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ファッションにおける“大人の色気”とは何か 「マンド」デザイナー 高巣満導が語る服作りの美学

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高巣満導

Image by: FASHIONSNAP/mando

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高巣満導

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 デザイナー 高巣満導が手掛ける「マンド(mando)」が、デビュー30周年の節目を控えた2026年秋冬シーズンにリブランディングする。テーラードばかりにスポットライトが当たっていた現状をリセットする目的で実施し、従来よりもカジュアルな見え方にシフトしていくが、ブランドの根底にある服作りの美学は変わらない。

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 共通するキーワードは“色気”だ。スーツがファッションアイテムとして着用された1970〜80年代に青春時代を過ごし、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の服に感銘を受けてファッション業界に足を踏み入れたという高巣は、どんな服に色気を感じ、どう提案していくのか。自身が磨き上げてきたスーツスタイルへの思いや、リブランディングの先に見据える野望と合わせて聞いた。

“おじさん”ではなく“大人”に向けてファッションを提案

──2026年秋冬コレクションでリブランディング。経緯を教えてください。

 自分自身とブランドをリセットしたいと思ったんです。20年以上ブランドを続けていると、始めたての頃と今で世の情勢もファッションも随分と変わりました。お客さんが何を求めているのか、いかにして自分を表現していくべきかを1年くらいかけて考えた結果、この辺りで一度クリアな状態に戻して再スタートするべきだなと思ったんです。今まで載せてきたInstagramの投稿も全部消しました。初心に返って一からマンドの世界観を組み立てていきます。

──コレクションを拝見すると、従来のマンドのクリエイションと比べて、ややカジュアルな印象を受けました。

 見せ方は以前よりもカジュアルになっていますね。もちろんテーラードを評価いただいていることは非常に有難いんですが、あまりにそのブランドイメージが先行して、テーラードスタイルに特化したお店でばかり取り扱われるようになってしまって。それだけじゃないんだぞと。テーラードはマンドというブランドの表情の一つであり、エレガントなカジュアルスタイルの顔もあるんだよということをアピールしていきたいと考えています。そして、そのためにはブランドの思想を理解してくれるカメラマンさんやスタイリストさんと一緒にコレクションを作り上げていくことが不可欠だったんです。

mando 2026年秋冬コレクション

──今回、約5年ぶりとなるルック撮影のスタイリングには二村毅さんを迎えたんですよね。

 やはりマンド自体が若い人向けというよりは大人をターゲットにしたブランドではあるので、スタイリングもやはりキャリアのある方の方がハマるかなと。電話してみたら一発OKをいただいて、ご一緒することになりました。

──一緒に仕事してみて感じたことは?

 仕事に対して、本当に真剣なんです。フィッティングでは夜中までああでもないこうでもないとやってくれたし、「満導さん、これでどう?」と私の意見も聞いてくれる。こういうスタンスの方は珍しいですよ。スタイリストにはそれぞれ世界観があり、自分主導でやっていくというタイプが多い。そんな姿を見て「ああ、信頼される理由が分かるな」と。意見を聞かれたからには私も真剣に打ち返して、時には考えが違ってぶつかり合うこともあったんですが、一緒にコレクションを作り上げていく中で打ち解けて、結果的に素晴らしいルックを完成させることができました。

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mando 2026年秋冬コレクション

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mando 2026年秋冬コレクション

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──リブランディングを経て、ブランドのターゲット層に変化はありますか?

 一度話は逸れますが、身の上話をします。私がファッション業界に入ったのは10代の頃。「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」の服に出会い、衝撃を受けたことがきっかけでした。当時日本ではメンズを取り扱っているお店が少なかったんですが、六本木にメンズを販売しているアルファ・キュービックという素敵なお店があって、運よくその会社に入ることができ、更に買い付けにまで行かせてもらえるようになりました。初めての時はドキドキしながら会場に行ったんですが、全部で50型くらいある商品をモデルが一点一点着用して見せてくれるんです。どれも本当に素敵で選びきれず、相当数注文してしまって帰ってからこっぴどく怒られました(笑)。何が言いたいかというと、私のクリエイションの原点はイヴ・サンローラン。あの時全身に受けたエレガントな“大人の色気”が染みつき、忘れられずにここまで生きているんです。

 時代は変わって世の中はカジュアル化が進み、今の東京の若手デザイナーは面白い服をたくさん作って世界に挑戦しています。もちろんそれは本当に素晴らしいことですが、マンドが同じフィールドで戦う必要はないなと。日本国内を見てみると、大人をターゲットにしたエレガントなブランドってなかなか見えてこない。やっぱりファッション業界のメイン顧客は若年層なんでしょうね。10〜20代の人はある程度ファッションにお金を使えますが、年齢を重ねると家庭を持ったりして自分のために使えるお金が限られてきてしまう。だからどんどん“おじさん化”が進むんです。マンドでは“おじさんスタイル”をやるつもりは全くなくて、「大人の色気」をまとった服を提案していきたいですね。

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「mando」デザイナー 高巣満導

──「大人の男性」と「おじさん」の違いとはなんだと思いますか?

