「いまこの人の話が聞きたい」IFF MAGICセミナーがもっと面白くなるここだけの話

 9月26日から28日までの3日間、東京ビッグサイトで開催される世界最大規模のファッション展「IFF MAGIC Japan」。前回注目を集めた海外バイヤーらのセミナーに引き続き、今回も期間中は毎日、業界を牽引する企業やオピニオンリーダーがセミナーに登壇する。「他では聞けない面白い話が聞ける」と質の高い内容が期待できる15のセミナーの中から、気になる3つのトピックスに注目。当日はどういった内容を話す予定なのか?登壇者たちに聞く、セミナーがもっと面白くなるここだけの話。

「インディテックス(ZARA)に死角なし」
             -ファッション流通コンサルタント齊藤孝浩

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ディマンドワークス代表 齊藤孝浩氏
1965年、東京都出身。グローバルなアパレル商品調達からローカルな店舗運営までファッション業界で豊富な実務経験をもつファッション流通コンサルタント。実務で在庫過多に苦労した実体験をバネにファッション専門店の在庫最適化のノウハウを体系化。著書に「人気店はバーゲンセールに頼らない」(中公新書ラクレ)「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞社)がある。

9月26日15:30〜16:30
「グローバルマーケットでひとり勝ち、世界一のアパレルチェーン、インディテックス(ZARA)は今どんなことに取り組んでいるのか?」
グローバルに拡大し続けるZARAの強さを整理し、EC戦略からサステナビリティまでインディテックスの最新の取り組みについて語る。

ー斎藤さんから見てSPA企業は今、どういった段階なのでしょうか?

 1998年にユニクロのフリースブームが始まり、10年後の2008年に「H&M」が日本に上陸しました。翌年2009年には「フォーエバー21(FOREVER21)」が入ってきて、ファストファッションという言葉が流行語になりました。このように、ファッションにおける流通革新は約10年周期で新しい局面を迎えています。H&Mの上陸からもうすぐ10年になりますが、日本ではここ数年で外資ファッションチェーンの影響力とファストファッションという言葉や消費が完全に定着し、僕は今、次の動きが出始めているところだと思っています。

ーなぜ、インディテックス(ZARA)に注目するのでしょうか?

 世界アパレル専門店売上ランキングトップ10上位はずっとインディテックス(ZARA)、H&M、Gap、ファーストリテイリング(ユニクロ)で、一昨年くらいまではどこも伸びていましたが、最近は減益傾向にありました。ローコストのアジアで生産し先進国で売るグローバル資本主義的なビジネスモデルに限界が見え始めたというか。一方、インディテックスはコストが多少高くても拠点スペインの近隣国で生産し世界中に売るという逆パターンで売上、利益ともに一定の割合で伸ばし続けていて、その差が2016年の決算ではっきりと表れました。決算の数字を見てもZARAの一人勝ちじゃないかと感じています。

【関連記事】グローバル資本主義的なビジネスモデルに陰り?世界アパレル専門店売上ランキングトップ10発表

ーインディテックスのビジネスモデルだと何故利益が上がるのでしょうか?

 特にファッションは天候やトレンドに大きく影響を受けますが、他社が2〜3カ月、場合によっては6カ月かけて商品を作っているのに対し、インディテックスは近隣国で作っているのでトレンド商品が1カ月以内に店頭に並びます。しかも市場の変化に対応して小ロット短サイクルで作り足したり、新作を投入できるので期末在庫を抑えられる。いかに在庫を0に近づけ、値下げをしないで済むかが利益に大きく関わってきますが、これに対応できているのがインディテックスの最大の強みなんです。またもう一つ言えば、Tシャツやジーンズなどベーシックなものはコストの安いアジアで、トレンド商品は近隣国で、という製造場所の使い分けが上手い。インディテックスのビジネスモデルこそ、アパレルSPAの究極のビジネスモデルだと思っています。

ー今後もインディテックスが勝ち続けるのでしょうか?

