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【対談】「バズ狙いではファッションは面白くならない」GR8久保光博×ゾゾヴィラ西巻拓自

左)ZOZOVILLA General Manager西巻拓自、右)GR8久保光博

IMAGE by: FASHIONSNAP

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【対談】「バズ狙いではファッションは面白くならない」GR8久保光博×ゾゾヴィラ西巻拓自

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 SNSの台頭でインフルエンサーを起用したデジタルマーケティングを駆使することが定石となったファッション業界。いわゆる「バズ」を狙った施策はグローバルで見ても一般化しているが、それではムーブメントや熱量は生み出されないと小売業の雄たちは異を唱える。別注もオリジナルブランドも展開しない異端のセレクトショップ「グレイト(GR8)」と、国内ファッションEC大手「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」内にあるラグジュアリー&デザイナーズゾーン「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」は、この度協業することで新たな"祭り"を生み出そうとしている。

 小売同士、いわゆるライバル関係にある両社はなぜ手を取り合い、コラボレーションプロジェクトを発足するに至ったのか。グレイトのオーナーである久保光博氏とゾゾヴィラの西巻拓自本部長に聞く、これからの小売業態に求められるものとは?

リボルバーで意気投合、協業に至った経緯

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グレイトとゾゾ、異色のコラボですがそもそも協業に至った理由というのは?

GR8久保光博(以下、久保):何か面白いことができるんじゃないかと、知人に紹介してもらったのがはじまりです。僕は愛媛から東京に出てきて「リボルバー(REVOLVER)」で働いていたんですが、西巻さんがちょうど僕がいた時のリボルバーの大ファンだと知って。リボルバーは青春時代そのもので、当時のコレクションを西巻さんが着ているのを見てとても懐かしい気持ちになったんです。ゾゾはファッション最大手ですから、オフィスには結構気構えて行ったんですけど、リボルバーのことで自分の心はすっかりオープンになりましたね(笑)。ただ今のグレイトとゾゾヴィラさんで何ができるかは、打ち合わせ当初全く察しがつかなくて、長らく何ができるかと話をしてきたんです。

ゾゾヴィラ西巻拓自(以下、西巻):ゾゾタウンは会社の成長に伴い、「ファッションビジネス」として大きくなっている。ただ僕としては、もっとファッションカルチャーが好きなお客さんが喜んでくれるサービスも作っていきたいという想いがずっとありました。そうした中で前澤友作前社長の退任後、澤田さん(澤田宏太郎 現社長兼CEO)が就任した際、僕は人事の本部長をやっていたんですが、澤田さんに2014年に統合されたゾゾヴィラ事業を復活させたいと直談判して。そうしたら澤田さんに「じゃあお前に任せるよ」と言ってもらえ、僕と畠中一樹(ゾゾヴィラ クリエイティブディレクター)の2人が中心となって2021年にローンチしたんです。

久保:西巻さんはゾゾに17年いると言ってましたけど、畠中さんも社歴が長いんですよね?

西巻:そうですね。僕とほぼ同期です。

久保:で、その話を聞いて面白いなと興味を持ったんです。2014年にゾゾヴィラがなくなり、時を経て2021年に古株の2人が、ゾゾのレガシーをもう一度今の時代にあったものにアジャストして世に出すってなかなかできないと思うんですよ。新しく入った若い人がやりたいというのはまだわかるんですが。僕らグレイトは常にファッションやカルチャーの最前線を追い求めているので、同じ気持ちを持つ同志なんじゃないかと共感する部分がありました。

西巻:今思うと、リボルバーを着て打ち合わせに出て本当に良かったと思いますね(笑)。側から見ると小さいことかも知れませんが、暮らしていた場所は違えど2000年〜2002年という時代に同じ趣向を持っていたんだと実感できたことで、その後のコミュニケーションがスムーズになりました。

久保:会社や立場はそれぞれ違いますが、僕と同じ時代を生きた2人が一つになって立ち上げているサービスというものに着想を得て、このプロジェクトではこの2人の関係値のように、2人で支え合っているゾゾヴィラのように、グレイトとゾゾヴィラも仲間意識みたいなものを軸に置くと面白いものができるんじゃないかと考えました。今回千葉にあるゾゾの本社でコラボを記念したディナーパーティーを開催しましたが、なぜこういったことをやったかというと、日々ゾゾタウンの運営に全力を尽くしているスタッフさんたちのことをフィジカルで表現することが、自分の役割なんじゃないかと思ったからです。もちろんその逆もあって、グレイトで一生懸命働いてるスタッフの子達が地元の友達から「グレイトって働いているところでしょ?ゾゾタウンにバナー出てたよ、すごいね」と言われることもあると思うんです。つまりはお互いの長所であるデジタルとフィジカルの部分が一緒になることで、マーケットを盛り上げていけるんじゃないかと考えました。

西巻:詰まるところ面白いことがやれそうだなと両社が思えたから実現したプロジェクトなんですよね。企業の垣根を越えてでも、この人たちとだったら絶対面白いことができると思えたことが全ての始まりです。