 “色気”があるかどうか。色気というのは感覚的な言葉ですが、ここでは「この人、大人で素敵だな。品があって憧れるな」という感覚を抱かせることだと定義します。もちろん20代でも60代でも色気のある大人はいるので、そういった全ての人をターゲットにしたいですね。行き過ぎたデザインやカジュアルさはターゲット層の方々には敬遠されてしまうと思うので、基本的にはやらない方針です。アイテム構成などは今季(2026年秋冬シーズン)の反応を見ながら考えていきます。

“色気”のある服とは?

──増やしていきたいアイテムなどはありますか?

 今後はカットソーを増やしていきたいです。カットソーって横編みのセーターなどと比べると、すごく日常的な、下手したら部屋着的なアイテムに見られがちですよね。でも、カットソーってすごく魅力的だと思うんですよ。良さは、パターンを使って形を作り込めること。ニットではなかなかこうはいきません。私は、ファッション業界におけるカットソーのプレステージをセーターと同格くらいまで引き上げたいと考えています。Tシャツだけでなく、色々な表現を通してカットソーの魅力を表現していきたいですね。

mando アトリエ

──マンド=テーラードのイメージもありますが、カジュアルな見せ方になる中でジャケットの型数は?

 型数自体はあまり変わらないと思います。ジャケットにはクラシックな作りのものと、芯を外してカジュアルに着られるものがありますが、現代では後者が圧倒的に人気です。数十年前は仕事にはかっちりしたスーツで行くのが当たり前でしたが、今はクリエイティブな職種以外でも服装の規制が緩くなり、“オフィスカジュアル”という言葉も定着しました。マンドでもリラックス仕様のジャケットの構成比は今後さらに高まっていくと思います。

 でも、いくら世の中でクラシックなスーツ離れが進もうと、世の中には古き良き王道のスーツを好む人々が一定数います。特にマンドにはそうしたアイテムに期待をかけてくださるファンの方が多いので、今後もニーズがある限り続けていきます。この秋冬には、ユナイテッドアローズさんとの企画で、ヴィンテージライクなオリジナル生地を用いたコンケープドショルダーの別注スーツを製作中です。

mando アトリエ

ユナイテッドアローズ別注で製作中のコンケープショルダージャケット

──服に色気をまとわせるために具体的に必要なことは?

 素材はかなり重要です。例えば、ベルベットといった毛足の長い生地は色気を演出しやすいと思います。元々はウィメンズウェアに使われることが多かったですが、イヴ・サンローランがメンズウェアに好んで取り入れていたんです。これがすごく素敵だなと思いマンドでも採用したところヒットにつながりました。

──造形の部分で、色気のあるパターンというのはありますか?

 テーラードジャケットでいえば二枚袖ですね。人間の腕は自然な状態でも前に少し曲がっているから、その曲線に合わせて2枚のパーツを組み合わせて立体的に構築した方が腕にフィットしたシルエットになるんです。やはりスーツは立ち姿が綺麗に見えてなんぼですから、私は一枚袖よりも二枚袖を好んで使っています。

mando 2026年秋冬コレクション

2026年秋冬コレクションにも二枚袖のディテールは取り入れられている

 造形の部分とは少し離れますが、アメリカのトラディショナル、俗に言う“アメトラ”ってあるじゃないですか。私はあれには色気を感じないんですよ。服としては非常に良いとは思いますが、私の目指す服ではない。服自体の見え方から着こなしまで硬くてしっかりしているブリティッシュトラッドの方が私の理想に近いです。やはりメンズウェアの原点は1900年代初頭のイギリス貴族の装いから来ていますから。2026年秋冬コレクションはブリティッシュトラッドをベースに、イタリアンな遊び心と伊達男感を融合させた「イタリア人が古き良きイギリスを愛す」というイメージで製作しています。

──イタリアンな要素を加えた狙いは?