 「死角なし」じゃないでしょうか?今後10年は日本にもオムニチャネルの時代が訪れ、その次の10年はサステナビリティがキーワードになると予測しています。昨年、国連がSDGs(持続可能な開発目標)という2030年を達成期限とした17の目標を定めたのですが、ファーストリテイリングがその内4項目に取り組んでいるのに対し、2005年からサスティナビリティに注力してきたインディテックスは現段階で17項目全てに取り組んでいます。そういった姿勢は投資家に向けられたもので、H&Mやファーストリテイリングと売上の差はそんなにないですが、時価総額は3倍以上の差があるんですよ。先手先手でビジネスモデルを開拓する姿勢が評価されることで投資家から資金が集まり新しいビジネスとして還元する、そういう循環をインディテックスは作り始めているので、他社は簡単には追いつけないのではないでしょうか。

「小さな種が2年後のトレンドに影響を与える」
                        - WGSN 浅沼小優

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WGSN ストラテジック・チャネルパートナー ジャパン&コリア ディレクター 浅沼小優氏
立教大学大学院修了。積水ハウス勤務後、渡米。インテリア業界でVMDとバイイングに従事し、帰国後LVMHグループ、ロエベ、伊シューズブランドなどでMD、マーケティングを担当。2010年から現職。

9月27日16:00〜17:00
「【2018年秋冬】 シーズン解説 ~デザインヴィジョンとウィメンズ&メンズキールック~」
1年後の2018年秋冬商品企画の手掛かりとなる4つのデザインディレクション、コンシューマ、ファッションキーワード、カラー、素材、シルエット、ディテールなどを解説する。

ーWGSNについて、どんな活動をしている企業なのか教えてください。

 1998年からオンラインで法人向けにトレンド情報を発信している会社です。主に未来予測で、2年後から最近は5年後、10年後の話もしています。将来どのようにデザインが変わってくるのか、それにはどのような背景があるのかを案内しています。客層としては最初はファッション系企業が多かったのですが、最近はインテリアメーカーや家電メーカー、自動車メーカーまで幅広い企業に会員になって頂いています。アセンシャルの傘下で、カンヌ国際広告祭を主催しているカンヌライオンズは兄弟会社にあたります。

ー2018年春夏コレクションが発表される中、セミナーでは2018年秋冬のトレンドについて話されますね。どのようにしてトレンドを予測しているのでしょうか?

 トレンド予測はシーズン毎に年2回、ロンドンを拠点にしています。250〜300人の取材班が約20地域で常時動いていて、ストリートや展覧会、写真展、政治的なアクティビティも含め、どんな動きが各地域で起こっているのか報告しあいます。その時はまだトレンドになっていない本当に小さな種のようなものですが、それらが2年くらい先のデザイントレンドに影響を及ぼすということはこれまでの経験を通して分かってきています。その後コアメンバーが集まり、地域毎で表出の仕方は違うけど同じようなメッセージを持っているんじゃないかとか、それがデザイン業界にどんな影響を及ぼすことになるのかなどを分析します。

ー具体的にどういったことからトレンドは生まれているのでしょうか?

 例えば、2011年に「ジェンダーイクオリティ」を予測したのですが、当時、パスポートの性別に"どちらでもない"という表記ができたり、同性婚が州単位で認められたり、ジェンダーにまつわる法制度が各国で変化を見せていました。そこで私たちは今、ジェンダーに関する考え方が大きく変わる分岐点にいると考え「ラディカルニュートラリティ」というトレンドを発表しました。

 また、ディオール(Dior)が2017年春夏コレクションで「WE SHOULD ALL BE FEMINISTS(=みんなフェミニストであるべき)」とプリントされたTシャツを発表しましたが、フェミニズムについては2014年の段階で2016年のトレンドとして予測していました。その時は「第4のフェミニズム」と呼ばれるような流れがアート作品として現れていました。その手前にジェンダーイクオリティの下敷きがありましたし、またジェネレーションZの世代はジェンダーに囚われない親に育てられるケースもあり、今の大人のジェンダー感覚とは変わってきているので新しいフェミニズムの感覚が出てくるのは分かっていました。

ーこれからは、どのようなものがトレンドになると予測していますか?

