Image by: FASHIONSNAP

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藤原ヒロシ、上出遼平、TaiTanの3人によるポッドキャスト番組「BAD PHARAMACY」が、番組初のトークイベント「GIVE US SOME PRIVACY」を全国5都市の映画館で開催する。ツアーの開催を記念して、台東区・蔵前のカフェで行われた番組の収録現場に潜入。さまざまなバッドを語る番組のテーマに準えて「ファッションメディアのバッド」をテーマにトークをお願いした。3人がFASHIONSNAPのためだけに語ってくれた、ここだけの“読むBAD PHARAMACY”特別編をお届けする。
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(左から)TaiTan、藤原ヒロシ、上出遼平
🫚BAD PHARAMACYとは
藤原ヒロシ、上出遼平、TaiTanの3人によるポッドキャスト番組。上出、TaiTanの実家の家業が「薬局」であるという共通点から、コンセプトは「世界のお腹をあたためる薬局」。「公共マナー」「フィルターバブル」「喧嘩マネタイズ」等、現代社会に蔓延る「バッド」の解消法を処方する。
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目次
ファッションは「わかってもらえなくていい」もの
── 正直な意見で構いませんので、みなさんが最近のファッションメディアについて感じていることを教えてください。
藤原ヒロシ(以下、藤原):今回のBAD PHARAMACYのツアータイトルの通り、ファッションそのものが「ほっといてよ(GIVE US SOME PRIVACY)」というものだと思います。「私たちはこれが好きだけど、他の人に理解されないのはもちろん分かっていますから、ほっといてください」というのがファッションのあり方。でも今って、もうそれではやっていけない。権威のある雑誌も、表紙には広告主であるラグジュアリーブランドが契約しているタレントを起用しなくてはいけなかったり。しかし、ファッションインダストリーの本質に立ち返ると、そうした流れにこれからもずっとイエスを言い続けていていいものなのかと、疑問に思います。
上出遼平(以下、上出):もう少し詳しく聞かせてください。
藤原:純粋にファッションを表現することが目的なら、その世界観を追求した表紙にすべきだと感じてしまうけど、今はその時人気のあるタレントを起用した方が広告枠が売れるからタレントを起用するんでしょ。それってベストジーニスト賞と同じ構図。ファッションメディアが、表紙でやるべきことではないんじゃないかと感じてしまいます。

上出:新しい提案ではなく、すでに広く認められた価値をなぞって拡散することを目的にしている。すでに存在するものの再生産でしかないという点では、今あらゆるものが同じ道を辿っている感じがします。
藤原:多分、「ファッション」が始まったときはそうじゃなかったと思います。ビジネス的な視点を介さない、新しく純粋なものに魅力を感じてた人が多いはずだから。
上出:ちなみに「ファッション」って何のことなんでしたっけ。
藤原:流行。
TaiTan:その意味で、シンプルな「アパレル」とは違うニュアンスがありますね。

上出:ヒロシさんが言っていることは、逆に言うと、有名なタレントを起用することそのものも一種の“流行”でもある?
藤原:それでいうと、大衆的なファッションではなくて、もっと“排他的ファッション”のようなものを望んでいる節はありますね。
上出:ヒロシさんっぽいですね。常に、マスじゃないものを求めているというか。
藤原:日本で盛り上がったファッションって、マスに入れない人の集まりであったり、拠り所であったりしたと思うんですよ。例えばイタリアなら、背が高くてスタイルが良い人が白Tシャツを一枚着るだけで当然かっこいい。でも、僕らがそれをやってもそんなにかっこよくなれないから、いびつなファッションというものが生まれたはずなんです。そういう土俵に、かっこいいスーパースターが一律に並んだって面白くない。
上出:なるほど。僕らの居場所までが、資本に吸収されちゃっているんだ。