 1972年発行の「メンズクラブ(MEN’S CLUB)」に載っている当時のイタリア・ローマのストリートスナップを見ると、服の形が今と全く違うことに気づきますが、私はテーラーが好きな人はまたこの時の形に回帰するんじゃないかと思って見ています。今ストリートにフレアパンツが増えているのもこの流れかなと。今回のコレクションはこの服装を100%再現しようということではなく、イメージソースとして活用し、あくまで現代のテーラードとして提案する試みです。

──今のファッション業界を見ると、日本で“大人の色気”といったコンセプトを打ち出しているブランドは少ないですよね。 

 少ないですね。円安でインポートの価格がどんどん上がっていることを考えると、国内でこうした服作りをするブランドにはチャンスがあるのではないかと思います。

mando 2026年秋冬コレクション

──円安を考えるとまた海外に出ていくというのも選択肢の一つになりそうです。

 可能性としては十分あり得ます。ただ、以前ヨーロッパに持っていったときは日本で販売しているパターンで単純にサイズだけ大きくして展開したんですが、上手くいきませんでした。欧州の人は背幅があって上半身が逆三角形なので、パターンをローカライズしないと綺麗に着られなかったんです。アメリカはもっと多人種なので、少なくとも6パターンくらいは必要になる。そうすると相当費用もかかるので、海外でビジネスをするのはその辺りをしっかり準備して、課題がクリアになったらでしょうね。

目指すは“日本をよりお洒落にする”こと

──昨今、メンズ・ウィメンズともにタイトシルエット回帰の流れが見られます。

 テーラードをやっている身からすると、こういった流れは喜ばしいことですね。トレンドは巡ると言いますから、ここしばらくオーバーシルエットでカジュアルなものが流行っていたので自然なことかもしれません。しかし、現代人はゆったりとした服装に慣れきってしまったので、いくらトレンドがタイトだと言ってもみんながみんなそうなるのは難しいでしょうね。でも、変にこれに逆らう必要はないと思っています。大きい服は大きい服でいいですから。

──ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」も勢いがありますし、ストリートにスーツスタイルが増えてくるかもしれませんね。

 私が若い頃(1970〜80年代)は、みんなファッションとしてスーツを着ていたんですよ。でも、2000年代に入って、スーツは“仕事着”になった。それまでスーツを私服で着ていた人も時代の流れで「なんか気分と違うな」とスーツから離れてしまったんです。それから、私はテーラードを仕事服ではなく、ファッションアイテムとして捉えてほしくてずっとブランドをやってきました。ジャケットの中は必ずしもクラシックシャツである必要はなく柄シャツを合わせてもいいし、カットソーだっていい。足元も革靴じゃなくスニーカーでもいいんです。各々の好きな形で楽しんでもらいたいですね。

mando 2026年秋冬コレクション

Image by: mando

──リブランディングの先にマンドが目指すものは?

 大袈裟な言い方かもしれませんが、「日本をよりお洒落にするのに一役買いたい」と思っています。マンドの顧客のボリューム層である30〜50代の男性は精神的に自立していて、感性も豊かな人が多い。もちろんファッションにも関心があります。でも、目指したいと思えるような世界観を打ち出しているお店やブランドが多くないから、美的感覚が自分たちが若い頃のままアップデートできずにいるんです。市場にポテンシャルがないかといえば決してそんなことはないと思う。現代の感性を取り入れたレファレンスになるようなイメージを提案することができたら、きっと多くの人が喜んでくれるだろうし、それが私の役目かなと考えています。

──“ファッション大国”という言葉があるように、日本人はファッションへの熱量が高いというのはよく言われますよね。

 特に若い人のファッションへの熱量には驚かされますね。2019年に渋谷パルコがオープンしたとき、開店に合わせて並んだらほとんどが10代20代で、みんなとてもお洒落だったんですよ。てっきりもう若い人はファストファッションに満足して、ファッションとは違った世界に興味が向いていると思っていたから感激しました。だから同じように、ファッション熱が燻っている中高年層も必ずいると思うんです。“ファッション大国”という呼び名が過去のものにならないように、同じ志を持つお店さんに向けて良い提案を続けていきたいです。

人物

村田太一

Taichi Murata

群馬県出身。男子校時代の恩師の影響で大学では教員免許を取得するも、ファッション業界への憧れを捨てきれず上京。2021年にレコオーランドに入社。主にビジネスとメンズファッションの領域で記事執筆を担当する。幼少期、地元の少年野球チームで柄にもなくキャプテンを任せられた経歴を持ち、今もプロ野球やWBCを現地観戦するほどの野球ファン。実家が伊香保温泉の近くという縁から、温泉巡りが趣味。

最終更新日:

■mando:Instagram

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