ADVERTISING

二大巨頭ブランドの周年モデルが大きな話題に──ウォッチズ&ワンダーズ取材記 vol.2

山本晃弘

 スイス・ジュネーブで開催された「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026」の会場を歩いていて、これほど“時間”そのものに思いを馳せた年はありませんでした。新しい素材、新しいムーブメント、新しいデザイン。この巨大な時計見本市では、毎年“次の時代”を感じさせる新作が登場します。そんな中で、2026年のジュネーブで圧倒的な注目を集めていたのは、未来ではなく、むしろしっかりと過去と向き合うモデルでした。それも時計業界の頂点に君臨する二大ブランド、「ロレックス(ROLEX)」と「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」によるアニバーサリーモデルです。

ADVERTISING

 ロレックスは「オイスター」誕生100周年。パテック フィリップは「ノーチラス」誕生50周年。

 数字として100年、50年というだけではなく、積み重ねてきた時間そのものが価値として立ち上がります。現地で実機を前にした瞬間、その意味の大きさが自然と胸に刺さりました。今年のウォッチズ&ワンダーズは“歴史の重み”が主役の年となったのです。

本格的な防水機能は、100年前にロレックスがつくった

 会場でもっとも多くの来場者を集めていたブランドがロレックスです。ブースの中央には、巨大なオイスターケースのインスタレーション。壁面には、歴代のアイコニックなアーカイヴ。今年の中心テーマが何かということが、ブースに足を踏み入れた瞬間に分かります。

 1926年に生まれた「オイスター」は、世界初の本格防水腕時計です。ねじ込み式リューズと密閉ケースにより、腕時計は“慎重に扱う装飾品”から“日常に寄り添う道具”へと変わりました。

 ロレックスが拓いたこの技術は、腕時計が「生活の中で時間を使う」文化へと進化する原点となったのです。

 その100周年を記念して発表された新作は、単なる復刻ではありません。

 クラシックなラウンドケース、端正なバーインデックス、無駄のない3針レイアウト。基本的なデザインはオイスター パーペチュアルそのものですが、ケースのエッジがこれまで以上にシャープになり、ブレスレットとの一体感も滑らかになりました。文字盤には100周年を記念した特別なモチーフが控えめにあしらわれ、裏蓋から覗くローターにもアニバーサリーイヤーが刻まれています。

ロレックス「オイスター パーペチュアル 41」

 派手さはありません。むしろ驚くほど静かなアップデートです。これこそがロレックスらしさと言えるでしょう。大きく変えるのではなく、誰もが知っている完成形を、誰にも気づかれないほどの微細な進化を積み重ねる。その姿勢が、このブランドの強さなのです。

 日本からジュネーブを訪れているリテイラーのバイヤーは、「発表前からお客様の問い合わせが多かった」と話します。そうした期待感は、日本に限ったことではありません。欧米でもアジアでも、ロレックスほど認知度の高い腕時計ブランドは他にありません。

 いつの時代でも、世界中のどこでも、価値が認められている。これこそが、ロレックスが最強のブランドである証明と言っていいでしょう。

ロレックス「オイスター パーペチュアル 41」

自動巻き(Cal.3230)、2万8800振動/時、パワーリザーブ約70時間、ケース径41ミリ、SS×18KYG。100メートル防水。142万8900円(予定価格・今春発売予定)。

パテック フィリップが生んだラグジュアリースポーツ腕時計の傑作

 腕時計の最高峰とも言われるパテック フィリップの新作取材は、毎年いくぶんかの緊張を伴います。そして、今年はまた違う意味で、取材するプレス陣に静かな熱気がありました。

 その理由は、明快。事前に伝わっていた「ノーチラス」誕生50周年の発表です。

 1976年、デザイナーのジェラルド・ジェンタが手掛けた「ノーチラス」は、ドレスウォッチが中心だった高級時計の世界に、“ラグジュアリースポーツ”という新しい価値観をもたらしました。舷窓から着想を得た八角形のベゼル、一体型ブレスレット、薄型ケース。そのデザインは半世紀を経ても古びることなく、むしろ普遍性を増しています。

 パテック フィリップ社長ティエリー・スターン氏も、「20歳のとき、最初のパテック フィリップとしてノーチラスを選んだ」と語っています。まさに、世代を超えて価値観を受け継いでいく腕時計なのです。

パテック フィリップ「ノーチラス Ref.5810/1G」

 今回の50周年モデルのデザインも、従来からの「ノーチラス」を踏襲しています。ケースのフォルム、文字盤の横ストライプ、スポーティさと滑らかさが両立したブレスレット。

 しかし、実機を手にした瞬間、違いがはっきりと分かります。ケースのポリッシュはさらに滑らかに、エッジは一段と凛とし、文字盤の光の反射は深みを増しました。ブレスレットの仕上げも細部まで磨き込まれ、全体の完成度が一段上の次元に達しています。

 “何も変えていないようで、すべてが進化している”。パテック フィリップが周年モデルで示したのは、新しさではなく完成度でした。

 数年前、ジュネーブ市内にあるパテック フィリップのミュージアムを訪れたことがあります。約2500点ものアーカイヴが展示されているのを見て、「腕時計の歴史は、パテック フィリップが作ってきたといっても過言ではない」と感じたのを思い出します。

 50周年を記念して作られた今年のノーチラスは、次の50年の基準となるでしょう。

パテック フィリップ「ノーチラス Ref.5810/1G」

自動巻き(Cal.240)、2万1600振動/時、パワーリザーブ約48時間、ケース径41ミリ(10-4時位置)、18KWG。30メートル防水。1526万円。世界限定2000本。

ヤマモトの見立て

icon

今年のウォッチズ&ワンダーズでは、複雑機構を搭載した超高額モデルも多く登場しました。また、新素材や新ムーブメントをアピールするブランドも少なくありませんでした。それでも、会場の中心で最後まで人が絶えなかったのは、この2大ブランドの周年モデルです。

100年続く技術。50年愛され続けるデザイン。

時計は時を刻む道具であると同時に、積み重ねた時間を語る存在でもあります。2026年のジュネーブで、ロレックスとパテック フィリップがその本質を雄弁に示してくれたのです。

会場写真©2026 Watches and Wonders Geneva Foundation
※腕時計は未入荷や売り切れの場合もあります。また、為替レートなどの影響で価格が改訂されることがあります。

最終更新日:

会場写真©2026 Watches and Wonders Geneva Foundation
※腕時計は未入荷や売り切れの場合もあります。また、為替レートなどの影響で価格が改訂されることがあります。

「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026」取材記

服飾ジャーナリスト / AERA STYLE MAGAZINE WEB編集長 兼 エグゼクティブエディター

山本晃弘

Teruhiro Yamamoto

「メンズクラブ」で編集者のキャリアをスタートしたのち、「ELLE a table(現ELLE gourmet)」「GQ JAPAN」「アエラスタイルマガジン」の3誌を創刊。2019年にヤマモトカンパニーを設立し、新聞、雑誌、WEBでファッションや腕時計について執筆する傍ら、ブランドの広告制作やコンサルティングを行っている。スイス現地での時計展示会やファクトリー取材は、20年以上にわたる。

ビジネスマンや就活生に着こなしを指南する「服育」アドバイザーとして、また、郷里である岡山のRSK山陽放送でラジオパーソナリティとしても活動中。著書に「仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。」がある。

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント