今年のお買い物を振り返る「2022年ベストバイ」。14人目は、「ゲスの極み乙女」「indigo la End」「ジェニーハイ」「ichikoro」など様々なバンドで活動するアーティスト 川谷絵音さん。2020年以来、2年ぶりに出演してくれました。不定期でプロダクトをリリースしていくクリエイティブ集団「レーテンシー(LATENCY™)」を立ち上げるなど、ますます活動の幅を広げる川谷さんが、今年買って良かったモノ9点。
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sacaiの刺繍入りニットジャケット
FASHIONSNAP(以下、F):川谷さんといえば「サカイ(sacai)」のイメージがあります。
川谷絵音(以下、川谷):毎シーズン欠かさず、展示会に伺っているブランドの一つですし、一番好きなブランドと言っても過言ではありません。そして、千登勢さんは一番会っている友人でもあります(笑)。友人でもありますが、それ以前に僕は千登勢さんのことを、クリエイターとして心から尊敬しているし本当にかっこいいな、と思っています。
F:前回のベストバイで挙げていただいたアウターは、デザイナーの阿部千登勢さんに「似合うよ」と勧められて購入した、と言っていましたが。
川谷:「私がお勧めすると『買わないと』みたいな圧がかかりそう」という理由で、最近は展示会に伺っても千登勢さんがいないんですよ。だからこのアイテムは自らの意志で選んだアイテムですね。
F:購入の決め手は?
川谷:自分の中で、毎年黒いジャケットをサカイで買うと決めていて。少し前にサカイと「アクロニウム(ACRONYM®)」のコラボコレクションで、ミリタリーテイストかつ、硬い生地感が特徴的なジャケットを買って気に入っていたんですけど、もう少しだけソフトな生地感でサッと羽織れるジャケットが欲しいな、と探していたんです。
川谷:ニット素材ではあるんですが、シルエットはどちらかといえば、スカジャンやスタジャンなどに近い。厚手のトップスの上からも羽織れることができます。
F:刺繍もワンポイントで素敵です。
川谷:シルエットはカジュアルなんですが、色味や刺繍が上品なデザインなので下にシャツを合わせたスタイリングも決まるんですよね。さっと着るだけで様になるので本当に重宝しています。
sacaiのシャーデー プリントTシャツ
川谷:本当にこれは、今年の夏に着倒しましたね。
F:たしか、小田原の江之浦測候所で行われた2021年春夏コレクションに登場したアイテムですよね?
川谷:そうなんですよ。なぜ、今年のベストバイに?と思いますよね。実は諸事情でかなり納期が遅れたらしく。今年の夏にようやく届きました。僕は、現場でショーを拝見したんですけど、このTシャツはほとんどメインアイテムのような立ち位置だったし、当時、千登勢さんがこのTシャツをよく着ていたんですよ。「いいなー、僕も絶対に欲しいな」と思っていたので即決でした。
F:インスタグラムで、これとは別のシャーデー(Sade)のTシャツを着用したコーデをフィード投稿されていた記憶があるのですが。
川谷:あれはヴィンテージTシャツですね。「グレイト(GR8)」の抽選販売に応募したら、運がいいことに当選したんです。
F:シャーデーにハマっているんですか?
川谷:言われてみればそうかもしれませんね。レコードも買っちゃったし(笑)。きっかけはやっぱり、サカイの2021年春夏コレクション。素晴らしいショーのメインミュージックで使われていたのがシャーデーの「Kiss of life」だったし、もちろんそれ以前も知っていましたが、ショー以降、更に好きになりました。
F:サカイ好きである川谷さんですが、他には何か購入されましたか?
川谷:村上隆さん率いるカイカイキキ所属のアーティストMADSAKIとのコラボレーションコレクションで、ピンク色のニットと黒のスウェットを買いました。
Rick Owensのラインワイドパンツ
川谷:毎シーズン、飽きることなく素材違いで購入するくらい「リック・オウエンス(Rick Owens)」(以下、リック)のパンツが大好きです。もう10本以上持っているんじゃないかな。
F:ずばりお気に入りポイントは?