── ファッションメディアが提案する、どういったコンテンツのことを面白いと思いますか?
藤原:明らかなのは、「新しい情報」を求めてるわけではなく、「おもしろい情報」を求めているということ。FASHIONSNAPは媒体の特性上新しいものをたくさん出していくことも仕事かもしれませんが、情報メディアとファッションメディアでは、求められるものが少し違うかもしれないですよね。偶然、今日ここに来るまでに上出くんが出ていた「POPEYE」を読んできたけど、あれにも別に新しい情報が載っているわけではない。ただ面白い人を特集していることがコンテンツの面白さにつながっている。FASHIONSNAPでも、たまには編集部全員で90年代で1番面白かったと思うものを特集するとか、新しいものを完全にシャットアウトしてみると新鮮かもしれないですよ。
上出:新しさを意図的に避けることと、新しいものを最速で出すっていうことを同時にできたら、バランスが取れそうですよね。
藤原:出版社でもウェブメディアでも、いずれにせよ記者と編集者は別物ですからね。皆さんも、例えば「おしゃれな人」を取材するんじゃなくて、自分が思うものをどんどん発信したほうが本当は良いと思うんです。雑誌に名物編集長のような存在がいるように、いろんな場所で名物編集者が現れて「世の中ではこれが流行っているけど、私はこっちが好きなんだよ」っていうことを発信できたほうが面白いと思う。どこかの誰かを上に見る必要はなく、編集部の方々が自分自身の立場から発信をなさったらいいじゃないですか。
PV数を内面化すると、媒体の判断が歪んでいく
藤原:XやInstagramで誰でもコメントができる機能が、すごく良く作用することもあれば、そうではないこともあるじゃないですか。それが個人メディアの良さであり悪さだと思うんだけど、僕は嫌なコメントがつかないようにインスタのコメント欄を閉じていて、発信は完全に僕の一方通行です。僕が思っているものを発信するだけで、それについて、あなたの意見は何も聞きたくありません、というのが僕のスタンス。


上出:ヒロシさんのインスタってコメントできないんですか。
藤原:できないですよ。でも子どもの頃から読んでいた雑誌だって本来そういうものだったじゃないですか。「ダサい」と思っても声に出して文句を言う相手もいないし、そういうものだと思って受け入れれば良い。FASHIONSNAPみたいな企業アカウントは、コメント機能を無くした方がいいと思いますよ。
TaiTan:うん。すごく分かります。僕はウェブメディアの「アクセスランキング」がそもそも良くないんじゃないかって思うんですよ。もちろん、人は「これが読まれています」という情報自体に欲望するから、媒体の都合的には必要なんだろうと思うんですが、ランキングばかり追っていたら媒体側の判断が歪みますよね。きっとその繰り返しの中で、例えば最初は1割だった“デカ盛りパフェ”の話が1.5割になり、3割になり……。そういう中で、いつの間にかファッション誌が“アイドルのオウンドメディア化する”ということが起きていく。僕も自分のメディアをやっていますが、絶対にランキングは作らないようにしています。
藤原:数字がいかに下品かと言う話ですね。
TaiTan:はい。そして気づかないうちに数字が作り手に内面化されていくんだと思います。
上出:内面化してしまうって怖いですね。それにネット上で数字を追うだけなら、究極「ポルノ」をやれば勝者になれてしまう。それで良いわけないことはわかっているのにね。