プロジェクトの第1弾として、アーティストのコイン パーキング デリバリー(COIN PARKING DELIVERY)さんの作品を落とし込んだアイテムを販売しました。

久保本社に来たらわかると思うんですが、会議室一つとってもアートに対してのリスペクトが感じられるわけで、アートやファッションにちゃんと恩返しをしている会社がゾゾさんなわけですよ。じゃあプロジェクトでもアーティストを起用しましょうということで、両者の共通の知人でもあるコインパくん(コイン パーキング デリバリー)をゲストに招こうとなりました。実際このオフィスにもコインパくんの作品が飾られていたりと、縁と縁、円と円がつながって8になったというか(※GR8の名前の由来)。

ZOZOVILLA×GR8の第1弾コラボレーションアイテム

アイテムのデザインはコイン パーキング デリバリーさんにお任せした?

久保:はい、もう全て。ただそれだけじゃつまらないので、2社それぞれのカラーを展開しました。これは2社で一つを作るんじゃなくて、グレイトとして提案できるもの、ゾゾヴィラさんとして提案できるものを分けて。今後、それぞれで異なるアウトプットをしていっても面白いんじゃないかと思っています。

スウェットやTシャツのボディには、グレイトが日本代理店契約を締結して展開している「エコサイクル(ECOCYCLE®)」のボディを採用しています。

西巻:エコサイクルのサンプルを見せてもらったんですが、シンプルに良くて。僕は気に入ったものをあえて何回も洗濯して、撚れるか撚れないか、着続けるとどうなるかを検証するんですが、エコサイクルは全然ヘタレなかったんです。本当にすごくて、じゃあ是非今回のプロジェクトではエコサイクルを使いましょうと提案しました。グレイトさんが展開しているわけですから、久保さんたちは嫌だと断る理由は特にないですしね(笑)。

エコサイクルとは?
アメリカ・ロサンゼルスを拠点とするアパレルメーカー「ユーエス スタンダードアパレル(US STANDARD APPAREL)」が展開するボディライン。スペインのベルダ・ロレンズ社の開発した50%リサイクル、50%オーガニックコットン糸を使用した環境に配慮され、かつ長持ちする着心地の良いボディは、様々な業界から支持を集め、世界的に有名なブランドもコレクションのボディに使用している。2021年にグレイトが日本代理店契約を締結した。

インプレッション追求ではファッションは面白くならない

両社の協業はいつまで続くんですか?

久保:特に期限は決めていませんが、西巻さんのことを面白い人だと思えているうちは続くんじゃないですかね(笑)。

西巻:この間も夜中におっさん2人で3時間電話したりしましたね(笑)。

久保:それくらい頻繁にコミュニケーションをとっています。その成果もあってか、現時点でやりたいことはいくつか決まっていて、これから徐々に形にしていけたらと思っています。

お二人は年齢も近いんですか?

西巻:僕は1981年生まれです。

久保:私は1975年生まれなんで、西巻さんは6歳下です。でも全然6歳下とは思えない(笑)。

西巻:僕は前澤前社長の秘書をやっていたことがあったんですが、前澤さんも僕の6個上で。どうやら1975年生まれの人に可愛がってもらえる傾向があるみたいです(笑)。

コラボを記念したパーティーとして、ゾゾ本社で晩餐会を開催。参加させて頂きましたが、ゾゾの社員の方が働く傍らで、フレンチを食べるというのはシュールな感じでした(笑)。

久保:これは西巻さんのアイデアなんですよ、本社で晩餐会をやったらどうですかって。ゾゾ本社をイベントで使用したのは今回が初めてみたいです。

西巻:社内向けのイベントでは使ったことがありますけど、社外の方を招いてのイベントは初めてで。FASHIONSNAPさんをはじめ、「フィンガリン(PHINGERIN)」デザイナーの小林資幸さんやアーティストの長場雄さん、テレビディレクターの上出遼平さんや今回この企画のイメージヴィジュアルを撮影してくださった題府基之さんなど関係値のある33人のゲストを招待させて頂きました。やっぱり楽しんでもらいという気持ちが強かったので、会社の入口をコイン パーキング デリバリーさんのグラフィックで覆ったり、「ディリジェンスパーラー(DILIGENCE PARLOUR)」の越智康貴さんにお花を飾って頂いたり、オーケストラに演奏して頂いたり、ワインを250本用意したりと、結構な予算を使いましたね(笑)。

晩餐会会場

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ゲストは呼ぼうと思えばもっと呼べたと思うんですが。

久保:あくまでもゾゾさん、コインパくん、グレイトの知人友人をご招待したというかたちです。そのため、所謂インフルエンサーの方々はお呼びしていません。パーティーでよくある「初めまして私〇〇です」というような社交的な場ではなく。ファッションカルチャーって結局ストリートから生まれるものが絶対的に面白いと考えているんですが、そうしたムーブメントは密な関係からしか生まれないんですよ。そして、アーティストやクリエイター、スタッフの方にリスペクトを持ってしっかりファッションとして落とし込まなきゃいけないからこそ、ディテールにもこだわる。グレイトがナイキのプロジェクトで一緒にやっている植田光二さんに今回ムービー制作をお願いしたのも、そういう理由です。

