映像作家 山田智和
Image by: FASHIONSNAP.COM

Art インタビュー・対談

【インタビュー】"街の感情"を映し出す新進気鋭の映像作家 山田智和のこれから

映像作家 山田智和
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 映像作家・山田智和。眩いネオンの都市描写やランドスケープの映像美で人々の琴線に触れる作品を世に送り出している。米津玄師など日本の音楽シーンを牽引するアイコンたちのMVを制作し、一躍注目を集めた山田が"次のフェーズ"として取り組むのが、自分のための作品作りだ。初の個展開催にあたり、想いを馳せる街・東京や、エポックメーキングなMV「Lemon」にまつわるエピソード、ファッションと映像の可能性などを聞いた。

―映像作家としてのスタートは?

 映画やアニメが好きで、高校生の頃から写真やビデオを撮りはじめました。大学で映像を学んで、卒業してからも自主制作などで作品を作っていく中で、ミュージックビデオの映像制作などで声をかけていただく機会が増えていきました。

―自身を客観的に見てどんな映像作家だと捉えていますか?

 街と人を撮ることが好きなので、特に慣れ親しんだ街をモチーフに生み出す作品が多いですね。その方がストーリーが自然と浮かんだり、気持ちが高揚するので舞台になることが多いです。いわゆる"街の感情"や東京を捉えることが一つの特徴だと思っています。

―今回の自身初の個展「都市の記憶」でも東京で撮影を行なっています。東京とはどんな場所ですか?

 世界中で一番好きな街です。中でも自分が生まれ育った新宿が好きで、自分が素直でいられる場所だと感じるんです。例えば、渋谷だったら渋谷にあるブランドが似合う自分でいたいとか、秋葉原だったら街のカルチャーを知っていたいという気持ちがあって、街に合わせてアイデンティティーを求めて行く感覚がある中で、新宿は器が圧倒的に広いと感じていて、人を選ばないし拒まないから素の自分でいていい気がするんです。肯定感に溢れている街というか。

―海外での撮影の機会も増えてきたと思いますが。

 今回の個展の作品もモンゴルやアイスランド、上海など海外で撮影したものも含まれていますが、東京というベースがあるからこそ他の場所でも自分が保たれているような気がします。東京が好きで、この街を愛してるから海外で見るものや景色が新鮮に見えたり、美しいと感じたりするような気がするんです。

モンゴルで撮影した作品

―写真と映像の表現のそれぞれの魅力は?

 あまり両者を分けては考えていないですね。一眼レフで動画を撮り始めた世代なので、機材を持ち替えなくてもスイッチ一つで切り替わる。あくまで映像の延長線上に写真があるという感じです。

―昨年は米津玄師さんをはじめ、多くのアーティストのMVが話題を呼びました。反響は?

 ありがたいことに最近取材を受けると、"米津玄師の〜" とか"あいみょんの〜"と説明されることが多いんです。それが今の自分の立ち位置で、現状として受け止めています。そのおかげで声を掛けてもらうこともたくさんありますが、これから本当の意味でクリエイターとしての資質を問われてくると思っているので、自分のために作った作品で評価されることが次のフェーズです。

―「Lemon」のMVは1対1のアスペクト比で作られた映像ですね。見せ方のアイデアを考えるのも映像作家の役目なのでしょうか。

 そうですね。映像を作る身として、オリジナリティを作品に持たせる事を考えていると、どうしてiPhoneが縦長で、テレビが横長なのか、といった当たり前のことを疑問に思うところから始まったりするんです。

 なぜこの作品を1:1にしたかというと、正方形という形はデバイスや作品を映すメディアが変わったとしても「時代に左右されない」と思ったから。MVを制作している段階ですでに「この曲は長く聞かれる曲になるだろうな」ということはわかっていたので、時代によって見え方が変わらないことが大事なような気がしていたんです。

―

正方形の映像がテレビやPC画面など横長の長方形の枠から映し出されると、余白が両端に現れますよね。この黒の余白が作品に引き込まれる視覚的なトリックのようにも感じました。