TaiTan:SNSでコメントをしてくるような熱心なフォロワーにも、伝えたいことが全く伝わっていないことも度々ある。上出さんはSNSのコメント欄を開放していますが、嫌な思いはしませんか?
上出:以前から、そう上手くはいかないと痛感していて、もうあまり何も思わなくなった。たくさんの人が作ったものを面白いと言ってくれて、直接感想を言ってくれる人もいますが、その時俺が伝えたかったことの真逆の受け取られ方をしていたり。
藤原:そういう人は、例えば「ハイパーハードボイルドグルメリポート」で上出くんが「リベリアに行った」という出来事しか見えていないのかも知れない。その奥にある本来伝えたいものは、目に見えないものは、正確に伝わらない。なんていうか、常にパブリックイメージとの戦いみたいなところがありますね。
TaiTan:すごく分かります。僕は、自分がつくるポッドキャストのようなメディアは「自分の声が届く範囲の人たち」だけを対象にしたい。一方で、「ギガマート*」のような僕の存在感をできる限り消した企画に関しては、できるだけ多くの人に届くようにコミュニケーションするように設計してバランスを取っています。とにかく「声が届かない範囲」の相手に自分の“地声”が届くことが嫌ですね。
*ギガマート展:TaiTanと玉置周啓(MONO NO AWARE)がパーソナリティを務めるTBSラジオ「脳盗」が、プロデュースする音を立てなければ全商品“盗める”体験型イベント。第1弾「盗-TOH-」では最大4時間待ちの行列を記録。イベントの体験動画は、SNSで累計5000万回以上再生されるなど、日本のみならず世界中で大きな話題を集め、今年は規模を拡大して麻布台ヒルズギャラリーを会場に1ヶ月間開催された。


上出:分かるな。いろいろな領域の人たちが自分の世界を「閉じていく」という方向性は、今後5年間くらいある気がするよね。
TaiTan:はい。そうして「閉じる」ことで、逆に視野が狭くなっていくのを避けるために、どこかでまた「開く」回路を用意する必要がある。でもそれを同一の人間がやるのは難しいから、何かしらのシステムやフォーマットを介してオーディエンスのフィードバックを受け取ることになると思います。でも、とにかく一人の人間として矢面に立って大勢に向かって喋りたいことなんて別にない、という感覚を数字に惑わされて忘れたくないですね。ヒロシさんの感覚と似ていると思いますが、メディアと作る時はある程度の一方通行性があった方が長期的に見てうまくいく気がします。シンプルに、嫌なコメントとか、ちゃんと不快ですし。
上出:慣れてしまったとはいえ、ノーダメージではないし、無視できない量のコメントが届くと、気付かないうちに蓄積されてしまう可能性もあるね。
藤原:今の若者は打たれ強いですよね。嫌なコメントをいちいち気にしていたら生きていけない、というスタンスでしょ。僕だったら絶対無理だと思う。言いたいことは言いたいけれども、1つ何かを言ったことに対してネガティブなコメントが5つもついたら、シュンとしてしまうだろうな。
TaiTan:そもそも、なんで慣れているんですかね。
上出:ネット空間っていうものにどっぷりと浸かったことによって、他者との距離感が俺たちとは違い基本的に遠いのでしょうか。
藤原:言っても言われても、結局届かないという感覚なのかな。
TaiTan:ゲーム化してますよね。でもそれが蓄積して、うっかり人は死んでしまったりするわけで。平気だと思っていても、知らないうちに蓄積されたものによってうっかり、死へと誘われてしまう場合だってある。


── SNSが登場した時は、その双方向性に多くの人が期待を寄せましたが、結果的に人間同士の距離感を狂わせる元凶にもなっている。
上出:技術の進歩に伴って、「これからは雑誌じゃなくてウェブの時代だ」、「双方向性だ」と、もてはやされた時代が確かにありましたね。誰しも孤独が怖いから、誰かとのつながりを求めた結果、繋がりすぎたのかな。
藤原:オンラインは一方通行で、繋がりを求めるならオフラインで良いと思います。それがmixiのような、「何かのファンの集い」のようなコミュニティで、オフラインのようなオンラインの使い方をする環境であれば良いけど。メディアは別に双方向である必要はないんじゃないかと思います。「発信者」側はもう、オーディエンスにへりくだってわざわざ声を拾わずに、どんどん自分が思うことを発信していけば良いと思います。

