカッコよくて、その部分だけをデザインソースにしました。鉱石を使った一点物のアイテムと違い、こちらは量産に対応しています。
──価格は鉱物を用いた一点物が16〜20万円ほど、地金のリングが14〜16万円ほど。昨今のシルバーの高騰やアイテムの存在感、製法の希少性などを考えると決して高くはないように思いました。
望月:我々は企画から製造、販売までを一貫して手掛けているSPA企業なので、間に挟む業者が少ない分コストを抑えられています。また、通常鉱物の価格というのはカットや整形、研磨といった加工にかかるコストが大きな割合を占めているんですが、このコレクションでは鉱石を加工せずありのまま使っているので、ジュエリーの存在感と浮世離れしない現実的な価格帯を両立できているんです。アイテムのコンセプトが手に取りやすさに直結しており、再現性もあるので、多くの方に手に取っていただけたら嬉しいですね。
「体験」が伴う買い物には「愛着」が生まれる
──4℃にとって、デザイナーズブランドとのコラボレーションは初。新たな気づきはありましたか?
望月:物作りに対して、我々になかった新たなアプローチを提示してもらいました。我々の手法は表現するなら「均等の美」で、1個でも100個でも同じ品質を追求していくものです。でも今回のタークとのプロジェクトは一部を除けば一つひとつが一点物で、それぞれの石の魅力を活かしながら唯一無二のジュエリーを作り上げていきました。座を作って合う石をはめるのではなく、石に合わせて座を作るという真逆の手法で、我々にとっても選択肢が広がったなと思います。

Image by: TAAKK

Image by: TAAKK
森川:タークとしては、ジュエリーがあるのとないのではコレクション全体の完成度というか、奥行きが全く違っただろうなと思っています。ここまでコレクションの方向性にぴったりなジュエリーを短期間で作ってくださり、感謝しかないです。
望月:お話をいただいたのが2025年の9月。ショーが今年の1月なので4ヶ月弱の製作期間でしたね。
──知り合いのバイヤーも今回のジュエリーを展示会で見て目を輝かせていました。
森川:2026年秋冬コレクションはレザーにジュエリーと新しいことに挑戦したシーズンになりましたが、有難いことにとても評判がよかったです。僕自身が本気でいいものだと思ってお話したのでその熱量が伝わったのもあると思います。
──年末、別件の取材でタークのアトリエにお邪魔した時に森川さんが突然「めっちゃカッコいいものができるから見てよ」と少年のような眼差しでジュエリーについて語ってくれたのを思い出します。
森川:デザイナー自身がワクワクするというのは本当に大事。でなければ発表前の苦しい時期を乗り越えられないし、自分主体じゃなく他者に判断を委ねて作ったものは誰にも伝わらないと思うから。逆に、携わっている人たちみんながワクワクして手掛けたものは絶対お客さんにも届くと信じています。実際に2026年秋冬コレクションは僕がワクワクしていたのはもちろん、4℃さんやレザーのタンナーさんが前のめりでさまざまな提案をしてくれて、村田さん(FASHIONSNAP)が熱量あるレポート記事を書いてくれて、僕がSNSや展示会で発信してお客さんに届いた。物作りの健全な在り方だったと思います。

望月:4℃社内でも今回のコラボを通じて「これってどうやって作っているんですか」などクリエイションに関するコミュニケーションが活発になったのを感じていますし、「タークとのプロジェクトのメンバーになりたい」という声も多数上がっています。社員のモチベーションという観点でも非常に有意義な協業でした。
森川:2027年秋冬シーズンも楽しみにしていてください。
──プロジェクトは今後も続いていくんですね。
望月:続けていきます。ヨンドシー オムプラスとしてもこのプロジェクトは大きな可能性を秘めていると考えているので、10月28日から阪急うめだ本店さんで実施するポップアップでの反応を見つつ、具体的なところは考えていきたいですね。
森川:コラボではあるけど、このプロジェクトに名前をつけても面白いですよね。将来的にはこのプロジェクトだけのお店を作りたい。アイテムの特性上、オンラインではなく実際に手に取って選んでほしいですから。2027年3月に祐天寺にオープンするターク初の路面店でも、ジュエリーは取り扱う予定です。

──ECが当たり前になっている現代だからこそ、アイテムだけでなく「一点物を選ぶ体験」を届けるというのは時代に即しているような気がします。
森川:中野に、同じビールの銘柄を10種類以上の注ぎ方で提供する飲み屋あるの知っていますか? そこはマスターがこだわり強い人で、ビールの飲み方からいただくときの姿勢に至るまでレクチャーするんです。そんなことがビジネスになるのかと思ったんだけど、めちゃめちゃ人気で、予約しなきゃ入店できないらしくて。そのお店とこのプロジェクトは、「体験」に価値を見出している点において近しいものがあると思っています。
もちろんアイテムがカッコいいのが前提ですが、体験が伴う購買には「愛着」が湧くんですよ。そして愛着のあるものは、身につけるだけで1日がいつもより華やかになる。それこそがファッションの本質的な楽しさだと思っています。
最終更新日:
■4℃ HOMME+ × TAAKK ポップアップ
会場:阪急うめだ本店 3F コトコトステージ31
期間:2026年10月28日(水)〜11月3日(火)
※10月28日(水)15:00~19:00 森川拓野 来店予定
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