 面白いですね。確かに映す範囲を狭めることで情報が制限されるので、余白がなにかしらの意味を持つ、というのも一つの受け手の捉え方ですよね。多様な解釈を持つものが好きなので、見る人によって感じるポイントが違う方が作り手としては嬉しいし、やりがいを感じます。

 でも一方で「人の心を動かしたい」と思って常に映像制作に向き合っているので、全てを見る側に委ねるのではなく、信念やテーマは軸に持ちつつ、色々と感じてもらえるのが理想です。

―今は誰もが映像や写真を撮影して発信できる時代です。その中で映像作家に求められることや、プロフェッショナルだからこそ提供できる価値とはどういったことなのでしょう。

 人の心を動かすものって時代が変わっても普遍的な気がしているんです。例えば、一眼レフや写ルンです、iPhoneなど、撮影する機材やツールは変わりますよね。でもそこに存在した景色や人、思いというのは変わらない。時代が変化していく中で、「変わらないもの」を僕なりの視点や感覚で作品の中に提示すること、それが求められて作品で表現できるといいなと思います。

―例えばファッション分野における映像表現は、まだ進化の余地がありそうです。服は本来、立体的で動きのあるものですが、平面的
に伝えられることが主流です。映像作家として新しい見せ方のアイデアなどありますか?

 従来の雑誌のように平面で行われていることを動画でやってもいいと思います。
今「フィガロ」で連載をやらせてもらっているんですが、僕と俳優の村上虹郎さんでイメージを作って、誌面ではそれに合わせて又吉直樹さんなど文筆家の方に文章を書いてもらっているんです。一方、ウェブではアザーカットや動画を公開しています。動画では音楽家に頼んで曲をつけてもらったり。一つのヴィジュアルを多面的に発信するという試みですが、周りの反響もとても良いです。

 動画って一人で完結しないのが面白くて。巻き込んでいく人数が増えていくと一人では作ることができない良さがあるので、それをファッションの世界に当てはめると何か面白いことやものが生まれる気がしますね。
今までのファッションのコンテンツにはない新しい見せ方が映像なら実現できそうですし見せ方の可能性を大いに秘めていると思います。

―次のフェーズに向かう個展の他にも、様々なプロジェクトが控えているようですね。  

 僕も尊敬する森山大道さんのアートプロジェクト「SHIBUYA/森山大道/NEXT GEN」で映像を作りました。渋谷の再開発地区で記録した映像を、渋谷駅地下の構内で多面スクリーンで上映し、今の渋谷の姿から未来を想像するという試みです。今、渋谷も面白いですよね。工事がいたるところで行われていて街全体に想像の余地がある。工事が完全に終わってしまったら見ることのできない渋谷が今あるので、その姿を収めておきたいと思ったんです。

 今はとにかくやりたいことが溜まっています。MVやドラマ、映画だったりと、フォーマットはなんでもよくて。映像のための映像を作っていきたいです。

(聞き手:今井 祐衣)

山田智和
 1987年東京生まれ。日本大学芸術学部映画学科映像コース卒業後、SUNTORY、GMOクリック証券のコマーシャルやブランド広告をはじめ、サカナクション、米津玄師、Chara、水曜日のカンパネラ、KID FRESINO、あいみょんなどのミュージックビデオを手掛ける。昨年大ヒットした米津玄師の楽曲「Lemon」のミュージックビデオも担当。7月31日から自身初の個展「都市の記憶」が伊勢丹新宿店メンズ館でスタートするほか、8月2日から写真家 森山大道を起点とした都市型のアート共創プロジェクト 「SHIBUYA / 森山大道 / NEXT GEN」にも参加する。

■ 山田智和 個展「都市の記憶」
会期:2019年7月31日(水)〜 8月20日(火)10:00〜20:00
場所:伊勢丹新宿店メンズ館2階=メンズクリエーターズ内アートアップ

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