── 今回のツアーの目的はオフラインでリスナーと繋がることなんでしょうか?
藤原:そういうわけでもありません。ツアータイトルの通り、ただただ僕らの秘密の話をみんなも聞いてくださいというだけ。でも、そこに集まるのが100人であれば、その空間を一緒に共有できるから、会話が成立するかも知れませんね。
TaiTan:音楽と違い、自然言語で繋がれる人数の限界は、せいぜい100人、多くて500人程度だと思います。スケールとノリは基本的には相反する。だから音声メディアのイベントづくりは繊細なバランスが必要だなといつも思います。
ファッションの担い手を育む場所を作りたい
上出:好きなことを発信して良いとなったら、橋本さん(FASHIONSNAP)が考える今1番ホットなファッショントピックってなんですか。

── 先日、名門ファッションスクールであるベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーの学費が急激に値上がりしていて学費が払えなくなるかも知れないと日本人留学生の方から連絡をもらいました。高等教育を受けることも富裕層の特権になっていくのか、と思うと、これからのファッション業界を動かす才能がどういった場所から生まれて来るのかは気になっています。
上出:きっと、二極化しているんですよね。サラブレッドもいれば、野良から逆転する人もいる。
藤原:比較的学費が安かったアントワープは、いわば“野良”が人生を逆転させるための学校に近い存在でした。でも、今は変わってしまったんでしょうね。おしゃれで面白そうな人が集まる場所には、できればお金の壁を気にせず飛び込みたいものですが、学校自体がひとつのブランドになってしまったんでしょうね。とはいえ、道はそこだけではないし、他にもチャンスはたくさんあると思いますよ。
TaiTan:そもそも、基本的にファッションやファインアートはお金がかかりすぎますよね。音楽くらいじゃないですか、原資をかけずとも逆転が効くのって。
上出:音楽は、専門的な素養がない人が聴いても、感覚的に良いと思える強さがありますよね。でも、ファッションやアートは文脈の理解がないと、新しいものに対して喜びを見出しにくい。そういう意味でも音楽は一発逆転しやすいのか。
藤原:しかも音楽は世に出してしまえば、ほぼパブリックドメインのように無料で広げることができるけど、ファッションは買ってもらうところまで到達しないといけないから難しい。製造業でもあるし、パトロンがいないとなかなかスタートラインに立てないのが現実なのかも知れません。
上出:そういえば、この前、ちょうどヒロシさんの家でそういう話をしましたよね。「次の世代のファッションの担い手を育める場所を作りたいね」って。
藤原:カフェとかでもいいと思うんですけど。SNS以上の、生のコネクションというか、そういうものはきっと必要ですよね。そんな場所があったら良いと思いませんか。
TaiTan:大人は有料で、ファッション学生は無料で参加できるようなコミュニティ。大学の次は、ビル・ゲイツ財団のように、フラグメント財団ですね。

最終更新日:
◾️GIVE US SOME PRIVACY
「BAD PHARAMACY」初のトークイベントとして、全国5都市の映画館を巡る。当日来場者は入場時に渡されたケースにスマホを仕舞い、撮影・記録は完全厳禁のプライベート空間で配信では聴けない本当に「バッド」なトークを楽しんでもらう。他にも来場者の「バッド」を3人に直接相談したり、番組で話されていた”例の飲み物”を入手することもできるかもしれない。何を話すか、何があるのか、詳細は当日まで謎に包まれたサプライズだらけのプライベートツアー。
◾️ツアー日程
2026年11月7日(土)キネカ大森
2026年11月8日(日)フォーラム仙台
2026年11月15日(日)KBCシネマ1・2
2026年12月5日(土)伏見ミリオン座
2026年12月6日(日)THEATRE E9 KYOTO
料金:通常席 7800円、S席 1万1000円(伏見ミリオン座のみ)
チケット発売日:2026年10月6日(火)
ツアー特設サイト
📍蔵前「ARC」
所在地:東京都台東区鳥越2‐3‐4
✍️藤原さんが気になっていたというカフェ

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