西巻:だから今回に関しては代理店を通してお金かけてKOL施策を、ということではないんです。

久保:そもそもビジネスのやり方が違うんだよねっていう社会的なパンクなメッセージでもあるんです。KOL施策をしなくても十分数字は取れる、むしろしない方が数字が取れるってことを実証したい。そんな現代のファッションビジネスの向こう側を作ってみたかった。

久保さんは去年の年末に高いエンゲージメントを持つブランドが台頭してくると言っていましたが、要はこのプロジェクトで目指すものはインプレッションではないということですね。

久保:おっしゃる通りです。実際2000人しかフォロワーがいない人の方が、100万、200万人いる人より消化率が高いなんてよくある話で。エンゲージメント、つまりは熱量をこのプロジェクトでも高めていって、それこそ"祭り"のようなものにしていきたいと考えています。

黒いキャップを被った男性

久保光博氏

これからの小売業態に求められるものは

小売がビジネスの軸にある両社ですが、昨今D2C業態が増えてきてセレクトショップの役割が問われいるように思います。これからの小売業態に求められるものはなんだと思いますか?

西巻:ゾゾヴィラの中でも「ゾゾヴィラ セレクト(ZOZOVILLA SELECT)」は結構インポートが多くて、グレイトさんとは競合といえば競合なんですよ。だから冒頭におっしゃって頂いたように「異色」というのはまさにその通りで。ではなぜそのライバル会社同士が組むのか。僕と久保さんの中での話にはなりますが、それは協力しあってファッションシーンを盛り上げないと衰退していってしまうということ。それこそ当時のリボルバーのような勢いのあるブランドが今あるかといったらなかなか見当たらないじゃないですか。カルト的なファンがブランドのショップに毎週土曜日並んで、店内に入っても「売れてなんも残ってないじゃん!騙したな!」みたいな経験って今はかなり少なくなったように思うんです。リアルとかデジタルとか関係なく、ファッションを愛してファッションを取り扱う小売業としては、盛り上げなきゃいけない。ファッションのファンをどれだけ作っていけるかが僕らのミッションであり役目だと思っているので、そういう意味でグレイトさんと今回やることに意味を感じているんです。

久保:この小さな島国で「ここは俺のテリトリーだ!」と言っていること自体、世界から見たら小さいことですから。この考えはグレイトの店舗運営にも反映しているんですが、実はグレイトってエクスクルーシブなアイテムって全くないんですよ。セレクトショップは独自性を出すために別注やエクスクルーシブアイテムをよく作りますが、グレイトではそこを重要視していません。もちろんたまたま他のショップがバイイングしていなくて、うちしか買い付けなかったため結果としてエクスクルーシブになっているアイテムはありますが(笑)。ではなぜエクスクルーシブをしないのかと言ったら、自分たちだけがやっても結局盛り上がらないから。たくさんのセレクトショップ、店舗が買い付けることによって初めてその商品、ブランドが盛り上がっていくんですよ。

西巻:僕らゾゾは別注を作ることもありますが、久保さんから別注もオリジナルブランドも作らず、仕入れオンリーでやっていると聞いて目から鱗でした。それでもしっかり売っていて、海外からの評価も高いお店というのやはりすごいなと。

インタビューに答えると男性

西巻拓自氏

久保:グレイトの役割って、いかに導火線に火を付けるかなんです。「グレイトに扱ってもらったらなんか爆発させてくれる!」とデザイナーには思って欲しい。そのためには、今回開いた晩餐会のように一つ一つディテールに拘り、目の前にいる人に楽しんでもらう、それしかないと思うんです。

西巻:ファッションビジネスとファッションカルチャーはすごくギャップがあると最近僕はすごく思っていて。ゾゾタウンがファッションビジネスだとしたら、ゾゾヴィラがファッションカルチャーの部分を担っていかなければと思っているんですが、なかなか難しいなと日々考えています。

久保:デジタルはしょうがない部分もあると思うんですよ。「あえて」こうしたなどのいわゆる「外し」みたいなものがフィジカルでは成り立つんですが、デジタルで表現するとその外しがうまく伝わらず難しい。だからそれぞれ自分の足りない部分を補うというか、手を取り合ってシナジーを生み出していく方がいいんじゃないかと思います。ウロボロスじゃないですけど、縁と縁が円になってマーケットが盛り上がったら最高だよねって。だからどしどしオファーくださいという感じで(笑)。

久保さんに言えば盛り上げてくれるんですね(笑)。ブランドやデザイナーはとても喜びそうです。

久保:やります、やります。もちろん選考はしますが、一緒にファッションを盛り上げたい方、大募集中です!

(聞き手:芳之内史也)

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