川谷:とにかく楽なんです。僕、本当にずぼらで。ベルトを締めたり、紐を結んだりすることもできればしたくない(笑)。リックのこのパンツはベルトをつける必要もないし、ドローストリングもついていますがしっかりと腰の辺りでフィットするので、結ぶ必要がありません。
川谷:シルエットがとっても綺麗で、最近は本当にこのパンツばかり穿いていました。というのも、裾にかけてワイドに広がっているというのもあるんですが、サイドのラインに用いられている生地感に若干重量があるからか、パンツ全体が下に引っ張られて裾に布が溜まるんです。ジャージー生地でありながら、モードなシルエットを楽しむことができるので、楽さと綺麗さを両立したい僕にはぴったりなアイテムです。
F:たしかに、だいぶ裾丈が長そうですね。
川谷:これでもお直ししたんですよ。このパンツは17センチも詰めました(笑)。普通のスニーカーだと裾を引きずってしまうので、厚底ブーツや、「ナイキ(NIKE)」とサカイのコラボスニーカー「ヴェイパーワッフル(VaporWaffle)」などに合わせています。
F:前回はショルダーバッグを挙げられていましたが、リックの魅力は?
川谷:僕は、何かにこだわりがある人がすごい好きなんです。先日、リックが出演している、お部屋紹介の動画を見たんですが彼自身に強いこだわりがあることが見て取れて、また一段と好きになりました。妻であるミシェル・ラミーも、妥協をしない芯のある方でとっても魅力的だな、と。
F:たしかにこのラインパンツのように、定番アイテムをマイナーチェンジしながら販売し続けているのも、ある種「リック自身のこだわりの表れ」と言えるのかもしれませんね。
川谷:ルックが奇抜なので「リックの服は普段使いしにくい」と思われている人も多いのかもしれませんが、全然そんなことなくて。シンプルで着こなしやすいアイテムもたくさんあります。今年、リックでシンプルなTシャツを3枚くらい購入しましたし。中でもお気に入りは5分袖くらいで、ストラップが一本垂れ下がっているTシャツ。
F:ステージ衣装も自分で用意されているんですか?
川谷:フェスは基本的に自分で用意しています。
F:私服用と衣装用で服を分けたりしますか?
川谷:最近は、私服のままステージに立つことが増えましたね。単純に着慣れているので、演奏がしやすいんです。以前、益若つばさちゃんが編集長を務める雑誌「TOKYODOT」の取材で、つばさちゃんがindigo la Endの舞台袖にいたことがあったんですが、私服でメイクもせずヘアワックスもつけずにステージに上がった僕を見て「そんなことありえるの? 女子がすっぴんで舞台に上がるようなものでしょ?」と言われました(笑)。
UNDERCOVERのグレーニット
F:続いては「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のグレーニットです。
川谷:脇下にダーツのような役割を果たしているリブ編みが施されていて、ニットながらもトレーナーのようなシルエットになるんですよ。ウール素材なんですが、肉厚な生地感ですし遠目で見ると、ニットには見えないんじゃないかな。
F:以前「最近は黒ばかり着ている」とおっしゃっていましたが、こちらのアイテムはグレーカラーですね。
川谷:実は、このニットを買いに行った時も最初は黒いニットを買うつもりで入店したんです。でもどれもしっくりこなくって。「グレーとか、着たことがないな」と思いつつ、試着をしてみたら「意外といい感じに着れるじゃん」と(笑)。以来、グレーにハマっています。
F:何か心境の変化があったんですか?
川谷:もう少しだけいろんなモノを着たくなったんだと思います。気持ちの表れか、今年は赤や青、シルバーなどの色物をよく買った気がしますね。でも、昔のように「とにかくいろんなモノを着てみたい」という気持ちとは少し違って。自分の似合う・似合わないがよくわかるようになってきたので、「自分が似合う範疇」でまだ挑戦したことのないカラーリングやデザインを探して、手にとるようになりました。
F:最近は、ヘアカラーも明るい色を楽しんでいますよね。
川谷:もうかれこれ1年半くらい髪色で遊んでいますね。これはどちらかといえば、30代を迎えて「髪色を明るくできるラストチャンスかもしれないな」と思っちゃって。別に、これから先も染めたくなったら染めればいいんですけどね(笑)。
F:なんとなく川谷さんのイメージとして「東京のデザイナーズブランドはサカイ以外、手に取らないのかな?」と思っていました。
川谷:全然そんなことはないですよ。
F:最近気になっている国内ブランドはありますか?
川谷:「ベイシックス(BASICKS)」は、着心地が良いスウェットをよく着ています。先日も展示会にお邪魔したんですが、「クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)」の雰囲気を感じつつも、更にパワーアップしているな、と。
あとは「レリーフ」というジュエリーブランドも好きです。今日も人差し指に着用しているんですが、今年、ほとんど毎日かかさずにつけていましたね。石が大きいので、ギターを弾く時目立ってかっこいいんですよ。
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