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【コラム】メゾンデザイナーの悲鳴 スケジュールの過密さがファッションを崩壊させる?

 先週のラフ・シモンズ(Raf Simons)「ディオール(Dior)」クリエイティブ・ディレクター職退任のニュースに引き続き、昨夜「ランバン(LANVIN)」に14年在籍したアルベール・エルバス(Alber Elbaz)がブランドからの離脱を発表し、ファッション業界に衝撃を与えている。有名メゾンで人気を博した2人のデザイナーが退任に至った原因として取り沙汰されるのは"ファッションスケジュールの過密さ"だ。

 両者はそれぞれ声明を発表し、ラフ・シモンズは「個人的な理由」でブランド側と契約更新の合意に至らなかったことを、アルベール・エルバスは退任について「会社の筆頭株主の決定」によるものとそれぞれ述べている。表向きはそれぞれ異なる理由だが、複数のファッションジャーナリストは、根源的な原因として「ファッションシステムにおけるスケジュールの過密さ」を挙げている。


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2014年12月に東京・両国国技館で行われたEsprit Dior TOKYO 2015 コレクション


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去年銀座で開催された展覧会「エスプリ ディオールーディオールの世界」


 ファッションジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)はラフの退任後、英ヴォーグのウェブ版に「Why Fashion is Crashing(なぜファッションは崩壊していくのか)」と題した記事を寄稿。メンケスによると、ラフはオートクチュール、プレタポルテ、クルーズ、リゾートと年間計6つのコレクションに加え、キャンペーン広告、店舗オープン、各都市への訪問、トランクショー、展覧会、インタビュー対応などで分刻みのスケジュールをこなしていたという。「バイヤーやエディターにとってもスケジュールとの戦いは常にあり、それは小売も同様。"ファストファッション"といえばH&Mやユニクロだけに当てはまると思ったらそれは間違い」とファッション産業全体がファッションの年間スケジュールによる重圧を受けている現状を指摘した。「影響を一番受けるのがデザイナーを含むクリエイター達。ラフは英断を下したが、誰かが引き継がなくてはいけない。次は誰が"ライオンの洞穴"に放り投げられることになるだろう」と悲観的な文章で締めくくっている。


 
 一方で、アルベール・エルバスは退任の直前、22日に公の場で17分に及ぶスピーチを披露。今日のファッション業界の現状について持論を展開していた。「もう少し時間が必要。これはファッションに携わる全ての人に言えること。エディター達はパリコレ中に会場を駆け巡り、タクシーの中でりんご片手にショーのレビューを書く。ショーの観客はムービーを撮るため両手がふさがり、拍手も出来ない」と昨今のコレクション期間中において日常化した風景について述べ、自身の仕事に関しても「クチュリエとして服を生み出す夢を持ってこの仕事を始めた。女性が服に求めることを必死になって考えていたが、今では"クリエイティブ・ディレクター"として主にディレクションが仕事。イメージメーカーとしてバズを生み出すことが重要視される」とデザイナーの役割の変化についても言及していた。

 
 すでに決まっているスケジュールとの戦いは全てのデザイナーにとって"宿命"だが、SNSをはじめファッションを取り巻く環境はここ数年で劇的に変化し、ファッションのスピードは日に日に加速している。「The CUT」のジャーナリストVéronique Hylandが「スケジュールの過密さがデザイナーの想像力を殺してしまう」と警鐘を鳴らしているように、ファッション界は、年間に発表されるコレクションの回数をはじめとするスケジュールの構成やデザイナー1人への過重な負担など、深刻化する問題への打開策を模索する局面を迎えているのかもしれない。