 今だと、AIなどテクノロジーの発達が仕事の安定性にどう寄与するのかという話がありますよね。AIと仕事、一見ファッションからは遠い話に思えても実は直接関係のある話なんです。例えば、テクノロジーの発達によって自宅からテレビ会議で会社の会議に参加するとき、写りの良いメークアップは何か、また服装は家だからスーツは着ないとしてもソフト感のあるジャケットはどうだろうかとか、そういう話がファッション業界では出てくるでしょうね。

「変化が遅い業界が今、ドラスティックに変わっている」
                   -アダストリア取締役 福田泰己

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アダストリア・イノベーションラボ 日野太樹氏(左)
1986年生まれ。2011年にMBA取得後、大手VC・事業会社系VCのベンチャーキャピタリスト、スタートアップのCFOを経て、2017年9月よりアダストリア・イノベーションラボに参画。

アダストリア 取締役経営企画本部長 福田泰己氏(中央)
1978年生まれ。2004年The University of Findlay経営学修士課程修了。2005年ポイント(現アダストリア)に入社。店長、エリアマネジャーを経て経営企画部門において複数のM&A案件に参画。2014年からAdastria Asia社の代表取締役CEOとして海外事業を統括。2016年に帰任し、マーケティング・EC事業責任者を経て、2017年5月から現職。

アダストリア・イノベーションラボ ラボ長 高橋朗氏(右)
1980年生まれ。学生アルバイトとしてポイント(現アダストリア)入社。店長、EC担当、マーケティング部門を経て、経営統合を機にアダストリアホールディングス(現アダストリア)経営戦略部へ転籍。事業統合後、アダストリアでCRM部門の立ち上げを経験。一度退職後、2017年7月より復職し現職。

9月28日15:00〜16:00「アダストリアの新規事業とFashionTechへの取組み」
昨今、CtoCやサブスクリプション、人工知能やIoTなど新しいビジネスモデルやテクノロジーが出現していることを受け、アダストリアは「アダストリア・イノベーションラボ」を9月に設立。スタートアップ企業と新事業を開発し、また既存事業とのシナジーを生み出すはラボの活動方針について語る。


ーアダストリア・イノベーションラボを設立した背景と目的を教えてください。

福田氏:アパレルの業界はここ数年で大きく変わりつつあります。約4年前にメルカリ、3年前にはエアークローゼットが立ち上がるなど、CtoC市場がいよいよ活性化され、「ものを買わなくてもいい」という、物に対する価値観の変化がデジタルネイティブの世代を中心に起こってきていると感じています。一方、アマゾンが自社ブランドを立ち上げたり、グーグルがリーバイスと組んでウェアラブルを開発したりと大きな資本も参入し、今まで変化が遅かった業界が今、ドラスティックに変わってきています。その片鱗が見えつつある状況下で、僕らはまだアパレル業界の中では先頭集団を走っていると思っていますが、もしかするとその筋道が変わるんじゃないかと。待つのではなく、自分たちでそれを起こせるようなチームを作りたいというのがスタートでした。

ーどんなビジネスモデルを構想していますか?

高橋氏:具体的な事業についてはまさに検討を進めているところですが、お客様の買い方の変化には一番に対応しなくてはいけないと思っています。

福田氏:僕らは元々がアパレルの製造小売業なので、どうしても物を作って売ることに囚われがちですが、そのベースはありつつも売り方や買い方を変えたい。例えば一定の価格を出してものを買って所有して使い捨てにすることから解放できるような、アダストリアらしいエコシステムが作れないかなと思っています。サブスクリプションモデルやレンタルなど、可能性は全て否定せず、消費者の視点に立って僕らのノウハウを活用しながらお客さんの「不」を解消していきたいです。

ーお客さんの「不」とは具体的にどのようなものがありますか?

福田氏:極論ですが、1年分の服はクローゼットにもうあると思いますし、買わなくても生きていける。でも自分を変えたかったりしてファッションを買うんだと思いますが、買って失敗してしまうという「不」もありますよね。買わなくても生活できるものを売っている以上、選択肢に外れがないようにしてあげることも「不」の解消かなと。

ー最初のサービスはいつローンチされますか?

福田氏:検証しようと決めた案件は90日間でテストマーケティングまでいくというラボのルールがあります。3カ月でオペレーションの整備やリサーチの準備も含めて実施し、3カ月後以降にテストマーケティング、その6カ月先にベータ版をリリースする流れで考えています。いま検討しているものは7月から検討しているので、10月にはテストマーケティングをスタートします。うまくいけば来年5月頃にはリリースできると思いますし、市場とずれていたら次の施策に繋げていきます。

ーラボは、アダストリアが次のフェーズにいくために後押しするものに?

福田氏:僕たちの資産を解放する作業だと思っています。お客様により高いサービスや価値を提供したり、より深くお客様を知っていきたい。我々1社だけではなく、色々な知見を活用してファッションの未来を作っていきたいと思っています。